「もぉー、酷いよ達哉くん」
「ご、ごめんね由良ちゃん、取り乱しちゃって……」
「触られるのは、その、全然嫌じゃないんだけどね、流石にあんなにいきなりはびっくりするというか、激しすぎるというか……。その、無理矢理っていうのも悪くないし、むしろそんな達哉くんもちょっと良いななんて思うんだけどね」
「えっと。ごめんなさい……」
何だか良くわからないことをゴニョゴニョと言う由良ちゃんに再度謝罪をする。
勝手にホラーな想像をしてビビっていたけれど、あのあと暫くして目を覚ました由良ちゃんは、いたって普通の様子だった。
時刻は12時過ぎ。良い子は寝る時間だが、とても眠れるような状況ではない。
「でも、どうして盗撮なんてしてたの? 達哉くんが言ってくれれば、私、その、ちょっと恥ずかしいけど、服くらいなら脱いであげても……」
「いやほら、なんか最近視線感じるなーって思って! 何か由良ちゃんに見られてる気がしたからさ! どうしてだろうと思って確認して見ただけ!」
「あ、そんなこと? だって、達哉くんと一緒のお部屋にいるんだもん。そりゃ、見ちゃうよぉ」
由良ちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめてうつむいた。
「あんな快感を教えられたら、もう忘れられないよぉ。だけど、前みたいに急に達哉くんがいなくなっちゃうなんてことになったら、私耐えられないから。だからずっと我慢してたんだよ? 絶対達哉くんには触らないようにしようって決めてるし、そういう雰囲気にもならないようにしようって」
「そ、そうだったんだ……」
「でもどうしても我慢できなくて、達哉くんの方を見ちゃってた。ごめんなさい」
「いや、由良ちゃんが謝ることじゃないよ!」
由良ちゃんがシュンとしてしまったため、慌ててフォローする。
「あの、由良ちゃんが欲しいなら、経験値あげるよ? 毎日家事も炊事もしてもらってるんだから、俺もお礼しないと……」
「だ、ダメだよ!」
俺の提案は由良ちゃんに力強く否定された。
「達哉くんに迷惑かけられないよ! 私なんかがそんなこと望んじゃだめなんだから!」
「いや、私なんかって……。でもほら、俺も嫌なわけじゃないんだからさ」
「……ほんとう?」
うつむいたまま上目遣いで尋ねてくる由良ちゃん。めちゃくちゃかわいい。
「もちろん。勝手にいなくなったり着信拒否したりしないからさ、安心してよ」
「……分かった。じゃあ、迷惑かけないように、達哉くんが寝てるとき、ちょこっとだけ触らせてもらう」
なぜそういう結論に至ったのかは分からないが、由良ちゃんなりに思うところがあるのだろう。それで由良ちゃんが納得するのであれば、俺に異論はない。
「じゃあそういうことで。今日はおそくなっちゃったからもう寝ようか」
「うん、おやすみなさい達哉くん」
「おやすみ由良ちゃん」
由良ちゃんに背中を向けて、布団にもぐる。これからは由良ちゃんの視線を気にすることなく、平穏な日々が過ごせそうだ。
◇
平穏な日々が過ごせそうだ。そう思っていた時期が俺にもありました。というか、つい三十分前の事なんだけど。
「フーー……フーー……」
背中を向けていても分かる。由良ちゃんがこっちを見ていることが。荒い息が俺の後頭部にあたってるもん。
由良ちゃんは布団の中でもじもじしなが、機を伺っているのだ。俺が眠りに落ちるその時を。
「た、達哉くん……寝た?」
「……」
小声で問いかけられたので、寝たふりをすることにした。さっさと触れてもらって、満足してもらって、おとなしくなってもらおう。こんなにガン見されてたら眠れるわけが無い。
「ね、寝たよね? 寝てなかったら、ごめんね。でも、寝たフリしてるなら、良いよね? 良いってことなんだよね? 私、我慢しなくて良いんだよね? 達哉くんがそう言ったんだもんね? ね?」
まるで言い訳をするかのようにボソボソとつぶやきながら、由良ちゃんがにじり寄ってくる。かなり近くにいるようで、耳に吐息がかかりゾクゾクする。
「……ぁ」
俺に近づいた由良ちゃんが、困惑するような声を出した。いったいどうしたんだろうと思ったが、すぐに答えにたどり着いた。触る場所に困っているのだろう。
まだまだ夜は寒いので来ているパジャマは長袖長ズボンだ。素肌が出ているところは手と足と顔くらいしかない。その状態で由良ちゃんに背を向けている。触れる場所にも困るだろう。しかしここで寝返りを打ってしまえば、それは『起きてますよ』と言っているのと同義。だんまりを決め込む。
しばらく悩むような無言の後、由良ちゃんがさらに近づいて来た。数センチあった体の距離が、0センチになる。
(まじかっ)
まるで俺を背中から抱きしめる様に、由良ちゃんが俺の手に向けて手を伸ばす。背中に感じる由良ちゃんのぬくもり、由良ちゃんの柔らかさ。耳にかかる熱い吐息。
手と手が触れ合う直前に、由良ちゃんが囁いた。信じられない程、妖艶な声。
「はぁ……はぁ……
「っ!」
まるで神経がむき出しになってしまったかのように敏感になった俺の手に、由良ちゃんの手が触れる。柔らかくすべすべとした指で触れられているだけなのに、もはや痛いと思うほどに由良ちゃんを感じる。
「っっっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ はぅーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ はぅーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
びくりと身体を跳ねさせるも、由良ちゃんはなんとか声を押し殺している。俺が起きないように配慮しているのだろう。こんな状況で眠れてるわけないだろバカ野郎。
軽く握った俺の手を、由良ちゃんが包み込むように撫でる。
「達哉くんのっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ご、ごつごつしてるね?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡硬いね?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ おっきいね?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ 全部、入らないね?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※お手手をお手手で包み込もうとしているだけです。
おやおや由良ちゃん。主語が抜けているぞ? それじゃ俺のナニがごつごつしてて硬くて大きいのか分からないよ? まぁ、手なんですけど。
「はぅーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ はぅーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ これが、欲しかったのぉ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ いっぱいぃ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ いっぱい頂戴いぃ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡はぅーーーーー♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
※経験値を欲しがっているだけです。
由良ちゃんはハウハウ言いながら俺の手に触れ続けた後、急に声色を変えた。
「……………………………………も……う……我慢、でき、ない」
背筋が凍るような声。何をされるのかと身構えると、
「ハプッ……ああああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁっっっっっっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「由良ちゃんっ!?」
由良ちゃんは俺の首筋にかみつくと、そのままビクリと痙攣して倒れ、そのまますぅすぅと寝息を立て始めた。
「び、びっくりしたぁ……」
まさか急に噛みつかれるとは思わなかった。そのまま食いちぎられるかと思った。
何はともあれ、由良ちゃんにはご満足いただけた様だ。俺のチンアナゴは満足していないけれど。
このまま寝てしまうと、朝方におパンツ様がカピカピになってしまいそうなので、仕方なくシャワーを浴びて、怒れるチンアナゴを眠らせてから俺も眠りについた。