長生きしまくったさ、エルフとして   作:おおは

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とりあえず一件落着?

〇第六話

勇者ヒンメルの

死から28年後

北側諸国

グラナト伯爵領

城壁

 

 

「バルテーリエ!」

「ゾルトラーク」

 

リュグナーの魔法と、フェルンの大量に展開された一般攻撃魔法(ゾルトラーク)がデュオで花火のように夜空の下合奏していた。

 

 

「……向こうも始まったか」

 

近くの森の中、呟いたのはリーニエ。

 

「けど残念だな。こっちはもう終わりだ」

 

振り返った先には、倒れ伏したシュタルク。

額から血を流し、全身傷と泥だらけだった。

 

「観戦でもするかな。リュグナー様、邪魔すると怒るんだよね」

 

呑気にもそう言うリーニエ。

だが立ち上がる人影があった。

 

「……まだ終わってねぇぜ……」

「しぶといね。少しは楽しめそうだ」

 

リーニエが再び熟練の戦士を思わせる構えを取る。

ドンッという音と共に斧の鎬がぶつかる金属音が響いた。

 

 

魔法使いである紫髪の小娘と打ち合いをするリュグナーは焦っていた。

 

(速い。純粋に手数でこの私が押されている)

 

このイカレた弟子を作った存在に思わず愚痴を付く。

だが考えている間にも小娘の一般攻撃魔法(ゾルトラーク)がバルテーリエの血の防御を突破し、肩に傷をつける。

ジリ貧だった。

このままでは負ける可能性が高いと踏んだリュグナーは叫んだ。

 

「……リーニエ!!何をやっている!!早くそいつを片付けろ!!」

 

 

 

「なんだよ、我儘だな。こいつ防戦一方でしつこいんだよ」

 

リュグナーの怒号を聞いていたリーニエは溜息を吐いた。

 

「……その斧捌き……どういうことだ……そいつは師匠の技だ」

 

シュタルクが斧を構えながらも戸惑ったような表情をとる。

 

「私は魔力を読み取るのが得意でさ、動きを模倣できるんだ」

 

リーニエの魔法、それは模倣する魔法、エアフォーゼン。

魔力の流れから、見た戦士の動きを記憶・模倣することができるという魔法。

事実、リーニエは斧以外にも剣。槍……様々な戦士の動きができる。

 

「そして私は戦士アイゼンの動きを模倣している。こんな偶然あるんだね。運命は面白い」

 

シュタルクの懐に入りながら言ったリーニエが斧を振り上げる。

斧で受けるも吹き飛ぶシュタルク。

勝てないと思った。

そのまま地面へと転がる。

 

「ようやく倒れたか。急がないと。またリュグナー様に怒られる」

 

疲れたように背を向けるリーニエ。

 

(……倒れた?俺は倒れているのか)

 

ふとシュタルクの脳裡を過ったのは昔の師匠との稽古の時の事。

あのとき、師匠は何と言ったか。

――――戦士ってのは最後まで立っていた奴が勝つんだ

 

「……大人しく寝てればよかったのに」

 

リーニエが鬱陶しいと言わんばかりに振り返り冷たい視線を送る。

 

「……俺はまだ立っている」

 

全身に傷を作りボロボロになりながらも言うシュタルク。

 

「……それに思い出したんだ。師匠の技はもっと重かった……。やっぱりお前のはただの真似事だ」

「ならその真似事で引導を渡してあげよう」

 

模倣する魔法(エアフォーゼン)

 

リーニエが斧を作り出し体を低く構える。

二人が地を蹴り斧を叩き合う

――――――その時だった。

 

「―――ッ何?」

 

離れたところから膨大な魔力が暴風のごとく吹き伝わってきた。

ビリビリと肌を突き刺すようなプレッシャーにリーニエが動きを止める。

だがシュタルクは目の前の敵、リーニエにだけ集中していた。

 

「戦士は油断しねぇ!!閃天撃!!」

 

地を穿つほどの一撃。

それはリーニエを肩から半分に切り裂いた。

 

「……あ」

 

目を見開いたままリーニエが塵となって消えていった。

 

 

「リーニエ!!」

 

フェルンと乱戦を繰り広げていたリュグナーがリーニエの方をよそ見してしまう。

気づいたときには目の前にフェルンの姿。

 

「しまっ――――――」

魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)。」

 

ドッ。

 

リュグナーの腹部が光に包まれ吹き飛んだ。

 

 

壁にもたれ掛かるリュグナー。

腹部に空いた穴から止めどなく血が流れ、最早立つ気配もなかった。

 

「……ここまでか……」

「これで貴方達の計画は失敗です」

 

リュグナーの前に立つ紫髪の魔法使いが杖を向けながら言う。

 

「……そうだな……だが、フリーレンは無事では済むまい。奴は今頃アウラ様と戦っているはずだ……魔力はアウラ様に遠く及ばず―――――いや待て」

 

リュグナーの目が見開かれていく。

 

「……まさかそんなことが……フリーレンも同じなんだな……卑怯者め」

 

まるで親の仇でも見るような目でフェルンを睨む。

 

「お前たちは魔法使いの風上にも置けない……」

「それはフリーレン様が一番よく分かっていることです」

 

フェルンはそう言うと同時に魔族を殺す魔法を放った。

敵が塵となり消えていく様子を眺めながらフェルンは一息ついた。

 

「何とか倒すことができましたね……しかし先ほどから伝わって来るこの膨大な魔力は何でしょうか……」

 

フェルンが発生源らしき方向を見る。

そこに広がっていたのは白い霧。

魔族でしょうか……

そう思った時、霧の中から恐ろしいほど巨大な氷の塊が槍のように突き出した。

その魔法が先ほどの膨大な魔力とは異なる、見慣れた魔力によるものだと気づいたフェルン。

 

「まさか、ベトス様が魔族と戦っているのでしょうか……」

 

もしそうならば、手助けに行った方がいい。とフェルンは思った。

例え力不足でも。

 

 


 

 

場所は移り、フリーレンとアウラの二人が対峙していた。

アウラは配下である首無しの騎士達を向かわせるが、フリーレンが騎士に掛けられた服従の魔法を強力な魔法で解除するという繰り返しが行われていた。

お互いが千日手のようにみえたが、アウラにとっては作戦通りだった。

 

(ここまで消耗させる必要はなかったかもしれないわ)

 

フリーレンの魔力を出来るだけ削ることで、アウラが確実に服従させれるようにしようとしているのである。

 

「この私の前でそんなに多くの魔力を消費して大丈夫なのかしら?」

 

アウラが蔑むような笑みを浮かべると、フリーレンはただ冷たい視線を向けた。

 

「哀れだ。」

「そう……」

 

返事代わりに、アウラは手に持つ天秤を目の前に掲げる。

 

服従させる魔法(アゼリューゼ)

 

アウラから濁った魂が。

フリーレンから白い魂が。

天秤の上へと載せられていく。

 

「嬉しそうだね、アウラ。勝利を確信しているの?」

「今に分かるわ」

 

アウラの想像通り、天秤は濁った魂へと傾いた。

ニヤリ、と笑みを深める。

 

「私の勝ちよ。後はこの私直々にあなたの首を落としてあげる」

 

隣に首無し騎士を跪かせ、剣を差し出させる。

重いのか剣を引きずりながらアウラはゆっくりとフリーレンの方へ向かっていく。

だが途中で近くから膨大な魔力が吹き荒れた。

 

「?一体何かしら」

 

アウラが視線を発生源へと向ける。

そこはドーム状の魔力によるものらしき霧が覆っていた。

だがその霧の中から、雑音混じりだがアウラをも凌駕するほどの魔力がひしひしと伝わって来る。

アウラの脳内をいつかの勇者が過った。

もういないはずなのに、体が震えそうになる。

 

「先にフリーレンを服従させてから考えればいいわ」

 

フリーレンを取り込めば、少しはマシにはなるはず。

そう考えたアウラは首を落とすために速度を上げる。

だが、天秤がキィと音を鳴らして今度はフリーレンの方へと傾き始めた。

 

「私の魂を天秤に乗せたな、アウラ。やっとお前を倒せる」

「……どういうこと?」

「私は魔力を制限していた。生きてきた時間のほとんどを費やして」

「……馬鹿じゃないの?なんでそんな訳もわからないことを……」

 

アウラの表情が一変、更なる焦りの表情になっていく。

 

「そうだね。馬鹿みたいだ。でも魔族に勝てる」

「……ふざけるな。私は五百年以上生きた大魔族だ」

「アウラ。お前の前にいるのは」

 

ズドン。まるで天地を揺るがすような勢いの魔力がフリーレンから立ち上る。

それは、先ほどの霧から観測した魔力と比肩するほど。

 

「千年以上生きた魔法使いだ」

 

ズン、天秤が白い魂の方へと落ちた。

 

「アウラ、自害しろ」

 

アウラが自ら剣を首に当てる。

 

「……ありえない…この私が……」

 

そう言いながら悔し涙で表情を歪ませるアウラ。

そして、自身の首を断ち切った。

 

 

「それにしても、ベトスも派手にやってるね」

 

フリーレンは一息付いてから、霧のドームへと視線を向けた。

丁度氷の槍が飛び出していた。

 

 


 

 

絶対零度の世界を再現する魔法(アブソリューセンス)

 

俺の周りの気温が一瞬にしてマイナスへと転化する。

パキパキと地面が、木が、氷像へと変化していく。

 

「そこをどけ」

 

空気中に氷を生成し、一本の巨大な槍のようにソリテールに向かって放つ。

 

「とても興味深い魔法。私の友人の魔法みたいに周囲に影響を及ぼすのね」

 

ソリテールは防御魔法で防げないと判断したのかグンと圧倒的速度で避けた。

代わりと言わんばかりに大量の大剣とゾルトラークが飛んでくる。

俺は防御魔法と“剣の向きを反対にする魔法”を併用し対処する。

霧の中であることを本当に忘れてしまいそうになる。

相手は魔力探知に物理的な視界がほとんどないはずなのだ。

 

「こんなに近いの初めてね」

 

気づけばソリテールは俺の目の前にいた。

膨大な魔力が俺を襲う。

 

「肉弾戦は嫌いなんだがな」

 

先端の剣先をソリテールに向ける。

緊張感がどんどんと、最高潮に達する――――――その時だった。

 

 

「っ……この魔力はまさか」

 

俺が遠くから膨大な魔力が立ち上るのを確認した。

ああ、名シーンを逃してしまった……。

思わず視線を外してしまったが、ソリテールは特に攻撃をしてこなかった。

 

「やっぱりフリーレンも魔力を隠していたのね」

「……そのために態々来たのか」

「私はただ観戦しにきただけ。これ以上戦う気はないわ」

 

ソリテールは不気味な笑みを浮かべながら、飛行魔法で見えない空へと上がっていく。

 

「人間は別れの時に挨拶をするのよね?また会いましょう」

「二度とごめんだ」

 

吐き捨てても、ソリテールは微笑んだまま去っていった。

魔族の中でもとりわけわけがわからない。

ぶたれるかと思ったわ。前世では親父にもぶたれたことがなかったはずだ。

俺は深い溜息を吐きながら、霧を操る魔法を解除した。

 

「ベトス様!」

 

同時に、大きな声が聞こえる。

振り返ると、フェルンが飛行魔法でこちらへと向かってきていた。

 

「魔族は逃げたようですが大丈夫でしたか?」

「ああ、ちょっとした変人の相手をしていただけだ」

「?膨大な魔力でしたが」

「やつも一応は大魔族だからな」

「そうですか……無事なら良かったです。ではさっさとフリーレン様のところに行きましょう」

 

いつの間にかスンとした表情をしている。

そのまま俺を置いて飛び去って行った。

何故か俺への当たりが地味に強いのは気のせいだろうか……

俺も頬の血を拭いながら飛行魔法で飛び上がった。

 

 

To be continued

 

 




次回でアウラ編終わりです。
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