長生きしまくったさ、エルフとして   作:おおは

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リュグナーとエルフ①

勇者ヒンメルの

死から28年後

北側諸国

グラナト伯爵領街中のある店

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰り、どうだった?フリーレンの様子は」

 

その辺の店の席でのんびり座っていると、衛兵に連れていかれたフリーレンに会いに行った二人が戻って来た。

あまり表情が良くないから、まぁフリーレンのことだ、きっとゆっくり解放されるまで過ごす旨でも伝えたのだろう。俺も長らくエルフをやってきたから分かる。勘ってやつさ。

 

「相変わらずでした。あのまま2,3年も過ごすつもりでいたみたいです」

「ああ。それと、魔族の話をしてきたよ」

「調べていた件か」

「はい。七崩賢の一人、断頭台のアウラについて、それと魔族について」

「どうせフリーレンのことだ。和睦を徹底的に悪手だと否定していただろう」

 

俺は近くの席を二つ魔法で引き寄せ、ポンポンと叩き座るように促す。

フリーレンの特徴はやはり何といっても、魔族に対する姿勢だろう。

原作知識が薄くなった俺でもよく覚えている。

 

「はい……魔族が言葉を話す理由について教えてくださいました」

 

フェルンが座りながら言うと、シュタルクも頷く。

 

「……“助けて”って人をおびき寄せる魔物が魔族の祖先だと言っていた」

「そうか」

「ベトス様はどう思いますか」

「フリーレンの言う通りさ。流石はフランメの弟子」

「……じゃあ和睦は無理だってことか?」

「そうだ。似たような手口でまんまと騙され滅んだ街を何回も見た」

 

やけにしんみりとした空気感が漂い始める。

居心地が悪くなった俺は席から立ち上がった。

 

「じゃ俺は先に宿に戻っている。……あまり無茶をし過ぎないようにな」

 

この先の展開は覚えている限りだと、フェルンとシュタルクがリュグナー達を倒すという流れだったはずだ。あまり無理はしないで欲しいが、まぁ成長に重要な出来事だ。

それにフェルンはゾルトラーク猛者で、シュタルクはアイゼン譲りの鉄塊。

心配する必要はないだろう。

今回の相手は七崩賢断頭台のアウラ。

魔王軍の元幹部にして、魔族の中でも魔法に極めて優れている精鋭。

ま、アウラは結局一瞬で討伐され、ネットの民の生贄になった。

○○しろ、とか。○○はもういないじゃない、とか。

服従させる魔法がフリーレンと相性が悪いだけで、実際恐ろしい魔法なのには違いないが。

俺はゆっくり宿で時間を潰しておこうかな。

 

「ま、俺がいることでバタフライエフェクト的なものが起きた場合はちゃんと働こうか……」

 

街中を吹く風に放置しているだけの髪を揺らしながら俺は宿へ向かった

 

 


 

 

「――――グラナト伯爵遅いですね」

 

傍に控えるドラートが飄々と言う。

 

「人類の外交戦術なのだろう」

 

リュグナーは優雅に客用の席に座りながら答える。

 

「それより気になるのはあの魔法使い達だ。一人はどこかで……」

 

顎に指を当て、考える素振りを見せるリュグナー。

脳裡を過るのは、あの恐ろしいほど冷たい殺意の視線。

 

「言葉の通じない猛獣か……」

 

リュグナーは薄ら笑いを浮かべた。

 

「思わず笑ってしまったよ。この街で彼女だけが我ら魔族の本質を理解している。人を食らう捕食者が人の言葉を話す理由などただ一つ」

 

次に浮かべたのは、不敵な笑み。

張り付けたように人間味の無い、酷く悪寒の走る笑みのまま言った。

 

「欺くための言葉だ」

 

 

――――――コンコン。

 

「リュグナー殿。グラナト伯爵がお呼びです」

「ええ分かりました。今向かいます」

 

怒髪冠を衝くごとき伸びた角をシャンデリアに照らしながら、リュグナーは立ち上がった。

 

「さて、私達はアウラ様から任された仕事を終わらせるとしよう」

 

コツコツと足音を立てながら、三人は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「これ美味しいですね」

 

フリーレン様の古い友人であるベトス様が去ってから、私達はその店の食事を頂いています。

 

「師匠が言っていたぜ。飯がうまい町は平和でいい街なんだとよ。ここもきっとそうなんだろうさ」

 

向かいの席に座るシュタルク様がジャガイモをフォークで口に運びながら言います。

確かに街は今までより一層活気に溢れている感じがします。

本当に魔族と争い続けているのか疑問に思うくらいには。

しかし、実際に魔族はその魔の手を伸ばしてきています。

 

 

私は立ち上がりました。

 

「シュタルク様」

「あげねーぞ」

 

子供のようなことを言いながらシュタルク様は料理にがっついています。

もしかしたら本当に子供なのかもしれません。

 

「グラナト伯爵にフリーレン様を釈放してもらえるよう直訴しましょう」

 

シュタルク様の視線が料理から私へ移りました。

 

「この街に危害が及ぶのは時間の問題だと思います。フリーレン様を牢から出して魔族を倒してもらいましょう」

 

私の発言に、シュタルク様は漸くフォークを置いて真剣な表情になりました。

 

「……確かにそうするしかねぇけど、その……ベトスでもいいんじゃないか。あいつはフリーレンより生きているんだ。強いと思うぜ」

「ベトス様は恐らく、私達に力を貸すつもりはないと思います」

 

ベトス様は恐らくフリーレン様と同程度に強いでしょう。

外見の魔力は少ないですが、フリーレン様という前例がいます。

ですが先ほどの様子から、積極的に力を貸してくれる雰囲気はありませんでした。

 

「……確かにそうかもな。でも俺達が敵うような相手じゃないぞ。特にあのリュグナーって奴、とんでもなく強いぜ。フリーレンとベトスしか見ていなかった」

 

そう言うシュタルク様の表情が更に真剣なものとなりました。

 

「周りには俺らや衛兵隊がいたってのに……フリーレンとベトスしか見ていなかったんだ」

 

私が聞き続ける中、シュタルク様はジョッキを手に取りました。

ガタガタと震えていました。

 

「まだ手の震えが止まらねぇよ」

 

一段激しく震えた時に、中の水がシュタルク様にかかりました。

 

「ほら、こぼしてお漏らしみたいになっちまった……それほどの相手ってことだ」

 

何故態々こぼした場所の説明をするのでしょうか?

私は懐からハンカチを取り出しました。

 

「早く拭いてください。行きますよ」

「伯爵の傍にはリュグナー達がいるんだぜ。最悪戦闘になるぞ」

「勇者様御一行ならそれでも行きます」

 

戦闘になることが行かない理由にはなりません。

ハイター様を見ていたのでよく分かります。

シュタルク様もその言葉を聞いて、覚悟を決めたように拳を握りました。

 

「確かにこんなところでビビってたら師匠に合わせる顔がねぇな。行くか」

 

そうと決まれば早速行動に移さなければなりません。

ハンカチをシュタルク様に譲ってから、私は向かおうとしました。

しかし、何故かシュタルク様が席から一向に立とうとしません。

 

「……どうしたんですか?」

「腰が抜けちゃったみたい……」

「……」

 

こういう所も、シュタルク様らしい子供さと言えばそうなのでしょうか……?

 

 

 

 

 

少し前。

 

 

 

「ドラート殿、このような所に来られては困ります。客室に……」

 

ズバン。

場所は地下牢の入口。一人の青年を止めようとした衛兵の首が転がっていた。

 

 

 

少し経ち、地下牢の一つ。

そこには……

 

「待て!!話を……!」

 

バスン

馬乗りでドラートの首を魔法で断ち切ったフリーレンの姿があった。

 

「まずは一匹」

 

冷徹な目をしながら、フリーレンは呟いた。

 

 

 

「――ドラートの魔力が探知できない」

 

席にちょこんと座った従者の少女、リーニエが呟く。

 

「死んだな。全く、若者は血気盛んな癖に弱くて困る。やはりあの魔法使いに殺されたか」

 

本棚の前で本を眺めるリュグナーが一言だけ返した。そこに感情はない。

 

「馬鹿だね。油断し過ぎだ」

「油断?」

 

席に座りながら、リュグナーが本を開く。

 

「私達はアウラ様の懐刀、首切り役人だ。油断した程度で死ぬと思うか?」

「ならあの魔法使いは一体……」

 

リーニエがそう言いかけたところで、扉がガチャリと開いた。

 

「待たせてすまなかったな」

 

入ってきたのはグラナト伯爵。

 

眼光鋭く、何人もの衛兵を連れてきている。

 

「捕らえた魔法使いが脱獄したんだ。衛兵の首を切ってな」

「それはお困りでしょう。捜索を手伝います。リーニエは魔力探知が得意で――――」

「いや結構。……ところで、お連れの方が一人足りないようだが?」

「手洗いです。すぐに戻ります」

「使用人に場所も聞かずに?」

 

グラナト伯爵の声が段々と剣呑な雰囲気を纏い始める。

 

「あの魔法使いともう一人のエルフが手練れであることくらい儂にも分かる。それが衛兵にあっさりと捕らわれたんだ。彼女達は衛兵殺しの罪の重さを理解している」

 

衛兵たちが静かに鞘に手を掛ける。

 

「リュグナー殿。もう一度だけ聞く。お連れの方はどこに?」

 

鋭い眼光を向けるグラナト伯爵。

衛兵達に囲まれ剣を向けられたリュグナーは溜息を吐いてから突然、自身の手の甲を噛んだ。

 

「まったく……」

 

リュグナーの手からドッと赤黒い血が溢れ出す。

誰も何をしようとしているのか理解が追いつかない。

だが次の瞬間、乾いた切断音を残して衛兵達の首は胴体から切り離された。

グラナト伯爵が驚きながらも、自身の腰の剣に手を掛け構える。

 

 

 

 

「ドラートの能なしめ。……全部、台無しだ」

 

血を操る魔法。バルテーリエ。

リュグナーの周囲には、手から溢れた血液が意志を持つ変幻自在な剣のように集まっていた。

 

 

To be continued.




人気投票でアウラは果たして10位入れるのか……?!
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