TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
話を進めるためにはそれなりにちゃんと書かないといけないが、そうすると馬鹿みてえなやり取りを減らさないといけないジレンマ……難しいですね。
「魔法少女の事、調べてみたんですよ。昔見たアニメとはイメージ違うんですね」
「はあ。でもそんなこと言ったら、政府が関わってる時点で違うだろ」
「んまあ、そうなんですけど」
丁度怪物をコネコネ作っていると、隣の椅子に座っていたサキがそんなことを口にした。彼女の机の上には、一台のパソコンが置かれている。誘拐する時にスマホが壊れたと嘆いていたので、引っ張り出してきて与えたお古のものだ。ちなみに、ここ数日で検索履歴がエロという文字で埋め尽くされた。小学生?
それはそれとして、彼女が言っていることは分からんでもない。語感で想像するのはニチアサのプリティーでキュアキュアな奴だが、この世界の魔法少女は別にマスコットもいなければステッキもない。代わりに物騒な武器が出てくることはあるけど。おまけに変身後の衣装は個人差が凄く、人によっては退魔忍と呼んだ方がしっくりくる。不名誉極まりないが。
それでも魔法少女と呼ばれているのは、政府がそう呼んだから、というのもあるだろうが……それより単純かつ明快な答えがある。魔法が使える少女だから、という何の捻りもない答えが。
魔法少女の適正年齢としては15歳~25歳の10年間。まあ20歳以上を少女と呼ぶのはどうなんだと思わないでもないが、他に分かりやすい呼び名があるか、と言われたら無いわけで。
つまるところ、アニメと現実は違う、という事だ。悲しい事だが仕方ない。
「にしてもそんな理解度って、まさか初めて調べたとか?普通君くらいの年頃の子はそういうの気になるもんじゃないの?」
「私はあんまり興味なかったんですよ。才能あるなんて思ってませんでしたし、あの人たちが私の貧乏をどうにかしてくれるわけじゃありませんからね」
「……そういうもんかぁ」
サキの口から出てきたのは、なんとも世知辛い理由だった。魔法少女の仕事は妖怪やら俺たち悪の組織やらの相手であって、苦学生の支援ではないのだ。自分を助けてくれない存在に興味はない、か。悲しいもんだ。だからってエロに走るな。
ちなみに、直接的に金を生み出す魔法少女はいない。いたら凄いことになりそうだ。あ、紙幣偽造できそうなやつはいるな。恐ろしいことだ、やろうと思えば国を揺るがせるぞ。
しかし、魔法少女が犯罪を犯したという話題は聞いたことがない。目の前の存在を見るにそんなことはありえないはずなので、きっと政府がもみ消しているのだろう。気が滅入って来たな。
「とにかく、その調子でエロ以外のことも学んでおきなさい。言おうと思ってたけど、その年でそんなに性癖捻じくれてたら後がヤバいぞ」
「いいじゃないですか、唯一の趣味なんですよ!ちゃんとお金も落としてますし!」
「…………ちょお待て、君未成年だよな?」
「年齢確認なんてね!こけおどしですよあんなの!!」
何言ってるんだこのバカ。自慢げに言う事ではない。良くないんだぞ、そういうのは。年齢制限があるものは、大体ちゃんとした理由があるんだから。未発達な情緒に刺激の強いものをぶち込んだら後が怖いのだ。コイツの場合は既に手遅れな気もするが。
「いつも電子マネーで払ってるので、最近決済音を聞くだけでムラムラしてくるように……」
「手遅れだった」
致命的だ、もうどうしようもない。心の中で合掌をしておく。パブロフの犬だって股からは垂らさねえんだよ。
まさか最近の子はみんなこんなのなんじゃないだろうな。*1少しはマリを見習ってほしいんだけど。しっかしどうしたもんか、パソコンにお子様フィルターでもつけた方が良いか?……泣きわめいて抗議してきそうだな。めんどくせェ……
「所長っ、少しいいですか?サキちゃんも」
「え、私もですか?」
世の親っていうのは大変なんだなとしみじみ感じていたところに、息を切らしたマリがやって来た。急いで走ってきたようだ。焦った彼女は珍しい、なんだか面倒ごとの予感を感じる。
「新聞にこの子の巻き込まれた事件の記事があったんですが……」
「……新聞?怪しげな組織が新聞を?」
「ボスからの命令だからな」
「……おじさんなんですか?ボスって。声は女性っぽかったですけど……」
「女性というより、女の子って感じだな。ね、マリ」
「そうですね。お誕生日席に座る姿は可愛らしいですよ」
サキの顔が困惑一色に染まった。まあ、気持ちは分からんでもないが。一応言うけど、舐めているわけじゃないぞ。アットホームってやつだ。
とにかく。新聞というと規模が大きいのを想像するかもしれないが、取ってるのは地方紙だ。外国がどうとか総理大臣がどうとかはほとんど載らないが、この町のことは良く分かる。政府の動きもよく載ってるので、あちらの様子を確認するのにもってこいというわけ。
マリから渡された丸まった新聞を開いてみる。一番上にでかでかと……書かれているわけでもなく、左の隅、広告の上に小さめのスペースを取っていた。いざ読まんとすれば、ずいとサキが割り込んできて妨害される。
「えーっと……『先日11月3日夜に起こった妖怪による建物破壊事件について、警察は調査の末死亡した三名の身元が判明したことを発表した。死亡したのは桜井ユキコさん(17)、八雲サキさん(16)、小南カナタさん(30)。』……」
一文読み終えた後、サキは何かを考えているのか斜め上を見た。もう一度視線を新聞に落とし、今度は目を細め離して見ている。そして最後にもう一度、今度は指を這わせながら読み込んで、納得がいったのか一つ頷いて一言。
「し……死んでるッッ」
サキが叫んで崩れ落ちる。ぱさり、と新聞が落ちた。それを拾い上げて、自分でも記事を読んでみれば、確かに死亡者の名前に彼女の名前が思いきり載っている。そりゃおったまげるだろうな。勝手に殺されたわけだし。
「なぜ、行方不明扱いでは無いのでしょう」
「身内がいないから思い切りやれるんじゃないか?捕まえたら『やっぱ生きてました』ってやればいいだけだし、いざとなったらそのまま死んでもらうんだろうさ」
「わ、私の人権は!?」
「もう無いよ、死んだんだから」
「せ、世界が私に冷たい……元からですけど……」
びえびえ言い出ながら縋りついてくるサキ。鼻水が白衣についたが、アレな液体よりかはマシなんて思ってしまったあたり、俺ももうダメなのかもしれない。
しかし結構恐ろしい所業なのだ、コレ。政府の援助が切られるので学校には行けないし、まともに働けないし、医療負担は全額だ。まあ、そういう戸籍の無い人は割といるけど。23世紀の日本は治安が悪いのだ。
俺たちにむざむざとサキを渡した失態を隠したいのか、秘密裏に処理したいのか……とにかく、絶対何か思惑がある。今頃はサキや誘拐した俺たちのことを血眼になって探していることだろう。政府こわーい。
俺らとしては、この研究所の場所がバレないようにと切に願うばかりである。強化型の怪物も3体ほど完成し、冗談抜きで今この場所が組織の重要地点だ。なので今探し当てられてしまうと非常に困る。当分は静かにするのがいいか。
実際、こうなったら無理に活動せず戦力を貯めておいた方が良いはずだ。戦力の逐次投入は悪手という話もあるし、それさえしなければ征服も夢じゃないかもしれない。機を見て多数で進軍させれば大抵の魔法少女には勝てるだろう。よし、引きこもるぞ。
「あ。でも死んだ事になったということは、借金を払わなくてもいいってこと?」
自分に降りかかる苦難の数々にげんなりしていたサキだが、ふと何かに気づいたかのようにハッとする。その表情はまさに青天の霹靂。にしてはなんか不穏な単語が聞こえて気がするけど……まあ、気のせいだろう。そう信じたい。
「……なんて?」
「借金ですよ借金。親が唯一私達に遺してくれたものです」
「…………おお……」
気のせいではなかった。藪蛇じゃねえか、なんてコメントすればいいんだこれ。金額とか聞けばいいのか?いや、それで嬉々として言われても困るな。やめよう。
気まずさのあまりマリの方をちらっと見るが、いつのまにやらいなくなって……いや、隠密術を使って気配を極限まで減らしている。だいぶズルい。
まあ、死人に金が払えるはずもないので、借金は無かったことになるはずだ。取れる分は回収しようとするはずだから、住んでいた家は差し押さえられたりするだろうが。……この子、結構なピンチなのでは?
「いやったあ!私は自由だ!未来が明るくなりました!」
「こっちは気分が暗くなったよ」
しかし当の本人はあまり気にしていない様子。何でそんな呑気でいられるんだ。心が強いのか、大して何も考えていないのか、エロいことを考えているのか。絶対3番目だな。
「住むところ無くなってるかもしれないんだぞ」
「そうなってたらここに居座ります!家事のお手伝いとかしますよ!」
「えェ~~……」
あまりにも淀みない回答に困惑を隠せない。君、自分の立場分かってるか?(2回目)いや、こちらとしても都合がいいのはそうなのだが、ここまで乗り気でいられるとどう反応すればいいのか分からない。笑えばいいのか?
実際にマリは苦笑いをしていた。半ば諦めているらしい。でも少し楽しそうだ。
「な、何ですかその顔。まさかお二方まで私を捨てる気じゃあないですよね」
「……実は、俺たちは悪の組織なんだ」
「殺す前に本当のことを言う奴ですか!?」
冥途の土産に教えてやろう。実は我々はこの町の転覆を企む悪い組織なのだ。……規模がちっさいな。でも建物とか水道管とか電線とか破壊してるし、たまに魔法少女も倒してるし。……みみっちいな。いやしかし、うざったさならいい線行っているかもしれない。それでもアレだが。
「嫌ですぅ!捨てないでください!御社の理念に共感しました!今しました!」
「本音は?」
「もっとえっちなことを堪能したいです!!」
「……そうだな、お前はそういう奴だよ……」
ここまでブレないのは良い事なのかもしれない。エロとは何たるかについて語り始めたサキを横目に俺はそんなことを思った。でももうちょっとまともなことを言ってほしいとも思った。