BrokenWorld~黒鉄の装着者~   作:半笑いの妖精

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第七十五話:廃棄統合巨神兵

 

 神性や性質集めに没頭しているうちに、気付けばかなり長い時間が経過していた。改めて確認すると既に一ヵ月程潜りっぱなしらしい。

 この身体は疲労や空腹とは無縁であり、昼夜の概念がないこの場所や休憩をしようものなら喜んで襲いかかってくる廃品共の存在がそれに拍車を掛けていた。

 

 外層廃材処理区は、とうに抜けている。

 その先にあった廃棄炉心区。

 不良兵装試験場。

 破損炉心隔離層。

 廃棄眷属の保管庫。

 進むたびに、敵の質は明らかに上がっていった。

 S級。

 S+級。

 局所的にはSS級に片足をかけるような歪な兵装まで現れた。

 だが、得られるものも多かった。

 

【性質:神性濾過】

【性質:再構築補助】

【性質:汚染遮断】

【性質:出力精密操作】

【性質:機構接続補助】

【性質:素材圧縮】

 

 全てをそのまま取り込むわけではない。

 神性を読む。

 汚染を切る。

 性質を分ける。

 自分と噛み合うものだけを人造機械偽神(デミ・エクス・マキナ)で再編し、自分の機能へ落とし込む。

 

 理解して取り込めば力となる。

 その感覚を少しずつ蓄積していき、十二分に得た。

 これ以上進むのは欲張りすぎかもしれない。

 そろそろ休憩もしたいと。引き返す事を考えた、その時だった。

 地面が微かに揺れた。

 最初は、遠くの廃品が動いただけだと思った。

 廃棄神工廠では珍しくもない。

 だが、揺れは次第に大きくなっていく。

 床下のレールが鳴る。

 壁の配管が軋む。

 天井から吊られた炉心の残骸が、鎖ごと震える。

 周囲の廃品が、意思を持つかのように集まり始めた。

 折れた砲身。

 潰れた装甲板。

 使い捨てられた作業腕。

 砕けた炉心殻。

 半分だけ残った多脚機械。

 停止していたはずの搬送台車。

 無数の歯車虫の死骸。

 それらが床を這い、壁を剥がし、天井から落ち、中央へ集まっていく。

 

【警告】

【周辺廃材群、強制再編中】

【高密度機械神性反応】

【工廠内防衛機構、または廃棄眷属集合体と推定】

 

「……引き返す判断、ちょっと遅かったか?」

 

 廃材の山が盛り上がる。

 ただ積み重なっているわけではない。

 部品同士が噛み合い、神性信号が走り、炉心の欠片が中枢へ押し込まれていく。

 腕が生えた。

 次に脚。

 背中には折れた砲塔群。

 胸部には無数の壊れた炉心が集まり、巨大な炉心塊を形成する。

 頭部に当たる部分には、壊れた観測球がいくつも埋め込まれていた。

 歪な巨人。

 視界に情報が開く。

 

兵装名:廃棄統合巨神兵(ジャンク・デウスコロッサス)

ランク:SS-

詳細:廃棄神工廠深層部に蓄積した旧式神性兵装、廃材、破損炉心、自己増殖機構が緊急統合された巨大兵装。侵入者が一定以上の神性断片を取得した場合、工廠が回収対象と判断して起動する。破壊された部位を周囲の廃材で即時再構築し、対象から奪った神性を自らの構造へ組み込む。

神性品質:高

保有性質:廃材統合/破損炉心連結/神性回収/自己再構築/圧壊処理/汚染命令散布

 

「SS-……」

 

 明確に格が上がった。

 勝てない相手ではない。

 だが、取り返しのつかない損耗を受ける可能性はある。

 機神兵装(デウス・ギア)を使うか。

 一瞬だけ迷い、使わない判断を下した。

 素材識別。

 神性分解補助。

 汚染命令遮断。

 炉心出力迂回。

 素材圧縮。

 砲塔化付与。

 ここまで得たものを試すには、いい相手だ。

 

「まずは普通にやるか」

 

【警告:危険】

 

「無理そうなら切り替えるさ」

 

【…了解】

 

 廃棄統合巨神兵が動いた。

 一歩。

 それだけで床が沈む。

 巨大な腕が振り下ろされた。

 避ける。

 腕が床を叩き潰した瞬間、衝撃波だけでは終わらなかった。

 叩きつけられた場所から、赤黒い神性命令が波紋のように広がる。

 触れた廃材が一斉に牙を剥いた。

 床材が刃になる。

 壁の配管が槍になる。

 天井の搬送アームが首を狙って落ちる。

 工廠そのものを武器にしている。

 

「多彩だな」

 

 戦闘形態(バトルモード)へ移行する。

 黒銀の外殻が薄く全身を覆い、背部の推進器官が短く開いた。

 同時に展開霧装も広げ、戦場を自分優位に作り替えていく。

 頭部めがけて飛んできた配管槍を掴む。

 触れる。

 読む。

 汚染は神性濾過と汚染遮断で除去処理。

 素材として判定。

 余計な命令を剥がし、残った金属と機械神性の芯をこちらの砲身へ再構築する。

 撃つ。

 黒銀の杭が巨神兵の膝へ刺さった。

 装甲が割れる。

 だが、すぐに周囲の廃材が集まり、杭自体も取り込まれ、瞬く間に元へ戻っていく。

 

【敵性自己再構築:高速】

【周辺廃材が存在する限り、損傷復元が継続】

 

「……なら、その材料を奪ってやれ」

 

 左手を開く。

 自己増殖と分解機能を強化した機械蟲軍を展開する。

 周囲の廃材を喰い尽くし、修復素材を奪い取る。

 同時に黒銀の杭を生成。

 四肢の関節を破壊するように撃ち放つ。

 杭自体は吸収される。

 だが、破壊力の方が上回った。

 巨神兵の関節部が砕ける。

 修復しようとするが、素材が足りず、途中で止まった。

 当然、向こうも対応してくる。

 周囲の廃品を無理やり人型に組み上げ、廃品兵を生み出した。

 滴るコールタールのようなヘドロ。

 錆び付いたチェーンソー。

 変形し、折れ曲がった刀剣。

 砲身を頭部にした個体。

 解体爪を腕にした個体。

 それらがただの壊れた武器なら、本質的にナノマシンである機械蟲軍にはほとんど効果がない。

 だが、廃品兵は巨神兵の神性を薄く引き継いでいた。

 触れた蟲が容易く破壊される。

 それどころか、一部は逆に吸収され、巨神兵側の修復素材へ回されていく。

 舌打ちする。

 その直後、巨神兵の背部に砲塔群が現れた。

 全てがこちらを向く。

 口径も形式もバラバラだ。

 実弾。

 熱線。

 神性を帯びたエネルギー砲。

 圧縮された質量弾。

 汚染に特化した侵食弾。

 歪な砲塔群が、一斉射撃を行う。

 無数の点が面となって襲い来た。

 避けるのは困難。

 性質:砲塔化を発動。

 こちらも周囲に多種多様な砲塔を作成し、応戦する。

 だが、一手遅い。

 全ては相殺しきれず、一部がすり抜けてこちらに届いた。

 戦闘形態の装甲。

 物理シールド。

 その表面へ重ねたエネルギーバリア。

 それでもなお、砲撃の一部はダメージを通してくる。

 

【外装表層:損耗】

【汚染命令:遮断中】

【自己再構築:稼働】

 

 数分。

 弾数にすれば億は下らない数を耐え切ったところで、ようやくこちらのターンが来た。

 機械霧によって作られた砲口が、一斉に火を噴く。

 ただし、狙いは巨神兵本体ではない。

 その周囲だ。

 着弾箇所に砲塔が生える。

 その砲塔がさらに弾を撃つ。

 撃たれた先にまた砲塔が生える。

 ねずみ算式に、砲塔が増えていく。

 巨神兵を狙う銃口が十万を越えたことを確認する。

 

「撃て」

 

 無数の砲口が同時に火を噴いた。

 一つ一つの威力は小さい。

 だが、水滴が岩を穿つように、狙いを絞り、集中させれば物量はそのまま力になる。

 狙うのは装甲の薄い関節。

 接合部。

 剥き出しの炉心。

 エネルギー導管。

 巨神兵の全身に、小さな爆発が連鎖する。

 動きが鈍った。

 そこへ踏み込む。

 左腕を刃へ。

 右腕を原子分解爪へ。

 胸部の破損炉心へ向かって一直線に突っ込む。

 巨神兵の腹部が開いた。

 中から、廃材圧縮機構が露出する。

 空間そのものを押し潰すような圧が来た。

 

「っ……!」

 

 重い。

 ただの物理圧ではない。

 不良品と判定した対象を、神性ごと素材へ変える圧壊処理。

 こちらの構造を読み取り、廃材として再分類し、圧縮する命令が混ざっている。

 咄嗟に素材識別を反転させ、自己定義を押し付ける。

 圧が一瞬だけ緩んだ。

 その隙に左腕を切り離す。

 圧壊処理に巻き込まれた左腕が、爪先ほどの黒銀の塊へ圧縮された。

 あれをまともに食らえば、今の俺でも危ない。

 左腕を再構築する。

 冷や汗の代わりに、思考が鋭くなる。

 今の俺でも危険な攻撃。

 つまり、俺に足りないものでもある。

 …実に欲しい。

 

【性質:神性圧壊】

【解析率:11%】

 

 巨神兵の胸部炉心が唸る。

 暴走連結炉心。

 制御の効かない破損炉心をいくつも束ね、臨界寸前の出力を無理やり一つにまとめている。

 安定はしていない。

 だが、その代わりに瞬間出力が途轍もなく高い。

 赤黒い光が、胸部に集まる。

 このまま放置すれば、この区画まるごと吹き飛ぶような出力数値だった。

 まともに食らえば、無事では済まない。

 回避や逃走は無意味。

 防御はさらに愚策。

 演算が提示した有効策を見て、一瞬だけ気が重くなる。

 だが、やらなければ消し飛ぶだけだ。

 

【推奨行動】

【炉心連結部への直接干渉】

【暴走出力の逃がし先を作成】

【同時に神性圧壊処理の制御系を破壊】

 

「つまり、あれに手ぇ突っ込めってか」

 

【はい】

 

「最高だな」

 

 右腕を伸ばす。

 展開霧装を薄く広げ、周囲の砲塔群を制御する。

 砲塔化で増殖した十万を超える銃口は、追加の指示を待っていた。

 巨神兵の目にあたる観測球が赤黒く光る。

 足元の廃材が盛り上がり、廃品兵が次々と生まれた。

 全てが巨神兵の神性を帯びている。

 単なる雑兵ではない。

 触れればこちらを素材と認識し、削り、取り込み、巨神兵へ戻すための回収端末だ。

 廃品兵が雪崩れ込んでくる。

 

「邪魔だ」

 

 周囲の砲塔群が一斉に火を噴いた。

 弾丸。

 熱線。

 分解光。

 汚染遮断弾。

 砲撃の種類は統一しない。

 巨神兵の処理に少しでも負担を掛けるため、あえて混合させる。

 廃品兵が次々に砕ける。

 砕けた残骸は、すぐに巨神兵へ戻ろうとする。

 その前に機械蟲軍を差し込み、防ぐ。

 同時に、こちらのリソースとして扱う。

 神性濾過。

 汚染遮断。

 素材識別。

 神性分解補助。

 使える部分だけを抜き、汚染部分は切り捨てる。

 廃品兵の残骸が黒銀の粒子へ変わり、俺の背後へ流れ込んだ。

 

【廃品兵群:解体進行】

【敵性素材回収率:低下】

【巨神兵の自己再構築速度:減少】

 

 巨神兵が吠えた。

 音ではない。

 壊れた機械聖歌のような神性命令。

 工廠全体が応答する。

 天井から搬送路が落ちる。

 壁から解体アームが突き出す。

 床のレールが蛇のように捻れ、足元を縛ろうとする。

 全部が武器だ。

 全部が敵だ。

 この工廠そのものが、廃棄統合巨神兵の手足になっている。

 なら、逆に読めばいい。

 伸びてきたレールへ触れる。

 素材識別。

 接続系統を読む。

 どこから命令が来ているか。

 どこへ神性が流れているか。

 その経路を見つけ、神性分解補助で切る。

 レールが力を失う。

 空いた一瞬で踏み込む。

 廃品兵の群れを抜ける。

 左からチェーンソー腕。

 右から刀剣背骨。

 上から砲頭個体。

 身体を霧へほどき、隙間を滑る。

 再構成と同時に右腕を爪へ。

 左腕を砲へ。

 背後の砲塔群へ命令。

 一点集中。

 巨神兵の右膝関節へ、十万の砲口が同時に火を吐いた。

 関節部が砕ける。

 巨体が沈む。

 修復しようと周囲の廃材が集まるが、そこへ機械蟲軍を先回りさせる。

 修復素材が足りず、右膝の再構築が遅れた。

 しかし、胸部の赤黒い光は膨れ上がっている。

 

【臨界まで:推定13秒】

 

 短い。

 だが、足りる。

 左腕を切り離し、霧に変える。

 その霧を、巨神兵の足元から胸部へ走らせる。

 直接突っ込めば、圧壊処理に潰される。

 なら、先に流路を作る。

 機械蟲軍を細く薄くし、胸部装甲の隙間へ潜り込ませる。

 廃材統合の継ぎ目。

 破損炉心同士の連結部。

 暴走出力の逃げ道になりそうな細い経路。

 

 見つけた。

 

 右腕を砲塔化。

 圧縮した黒銀の杭を撃ち込む。

 杭は胸部装甲を貫かない。

 表層で止まる。

 だが、それでいい。

 杭は破壊用ではない。

 接続用だ。

 杭の内部から展開霧装を逆流させ、胸部内部の蟲群と接続する。

 

【内部接続確立】

【破損炉心連結部へ干渉開始】

【暴走出力、誘導準備】

 

 巨神兵がこちらを潰しに来る。

 巨大な腕が振り下ろされた。

 避ける余裕はない。

 散布した展開霧装を土台に砲塔群を展開し盾にする。

 同時に自己改築式外殻を厚くする。

 更に物理シールド、エネルギーバリアも発生させる。

 そこまでやっても、一部は突き破ってくる。

 入り込んだ刃の触手により腕が落ち、全身が軋む。

 装甲の外層が吹き飛び、シールドが割れる。

 肩口から胸にかけて、赤黒い神性命令が侵入しようとする。

 それを弾き、遮断し、切り捨てる。

 

【臨界まで:六秒】

 

「間に合え……!」

 

 巨神兵へ機械蟲軍を殺到させ、一斉に自爆させる。

 ダメージが目的ではない。

 自爆によって微粒子と化した蟲を、暴走した炉心へ侵入させる。

 命令を上書きする。

 暴走そのものは止められない。

 エネルギー収束も止められない。

 だが、出力先を作ることはできた。

 爆発に変換されるエネルギーを即席で作成した外部放出回路へ繋ぐ。

 

【臨界まで:二秒】

【暴走出力誘導】

【内部崩壊開始】

 

 巨神兵の胸が裂けた。

 赤黒い光が輝く。

 工廠の壁面を削りながら、巨大な光の奔流が俺の胴体の横をかすめ、外層区画を斜めに貫いた。

 俺自身に甚大なダメージを与え、区画の一部が吹き飛ぶ。

 だが、最悪の事態は防いだ。

 巨神兵も無事では済まない。

 暴走出力の逃げ道を無理やり作られ、胸部の破損炉心群が内側から千切れている。

 直接命令を書き込まれた圧壊処理中枢は、自分自身を不良品と認識し、胸部装甲を内側へ潰し始めていた。

 巨神兵が膝をつく。

 

「ここまでだ」

 

 踏み込む。

 右腕を原子分解爪へ。

 左腕を再構築し、神性分解補助を最大化する。

 狙いは胸部中枢。

 廃棄統合巨神兵の神性核。

 装甲の隙間へ腕を突き入れ、できる限り奪い取る。

 

【神性分解補助:稼働】

【性質:廃材統合】【精度・強度増加】

【性質:破損炉心連結】【精度・強度増加】

【性質:神性回収】【精度・強度増加】

【性質:自己再構築】【精度・強度増加】

【性質:神性圧壊】【精度・強度増加】

 

 巨神兵の胸部が砕けた。

 巨体が崩れる。

 腕が落ちる。

 背部砲塔群が沈黙する。

 脚部の廃材結合がほどけ、無数の部品へ戻っていく。

 

『神性を入手しました』

 

 勝った。

 それは間違いない。

 

 だが──大陸の中枢機神が課した課題がこの程度で終わる筈はなかった。

 

 崩れた巨神兵の残骸、その中心で何かが脈打った。

 小さい。

 巨体に比べれば、拳大ほどにも見える。

 だが、その反応は明らかにおかしい。

 赤黒い炉心片。

 そこへ、周囲に散らばった巨神兵の残骸が吸い寄せられていく。

 腕。

 脚。

 破損炉心。

 廃材。

 砲塔。

 圧壊機構。

 汚染命令回路。

 全部が、その小さな核へ呑まれる。

 

【警告】

【高位神性核反応】

【廃棄統合巨神兵残骸:吸収中】

【神格反応:亜神級】

 

「……ラウンド2、か」

 

 空間の圧が変わる。

 格が違う。

 位階が違う。

 視界に情報が開いた。

 

存在名:暴走炉進核(ランペイジ・エボルデット・コア)

ランク:SS

詳細:あらゆる機械性質や機械神性を際限無く取り込み、自己進化を行い暴虐を撒き散らす亜神級神核。

神性品質:高

保有性質:増強補修/炉心融合/神性収奪/自己進化/圧壊処理

存在名:暴虐模倣機神(マシンゴッズ・ランペイジ・コピー)

ランク:SS

詳細:あらゆる機械性質や機械神性を際限無く取り込み、自己進化を行い暴虐を撒き散らす亜神級神核を持つ人型機神。受けた事象や現象を解析し、自らのモノとする。

神性品質:高

保有性質:増強補修/炉心融合/神性収奪/自己進化/圧壊処理

 

 そこに立っていたのは、俺と瓜二つの存在だった。

 ただし、色が違う。

 ドス黒い赤を纏った銀。

 顔立ちも、輪郭も、体格も、俺と同じ。

 だが、内側で脈打つものは明確に別物だった。

 暴走。

 収奪。

 進化。

 圧壊。

 それらを混ぜ合わせた、廃棄神工廠製の模倣機神。

 相手がゆっくりと右手を上げる。

 こちらと同じ動作。

 こちらと同じ姿勢。

 だが、その掌に集まるのは黒銀ではなく、赤黒い暴走。

 

【敵性存在、所有者の形状情報を模倣】

【戦闘データの一部を参照している可能性あり】

【危険度:極大】

 

「俺のコピーってわけね」

 

 模倣暴虐機神の背後で、廃材が翼のように展開する。

 砲塔。

 炉心。

 圧壊機構。

 汚染命令。

 それらが人型の背に収まり、俺が戦闘形態を展開する時に似た配置へ組み上がっていく。

 なるほど。

 工廠がこちらを見ていたのは、このためか。

 学習し、模倣し、奪う。

 廃棄されたものたちの最後の証明。

 こいつは、俺を倒すために俺へ似せられた。

 右手を開く。

 機神兵装を使うか。

 今度は迷う必要がほとんどなかった。

 目の前の相手はSS。

 神格反応は亜神級。

 しかも、こちらの性質を模倣してくる。

 通常戦闘で削り合えば、得るものは多いかもしれない。

 だが、失うものも大きい。

 量子AIの声が届く。

 

【機神兵装の使用を推奨】

【推奨稼働時間:七分以内】

【敵性存在の自己進化速度、不明】

【長期戦は不利】

 

「分かってる」

 

 収納空間内の炉心群へ接続する。

 肉体の奥で、神性流路が開く。

 黒銀の装甲が薄く走り、青白い回路が全身へ広がった。

 背部に折り畳まれた砲撃翼。

 肩に発振環。

 胸に神性出力核。

 腕部に位相可変砲撃機構と原子分解爪。

 腰回りにデウス・ミストウォール展開基。

 機神兵装(デウス・ギア)

 切り札を、ここで切る。

 

【機神兵装:展開】

【最大稼働時間:10分】

【推奨運用時間:7分】

【現在稼働時間:0秒】

 

 模倣暴虐機神が、口元だけを歪ませた。

 俺と同じ顔で、笑う。

 赤黒い神性が、その背後で爆ぜた。

 

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