BrokenWorld~黒鉄の装着者~   作:半笑いの妖精

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第三十三話:阿瀬の能力

 

 先に動いたのは、阿瀬の方だった。

 笑みを浮かべたまま、右手を軽く振る。

 たったそれだけの仕草で、空中へ浮かんでいた偵察ドローンが鋭く旋回し、こっちの死角を取るように散った。

 同時に小型浮遊砲台が三方向へ展開。

 防護重盾機までが、阿瀬たちの前へ盾のように滑り込む。

 

「……っ」

 

 嫌な光景だった。

 本来なら、自分の指揮下で、自分を守るために動くはずの兵器群。

 それが、今は向こうの前衛として自然すぎるほど自然に並んでいる。

 幸い戦術管制ユニットまで奪われたわけではない。

 だが、兵器群のリンクは明らかにこちらの意思より、阿瀬の何かに優先されていた。

 防護重盾機が正面を固める。

 その左右から浮遊砲台が射線を作り、偵察ドローンが高所から照準補助へ回る。

 いやになるほど手馴れている。

 

「はっ、良いねぇ。お前の機械兵器、使い易くて助かるぜ」

 

 阿瀬が嗤う。

 次の瞬間、砲台が火を噴いた。

 青白い光弾が左右から突き刺さる。

 ヘビースーツの出力を上げ、右へ急速回避。背部スラスターで体を捻り、片方を避ける。もう片方は掌部のエネルギー弾で相殺。

 だが、それで終わらない。

 高所の偵察ドローンが角度を変え、こちらの移動先へ“案内”するようにレーザー光を走らせる。

 そこへ、阿瀬の後ろにいた連中が一斉に投擲。鉄パイプ、バット、刃物、あり合わせの瓦礫。

 更に寝返った防護重盾機が、こちらの進路を塞ぐように滑り込んでくる。

 

「ちっ……!」

 

 面倒どころではない。

 自分の兵器が、こちらの動きを一番よく理解したまま敵の側へ回っているのだ。

 強い。

 そして、厄介極まりない。

 防護重盾機の横をすれ違いざま、前腕部の重装甲で体当たりを叩き込む。

 鈍い音。高耐久の外殻が軋み、機体が横へ吹き飛ぶ。

 そこへ被せるように阿瀬が指を鳴らした。

 公民館前に散らばっていた瓦礫が、ぴくりと震える。

 

 何か来る…!

 

 咄嗟に高度を取る。

 直後、地面に転がっていたコンクリ塊、砕けたブロック、折れた看板の支柱、割れたガラス片までが一斉に持ち上がった。

 それらは寄せ集めのままではなかった。

 見えない糸で繋がれたように組み上がり、無理やり人型めいた輪郭を取っていく。

 瓦礫の兵士。

 頭部は看板。胴はブロック塊。腕は鉄パイプと折れた柱。

 ぎちぎちと嫌な音を立てながら、数体、十体、さらにその後ろにも形を取る。

 

「……人形…いや傀儡か」

 

 思わず漏れる。

 使い捨ての兵士。

 阿瀬は、自分の兵器を奪うだけじゃない。周囲にある無機物まで動員して数を作る。

 しかも雑に見えて、動きは十分以上に厄介だった。

 前へ出た瓦礫兵が盾になり、その隙間から砲台が撃つ。高所の偵察ドローンが位置取りを補助し、重盾機が要所を塞ぐ。

 即席なのに陣形になっている。

 

「くそっ……!」

 

 背部ミサイルポッドを開く。

 相手は人間。

 だからこそ、本来ならここまでの火力は使いたくない。

 だが、向こうは一線を越えてきている。こちらの兵器を奪い、瓦礫兵まで作って押し込んできているのだ。

 

「くたばれ!」

 

 ミサイルを数発、阿瀬ではなく瓦礫兵と寝返った兵器群の中間へ叩き込む。

 爆発。

 公民館前の石畳が弾け、瓦礫兵数体が吹き飛ぶ。寝返った偵察ドローン一機も巻き込まれて空中で火花を散らした。

 だが。

 

「甘ぇな」

 

 阿瀬が片手を掲げる。

 

 阿瀬へと迫る背部ミサイル群、その全てが空中で不自然に揺れた。

 

「……なに?」

 

 一瞬だけ理解が遅れる。

 次の瞬間、まだ飛翔中だったミサイルの進路が、こちらへ曲がった。

 

「ふざっ──!」

 

 操られた。

 阿瀬は瓦礫や兵器だけじゃない。飛翔中のこちらの兵装にまで干渉してきたのだ。

 

「防御支……!」

 

 呼ぼうとして、止める。

 支援機を出した所で操られるだけだろう。

 自分でやるしかない。

 両腕の主砲を開き、至近のミサイル二発を砲撃で迎撃。

 だが全部は無理だ。左右から回り込むように迫る誘導弾は、まるで最初からこちらを狙っていたかのように鋭い。

 片方を避ける。

 もう片方が肩口へ掠め、爆炎が装甲を舐めた。

 

「ぐっ……!」

 

 衝撃で姿勢が崩れる。

 そこへ瓦礫兵が一斉に飛びかかってくる。雑な動きだが、数が多い。足を止めるには十分だ。

 近接武器生成Ⅱ。

 大太刀を展開し、横薙ぎ一閃。

 瓦礫の胴体がまとめて裂け、二体、三体と崩れる。返す刃で上空の偵察ドローンを叩き落とし、更に一歩踏み込む。

 狙うのは、阿瀬本人。

 兵器も傀儡も厄介だが、元を断てば止まるはずだ。

 少なくとも、この手の能力者は本人を崩すのが一番早い。

 

「そこだぁッ!」

 

 地面を砕く勢いで踏み込み、ヘビースーツの膂力を乗せた斬撃を叩き込む。

 だが阿瀬は避けない。

 その代わり、背後から瓦礫兵が盾のように割り込んだ。

 斬り裂く。

 看板とコンクリ塊が飛ぶ。

 その隙に阿瀬の足元から鉄筋が蛇みたいに這い上がり、こちらの脚へ絡みついた。

 

「っ…!」

 

 体勢が一瞬止まる。

 その一瞬で十分だった。

 阿瀬が掌を向ける。

 空気が軋む。

 周囲に散らばる金属片、折れたナイフ、割れた窓枠、砕けた看板の釘までが一斉に浮かび、銃弾みたいな速度で飛ぶ。

 全方向同時。

 ヘビースーツの装甲が弾かれ、火花が散る。

 肩。腕。脇腹。脚。

 痛い、というより重い。継続的に殴られているみたいな衝撃が積み重なる。

 

「お前のそのデカい外装、良いよなぁ」

 

 阿瀬が嗤う。

 

「頑丈で。派手で。分かりやすく強そうで」

 

 その声が妙に近く感じた瞬間、背中に悪寒が走る。

 ヤバい。

 咄嗟に後方へ跳ぶ。

 だが遅かった。足元の影から、細く長い“何か”が立ち上がる。

 肉眼やバイザーでは見えない糸。しかし感覚として、そう感じ取った。

 漫画的に言えば魔力だろうか。

 糸のような透明の線が、こちらのヘビースーツへ何本も絡みついたような幻視が見える。

 

【警告:外装制御系へ異常干渉】

【警告:駆動系誤作動】

【警告:外装制御権限競合】

 

「なっ!?」

 

 ぞっとした。

 さっきまでの兵器群への干渉ではない。

 今度はヘビースーツそのものへ手を伸ばしてきている。

 

「……っ、まさか」

 

 阿瀬が奥の手を切ったのだと、嫌でも分かった。

 腕が、わずかに勝手に動く。

 主砲の照準が、こちらの意志とズレる。

 脚部スラスターの噴射が一拍遅れ、逆に不自然な挙動を見せる。

 

「ぅ、ぐ……!」

 

 自分の体が、自分のものじゃないみたいな感覚。

 ヘビースーツはもう装備以上の何かだ。だからこそ、その制御へ干渉される違和感は凄まじい。

 阿瀬の目が細くなる。

 

「へぇ……」

 

 愉快そうに。

 だが少し驚いたようにも。

 

「傀儡強度4。普通ならこれで大体決着すんだがな…。やっぱ兄ちゃん強ぇわ」

 

 奪われた兵器。

 操られる傀儡。

 スーツにまで及ぶ干渉。

 しかしヘビースーツの名は伊達じゃない。兵器群ほど簡単には落ちなかった。

 何度も重ねた強化。

 自分との同調。

 メインスーツからの延長線にある、装着型の中核兵装。

 完全に奪われるには至っていない。

 

「……ふざけるな」

 

 喉の奥から絞り出す。

 両腕の駆動がぎしぎしと軋む。

 勝手に開こうとする指を、無理やり閉じる。

 照準を外そうとする主砲を、こちらの意思で正面へ戻す。

 スーツ越しに、全身へ熱が走る。

 エネルギー系統が過剰に振れているのだろう。警告表示がいくつも踊る。

 だが、押し返せる。

 少なくとも、ギリギリで。

 

「マジ……!?」

 

 阿瀬が驚きながら笑う。

 

「やるじゃねぇか!」

 

 一瞬、干渉に打ち勝った。

 

 しかし、それが致命的な隙になった。

 スーツ制御を奪い返すことに意識を集中しすぎた。

 視野が狭まった。

 阿瀬本人から、完全に目を切ってしまった。

 次の瞬間、腹部へ重い衝撃が突き刺さる。

 

「──がっ!?」

 

 何が起きたのか、一瞬分からない。

 視線を落とすと、阿瀬がいつの間にか間合いの中にいた。

 手には、瓦礫や金属片を束ねて即席で形成した太い杭槍。

 それをヘビースーツの腹へ叩き込んできたのだ。

 しかもただの刺突じゃない。

 触れた瞬間、杭槍がほどける。

 中から見えない糸じみた魔力が広がり、装甲の隙間へ潜り込もうとしている。

 

「ぐっ、がぁ……!」

 

 阿瀬が、自分の能力を直接打ち込んできた。

 ヘビースーツの駆動が一瞬止まる。

 膝が落ちる。

 視界が揺れる。

 そこへ、今まで温存していたらしい拳銃持ちの男が横から発砲。

 更に寝返った砲台から光弾。

 瓦礫兵が両腕へ。

 阿瀬自身が、杭槍を押し込みながらにたりと笑う。

 

「詰みって奴だ。兄ちゃん」

 

 阿瀬の目は勝ちを確信していた。

 確かに危機的だった。

 ソーンエンプレスの時よりも、旗色はよほど悪い。

 向こうは怪物じゃない。

 その認識によって手を抜いていた部分が自分の中にあったのだろう。

 兵器群を奪われ、スーツへ干渉され、距離を詰められた今、それが致命傷になりかけている。

 このままじゃ押し切られる。

 人相手に使うことはないと思っていた。

 使うなら怪獣や、B級の化け物相手だと思っていた。

 だが、そんな線引きに意味がある場面はもうとっくに過ぎている。

 

「くそ、あぁ…もう…知らねぇ」

 

 掠れた声で、そう漏れる。

 阿瀬が眉をひそめる。

 

「何を──」

 

 最後まで言わせない。

 

超大型機動巨兵(マキナ・フレーム)召還(来い)!」

 

 世界が、変わった。

 次の瞬間、ヘビースーツの上から更に巨大なフレーム展開が始まる。

 光の粒子。重装甲。骨格。外殻。

 周囲の空間ごと押し広げるみたいに、超大型機動巨兵の構造体が一気に組み上がっていく。

 阿瀬の顔から、初めて余裕が消えた。

 

「…な、…は?」

 

 それも当然だろう。

 ついさっきまでオーガ程度のサイズだったものが、次の瞬間には、公民館前の空間を圧迫する巨兵の中核へ変わり始めているのだから。

 阿瀬の杭槍が、無理やり押し返される。

 瓦礫兵が圧に耐えきれず弾け飛ぶ。

 寝返った砲台も、防護重盾機も、急激に拡張される装甲に押しのけられて散る。

 

超大型機動巨兵(マキナ・フレーム):展開開始】

【戦術演算:再統合】

【兵装リンク:再構築】

 

 阿瀬が咄嗟に糸を走らせる。

 超大型機兵へも干渉を伸ばそうとしたのだろう。

 だが、遅い。

 スーツ一着とは規模が違う。

 骨格も、装甲も、駆動も、兵装も、何もかもが桁違いの質量で展開されている。

 阿瀬の能力が届いたとしても、全部を一度に握り潰せるほど軽くない。

 俺の視界が、一気に高くなる。

 コックピットというより、中核同調区画。

 マキナ・フレームの感覚が、手足の延長みたいに繋がる。

 阿瀬たちが、小さく見えた。

 さっきまでこちらを囲んでいた略奪者どもが、今は豆粒ほどの距離感に落ちている。

 その顔に浮かぶのは、ようやく明確な恐怖だった。

 

「お、おい」

 

 誰かが、震えた声で漏らす。

 

「んだよ、あれ……!」

 

 阿瀬だけが、その場に踏みとどまっていた。

 だが、それでも目の奥には明らかな動揺がある。

 当然だ。

 兵器群を奪えば優位。

 ヘビースーツへ干渉すれば勝ち。

 その想定のさらに外から、超大型機動巨兵なんて札が出てくるとは思わない。

 

「まさか、初めてこれを使う相手が人間だとはな」

 

 B級以上を想定し、つい先日用意していた奥の手中の奥の手。それを同じ能力者に使うことになるとは思いもしなかった。

 

 阿瀬(こいつ)は強い。

 

 その思いはマキナ・フレームを纏った今でも変わらなかった。

 むしろどんどんと警戒心が高まっていく。

 兵器を奪い、外装に干渉し、瓦礫を使い捨ての兵士へと変える能力者。

 油断や慢心をしようものなら容易く足元を掬って来るだろう。

 

 故に最初から全力で叩き潰す。

 

「……くたばれ」

 

 低く吐き捨てる。

 マキナ・フレームの巨体が、地を震わせて踏み込んだ。

 一歩で石畳が砕け、二歩目で門柱が軋む。

 ド級の質量。ド級の出力。

 それをそのまま暴力へ変換して、真正面から阿瀬へ襲い掛かる。

 右腕部の巨腕打撃機構を最大まで解放。

 肘、肩、背部フレーム、脚部アンカー。

 全駆動を連結し、鋼鉄の拳へと破壊力を集約する。

 空気が逃げる間も無く、押し潰され、周囲の瓦礫兵が圧だけで吹き飛んでいく。

 阿瀬の前にいた略奪者どもも悲鳴を上げる暇もなく弾かれる様に飛びそして──。

 

 破壊の一撃が阿瀬を捉えた。

 その瞬間だけ、時間が圧縮されたような感覚。

 拳が届く。

 空間が軋む。

 阿瀬の姿が衝撃の中へ呑まれる。

 その刹那。

 確かに、聞こえた。

 

 ──まさかコレを使わされるとは。

 

「っっっ!!」

 

 一撃は入った。

 思考では、そう確信していた。

 マキナ・フレームの超質量と超出力の殴打をまともに食らって、無事なはずがない。

 人間サイズの相手なら血溜まりすら残らず跡形もなく消し飛んでいておかしくない。

 なのに。

 心が、警戒を解かない。

 聞こえるはずのない阿瀬の一言が、頭にこびりついて離れなかった。

 衝撃の向こうで何かがおかしい。

 そう、本能が言っている。

 

「……念のため、トドメだ」

 

 主砲へエネルギーを回す。

 胸部。腕部。背部補助炉。

 高出力砲撃を叩き込めば、今度こそ終わる。

 そう判断して、チャージへ入った、その瞬間だった。

 空間が、揺れた。

 

「な、に……?」

 

 砂煙が、盛り上がる。

 ただ立ち上っているんじゃない。

 内側から何か巨大なものが起き上がるみたいに、煙の壁そのものが押し広げられていく。

 影が映る。

 最初は輪郭だけ。

 だが、それはどんどん大きくなる。

 阿瀬のサイズではない。

 瓦礫兵でもない。

 もっと巨大で、もっと重い。

 ついに砂煙のカーテンを突き破って、それは姿を現した。

 

 怪獣。

 

 そうとしか形容できない。

 かつて見たアースメイル・ワイバーンよりも一回りは大きい。

 四肢で地を踏みしめる重厚な体躯。

 竜とも獣ともつかない異形のシルエット。

 だが、その外殻は生物の鱗ではなかった。

 金属。

 鈍く、重く、無機質な金属外殻が全身を覆っている。

 頭部には獰猛な顎。

 背中には砲身めいた突起。

 肩口と脇腹には装甲板の重なり。

 尾の先端は刃のように鋭い。

 それが、砂煙を払いながらゆっくりと立つ。

 

「……っ」

 

 バイザーへ視線を走らせる。

 普段なら、モンスターを見た瞬間に解析ウィンドウが開く。

 名前、ランク、詳細、討伐P。

 それが当然のはずだった。

 だが、反応しない。

 解析機能が、沈黙したままだ。

 なら。

 これはモンスターじゃない。

 俺の中で、その答えが出た瞬間。

 怪獣の頭部付近、胸部ともコックピットともつかない位置から、阿瀬の声が響いた。

 

傀儡装獣(ギガンペット・ビースト)。まさかコイツを使わされるとは思ってもなかったぜ』

 

「……テメェ」

 

 拳を握る。

 つまり、あの男は生きている。

 しかも、自分で巨大兵器を引っ張り出してきた。

 阿瀬の声には、さっきまでの軽薄さとは別の重さが混ざっていた。

 余裕だけじゃない。

 こいつ自身も、この札を簡単に切る気ではなかったらしい。

 

「驚いたか?」

 

 怪獣──いや、傀儡兵器の口が開く。

 そこから阿瀬の笑い声が響くのが、ひどく不快だった。

 

「俺の能力は物を操るだけじゃねぇ。操る物を作ることもできるのさ」

 

 なるほど。

 今まで見せていたのは、小手先だったわけだ。

 瓦礫兵、奪った兵器、外装干渉。

 全部が前座で、本命はこっち。

 

 これが阿瀬の奥の手。

 

「人間相手にここまでやる気はなかったんだがなぁ」

 

 阿瀬の声が、兵器巨獣越しに愉快そうに続く。

 

「兄ちゃんちょっと強すぎだわ」

 

 掛け値無しの正直な感想。

 敵とは言えその一点だけは、少しだけ気分が悪くない。

 

 戦術的解析を終えたのかバイザーが警告を吐く。

 

【高脅威兵装反応】

【対大型戦闘へ移行】

【対象:分類不能】

【警告:対人戦闘想定を超過】

 

「……ふはっ」

 

 笑いが漏れた。

 まさか、ソーンエンプレスを倒した次の相手が、人間の持ち出してくる怪獣サイズの兵器だとは。

 この世界は本当に休ませてくれない。

 だが、ちょうどいい。機会という意味でも、相手という意味でも。

 

 阿瀬の傀儡装獣が、地を踏み鳴らす。

 一歩。

 二歩。

 それだけで公民館前の地面が沈み、瓦礫が跳ね、門柱にひびが走った。

 阿瀬の声が、重々しく響く。

 

「さあ、第二ラウンドだ。兄ちゃん」

 

 俺はゆっくりとマキナ・フレームの姿勢を落とした。

 拳を握る。

 主砲を開く。

 脚部アンカーを地面へ噛ませる。

 目の前の巨獣兵器を見据えながら、短く息を吐く。

 

「上等…!」

 

 そして次の瞬間には、略奪者との交渉でも、人間同士の乱闘でもない。

 超大型兵器同士の真正面からの殺し合いが始まろうとしていた。

 




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