王都の外れに秘密基地を作ったら、ボロボロの王女様が逃げ込んできた 作:諦めちまえ谷
小学生の時作った秘密基地は、近所のガキ共に乗っ取られた。
中学生の時作った秘密基地は、学校の不良集団に占領された。
高校生の時作った秘密基地は、クラスの女子達によって、デートスポットへと化した。
大学生の時作った秘密基地は、サークルの友人達によって、えっちな部屋へと変貌した。
社会人の時作った秘密基地は、妻の不倫現場になったので泣く泣く取り壊した。
カッコよかった、クールだった、ロマンがあった、ムードがあった、インモラルだった。
俺が自らの作品を捨てる時、その元凶になった略奪者達はそう告げる。
彼等のレビューは参考にこそなるが、秘密基地一つとトレードになるかと言われれば、きっと俺はノーと叫ぶだろう。
まぁ、一度侵入を許した秘密基地は、秘密基地として欠陥品であると見なすのが俺だ。
だってもう秘密じゃないじゃん、ただの違法建築ガバガバ住宅じゃん。
部外者にバレれば即放棄。
秘密基地職人たるもの、そうするべきだし、その信念を捻じ曲げようと思ったこともない。
───毎回毎回、完成した翌日に俺の手を離れてなければなぁ!!!!
そんなに俺の秘密基地は魅力的か!!??
夏場の蚊みたいなレベルで虫がホイホイ寄ってくるのだが、そんなに欲しいのなら自分で作りやがれこのクレクレキッズ共!!!!
いやわかるよ!!??
現代社会で秘密基地を作るスペースは限られてるし、材料費も時間もメチャクチャかかって怪我もする。
逃げたら〇つ、作れば一つ、奪えば全部ゥ!!!!って考えに至るのは理解できるけどさぁ......
俺だって秘密基地を使いたいよ......
気の置けない親友でも呼んで、ホームパーティーとかしてみたいよ......
せめて奪う前に、俺に使わせるだけの猶予をくれよ......
───あぁ、どこかに、俺が自由に秘密基地ライフを送れる世界、ないかなぁ......
「つーことで女神えもん、秘密基地ライフに適した世界、出して?」
『何言ってんだこの秘密キチ』
◆
そんなこんなで異世界転生。
瞼を開いた先には見渡す限りの闇、闇、闇。
手を伸ばしてみると麻布っぽい感触が......
死体袋だなコレ。
あっ、まずい担がれた。
死体袋の行き先というのは、良くて埋葬、悪くて火葬と決まっている。
都合の良い死体に魂をブチ込む。
そう女神は言っていたが、まさか初手から命の危機。
都合の良い死体って、すぐ存在が抹消されるからってコト!!??
えっと、異世界転生のクーリングオフってどうすればよかったっけ。
デスルーラで女神に直接返品すればいいのかな?
ほな、死ぬかぁ......
『二度とこっち来んなよ? 来たら殺す、何度でも殺す』
おや、女神から毒電波を受け取ったぞ?
ほな、出るかぁ......
◆
爪と歯を立て麻布を破り、隙を突いて危機離脱。
流石ファンタジー世界、身体能力が元いた世界の基準よりも高い!!!!
こりゃ、慣らしを入れておかないと身体を壊しそうだ。
つーことで、俺を担いでいたニイチャンには、必殺のドロップキックをお見舞いしてやったぜ。
悪そうな顔をしてたから、つい、ね?
勿論殺してはいない。
ただ気絶させて袋閉じにしただけだから、心優しい人の手によって適当な処置を施されることでしょう。
知らんけど。
さて、周囲を見渡し状況確認。
恐らくここはスラム街、人気の少ない路地の裏。
俺の身なりはそれ相応の......あれ?
白く美しいえっちな肢体に、細くくびれたえっちなお腹。
ツヤッツヤでえっちなゴールドヘアーが、とにかくえっちな二峰にかかり、声も若干扇情的。
そして全裸。
これは、パーフェクトえっちマン......いや、パーフェクトえっちウーマンか!!??
Oh my Godness GG(Good Girl)......
どさくさに紛れてTSさせるのはどうかしてるよホント......
これじゃあ俺の秘密基地が狙われやすくなるじゃないか。
えっちな美少女が作り出した秘密基地とか、青春ボーイズホイホイ以外の何物でもない。
圧倒的なロマンの塊、俺にとっても唆るものはあるが、リスクと天秤に掛けると、いや、うーん......
まぁ、ええか!!!!
悩んでいる暇があるならまず秘密基地を作れ。
取り敢えずクオリティは二の次、雨風を凌ぎ、超絶美少女という秘密を、外部から隠し通せれば良い。
ニイチャンの袋閉じから距離を取りつつ、近くにあった廃材を収集。
ちくしょう、スラム街というだけあって、周囲もまた秘密基地を作らんとするライバル。
姿を隠したいので表も歩けない。
となれば、得られる物資は限りなく少ない......
だが、こちらは人生丸一つを秘密基地に賭けてきた、生粋のビルダーである。
当然、少ない資材からシェルターを作る方法も熟知しているっ!!!!
狙うは貧民が住まう一軒家、その真下の土台!!!!
レンガが崩れ、剥き出しになった空洞部を居住スペースとして確保し、瓦礫を柱として積み重ねる。
余った廃材で出入り口を塞げばあら不思議、立派な秘密基地の出来上がり。
しかもここは民家の上。
もし有事があっても、床を叩けばあら不思議、怒り心頭の先住民さんが駆けつけてくれるシステムよ。
俺は平和主義者なんでな、喧嘩の拳は他人に振ってもらうのさ。
当然この基地を放棄することにはなるが、その分、自爆装置みたいでロマン味が増す。
え?上に住む人達が可哀想だって?
大丈夫、俺からも何かを提供すれば、共生関係というものは成立する。
ギブ・アンド・テイクの原則だ。
そうだなぁ、『熱』を提供するってのはどうだろうか。
人間が恒温動物である点はこの世界でも変わらない。
つまり、ありのままの姿がMAPPAなHUMANは、必然的に衣食住で熱を補わなければならない。
さて、ここで思い出して欲しいのは、冬の風物詩、あったかいおしっこ。
そして、韓国の床暖房、オンドゥルである。
暖かい空気を床下に流し、室内を暖めるオンドゥルの機構。
おしっこから出る湯気を用い、それを再現する。
湯気の温もりとほんのりとした臭さ。
実質温泉だな、ヨシ!!!!
雀の涙程の効果であったとしても、ボロ小屋に住まう貧民からすれば貴重な熱資源であるはずだ。
きっと満足してくれるに違いない。
つーかそれ以外差し出せる物無いし、これで許してちょ♡
てなわけで、俺はこの土地を借りる代金として、おしっこオンドゥルを提供すると、ここに誓う。
使えるものは何でも有効活用、これ、秘密基地の流儀ってやつね。
さながら円玉を握りしめ、駄菓子屋でフルコースを完成させる少年の如し。
うーん、この手際の良さ、我ながら惚れ惚れする。
どうか結婚して欲しい、はい喜んで。
こうして、俺と俺が住まう夢のマイホームが完成したのであった......
◆
翌日、資材集めから帰ってきたら、秘密基地の入り口からケツが生えていた。
中に入ろうとしてつっかえたのであろう、若い女のケツだ。
どうやらこの世界では、野生の壁尻が出現するらしい。
生息地が秘密基地ってことは、暗い所が好みの○ケモンなのかなぁ?
『けんちく』持ちだったら嬉しいなぁ。
だってこの秘密基地に今、侵入者が現れちまったからなぁ......
《b》また新しい秘密基地を建てないといけなくなったからなぁ!!!!《/b)
だ、か、ら、完成した翌日に来んじゃねぇよぉ!!!!
まーた翌日放棄とかふざけんじゃねぇ!!!!
オイ女神!!!!
全然秘密基地ライフ送れねぇじゃねぇかよ!!!!
これじゃあ前の世界と変わんねぇじゃんかよ!!オイ!!!!
そしてお前!!!!
壁に埋まって必死にもがいているお前!!!!
暴れすぎて上の住民を呼びやがったお前!!!!
マジで誰だよォ!!!!
【セリフ読み勢から見た第一話】
「つーことで女神えもん、秘密基地ライフに適した世界、出して?」
『何言ってんだこの秘密キチ』
『二度とこっち来んなよ? 来たら殺す、何度でも殺す』
何もわからん───☆