【WEB版】極めて健全な美少女レベルアップ   作:佐伯凪

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第39話 あいにゃんは撫でられたい

 ある日。いつものように愛七の部屋でメタフォーカスで遊んでいると、設定の項目があることに気が付いた。毎回夢中であそんでいるだけで設定を弄ったことが無かったため、試しに開いてみる。その中の項目の1つが目に留まった。

 

「ふーん。スクリーン透過設定ってのがあるんだ」

 

 OFFになっているそれをONにしてみる。すると……

 

「おー」

 

 いつも見ているにゃんパラの風景が透けて、現実世界の愛七の部屋がうっすらと見えた。おそらく周囲にものが多い時や、狭い部屋で遊ぶ時にはこの機能をONにしておけという事なのだろう。ついでにノイズキャンセリング機能もOFFにしてみた。

 部屋を見回すも愛七はおらず、疑問に思っているとお手洗いの方から戻って来る。年頃の女の子だし、わざわざ俺に『お手洗いに行ってくる』なんて言わないだろう。音も聞かれたくないだろうから、俺がゲームに夢中になっている間に済ませるのは当たり前かもしれない。

 部屋に戻って来た愛七はベッドの上に座り、俺の見ている風景と同じ風景が映し出されているパソコンのディスプレイをジッと眺め出した。

 

(くっくっく、透過設定には気が付いてないな。いつ戻りゲームに集中しているフリをして、愛七の筋トレ姿でも眺めさせてもらうか)

 

 意地悪で天才的な発想をしてしまった俺は、そのままゲームを続行する。愛七が腹筋している時に下着とか見えないかなとか、そんなことを考えているわけでは決してない。

 

「おーミケ! よしよしよし! お前はいつも一番最初に来てくれるなぁ!」

 

 わしゃわしゃとミケの身体を撫でる。愛七の部屋が透けて見える分、没入感は下がるが、それでも十分楽しめる。

 しばらくそうやって遊んでいるも、愛七が筋トレを始める様子はない。何故か俺がプレイしているゲームが映し出された、机の上のディスプレイを真剣な表情で眺め続けている。

 

(透過設定していることバレたかな?)

 

 そんなことを考えていると、レア猫のソマリが現れた。

 

「おお! マリ! お前はいつものんびりやってくるなぁ!」

 

 マリと呼んでいるその猫を撫でようと手を動かしたとき、異変が起こった。

 

(っ!?)

 

 愛七がVRゲームの画面に現れたマリと同じ位置に、すっと動いて来たのだ。触れそうになったため慌てて手を引く。

 

(な、なにやってんだよ愛七のやつ……)

 

 しばらく思考停止に陥っていると、愛七はおかしいな? という様に首をかしげてゲーム画面を確認し、頭の位置を微調整してこちらを見つめる。まるで何かを期待しているように。

 

(も、もしかして……)

 

 俺は気が付かないフリをしたまま、マリへと手を伸ばす。にゃんパラの世界では何も存在しないそこに、現実世界では愛七の頭が存在している。猫耳を付けた愛七が。

 伸ばした俺の手が、愛七の頭へと触れた。愛七は目をつむり、気持ちよさそうに体をブルリと震わせる。

 

「……………………………………んぁ♡…………………………………………………………ン♡」

 

(この声っ!)

 

 いつもゲームの不具合だと思っていたノイズ。それは現実世界で発せられている愛七の声だった様だ。そしてまるで本当に触っているかのように感じていた感触は、愛七の髪と猫耳カチューシャだったらしい。

 

(俺はバカか! いくら没入感があるからって、流石に現実の感触には気が付けよ!)

 

 内心大いに慌てているが、今更手を止める訳にはいかない。俺は気が付かないふりを続けたまま、ゲーム世界のマリと現実世界の愛七を同時に撫でる。

 

「よ、よーしよし! お前はやっぱり格別にかわいいなぁ!」

 

「……んぁ♡………………………………すごい♡……………………………………………………もっと、撫でて♡♡♡」

 

「っつ!」

 

 懇願するかのような、熱に浮かされた様な愛七の潤んだ瞳。思わず手を止めそうになるも、何とか続行する。

 

「お前が一番だなぁ! 本当にかわいいなぁ!」

 

「ん……♡♡♡私、一番?…………………………………………んぁ♡♡♡………………………………………………………………………………もっと、言ってぇ♡♡♡♡♡」

 

 いつもはノイズにしか聞こえなかった変な声も、ノイズキャンセリング機能がオフになった今だとしっかりと聞こえる。愛七の、甘えるような、甘い声。

 

(破壊力やべえええぇぇ!!)

 

 いつも生意気なことばかり言っているあの愛七が、こんなにとろんとした表情で、こんなに甘えたことを言って来る。控えめに言って可愛すぎる。ギャップがヤバい。

 

(ってか、なんでこんなことを……もしかして俺の経験値に気が付いてるのか……? ぁ)

 

 そこまで考えて思い出した。俺はバカだ。そもそもあの時電車の中で愛七の手を掴んでしまったんだ。その時に愛七にとって俺は『経験値量のヤバい奴』だ。そして愛七はダンジョンダイバー。どさくさに紛れて経験値を貰いに来てるのかもしれない。いや、もしかしたら快楽を貰いに来ているのかもしれないが……

 

『にゃ~ん♡』

「にゃ~ん♡」

 

 にゃんパラの中でマリが頭を摺り寄せてくるのに合わせて、愛七が俺の足にすり寄って来た。

 

(た、頼む! 持ってくれ俺の理性よ!!)

 

 その後、理性をフル動員し、マリがいなくなるまで耐えたのであった。

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