BrokenWorld~黒鉄の装着者~   作:半笑いの妖精

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第二十八話:続・機能把握

 

 慢心はせずに着実にいこう。

 そう自分に言い聞かせてメモへ視線を戻す。

 火力、機動力は十分。

 なら次に必要なのは、その全部を繋ぐ“要”だ。

 

「……数を並べるなら、指揮系統が要るな」

 

 ぽつりと呟く。

 今のところ、偵察ドローン4機、小型浮遊砲台4機、防護重盾機4機。

 これくらいなら何とか把握できる。だが兵器召喚の真価はもっと先だ。同種を十、二十と並べた時、あるいは役割の違う兵器を混成で運用した時に発揮される。

 そうなった時、全部へ逐一細かい命令を飛ばすのは現実的じゃない。

 思考が追いつかなくなる。

 ソーンエンプレス戦で思い知ったように、命のやり取りの最中に脳のリソースが足りなくなるのは致命的だ。

 つまり必要なのは、自律兵器群の統制。

 

「……ありそうだよな、そういうの」

 

 意識を兵器召喚カテゴリへ戻し、改めて超小型の項目を精査していく。

 索敵。

 近接。

 砲台。

 盾。

 戦闘機。

 その並びの中に、少しだけ毛色の違う項目を見つけた。

 

【戦術管制ユニット:30万P】

・召喚兵器群を統制、管制する超小型戦術支援端末。

・兵器群の役割分担、目標優先順位の設定、陣形維持、戦術共有を補助する。

・スーツの戦術演算機能と連結することで兵器召喚群の行動最適化が可能。

 

「…完璧」

 

 もう説明文の時点で取得は確定していた。

 

 取得。

 

 現れたのは球形に近い小型端末だった。偵察ドローンよりさらに一回り小さく、黒い外殻の継ぎ目から青いラインが網目のように走っている。前面にレンズらしき単眼、その周囲を更に小さな補助端末が衛星のように巡っていた。

 

「ほう……」

 

 見た目は地味だ。

 しかしバイザーに追加された表示は豪華だった。

 

【兵器群リンク:開始】

【指揮下兵器:12】

【陣形設定】

【役割優先】

【戦術共有】

【自律思考補正】

 

 試しに偵察ドローン、小型浮遊砲台、防護重盾機を全部リンクしてみる。

 すると、それぞれが単独の表示ではなく、ひとつの群れとして色分けされて表示されるようになった。

 視界の端に前衛・後衛・索敵という役割タグまで出る。

 

「いや、素晴らしいな」

 

 一機ずつのスリーマンセルを組ませ、偵察ドローンには周辺索敵を命じ、小型浮遊砲台と防護重盾機にはその護衛を命じる。

 大まかにそう指示すると今までは一機ごとに逐一命令する必要があった兵器たちが一斉に動く。

 偵察ドローンが先行し、少し離れた遮蔽物の上へ位置取る。

 その斜め後方へ小型浮遊砲台が滑り込み、さらにその前へ防護重盾機が展開。

 まるで最初からそうプログラムされていたかのような自然さで、ひとつの小部隊がその場に出来上がった。

 

「……おお」

 

 思わず感嘆が漏れる。

 しかも、ただ並んだだけじゃない。

 バイザーへ映る表示を見る限り、偵察ドローンが取得した情報は即座に砲台と重盾機へ共有されているらしい。

 敵性反応予測。

 射線の確保。

 盾の向き。

 それらが一つのまとまりとして処理されている。

 試しに少し離れた空き家の陰を仮想敵指定してみる。

 

「目標、物陰。索敵及び交戦」

 

 それだけ伝える。

 すると、偵察ドローンがまず高く上がり、上空から建物の裏側を確認。

 次の瞬間、その情報を受けた小型浮遊砲台が微妙に射角を修正し、防護重盾機も斜め前へ出て砲台の射線を守る位置へ移る。

 

「撃て」

 

 命令と同時に、砲台が二連射。

 青白い光弾が物陰へ吸い込まれ、背後の壁を吹き飛ばす。

 もしそこにD級、いやオーガクラスのモンスターが居たら間違いなく仕留めていた。

 

 素晴らしい。そう言う他ない。

 

 前衛、後衛、索敵。

 あるいは迎撃、制圧、退路確保。

 そういう役割分担を兵器群へ持たせられる。

 そして何より。

 

「負担が大分軽くなるな…」

 

 ぽつりと漏れる。

 これが一番大きい。

 今までは、偵察ドローン一機を飛ばしつつ、支援機の位置を調整し、自分の武器を選び、戦術演算を読み、さらに敵の動きへ反応していた。

 それでもどうにかなっていたのは、単純に兵器数が少なかったからだ。

 もし今後、偵察ドローン十機。

 浮遊砲台十機。

 重盾機十機。

 さらに別カテゴリの兵器まで混ぜて運用することを考えれば、到底人間の処理能力では追いつかない。

 それを補助するのがこの戦術管制ユニットだ。

 

「……兵器召喚の真価は、ここからか」

 

 視線を表示へ戻す。

 

【兵器群リンク:安定】

【小隊運用:可能】

【分隊設定:可能】

【演算連結率:向上】

 

 演算連結率。

 その表記が少し気になり、説明を開く。

 どうやら、スーツ側の戦術演算機能が得た戦術案を、兵器群全体へ共有・適用しやすくなるらしい。

 

 つまり、使えば使うほど兵器群も俺の癖に合わせて最適な位置取りをしてくれるということだ。

 

 攻めに出れば、砲台が追従し、死角を盾が防ぐ。

 退けば、遮る様に重盾機が壁を作り、偵察機が退路を確認する。

 そういう連携が期待できる訳だ。

 

 ヤバいな、これ……。

 

 口元が緩むのを自覚しながら、改めて視界へ並ぶ表示を見渡す。

 偵察ドローン。

 小型浮遊砲台。

 防護重盾機。

 そして、それらを束ねる戦術管制ユニット。

 今の時点ですら、既に一個小隊めいた動きが成立している。

 これが更に数を増やし、種類を増やし、演算との連結率を高めていけばどうなるか。

 

「一つの軍隊だな、もう」

 

 ぽつりと漏れる。

 スーツを強化する。

 追加兵装を増やす。

 重武装群を纏う。

 ビークルへ変形する。

 それだけでも十分、ひとりでやれることの範囲はおかしかった。

 だが兵器召喚は、その上から更に自分の外に戦力を持つという概念を生やしてきた。

 今までの俺は、どれだけ強くなっても結局は単騎だった。

 支援機が増えても、それはスーツの延長に過ぎない。

 しかし今は違う。

 独立した兵器がいる。

 数で運用できる。

 役割を割り振れる。

 しかも戦術管制ユニットを介せば、それらが群れとして噛み合う。

 

 …これからの戦いはより綿密に、より洗練されていく事だろう。

 

 今までのように闇雲に動いた結果接敵し、その都度戦う…なんて事は少なくなるだろう。

 

 偵察で先んじて敵を見つけ、砲台で削り、盾で守り、必要なら自分が最後に切り込む。

 あるいは逆に自分が囮になって兵器群に仕留めさせる…なんてこともできるだろう。

 発想が変わる。

 戦い方そのものが変質していく。

 ゆっくりと深呼吸をして、今度は実際の連携をもう一段詰めて試していく。

 

「役割変更。二番隊は前衛寄り、三番隊は後方支援」

 

 命令に従い、リンク済みの兵器群が滑らかに位置を変える。

 前衛寄りに設定した小隊は、防護重盾機を先頭に押し出し、そのすぐ後ろへ浮遊砲台がつく。偵察ドローンは低空を回って近距離の索敵へ移行。

 後方支援寄りに設定した方は、ドローンが高く上がって広範囲の視界を確保し、浮遊砲台は一歩引いた位置で射角を広く取る。防護重盾機は砲台の左右に展開して簡易陣地めいた形を作った。

 

「ああ、良いな。実に良い」

 

 狭い通路では前衛重視。

 開けた地形では後衛火力重視。

 逃走時なら防御と索敵重視。

 そういう切り替えが可能なんだ。

 

 試しに自分も動く。

 右へ三歩。

 前へ加速。

 物陰へ滑り込む。

 すると前衛寄りにした小隊が自然と前へ出て、俺の進路側へ重盾機を寄せる。後方支援寄りは少し下がり、射線を確保しつつドローンが上空から俯瞰を維持した。

 

 その何気ない一連の動作に連携の意図が汲める。

 

 これが本当に大きい。

 自分が何か行動した時、それを理解して兵器群が追従してくれる。

 これを全部手動でやっていたら、戦闘どころじゃない。

 

 雛型はできた。考えを次に移行させる。

 

「まずは部隊単位で完成させる」

 

 今、仮で組んでいる三機の編成だと、対応できる相手や場面が限られてくるだろう。盾と砲台は、もう1機ずつ欲しいか…?

 

 ドローンも二機体制の方が探索量が半分になって効率が良いだろうし、想定外の事があっても情報を持ち帰り易いだろう。

 

 考えた結果、最終的に偵察ドローン2機、小型浮遊砲台2機、防護重盾機2機で1部隊として戦術管制ユニットで管理させる事にした。

 

 一旦、これで部隊の編成は完成とする。今後は実際に運用していき、気になった所を改善していくとしよう。

 

 考えを巡らせていると、自然と視線は兵器召喚の一覧へ戻っていた。

 今の時点で俺は、かなり強い。

 それは間違いない。

 実際、B-級のソーンエンプレスを撃破している。

 オーガ程度ならもはや脅威ですらない。

 森林迷宮を一つ攻略し、迷宮核も二つ吸収した。

 だが、それでもなお足りないと、頭のどこかが冷静に告げていた。

 強くなった。

 けれど、まだ安心できる強さには程遠い。

 この世界には、クラウド・エンペラーがいる。

 アースメイル・ワイバーンがいる。

 アーマード・トロルがいる。

 そして、それらは決して頂点ですらない。

 今まで見てきたもの、戦ってきたもの、全部ひっくるめても、まだ世界の序盤を抜けた程度だろう。

 

「……分かってる」

 

 ぽつりと呟く。

 ソーンエンプレスに勝てたのは、確かに実力だ。

 だが、同時に相性も大きかった。

 軍勢相手。

 広範囲制圧が通る相手。

 再生に対して、火力を一点へ集中させられる相手。

 だから勝てた。

 もしあの場にいたのが、空を制するアースメイル・ワイバーンだったら?

 あの重装甲を持ち、地形ごと押し潰しにくるアーマード・トロルだったら?

 今の俺で確実に勝てたかと問われれば、首を縦には振れない。

 

「……なら、やることは一つだ」

 

 低く言い、兵器召喚の一覧をさらに下へ送る。

 必要なのは、暴力。

 どんなB級が相手でも勝ち筋を拾えるだけの、分かりやすく、理不尽なくらいの火力と物量。

 そのための手段はもう手の中にある。

 兵器召喚。

 スーツの延長ではない独立した戦力。

 自律し、群れ、陣形を組み、必要なら捨て駒にすらできる兵器たち。

 これを伸ばすのが、一番手っ取り早い。

 

「超小型、小型、中型……」

 

 指先で空中の表示をなぞる。

 超小型は部隊の土台だ。

 索敵。前衛。火力。防御。

 これはさっき形にした。

 小型は、高速機動と単独戦闘の幅を広げるカテゴリ。

 単車型。飛行ユニット型。軽戦闘車両型。

 どれも魅力的だ。

 だが、今欲しいのはそこじゃない気がした。

 

「……もっと分かりやすく、戦局を左右できるやつ」

 

 そうなると、自然と中型以上へ視線が向く。

 装甲車。

 戦車。

 自走砲。

 輸送車両。

 移動砲台。

 要塞車両。

 どれも一つの強みがある兵器達だ。

 悩みながら目を通しているととある兵器に視線が止まった。

 

中型多脚砲戦車(センチピード・バッテリー):380万P】

・多数の脚で地形を踏破する中型砲戦車。高い踏破性と複数の中口径砲による制圧力を持つ。森林、瓦礫地帯、斜面に強い。

 

「……これ良いな」

 

 思わずそう漏れる。

 森林迷宮。

 瓦礫の街。

 崩れた建物。

 今までの戦場を思い返すと、踏破性が高いというのは魅力的に映る。

 

 車輪や履帯の兵器は接地面が広く、安定性が高い利点がある。

 しかし、いまこの世界の地形は、まともな道路が前提の乗り物と相性が悪い。

 その点、多脚型なら地形を選ばない。

 

「兵器群の後衛に置いて、重盾機で守る形もできるか……」

 

 戦術管制ユニットとの相性も悪くない。

 小隊の後ろに置いて砲撃支援。

 あるいは単独で前へ出して圧を掛ける。

 森林迷宮みたいな場所でも通せる。

 いい。

 かなりいい。

 だがそれだけではB級には届かない。

 必要なのは、もう一段上。

 中型を超えた明確な主力級。

 さらに一覧の表示を下に弾く。

 

大型移動砲台(ギガント・キャリア):2200万P】

・重装甲と大出力主砲を備えた大型移動砲台。展開時には固定砲台形態へ移行し、広域殲滅砲撃を行う。

 

「……うわ」

 思わず、変な声が出た。

 高い。

 けれど、手が届かないわけじゃない。

 二千二百万。

 今の所持ポイントからすれば、取ろうと思えば取れる。

 しかも、大型移動砲台。

 広域殲滅砲撃。

 言葉の響きからして、もう強いだろう。

 ただ、ソーンエンプレス級の相手にも刺さるかは分からない。

 だが少なくともそれ以下、茨の軍勢のような数で押してくる相手には効果的だろう。

 

「……でも、今は違うか」

 

 少し考え、首を振る。

 いや、強い。間違いなく強いだろう。

 だが、大型兵器は運用前提が重い。

 召喚コスト。維持コスト。設置場所。展開余裕。

 それらをちゃんと確認しないまま取るのは危ない。

 そう考えると、やはり中型の拡充が先か。

 

「まずは中型主力を一枚……いや、二枚か?」

 

 口の中で呟きながら、候補を絞る。

 多脚砲戦車。

 戦術管制ユニット連携前提の中型主力。

 

 それに加えて…

 

中型高速飛行砲艇(スカイレイダー):420万P】

・高機動飛行と対地対空両用砲撃を行う中型飛行砲艇。索敵・追撃・攪乱に優れる。

 

「これも欲しいな……」

 

 地上戦力だけ充実させてもだめだ。

 シャープネス・ハーピーみたいなそういう空の敵への対応を考えれば、中型の空戦兵器は有っていい。

 つまり、地上の主力と空の主力。

 その二枚を軸に、超小型兵器群で部隊運用を組むとしよう。

 

「……決まりだな」

 

 深く息を吐く。

 まず、近い目標。

 一部隊を完成させる。

 偵察ドローン二機。

 小型浮遊砲台二機。

 防護重盾機二機。

 戦術管制ユニット一機。

 これを基本編成とする。

 その上で、中型主力。

 多脚砲戦車を一機。

 高速飛行砲艇を一機。

 これで、地上制圧と空中支援の骨格ができる。

 

「スーツ本体、兵器群、中型主力……」

 

 だが、この世界で安心できる強さには程遠い。

 

 もし今この瞬間、クラウド・エンペラーが頭上に現れたとしたら?

 あの雲の帝王が、縄張りを侵されたと判断して異常気象を叩きつけてきたら?

 恐らく、俺はろくな抵抗すらできずに消される。

 防御支援機も。

 ヘビースーツも。

 高機動戦闘ビークルも。

 全部まとめて塵と化す事だろう。もしかしたら多少の抵抗位はできるかもしれないが、死ぬまでの時間が1秒から10秒になった所で意味はない。

 

「……まだ足りない」

 

 ぽつりと漏れる。

 そう、足りないのだ。

 中型主力を揃える。

 部隊を編成する。

 それは確かに素晴らしい。だが、それは多少の強敵と戦うための土台であって、格上を倒す物ではない。

 この世界では常に先にいる必要がある。

 正面から理不尽を押し返せるだけの何か。

 圧倒的な怪物へ、届かせるだけの超火力。

 今の俺が取るべきは──

 

「超大型、だよな」

 

 兵器召喚の最下層。

 超高額の代わりに、一線を画した性能を誇る超兵器たち。

 戦術でも、工夫でも、数でもなく、ただ単純な規模と破壊で全てを圧し潰すカテゴリ。

 超大型の一覧を開く。

 一つ一つの必要ポイントが、笑えるくらい桁違いだ。

 8000万ポイントがあってなお、容易に手を出せない領域。

 だが、説明を読めば読むほど理解できる。

 これはもう兵器じゃない。

 災害をぶつけ返すための災害だ。

 

超大型機動巨兵(マキナフレーム):4800万P】

・対大怪獣、対要塞戦を想定した超大型人型搭乗兵器。

・近接格闘、重砲撃、重装甲を高水準で備える。

・操縦はスーツを介して行うため思念での操作が可能。

・スーツ機能をこの兵器規模に拡張して使用可能。

 

「……ロボ、か」

 

超大型機械巨獣(ベヒモス・ギア):5200万P】

・地上制圧に特化した超大型四脚兵器。

・圧倒的な質量と砲撃能力で地形ごと敵戦力を粉砕する。

・多数の中小兵器を搭載、展開可能。

 

「こっちは陸戦特化型…」

 

 四脚。

 重砲撃。

 兵器搭載。

 要するに、歩く要塞。

 森林迷宮みたいな地形だと少し厳しいかもしれないが、平地や市街地なら無茶苦茶強そうだ。

 さらに。

 

超大型空戦母艦(セレスティアル・ネスト):6500万P】

・制空権掌握に特化した超大型飛行母艦。

・多数の飛行兵器を運用し、広域制圧および空中拠点として機能する。

・長時間の空中戦に適応。

 

「……高ぇ」

 

 しかし、その性能を見れば納得する額だ。

 

 クラウド・エンペラーのような空を支配する怪物に対し、戦える舞台を作れるのはこの手の兵器だろう。

 単機で空を飛べても、空域そのものを押さえられなければ話にならない。

 

 そして最後に、目が止まった項目があった。

 

機動衛星兵器(オービタル・ジャッジメント):9000万P】

・高高度より目標を照準、殲滅する超大型戦略兵器。

・照準補助、範囲収束、貫通特化など複数モードを備える。

・単独運用には膨大なエネルギーと高精度観測が必要。

 

「……なるほどな」

 

 これは、別格だ。

 

 地上戦でも空中戦でもない。その更に上から終わらせるためのもの。

 クラウド・エンペラーみたいな近づくこと自体が危険な相手には、理想的ですらある。

 ただし、9000万。今の所持ポイントでは届かない。

 そして恐らく、取ったところで単純には使えない。

 高精度観測。膨大なエネルギー。

 今の俺にはまだ、その土台がない。

 

「……なら」

 

 自然と、選択肢は絞られてくる。

 今の手持ちで届いて。

 今の俺の運用とも噛み合って。

 理不尽へ殴り返すための第一歩になるもの。

 答えは一つだった。

 

「これにしよう」

 

 超大型機動巨兵(マキナ・フレーム)

 人型。

 近接、遠距離共に可能で操縦が容易。更には今まで取得してきた機能をこの兵器と同じ規模で使える。

 支援機。

 戦術演算。

 兵器群。

 それら全部を超大型兵器へある程度持ち込めるということだ。

 単に巨大ロボを操作するのではない。

 今までの積み上げを継承したまま、出力の桁を一つ、二つ上げるという事だ。

 

「……悪くないどころじゃないな」

 

 むしろ、今の俺が一番欲している物だろう。

 

「……取得」

 

 念じる。

 次の瞬間、視界が白く焼けた。

 

『兵器【超大型機動巨兵(マキナ・フレーム)】がアンロックされました。超大型カテゴリの為、自動召喚はオフになっています。召喚しますか?』

 

 そんな電子音声が響いた直後、今までとは比べものにならない情報量が脳へ流れ込んでくる。それを処理しながら召喚しないを選ぶ。

 

 展開手順。

 搭乗位置。

 起動工程。

 重砲撃モード。

 近接格闘モード。

 兵器群リンク接続。

 スーツ演算との同調。

 重力すら利用した踏み込み。

 巨大腕部による打撃。

 主砲展開。

 胸部高出力砲。

 背部兵装。

 脚部アンカー。

 空間制圧。

 

「ふはは……!」

 

 その情報量、そしてその常識を越えた加減に笑いがこみ上げる。

 

 ビークルの時以上だ。

 

 だが、理解はできる。

 いや、理解できてしまう。

 マキナ・フレームは、ただデカいだけの人型兵器じゃない。

 俺のスーツ機能を核に、その上へ超大型フレームを組み上げる“決戦兵器”だ。

 そしてその役割は明白。

 大怪獣を殴り倒すためのもの。

 

 バイザー表示が更新される。

 

超大型機動巨兵(マキナ・フレーム):待機】

【必要起動条件:高エネルギー/展開空間】

【兵器群連結:一部可能】

【戦術管制対応:有】

 

 いい。

 かなりいい。

 ただ、無制限に使える訳じゃない事も留意する。

 展開空間も要るし、エネルギー負荷も凄まじいはずだ。

 だが、奥の手があるのとないのでは天地の差だ。

 もし今後単騎で街を壊せるような相手と真正面から殴り合う必要が出た時、逃げる以外の選択肢ができたのだ。

 

 視界の隅で、戦術管制ユニットが静かに回る。

 偵察ドローン、小型浮遊砲台、防護重盾機が、それぞれの位置で待機している。

 新たな手であり目である小隊。

 そして超大型。

 

「……まだ足りない。けど」

 

 深く息を吸う。

 

「足りないなら、積み上げるだけだ」

 

 A級にも、S級にも…まだ手が届かない。

 だが、前よりは確実に届く場所が見え始めている。

 この世界で安心できる強さには、まだまだ遠い。

 それでも、その方向へ進むための道だけは、はっきりと足元に伸びていた。

 黒いスーツに青いラインを走らせた俺の周囲には、小さな軍勢が静かに浮いている。

 そしてその背後には、まだ見ぬ超大型機動巨兵という、次の切り札が控えている。

 もう後戻りはできない。

 いや、するつもりもなかった。

 この終わった世界を生き抜くために。

 いつか、空の帝王にすら牙を剥けるようになるために。

 俺はまた一つ、理不尽へ殴り返すための力を手に入れたのだった。

 




今話購入兵器:4

【戦術管制ユニット】
消費ポイント:30万P
・召喚兵器群を統制、管制する超小型戦術支援端末
・兵器群の役割分担、目標優先順位の設定、陣形維持、戦術共有を補助する。
・スーツの戦術演算機能と連結することで兵器召喚群の行動最適化が可能。

【中型多脚砲戦車】
消費ポイント:380万P
・多数の脚で地形を踏破する中型砲戦車。高い踏破性と複数の中口径砲による制圧力を持つ。森林、瓦礫地帯、斜面に強い。

【中型高速飛行砲艇】
消費ポイント:420万P
・高機動飛行と対地対空両用砲撃を行う中型飛行砲艇。索敵・追撃・攪乱に優れる。

【超大型機動巨兵】
消費ポイント:4800万P
・対大怪獣、対要塞戦を想定した超大型人型兵器。
・近接格闘、重砲撃、重装甲を高水準で備える。
・操縦はスーツを介して行うため思念での操作が可能。
・スーツ機能をこの兵器規模に拡張して使用可能。
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