TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
実はr17.9タグを消去しました。他が意外とやることやっているのと、かと言ってこの作品が他の作品よりえっちえっちしているかと言われるとそうでもない気がしたので……
もしタグで見にきたのに思ってたんと違ったという方がいましたらごめんね……
「ってことがあったんですよ」
「ええ……」
ここは休憩室。魔法少女たちが妖怪退治の報告をしたのちに、そこで休んでいるのがよく見られる。居心地がいいと評判で、ここからしばらく動けなくなる少女もいたりいなかったり。そして日も落ちた現在、任務終わりでぐーたらする3人──サキとキョウコとアヤメとが、ペットボトルのジュース片手に駄弁っていた。
話題は先日サキが出会ったという淫魔の話。無職になっていた事、家がない事……サキがかいつまんで話せば、キョウコとアヤメはなんとも言えない表情で固まっていた。普段敵対している奴らのなんとも意外な裏事情を知ってしまっては無理もない。
「住む場所も無くなったって、辛いですよね……」
「アンタが言うと違うね」
「えへへ……まあ、そうかもしれません」
「なんで誇らしげ?」
先日いつの間にやら自分の家が自分のものではなくなっていたというびっくりサプライズを食らったサキは、アヤメのつぶやきにしみじみといった雰囲気で答えた。何故か得意げな表情を携えてだが。大して効いてないんじゃないかコイツ。アヤメは訝しんだ。
キョウコはキョウコで、そういった……所謂人間的な妖怪もいることに驚いていた。特に淫魔なんて種族は
「あ、お2人とも何ですかその目は!どうせ『それに比べてサキは……』とか考えているんでしょう!」
「いや変な後輩だなって思って」
「変な、を強調して言わなくても」
「変な親友っス、変な親友」
「2回も言わんで良いんですよ!」
ひーん、どうしてこんなことに。そんなことを言いながら嘆くサキだが、残念ながら当然である。自室で悪の組織仕草をするばかりかそれを定期的に野に放たんとしている奴が変でなければ何なのか。むしろ「変」の一言で済ませてくれる2人に感謝するべきだろう。まあ、この界隈にはもっとアレなのがいる、というのも理由の一つではあるが……それはともかく。
「うう……ユキネさんにも叱られましたし、流石に少し自重した方がいいんですかね……」
「ああ、家に行く途中の話だったんだっけ。…………元気だった?あいつら」
「え?はい、そうですね。2人とも元気そうでした。少し上の空な感じもしましたけど。アカネさんが料理を作ろうとするのをユキネさんが全力で阻止していて……」
そして、話はユキネたちのことに移る。覇気が全く無くなったアカネと心ここにあらずなユキネというなんとも言えないコンビのもてなしを受けたサキは、まるでコントのようだったという感想を述べた。
「ふうん……」
そしてアヤメはと言えば、一瞬口を動かした後、含みのある相槌を打って、飲料の残りをあおった。自分で聞いた割には、なんとも心のこもっていない。何か別な話を期待して、そうではなかったかのような、そんな様子だった。
「……なんかアンニュイになっちゃいましたよ」
「実はアヤメ先輩、ユキネさんと何かしら関係があるらしいんス。教えてはくれないっスけど」
「そういえば、そうみたいですね。並々ならない何かがあるんでしょうか」
疑問に思ったサキが隣のキョウコに耳打ちすれば、そんな答えが返って来る。言われてみると、サキが初めて変身した時も、何かしら因縁のありそうな会話をしていた。なんとも気になる事も言っていた気がする。確か──
「聞こえてんよ」
「うス!」
2人して背筋が伸びる。どうやら、アヤメは耳がいいようだ。自分で振った話題だしそうもなるかと、彼女はそれ以上言うのを控える。まあ、そもそも本人の目の前でこそこそ喋るなという話ではあるが……
アヤメは空になったペットボトルをゴミ箱に放り投げ、身体が反るくらいソファーにもたれかかる。そこから見やった窓の外は、曇り空で薄暗かった。
「稽古をつけて欲しいんだ」
「稽古ォ?」
魔法庁から歩いて数分、商店街近くのラーメン屋。そこで俺はずるずるとラーメンをすすりながら、ユキネの相談を聞いていた。先日のお礼として俺が奢ろうと誘った訳だが、ついでに話を聞いてほしいと言ったのがユキネ。なのでこうして、2人で食事を挟みながらおしゃべりしているわけだ。
もっとも、ユキネは舌鼓をうちながらラーメンをあっという間に平らげ、こうして神妙な面持ちでこちらを見つめているわけだが。おしゃべりという感じではない。
「ミコトの師匠は強いと聞いた。お前もそうだが、その人にも頼んでもらえないか」
「ええ~~……いやあ……俺を介さずとも、あの人達なら親身になってくれるだろうよ」
「む……全く、親代わりなんだろう?お前が無事を伝えないというのなら、私が勝手に言ってしまうぞ」
「勘弁してくれ、本当に。死ぬから……」
なんとまあ恐ろしい事を言う。行方不明か死んだことになっていたであろう俺だが、そりゃあいつかは顔を出して無事を伝えないといけない。……が、おそらくその時が俺の命日になる。1人は優しいが、もう1人は厳しいのだ。すんげえ~~飴と鞭である。
ので、少しでも寿命を延ばしたいと考えるのは普通の事だろう。師匠が俺の生存を既に知っている場合は……うう、考えたくない。現在警戒しているのは、彼女が家にしれっと遊びに来ることである。そんなことが起こったら気絶する自信があるぞ。
「はぁ……にしても、なんでまた急に?」
「今より強くなるため。単純だろう?……私は、お前よりも弱い。5年ブランクのある奴に負けるようでは、私もまだまだということだ」
理由を聞けば、そんな答えが返ってくる。資料を読むような、淡々とした言い方で。ユキネの餃子を運ぶ箸が忙しなく動いていなければ、少し気まずかっただろう。言われた通り、今の俺はユキネに勝てるから。……でも君、俺よか年下じゃないの。まだ先があるんだから、気長に……というわけにもいかないか。
毎日のように、一体どこに潜んでいるんだというほど妖怪の湧いてくるこの町だが。狐塚タマモが死んでから、その数はさらに多くなった気がする。抑止力が無くなった、と言う事なのだろうか。あいつ、やることはやってたみたいなんだよな。これからはより一層妖怪が出現するようになるのだろうし、それに備える必要があるというのも頷ける。
「……それに」
「それに?」
「……あの時。黒狐を倒す時。私は真打を撃てるべきだった。そうだろう?」
「……」
口を結び、険しい表情をして、ユキネはそう言った。どうやら、あの決戦での自分に納得がいっていないらしい。それ自体はいいものだと思うけれど、そうも奥噛みされては、すこし異を唱えたくなる。しかし、真打だけで戦いが決まるわけではない、と言っても、今のコイツは納得してくれないだろう。
勝手に弁解するが、撃てないわけではない。ただ周りを確実に巻き込むだけで。ユキネは魔力量が多く、魔法の射程は特に圧倒的だ。威力も十二分にある。が、そのかわり魔法の精度が壊滅的だった。雪の結晶なんて繊細なものは、実はコイツには作れない。マヒャデドスを連発するばかりだ。脳筋だ。まあ、それでも強いけれど……やっぱり人を巻き込みがちなので、仲間がいると一気に扱いづらくなる。そこは確かに欠点と言えた。
あと、長時間の変身や魔法の使いすぎで頭痛がしてくるらしい。それは駄目じゃん。なんらか良くないことが体内で起きてるじゃん。魔法少女としての力を御しきれていないじゃん。
……まあ、つまり。あの状況でユキネがそれを撃てば、俺たちまで巻き添えを食らっていた。真打なんて大体そんなものだが、事実アカネさんとキョウコちゃんのものはそれがない。だからあの時の選択肢に入っていたわけで。
それでも最終手段としては考えていたのだが……コイツはそれじゃあ嫌な様子だった。
「弱いわけじゃないだろ、使いどころが限られているだけで」
「それは世間一般では弱いと言うんじゃないか?」
「汎用的でないからって弱いってわけじゃないだろ?1対多がお前の主戦場だよ。まあそんな状況中々無いけど……」
「無いんじゃないか……汎用性に勝るものはないだろう。ことこの時代、人を守るというならば」
ユキネはそう言って、そのまま視線を店の外に移したきり動かなくなってしまった。力をつけてする事が人を守るって、お前それはもうヒーローとかそういう奴だろ。少なくとも悪の組織ではない。最近悪ってなんなんだろうとか思い始めてるぞ。
「アカネさんを頼るのは?」
「……ボスは……最近、元気がないんだ。全く覇気がないというか……」
「あ〜……」
アカネさんに稽古をつけてもらえばいいとも思ったが……燃え尽きちまったか。まあ、長年の悲願が達成されればそうもなろう。人生の大半をそれに使ったんだ、少しくらい休んだっていいだろう。そして願わくば、さっさと新しい人生と言えるものを歩んでいってほしいものだが……
ともかく。師匠はなるだけ頼りたくないし、かと言って俺が色々教えられるかというと……微妙だ。が、一応……考えはある。怪物弱すぎ問題にぶつかった時に思いつき……徹夜でおかしなこと考えちまったと、一瞬で没にした、ユキネを強化する案。
「んー……まあ……分かった。稽古はアレだけど……一つ、考えがあるんだ。多分、強くなれる。それもかなり」
「ほ、本当か!?嘘じゃないだろうな!?」
「嘘ではない……多分。でも、そう考えるのが一番しっくりくるんだ」
「なんだ、歯切れが悪いな。自分の力で強くなれるのなら……どんなものだろうと、私はやるさ。だから教えてくれ」
そもそも、ユキネには魔法少女として欠陥があるのだ。それは出自に起因するもので、なんというか……親の不始末。そういった形になるのだろうか。おそらくそれが、ユキネが今まで伸び悩んできた最大の原因。そう考えるのが自然で、解決法自体はまあ、割と簡単に導き出せる。
……問題は……問題は……すごくアホみたいな案であることで……
「……女に、なる」
「は?」
「お前が、女の子になるんだ」
久々に意識した大前提。シャツにスラックスという装いで、青い髪を伸ばし、それを耳にかけ飯を食っていたコイツは。身を乗り出して俺の言葉を待っているコイツは。
白藤ユキネは、男である。
俺の言葉を聞いた彼は、数秒固まった後、その意味を咀嚼しているのか視線を泳がせ。困惑から帰って来たあと、若干キレた表情でこう言った。
「……何を言ってるんだ……??」
まあそうだろうな。俺でもそう思うもん。