【WEB版】極めて健全な美少女レベルアップ   作:佐伯凪

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第23話 穂乃果さんは奥手でむっつり

「わらひがー、らんじょんらいばーになって、お母さんを支えてあげられればぁ~。れも、その必要はないって……れも……」

 

「穂乃果さん、大丈夫ですか? ちょっと飲みすぎちゃいましたか?」

 

「んー。らいじょぶ。じゃらい」

 

 大分呂律が怪しくなってきた穂乃果さんに、店員の女性がスッと水の入ったグラスを差し出した。穂乃果さんは水をコクコクと飲むと、カウンターに突っ伏してしまった。寝てしまったのだろう。

 あの後、穂乃果さんの友人がやっているというバーにやってきて、しばらく飲んでいる内に大分酔いが回ってしまったらしい。

 

「穂乃果、結構お酒強いんだけどね。ごめんね無良君」

 

「あ、いえ。大丈夫です」

 

 バーのカウンター席の向こう側で、穂乃果さんの友人の(けい)さんが苦笑いする。緑色のインナーカラーの入ったベリーショートの髪に、切れ長の目と高い鼻。大きな口は真っ赤な口紅が塗られている。人気のインディーズバンドの女性ボーカルと言った雰囲気だ。

 

「あの穂乃果が男連れっていうから何事かと思えば、まさかの未成年とは……大丈夫? 変なことされてない?」

 

「全然! いつも優しくしてくれますし、気を使って貰ってて。今日も穂乃果さんの力になれるかなって思ったんですけど、俺じゃ話を聞くことくらいしかできなくて。お会計も断られちゃいましたし……」

 

「この子、頑張り屋さんだからねぇ。勝手に一人で抱え込んじゃうのよ。一生懸命で、努力家で。そんで奥手でむっつり。可愛いんだから、作ろうと思えば頼れる彼氏なんてすぐ出来るでしょうに」

 

「むっつりって……」

 

「女なんて大抵男の事狙ってるんだから、無良君も気を付けなきゃだめだよ?」

 

「そんなこと……」

 

 ない、と言おうとして、最近の出来事が頭をよぎった。気を付けよう。

 

「うーん。もう十時半か……。無良君、申し訳ないんだけど、穂乃果を連れて帰れる? 流石に十一時以降に店に未成年がいるといろいろ不味いんだよね」

 

「はい。大丈夫です。俺の家結構近いんで。あ、お会計まだでしたよね?」

 

「良いよ良いよ。穂乃果にツケとくから」

 

「良いんですかね?」

 

「良いに決まってるじゃん。もし無良君が払った何て言ったら、穂乃果がショック受けるって」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「礼なら穂乃果が起きてから言ってあげなー」

 

 圭さんがひらひらと手を振りながら言う。サバサバしていてかっこいい人だ。

 

「えっ……と。おんぶで良いかな?」

 

 最近涼しくなって来ているので、幸いなことに俺も穂乃果さんも長袖だ。地肌に触れずともおんぶで連れて帰る事は可能だろう。

 

「よっこら……しょっと」

 

 穂乃果さんのポーチを首にかけて、椅子に座っている穂乃果さんをおんぶする。軽い。あんなに大きいのに。

 

「あっ」

 

 そうだ。おんぶすると言うことは、背中にあの大きな膨らみが密着すると言うことである。意識してしまうとむらむらするので、極力意識を逸らす。

 

「どした? 穂乃果のおっぱいでも気になる?」

 

「あっ、いやっ、その……」

 

 その通りですけど。デリカシーとかないんかこの人。

 

「約得だと思って堪能しちゃえ。ちょっと触るくらいじゃ起きないだろうし」

 

「し、しませんよそんなこと!」

 

 圭さんが変なことを言うもんだから意識が完全に背中に行ってしまった。

 

「今日はありがとうございました。また来ます」

 

「あんまり未成年が来るところじゃないよ。成人してからおいで〜」

 

 圭さんが言いながらタバコに火を付ける。ほんと、かっこいいなこの人。

 

 

 

 結局その後穂乃果さんは目を覚ますことは無く、仕方が無いのでアパートに連れて帰り俺のベッドに寝かせて、俺も寝た。思春期男子のベッドに無防備に寝転がるかわいい巨乳お姉さんに、指一本触れなかったという偉業を成し遂げたのだから、何らかの賞を受賞してもおかしくないだろう。ノーベル健全賞的な。

 翌朝目を覚ますと、ベッドの上で上半身を起こした穂乃果さんが、己の顔を両手で覆っていた。

 

「……んー。あ、おはようございます穂乃果さん。昨日は飲みすぎちゃったみたいですけど、大丈夫でしたか?」

 

「やってしまった。やってしまった。やってしまった……」

 

「穂乃果さん?」

 

 穂乃果さんは顔を覆ったままぶつぶつとつぶやいている。大丈夫だろうか。

 

「私は、私はなんてことを……幼気(いたいけ)な高校生に……まだ未成年の少年に……真面目なバイトの子に……」

 

「あの、穂乃果さん?」

 

「ひゃいっ!!」

 

 軽く肩を揺すると、まるで電流でも流れたかのように穂乃果さんの身体が跳ねた。

 

「あ、た、た、た、達哉君……。その、昨日は、その……」

 

 ギギギギと効果音が鳴りそうな動きで穂乃果さんがこちらを向く。その顔は真っ赤だ。

 

「はい、昨日はありがとうございました。俺、初めてでしたけど、すごく楽しかったです」

 

「は、初めて……? も、もしかして、やっぱり、私……」

 

 どうやら盛大な勘違いをしている様だ。折角なので少しからかっておくことにする。俺は自分の身体を両手で抱き、少しうつむいた。

 

「穂乃果さん……昨日は……激しかったです……。俺はもう無理って言ったのに、何度も、何度も……」

 

「わわわわわ、私にそんな積極性がっ!? 私も初めてだったのに!? ごめんなさい無良君! 本当にごめんなさい! 信じてもらえないかもしれないけど、本当にそんなつもりじゃなくて! あああぁぁぁぁ! なんで私はそんなことをおおぉぉ!」

 

 穂乃果さんは妙なことを口走った後に、頭を抱えて枕に顔をうずめた。それ俺の枕なんですけど。

 

「何で記憶がないのおおぉぉぉ!? もったいないいいいぃぃぃ!!」

 

 何を言ってやがるんですかね、この可愛いお姉さんは。

 枕に突っ伏したままもごもごふがふがと叫んだ後、ようやく静かになったかと思うと、急にがばっと顔を上げた。真顔で少し青ざめた穂乃果さんがこちらを見て言う。

 

「え、もしかして犯罪? 私犯罪者? 達哉君って何歳だっけ?」

 

「16歳です」

 

「犯罪だあああぁぁぁぁ!」

 

「あ、でももうすぐ17歳ですよ?」

 

「それでもやっぱりダメだああぁぁぁぁぁ!」

 

 再び顔をうずめて叫ぶ穂乃果さんの姿に、我慢できずに笑ってしまう。

 

「ぶふっ……ぐふ、あは、あはははははははは!」

 

「た、達哉君……?」

 

「嘘です、嘘。別に何もなかったですよ」

 

「……へ?」

 

 ぼさぼさの頭できょとんとする穂乃果さん。

 

「昨日は圭さんのバーで酔いつぶれちゃった穂乃果さんを連れて帰ったんですけど、穂乃果さん全然起きなくて。俺もすぐに寝ちゃいましたから」

 

「え、あ、嘘……?」

 

「はい。嘘です」

 

「…………よ、よかったあああぁぁぁぁぁ」

 

 今度は安堵で体の力が抜けたのか、穂乃果さんはうつぶせでベッドに寝転がる。

 

「も~~、からかわないでよぉ」

 

「あははは、穂乃果さんが慌ててるのが面白くてつい。ごめんなさい」

 

「全く。大体女性を部屋に簡単に上げるのだって本当はだめなんだからね? 私だったから良かったものの、他の人だったら襲われてたかもしれないんだよ?」

 

「流石に酔いつぶれて寝ちゃってる人には襲われませんよ」

 

「むぅ~」

 

 穂乃果さんは分かりやすく頬を膨らませて拗ねた。

 

「そんなことより、今日は仕事は大丈夫ですか? もう9時前ですけど」

 

「えっ!? もうそんな時間!? ど、どうしよう! 10時から式の打ち合わせがあるのに!」

 

「ここからだと歩いて三十分くらいでアンジュールテラスに着きますよ。必要ならお風呂も好きに使ってください。そこの扉です。流石に着替えは無いですけど、アメニティで貰った歯ブラシならありますよ」

 

「本当!? ありがとう達哉君!」

 

 二日酔いの気配など全く感じさせず、穂乃果さんは急いで立ち上がると浴室へと向かった。しばらくごそごそと衣擦れの音がした後、穂乃果さんが扉からひょっこり顔を出してこちらを見て来た。どやら裸らしく、鎖骨とうなじが艶めかしい

 

「えっと、その、覗かないでね?」

 

「覗きませんよ」

 

「……それはそれでちょっと悔しいんだけど」

 

「俺にどうしろと……。早くしないと遅刻しちゃいますよ?」

 

「そうだった! じゃあ、また今度ね?」

 

 また今度ってどういう意味ですかね。

 その後穂乃果さんは急いでシャワーを浴びて、化粧直をし直して仕事へと向かった。遅刻はせずに済みそうだ。

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