由良ちゃんがいる生活が始まって数日が経過した。最初は少し警戒をしていたけれど、今ではかなり由良ちゃんに気を許してしまっている。このままだとダメ人間になってしまいそうだが、何でもかんでも由良ちゃんがやってくれている楽さと居心地の良さからは抜け出せない。
ちなみに渋谷ダンジョンの近くで再会した時みたいに、無理に迫ってきたことは一回も無い。もう本当に、めちゃくちゃ良い彼女というムーブメントである。彼女じゃないけど。
上げ膳下げ膳至れり尽くせりの生活だが、悩みと気になることが一点ずつ。
まずは悩みの方。これは本当にどうでもいいんだけど思春期の男子にとっては死活問題。一人遊戯する時間がほとんど無いことだ。
由良ちゃんの前でそんなことするわけにはいかないので、由良ちゃんが居ない時に済ませてしまおうと思うのだが、由良ちゃんは俺が家にいるときには絶対に外出しないのだ。買い物はお昼に済ませているし、ゴミ捨ては5分で終わるので流石に間に合わない。今は夜中に目が覚めた時に、こそっとトイレで済ませている。
超ド級美少女が同じ部屋にいるって言うのに、俺のQOSL(Quality of sexual life)は著しく低下している。なんでよ。
まぁそっちは良いとして、問題は気になることの方だ。
俺はベッドに寝っ転がったまま由良ちゃんの方を向く。
「……ん? どしたのー?」
「いや、なんでもないよ」
「ふふ、変なの」
こちらを見て、微笑で首をかしげる由良ちゃん。天使である。天使であるけど今はそうじゃなくて。
視線を感じるのだ。俺がスマートフォンを弄ったり、ゲームをしたり、漫画を読んだりしている時に。でも由良ちゃんの方を見ても由良ちゃんはこっちを見ていない。
「いや、気のせいだよな……」
「大丈夫? 何かあったの?」
「あ、いやいや、スマホゲームの話。アイテムが落ちてるように見えたからさ」
俺はごまかしてからスマートフォンに目を向ける。電源コードにつないでいたのでスマートフォンの電池残量は100%。ストレージを確認すると残り容量は52ギガバイト。どちらも余裕はある。
由良ちゃんがお風呂に入っている間に、俺はスマートフォンの録画を開始して、ベッドのヘッドボードのティッシュ箱に隠れる様に置いた。
◇
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
まだ一週間足らずの共同生活だが、なんとなくルールのようなものが決まってきた。そのうちの一つが寝るときの場所である。最初はどっちがベッドで寝るかでひと悶着あったが、今は一緒にベッドに入り、俺は壁側で壁を向いて眠り、背中合わせで由良ちゃんが反対を向いて眠るというルールになった。
目をつむって10分程。由良ちゃんのすぅすぅという可愛らしい寝言が聞こえて来た。念のためにもう10分程待ってから、うつぶせになり隣を確認する。動く気配はない。
「寝てる……よね? 由良ちゃん。由良ちゃーん」
小声で話しかけてみるも、反応はない。寝ていることを確信して、ヘッドボードのスマートフォンを手に取り、録画を止める。ピッという短い電子音がして肝が冷えたが、由良ちゃんが起きる様子はない。
うつぶせのまま、音量と光量を最小にして再生する。違和感は最初の数分で確信に変わった。
「……見てる」
見ているのだ。由良ちゃんが、俺を。俺がスマートフォンを弄ったり、漫画を読んだりしている時に、かなりの確率で俺を見ている。早送りやスキップをしながら確認するが、やはり見ている。そして、俺が振り向くそぶりを見せたときに、すぐにそっぽを向いているのだ。
「……なんで?」
理由が分からない。別に見るのなら見ればいいし、それを隠す必要もない。だってもはや同棲しているようなものなのだから。
不可解な由良ちゃんの行動が不気味で、恐怖で早鐘の様に打つ心臓を押さえながらシークバーをスキップする。動画は俺がお風呂に入っている時間になった。由良ちゃんは俺がお風呂に入った後に、部屋の真ん中で回りをキョロキョロと見回して、そして……
「……っ!」
いや、偶然こっちに目線を向けたのかもしれない。ヘッドボードにあるティッシュを使いたいだけかもしれない。
画面の向こうの由良ちゃんは綺麗な顔でこちらを見たまま、どんどんと近づいてきて、その可愛い顔をドアップにして、言った。
『どうして、撮ってるのかなぁ?』
「ヒッ!」
バレている。確実にバレている。録画していたことが。なんで知っていたのに、由良ちゃんは俺がお風呂から上がった時に何も言わなかったんだろう。なぜ、何故、ナゼ?
そして気が付く。
隣で寝ているはずなのに。
心臓が口から飛び出さんばかりに強く打ちつける。こわい。こわい。……こわい。
俺はゆっくりと、隣で寝ている由良ちゃんに、俺に背中を向けて寝ているだろう由良ちゃんに、顔を向けた。
――
何でどうして向こう向いて寝てたんじゃないのそんなに目を見開いてあぁ由良ちゃんかわいいこわいどうして何も言わなかったのなんでいつも見てくるのどうして俺の事そんなに知ろうとしてくるの由良ちゃんいいにおいするこわいかわいいこわいかわいいヤンデレなの俺殺されるのでもかわいい由良ちゃんになら殺されてもいやでもまだ死にたくないかわいいパジャマはだけて柔らかそうなおっぱい見えそうムラムラするっっっっっっっっ!!!!
「達哉く……」
「う、うわあああぁぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁぁあぁっっっっっっっ!!!!!!」
「達哉くんっ!? 痛っ……………………んんんんんあああぁぁあっぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡!!!!」
俺はどうしていいか分からず、混乱して由良ちゃんのほっぺたを両手でパチンと挟んでいた。
「うわあああぁああああぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁああぁあぁっっっっっっっ!!!!!!」
「やめっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡た、つ♡♡♡♡♡♡♡や♡♡♡♡♡♡♡くんんんんんうううぅぅぅぅっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※ほっぺたを両手で挟んでいるだけです。
「あああああああああああぁああああぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁああぁあぁっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!」
「ひゃめぇっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ああああぁぁぁぁっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡我慢してたからああぁぁあぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡しゅ、ごおおおおぉぉぉ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※ほっぺたを両手で挟んでいるだけです。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁあああぁぁぁああぁああぁあぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「んああああぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡たちゅやっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡くううぅぅぅ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡たちゅ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡たちゅうぅぅぅう♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡やきゅううぅぅぅん♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※ほっぺたを両手で挟んでいるだけです。
俺が正気に戻った時には、由良ちゃんはベッドの上で意識を失っていた。