大通りから少し入った、人通りの少ない片側一車線の道路脇に、一人の美少女が二人の美少女と向かい合う。由良ちゃんは白いオーラを、天ヶ崎さんと氷見さんはそれぞれピンクと青のオーラを身に纏い、三者とも真剣な眼差しだ。一発触発。破裂寸前の風船のような緊迫感。
「いくらゆらりんが強くても、二対一は分が悪いんと違う?」
「二体一? 何を言ってるの? 私には達哉くんがいる。私たち二人なら、誰にだって負けない!」
あ、やめてください俺をカウントしないでください。俺は非戦闘員なんで。戦闘服も来てないし武器も持ってないでしょ? 手を出したら国際人道法で裁かれますよ?
「前までの私と同じだと思ったら、大間違いだから。『
――バジジ、ジジジジジジジジジ!
由良ちゃんが唱えるとバチバチと激しい音を立てながら、右手にブロードソードが出現した。まるで実態を持っていないような、雷の剣だ。
「その剣を受ける側になるとは思わんかったで……ひみりん、サポートよろしく!」
「御意ー。『
氷見さんが唱えるたびに、天ヶ崎さんと氷見さんの身体を光が包み込んだ。ゲームで言うところのバフのようなものだろう。
「その程度の補助で私に追いつけると思ってるの……? 『
――ピキキ、カコピキン
今度は由良ちゃんの左手に氷で出来た半透明の剣が現れる。二刀流だ。全体の能力の底上げをした天ヶ崎さん達に対し、攻撃力集中特化の由良ちゃん。かっこよさでは由良ちゃんに軍配が上がる。
由良ちゃんは挑発するように口角を上げると、二人に向かって言う。
「先手は取らせてあげる」
「っ! ウチらをあんまり舐めんといたほうがええでぇ!」
瞬間。ピンク色の閃光が弾ける。アスファルトの地面を砕くほどの膂力により加速し、由良ちゃんへ突撃する天ヶ崎さん。いつの間に手に持ったのか、短槍を由良ちゃんへ刺し出す。
「ちょっとの怪我くらいは堪忍してなぁ!」
しかし、
「無駄だよっ!」
――キイン!
「なぁっ!?」
短槍を受け止めたのは、氷の剣の、その刃先。寸分のずれも許さぬ神業。どれほどの動体視力と運動神経を持てば為せる妙技だろうか。
左手の剣で天ヶ崎さんを受け止めた由良ちゃんに、いつの間にか後方に回った氷見さんが襲いかかる。氷見さんの両の手には各3本ずつの爪のようなものが。クローと呼ばれる武器だろう。まるで四足歩行の獣の様に低い姿勢から、由良ちゃんを狙う。
「穿つ」
「甘いっ!」
――バヂヂヂッ!
背後に視線も向けずに右手の雷剣を一閃。的確に氷見さんの身体を目掛けて振るわれたそれをかろうじて受け止めるも、氷見さんは雷の力で激しく跳ね除けられる。
堪らず後方へ大きく跳んで逃げる氷見さんと、同じく一度距離を取る天ヶ崎さん。
ニ対一なのに、由良ちゃんは全く引けをとらない。むしろ優勢に見える。
「ゆらりん、こんな強かったかー……?」
「明らかに、レベル上がってる」
タラリと冷や汗を流す天ヶ崎さんと、無表情ながらに歯噛みする氷見さん。
そんな2人の視線が由良ちゃんから外れて俺の方に向けられた。
「やっぱり、あのスーパー経験値君が原因なんやろなぁ」
「二人でエッチな訓練してたんだ。ずるい」
「ゆらりんは、あの男の子に執着しとるみたいやから……」
「ん、人質作戦」
どうやら天ヶ崎さんと氷見さんは、由良ちゃんとの真っ向勝負ではなく搦め手でなんとかするつもりらしい。やめてください。
2人の狙いに気が付いた由良ちゃんが、吠えた。
「私の達哉くんに手を出したら、許さないんだからあぁぁぁっ!!」
慟哭。怒りで白い髪が逆立つ。身に纏うオーラ量が増えた。
「ゆらりん! 落ち着いてぇ! 取り憑かれとるんやってぇ!」
「無理。聞こえてない」
「私の物に手を出すなら……全員、殺すっ!!!」
……あぁ、できれば由良ちゃんの味方でいてあげたかった。けど、恐らく正しいのは天ヶ崎さん達の方だろう。由良ちゃんは何か悪霊的なものに取り憑かれていて、正気を失っているのだ。
だって、由良ちゃんなら絶対に、友達に向かって『殺す』だなんて言わないから。
俺は全身で怒りに震えている由良ちゃんの方へ近づく。
「由良ちゃん」
「達哉くん!? 危ないから下がってて! あの2人は私が何とか……」
「ありがとう、もう大丈夫だよ。由良ちゃんとの暮らし、楽しかったよ」
「達哉……くん?」
俺は由良ちゃんを後からそっと抱き締めて、その柔らかな手に触れる。
「っぐ……あっ♡…………達哉くん、今は、今はだめっ…………つぅっ♡♡♡」
由良ちゃんは俺を振り払うことはせずに、足を震わせながら快楽に耐える。俺はその震える細い身体を強く、きつく抱きしめ、由良ちゃんのすべすべとした手を優しくなでた。
「んぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡くぅっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡達哉くん、たつや……くん♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡後、でぇっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡おうちに帰ってから、たくさん、シよ?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
とても魅力的な提案をされたが、その案に乗るわけには行かない。俺は由良ちゃんの首筋に、いつもされていることの意趣返しの様に、口を付けた。
「ガブー」
「ひゃああああぁぁあぁぁぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡それ、しゅきいぃぃっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡しゅ、しゅきっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡いいいぃぃ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
流れ込む快楽に耐えられなかったのか、由良ちゃんが両手の剣に持つ剣を落とした。由良ちゃんの手から離れた剣は、地面に落ちると砕け散って消えた。
「天ヶ崎さん! 氷見さん! 今です、祓って!!」
天ヶ崎さん達に目を向ける。天ヶ崎さんは少し顔を赤くして、氷見さんは興味深そうな表情で真剣に、こちらをジッと見ていた。
「す、スーパー経験値君、積極的やなぁ……」
「あれだけ強くなったゆらりんが腰砕けになるほどの快楽。すごい。私もして欲しい」
「何見てるんですか!? 祓う方法あるんですよね!? 早くしてくださいよ!」
俺の再度の声掛けに、天ヶ崎さんと氷見さんがハッと我に返る。
「ひみりん!
「かしこまー」
氷見さんが装飾の施されたハンドベルのようなものを取り出す。取っ手は銀、ベルの部分は金、そして純白の天使の羽のようなものが付いているメルヘンなハンドベルだ。
「いっくよー」
氷見さんはこちらに駆けよってきて、俺が捕まえている由良ちゃんの頭にそのベルを振り下ろした。
「あうっ!!」
――カラ――――――ン…………………………
まるで心が浄化されるような、そんな癒しの音が早春の薄青の空へと抜けていく。
そんな綺麗な音を聞いて、由良ちゃんが苦しみだした。
「…………ぁ…………ああぁあぁぁぁぁ、うあああぁあぁぁぁぁぁっ!!!!」
由良ちゃんの身体から、黒い靄のようなものが抜けていく。これがおそらく
由良ちゃんは意識を失って、一度ガクリと頭を垂れたる。そして再度顔を上げた。
「あれ、私、どうして……」
その由良ちゃんの顔を見て、天ヶ崎さんがホッと息を吐いた。
「うん、ちゃんと目に光が戻っとるわー。お帰りゆらりん」
「おかえり、リーダー」
「萌々香ちゃん、凛ちゃん、私……」
正気に戻ったらしい由良ちゃんが二人の顔を交互に見て、そして……
「え? ……ぇ♡…………ぁ♡♡♡♡♡♡♡まって♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡ちょっとまって、まってまってまって♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡あ、あ、あ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
急に体を震わせ始めた。倒れ込んできた由良ちゃんの身体を支える。
「由良ちゃん、由良ちゃん!? まだ『
「ち、ちが♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡そ、そうじゃな♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡くてぇっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡て、て、てええぇぇぇぇ!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
「大丈夫!? 由良ちゃん、由良ちゃああぁぁぁぁぁん!!」
「達哉、きゅ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡はな、ひてぇぇえぇえぇぇ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡てえぇぇぇ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
由良ちゃんは再び意識を失って、ガクリと頭を垂れてしまった。
「そんなっ! 天ヶ崎さん、氷見さん! 由良ちゃんが、由良ちゃんが!!」
助けを求める様に二人を見るが、二人は呆れたような視線を俺に向けて来た。
「いや。手、離したりぃよ……」
「手?」
俺は自分の手を見る。由良ちゃんを後ろから出し決めて、その柔らかな手をきつく握り続けている己の手を。
「……あ」
「スーパー経験値君、どSやなぁ」
「鬼畜」
「ちがっ! わざとじゃないんですよっ!」
何はともあれ、無事に由良ちゃんの『