TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女 作:こばみご
軽率に新作を投稿してしまったせいで頭がパンクしそうですが、何とか頑張ります。
不知火アカネはバカである。……ちょっとだけ失礼か。不知火アカネはアホである。そうミコトは認識していた。
彼女は当時15歳だったユキネが変身に躓いていた時に、形から入ろうと魔法少女のコスプレをさせたのだ。セーラームーなんちゃらとか、そこらへんのやつ。着せている本人は凄く楽しそうだった。そして着ているユキネはとても恥ずかしそうだった。
変態かショタコンのどちらなのだろうとその時は思ったミコトだが、しかし数日後実際に変身が出来るようになったのだから、意外と効果があったのかもしれない。当時は信じがたかったが、彼女も今はそう考えている。
だからこそ、今回の策も多少の効果が見込めると、ミコトはそう思っていた。
「な、なあ……本当に意味があるのか?これ……」
「……あるよ」
……思っていた。
『えっ!!今日はユキネを好きに着飾って良いんですか!!』
『良いよ』
『おい、勝手に決め──ちょ、おい、離してくれ──』
着る服には意外とうるさいマリと、知識はあるであろうサキを連れ、4人は総合スーパーへと──以前キョウコと戦闘して破壊した所だ──来ていた。理由は簡単、ユキネに形から入らせるため。変身時以外はスカートなど履かない(当たり前である)彼に、もう少し女装に慣れさせてやろうという魂胆である。
建物の2階にちょうどコスプレ服も扱っている衣服店があるので、とりあえずそこに赴く4人。しかし見れば、むしろコスプレ服の方が多く売っているようだ。なんでそんなマニアックな店が総合スーパーなんかにあるんだ。ミコトは疑問に思ったが、口には出さないでおいた。
『すいません、試着良いですか?』
『ええ、もちろん……ほー……へー……』
『?』
『あ、すいません。お兄さん方なら全然オッケーですよ!』
店員がユキネの性別を即座に見抜いて来たのには驚いたが、おそらくそういった客もいるのだろう。やっぱ総合スーパーに置いちゃダメな店じゃねえかなと思いつつ、ミコトたちはユキネに試着を繰り返させ……そして現在。
ユキネは彼女らの目の前で、ゴスロリの衣装を着ながら、スカートの裾を掴んでもじもじと恥じらっていた。元の素材も相まって、異国でお嬢様をやっていても違和感のない程度には似合っていた。現にマリが写真をこれでもかと撮っている。ノリノリだった。サキも自身のメモに色々と書き記しているようだ。……多分、碌なことではないのだろう。
急遽考えられた「心を女の子に近づけてみよう!」作戦。傍から見ればイカれているが、一応理屈は通っている。……イカれているのは変わらないが……
魔力とは一種の願望機で、想いを糧に魔法を発動させる側面があるのだ。ならば余計な雑念を払い、想いをより純粋なものにすれば、魔法も安定するかもしれない。そう考えての策。
「でもそんなこと言ったらサンちゃんを使ってお尻に痛ァーーッ!!」
「一回黙っててもらっていいか?」
ミコトの経験からも来ているこれは……しかし今の所ただのコスプレ大会となっていた。和服に始まり、巫女服、学生服、メイド服……少しずつだが、布面積が減っていた。辻井マリの恐ろしい策であった。行きつく先はどこなのだろう。ヒリつく頭を押さえながら、サキは興味深々に考えていた。
しかしどの服も、恥じらう姿も相まってなのか、やけに映える身姿となっている。現在着ているゴスロリ服も、黒を基調としたドレスが彼の一見無愛想な表情をミステリアスなものへと押し上げており、随分と似合っていた。
「じゃあ次これね。チャイナドレス」
「い、嫌だ。足が丸見えじゃないか!」
「でもほら、ボスと同じ衣装だよ?」
「……。……いや、だから何だというんだ。やめ……やめろ!」
にじりよるマリに魔力を纏わせ抵抗の意思を見せるユキネ。必死だった。対するマリも、培った隠密機動を遺憾なく発揮している。こんな所で発揮しないで欲しかったミコトは、よく考えたら普通の服着せりゃよかったよなと今更ながら気づいたり。ちなみに、助けを求めるユキネの視線は努めて無視していた。薄情である。
「サキちゃん、次の分見繕ってきてもらっていいですか!」
「了解しましたァ!」
マリに言われるがまま、サキは新たなる衣装を求めて売り場へ飛び出していった。どうせならと皆にも着せる用のコスプレ衣装を探しつつ、周囲を物色する。底なしの欲望である。
特に、引っ叩いてきたミコトには腹いせとして過激なものを着せてやるという確固たる意志を胸に陳列棚を漁り……良さげな服をいくつか取ったのち、戻ろうとした彼女は角で人影とぶつかり……そうになったが、回避した。成長を感じる。
「お?おー、サキやんか。偶然やな!買い物に来たん?」
「あれ、リリさんじゃないですか!ちょっとコスプレをさせようと」
「コス……結構進んどるなあ……」
そしてその人影の正体は、彼女が先日出会った淫魔のリリであった。どうやら、彼女はこの店に衣服を買いに来たらしく。偶然出くわした彼女らは、再会を喜んだ。
手に持った服を見たリリは、なんとまあ奔放であると、驚愕と苦笑いを同時にしつつ。しかしそんな彼女の顔も、前に公園で会った時よりずっと生き生きしている。
「あ、もしかしてリリさん!」
「お、分かるか?いやー、おかげさまで就職できたんや!これで当面は安泰やな……多分!」
サキの予想通りに、リリはつい先日就職先が決まっていたのだ。たまたま歩いていたところに募集のチラシが落ちてきて、これ幸いと戸を叩けば、その日のうちに採用が決まったらしい。何をどう考えても怪しかった。
知り合いがもしかすると黒い企業に捕まってしまったかもしれないと恐れたサキは、しかし彼女が前に勤めていた企業も怪しそうだったのを思い出し、悩んだ末とりあえず様子を見ることにした。喜びに水を差すのも……と、考えた結果でもある。とりあえず別な話をしようと、淫魔おすすめの衣服を聞こうとしたところで。
「サキ……ん、知り合いか?……いや、そのイカれた布面積の水着は……?」
「あ、ミコトさん。これはミコトさんに……じゃなくて、この人!この人がこないだ言ってた人なんです!」
会話しているサキに気づいて、ミコトが寄ってきた。ちなみに、ユキネはまだ逃げ回っている。
聞かれるがまま、持っている服(?)を見せようとして……今はまだその時ではないと、咄嗟にリリの紹介をして誤魔化した。あまり誤魔化せてはいない。
片や「コイツが例の淫魔か……」と警戒し、片や「サキの上司も同じ淫魔なんかな」と随分な事を考えていたが……しかしお互いに、その姿を見て固まってしまった。一目惚れだろうか。サキは考えた。そんなわけねえだろ。
「リ……リリじゃん!!」
「え、わ、ミコトやん!!生きとったんか!」
「こっちのセリフだよ!」
だが、どうやら2人は旧知の中であるようだった。久々に会ったのか、お互いに幽霊でも見るかのような顔をしている。ユキネとマリも追いかけっこを止め、そちらの方を向き、そしておったまげていた。そして近くに寄り疑いの目でまじまじと見つめ、なんならベタベタと触って幻覚でないか確かめている。お互いの実在を疑う空間が完成していた。リリはこそばゆかった。
「え、知り合いだったんですか?」
「いや……コイツ元幹部だぞ」
「えぇ!?!!?」
そう、リリはサルバシオンの幹部だったのだ。何なら3番手である。ほとんど初期からいる彼女は長年組織に貢献をしてきたが、サキが入る数ヶ月前に行方知れずとなっていた。何も言わずに去るような彼女でもなかろうと、探せど探せど見つからず……しかし今、こうしてひょっこり現れてきたのである。驚くのも無理はないだろう。
「うう……建物ごと拠点が無くなっとったから、皆死んだのかと……」
「まあ、見ての通り大体生きてるよ。組織は無くなったけど……ボスも生きてるし。というかお前が生きてることの方が驚きなんだが?」
「あー……実は、魔法少女にばったり出くわしてな。戦ったんやけど崖に追い込まれて、そのまま斬られて落ちて……でも下に触手生物がいてな。助かった代わりに……苗床にされたんや……」
「またそういう話か……」
そういう話であった。生きているならそれに越したことはないだろうが……最近やけに下世話な話になる。何故なのだろうか。勘弁してほしいものだと、ミコトはサキをジト目で見つめながら考える。彼女そのは理由が分からなかったようで、なぜか照れ臭そうにしていた。コイツ……
しかし、納得もあった。最後にいたとされる地点である海岸を中心に捜索したミコトたちだったが、通りでいくら探しても見つからなかったわけだ。そういった生物は隠れるのが上手かったりする。同人誌のお約束である。
「……でも、生きていてよかった」
「へへ…………ありがとなお嬢さん」
やけに可憐な少女から生存を喜ばれたリリははにかんで答える。……だ、誰だろう。会ったことあるだろうか。彼女の脳内が?で埋まらんとした時、横からミコトが口を出した。
「ユキネだよ」
「ほえあ!?!?」
今度はリリがおったまげる番であった。小首をかしげるその様は、彼女の知る白藤ユキネとは大きく離れていたからだ。寝耳に水のリリは、もじもじと前髪を直し始めた。大分遅い。
ともかく。いつも質素な服を着ている彼が、魔法少女衣装すら大した装飾の無い彼がフリッフリの衣装を着ている様は、大きな衝撃であった。しかもそれが似合っているのだから、なおさら。
「ゆ、ユキネやったんか。気づかんかったわ……やー久し……いや、そもそもなんでそんな格好を……?」
「助けてくれ……」
「な、なんや……えぐい罰ゲームとかか……?」
しわしわの表情で助けを求めるユキネに、微笑のまま動かないマリ。それがなんとも恐ろしかった。ミコトはミコトで、でもユキネが望んだことだし、と考えている。当然だが、望んではいない。少なくとも女装は。
「あ、ユキネさん着ますか?コレ」
「なんだそれは。……なんだそれは!?!?ほとんど紐じゃないか!」
「……。まあ、生きてるなら良かったよ。これからどうするんだ?」
「就職したからな、そこで働くわ。心配せんでも、新しいとこでもちゃんとやるで!」
やんややんやと騒がしい後方をよそに、ミコトは尋ねる。今やサルバシオンは無くなってしまったが、リリも新たな道を歩んでいるようだ。ほっと一息つこうと……するが、少し不安でもあった。
田舎(?)からきた彼女は悪意に疎い面がある。アカネがリリを採用した半分の理由は礼儀正しく時と場合をわきまえていたからで(サキにはないスキルだ)、もう半分の理由はこのままだとどこかで野垂れ死んでいるのが容易に想像できたからなのだ。
「……変な所じゃないよな?」
「大丈夫や。一般人は襲わんって言っとったし」
一応尋ねれば、帰って来たのは怪しい文言であった。悪の組織であろうことはこの際考えないとしても、それでもそんな一般人に優しい悪の組織なんぞいるはずもない。……まあ、いないことはないにせよ、相当珍しい部類だろう。嫌な予感を感じ取ったミコトが、続いて尋ねようとして。
「…………ん~~…………すまん、組織名教えて」
「え?えーと、確か──」
そしてその瞬間、轟音がその場を襲った。人が吹っ飛んできたのだ。