長生きしまくったさ、エルフとして   作:おおは

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※私めの拙作は一部絶対ボロがある。どうか石は投げないでほしい(変化球も含む)


どうして……ここに……ッ!

〇第五話

勇者ヒンメルの

死から28年後

北側諸国

グラナト伯爵領内

ある建物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……暫くは安静ですな」

 

僧侶がそう言い残し、部屋を去った。

部屋には、シュタルク、フェルン。そしてベッドに座るグラナト伯爵。

あちこちに包帯を巻いていた。

 

「お前たちのおかげで助かった。感謝する。連れの魔法使いの件も許そう。彼女の判断は正しかった」

「これでフリーレンが街に戻って来れるな。リュグナー達を倒して貰おうぜ」

 

シュタルクが喜ばしい様子で言う。

 

「いいや。フリーレンは今、戻って来れない」

 

扉前に立つベトスが確信めいた表情で言う。

 

「何でだよ。もう罪には問われないんだぜ?」

「そうじゃなくて。フリーレンは今アウラの相手をしにいっているからだ」

「奴の相手をか……それよりも、あの魔法使い、フリーレンというのか」

「はい」

「まさか、勇者一行にいたエルフの魔法使いか……だとしたら無礼なことをしてしまったな。儂の爺さんの代にこの街が魔族の軍勢に襲われた時、撃退してもらったんだ」

 

グラナト伯爵の表情が険しくなる。

 

「……その時の相手も七崩賢 断頭台のアウラだ」

 

その視線は重症を負ったとは思えないほど鋭かった。

 

「服従させる魔法、アゼリューゼか」

 

ベトスの発言に、グラナト伯爵が頷く。

 

「奴が使うのは魔力の大きさを魂として天秤にかけることで、少なかった方を意のままに操る魔法。絶大な魔力を持つアウラにとっては必勝の魔法だ」

「対抗することはできないのですか?」

「……アウラを上回る魔力の魂が天秤に乗ればアウラに打ち勝てるだろうさ。だがそんなことはアウラが七崩賢の座に君臨してから五百年一度足りともなかったと言われている」

 

グラナト伯爵の発言に、部屋の空気はシンと静まり返った。

そんな中、ふとベトスが切り出した。

 

「……じゃ、俺はそろそろ行く」

「ちょっと待ってくれ。リュグナー達はどうするんだよ?」

「さっきも言ったように、君達が殺せ。問題ない、勝ち試合とは言わないがきっと勝てる」

 

シュタルクの沈痛な声に返しながら扉をガチャリと開くベトス。

杖の音だけが床に重く響く。

 

「……フリーレン様のところに行かれるのですか?」

「そうしようと思っている」

 

それを聞いたフェルンは覚悟を決めた様子で返事をした。

 

「……分かりました。お願いします。リュグナー達は私達で殺します」

「了解した」

 

ベトスは一瞬微笑むと、部屋を去っていった。

代わりに先ほどの僧侶が入って来る。

僧侶は水の入ったカップの乗った丸形トレイを手に持っていた。

 

「重傷だったのによくそこまで喋れますね。流石は伯爵といったところですか」

「これでも昔は魔族と戦っていたからな」

 

苦笑するグラナト伯爵。

 

「神父様、ここは安全なんだよな?」

 

壁に立て掛けていた斧を持ち上げながらシュタルクが聞くと、僧侶は頷いた。

 

「ええ。防護結界ほどではありませんが、この教会にも結界が施されています」

「よし。じゃあ伯爵はここで待ってろ」

 

シュタルクが真剣な表情で言うと、グラナト伯爵はシュタルクに鋭い視線を向けた。

 

「本気でやるのか、クソガキ」

「これは誰かがいけないことだろ?」

 

持った斧を見つめながら覚悟を含んだ声で言うシュタルク。

フェルンはどこか嬉しそうに口端を僅かに上げた。

 

「……そうですね。では一緒に頑張りましょう」

「できればフリーレンにやってほしかったなぁ」

「……」

 

 

フェルンとシュタルクを見送ったグラナト伯爵。

 

「勇敢な冒険者でしたね」

 

隣の僧侶が笑みを浮かべる。

グラナト伯爵は軽い溜息を吐いた。

 

「ああ全くだ。クソガキめ……」

 

呆れたような表情だった。

 

 


 

 

 

シュタルク、フェルンと別れてから俺は飛行魔法で目的地へと向かっている。

飛行魔法は実に便利だ。この街の城壁などないようなものにできる。

魔族のをそのまま使っているために融通が利かないのが玉に瑕といったところか。

もう少しで目的地―――アウラとフリーレンが戦う場所だ。

葬送のフリーレンを見ていた者として見逃す手はあるだろうか、いや、ない。

内心若干のワクワク気分で向かう。

その時だった。

 

「―――っ……何だ?」

 

悪寒がし、空中で身をひねる。

すると元居た場所を一本の剣が恐ろしい速度で通った。

三角型の大剣。剣の側面には文字が書かれている。

俺はその特徴に見覚えがある。

 

 

 

 

……最悪だ。

上空から一人の魔族が降りてくる。

 

「会ったらまずは自己紹介よね。初めまして。私は大魔族のソリテール。お話ししましょう?」

 

空色の髪をした少女で、女性ものの服を纏い、微笑んでいるものの目は笑っていない。

そして何よりも、髪を分け露わになっている一対の小さな角。

あまりにも予想外の存在に、俺は内心吃驚した。

 

「このタイミングではないだろ……」

 

無名の大魔族ソリテール。

アウラよりもはるかに強い存在の出現だった。

……とんだ不運がバタフライエフェクトでも呼んだのだろうか。

最高にローってやつだ。

 

「君エルフ?珍しいのね」

 

ソリテールの不気味な微笑みと視線が俺を射抜く。

……怖い視線だ。まるで自分が子供として誘拐犯に相対している気分だ。

 

「昔ならたくさんいたろう」

「?それはどれだけ昔のことなの?」

 

わざとらしい首を傾げるソリテールに俺は鼻を鳴らす。

 

「さぁな。少なくとも4桁年くらい前だろう」

「私そんな昔のことまでは知らないわ。ねぇ是非教えてくれない?」

「勘弁してくれ。ただの長話な上に覚えていない。魔族に話す必要もない」

「酷いわ。私はただお話がしたいだけなのに。それに、私は自己紹介したのに名前も教えてくれないのね」

 

声は悲しそうだ。

代わりにその目は被害者ではなく加害者―――猛獣の目をしているが、な。

蛇のように俺に絡みついてくる。絞め殺されそうだ。

 

「魔族にとってその行為は何の意味がある。人間を知ろうとする挑戦は面白いが本性には勝てないだろう。所詮は可哀そうな魔族だ。」

「それは悲しい物言いね。……でもそう、私はエルフにも興味があるの」

 

何十もの大剣が俺へ向けられる。魔族は本当にどいつもこいつも戦いを挨拶かお遊びと思っている。

 

「人間と違って髪は何本あるのかしら?」

「知るか。お前みたいな魔族の相手なんて御免だ――――霧を操る魔法(ネベラドーラ)

 

俺の周囲の輪郭が白くぼやけていく。

やがてそれは辺りを満たした。

……本来ならこの魔法はこの先で登場する魔族のものだ。

転生してから俺はこの魔法に価値を見出した。物理的に視界を遮れるのだ。

 

「面白い魔法ね」

 

感心したように呟くソリテールだが、まるで霧がないかのように俺の居場所に剣を飛ばしてくる。

 

「じゃあなんで俺のところに飛ばせれるんだ」

「何となく。勘っていうものかしら」

 

俺は紙一重で躱しながら急降下し木を盾にしたりなど、立体的に動く。

一本が頬を掠り一筋の血が流れるが、気にしない。

 

「……不確実性が少し上がるだけでも上々だろう。ヒットアンドアウェイ派なのでね」

 

目では見えない相手に声を上げつつ、俺もソリテールに向かって魔法を構築する。

勿論、人を殺す魔法(ゾルトラーク)ではない。物理に対しては幾らか懸念点があるからだ。

 

「“剣の向きを反対にする魔法”」

 

向かってきた剣が全て逆になり俺から離れていく。

 

「初めて見た魔法ね。興味深いわ」

 

返ってくるのはこのような不気味な声。たまったものではない。

次の刹那また霧を突き抜け、反対を向いたはずの剣が大量に襲ってくる。

 

「“高圧蒸気を射出する魔法”」

 

杖から出た長い長いビームのような超高圧蒸気を剣のように振り回す。

鞭のようにしなったビームは硬い大剣をいとも簡単に切った。

それをソリテールがいる場所に向かって振り下ろす。

 

「!凄い。また知らない魔法。防御魔法がこんな簡単に切れるのね。本当に素敵ね」

 

手応えがないな……

下からたくさんの木が倒れる音だけが聞こえる。

 

張り詰めた空気。久しぶりの強者に感覚が慣れないからか喉が渇く。

ドンッ。

次の刹那、霧を突き破ってきたのは剣ではなく人を殺す魔法(ゾルトラーク)

冷静に防御魔法を展開し防ぎ、間隙を縫って俺も一般攻撃魔法(ゾルトラーク)を放つ。

杖から出たのは白の閃光ではなく、黒。

 

何故か俺の一般攻撃魔法(ゾルトラーク)は黒だった。特殊な生い立ちの俺だ。今更何を? と思う。

互いを行き交う大量のゾルトラークの音と、それを防ぐ音だけが視界のない世界で木霊し続ける。結構な速度で動いているはずだが、まるで見えているのかと思ってしまうほど正確に俺を狙ってくる。末恐ろしい。

 

「エルフって人間と何が違うのかしら。考えてみたらどんどんと興味が湧いてきたわ」

 

戦闘中だと言うのに楽しそうだこと。あーお気楽でいいですこと。

一体どんな興味なんでしょうね。想像したくもない。

だがソリテールはまだ本気じゃない。

やつにはとっておきの攻撃手段があるのだ。

 

「クソ、アウラとフリーレンの戦いを見れないじゃないか」

 

名シーンはすぐそこにあるというのに。

俺は少々やるせない気持ちになった。

 

「そこをどいてくれ。“絶対零度の世界を再現する魔法(アブソリューセンス)”――――――」

 

白霧の中俺は銃杖を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り――――――

グラナト伯爵領。近郊。

 

「久しぶりだね、アウラ」

 

飛行魔法で浮遊するフリーレンが月を背景に冷淡な声で言った。

下に広がっているのは本来寂しいはずの開けた平原。

そこには今、首無しの騎士が大量に立っていた。

 

「……そうねぇ。80年振りかしらフリーレン」

 

中央に堂々と立つのは角を生やした紫色の髪の少女。

右手に無機質な天秤を摘まみ持ち、せせら笑う。

 

その魔族の名は、断頭台のアウラ。

元魔王軍幹部、七崩賢が一人である。

 

 

To be continued.




確信めいたってそりゃそう。

興味……()

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