キラーチューンとの生活   作:雪夜

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キラーチューンは、いいぞ。


キラーチューン・レコと朝食

 

 ジリリリリ、とけたたましい音がして、目が覚めた。寝ぼけ眼を擦りながら、手探りで音の出処を探る。ここか、ここか、と机を叩いて、3度目、ようやく音が止まった。時間は7時半、随分と早い時間に起きてしまったものだ、と思う。平日ならまだしも、休日はもう少し寝ていたいものだ。そう考えると、瞼が重さを増していく。あと少しで二度寝の快楽に身を委ねられる、という時に自室の戸を叩く音がした。

 

「マスター、起きてる?」

 

 少し低めの、ダウナーという表現が良く似合う声。小さく、呻き声のような返答をすれば、彼女は戸を開けて、中へと踏み込んできた。尋常ではない毛量から作られるレコード盤のような髪型に、青と黄という珍しい目の色。僕の相棒の1人、キラーチューン・レコが、そこにいた。

 

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 彼女達、キラーチューンがなぜカードの世界(彼女達は精霊界と呼ぶらしい)からこちらへと来れたのかは定かではない。僕は勿論、彼女達自身もいまいちどうやって来たのかが分かっていない様子だった。

 

 ただ1つ定かなのは、僕の持つキラーチューンデッキが僕と彼女達との縁を繋いだ、という事だけ。戻る方法も分からなければ、彼女達もさして自分の世界に執着というものは無さそうで、僕の所に住むことはわりとすぐに決まった。元々、親が出張続きで、家の広さを持て余していた、というのも理由の一つである。

 

「それで、マスター。朝食の話だけれど」

 

「そういえば今日の当番はレコだっけ。何を作るんだい?」

 

 同居をするにあたって、家事なんかは当番制で回している。案外、精霊界でも料理なんかはしていたらしく、この前はクリップが炒飯を作ってくれた。キラーチューンの中でも一際小柄な彼女が、中華鍋を振るう姿が少し面白くて、笑いを堪えきれなかったのを覚えている。それでいて、味も見た目も良いものだから変に驚いてしまって、危うくクリップに噛みつかれるところだった。

 

 そんな事を思い返しているうちに、レコは先程の質問へ返答をしようとしていた。やけに間があったけれど、まだ思いついていなくて相談しに来た、とか、そういう事だろうか。

 

「麻婆豆腐を作ろうと思って」

 

「ちょっと待って欲しいな。それは」

 

 それを聞いて、冷や汗が流れ出るのを感じた。麻婆豆腐は朝食にするにはそこまで向いていない、とかそういう事もあるにはあるけれど、何より心配な事が、もう1つある。

 

「その、辛さはどのくらいにするつもりだったんだい?」

 

「……普通くらい」

 

「その間が怖いし、君の普通は僕たちにとっては激辛なんだよねぇ……」

 

 何を隠そう、レコはかなりの辛党であった。カレーを食べに行くと必ずのように10辛を頼むし、麺類には七味をたくさんかける。この前、キューと僕とレコでカップ麺を食べる時に僕達の七味まで要求して全部入れていたのは記憶に新しい。その時は、僕もキューも辛いものが不得手だったから喜んで渡したのだけれど、朝食がそうなるとかなりまずい。特に、止められなかったことがキューにバレると、とても怒られる。キューが怒ると怖いのだ。

 

「…………ダメ?」

 

「うっ、カワイイ。でもダメかな。朝から辛いのは、ちょっとね」

 

 こてん、と首を傾げるレコの可愛さに、思わず昇天しかける。キラーチューンは全員顔が良くて、皆それを自覚しているから、その武器を用いて自分の要求を通そうとするし、実際それで通してしまったことも多々ある。慣れ、なんてものは残念ながらないのだ。カワイイものはカワイイ。この世の真理である。

 

「マスターが嫌なら、辞める。でも、朝食の案が無くなっちゃった。どうしよう」

 

「うーん、そうだな。サンドイッチなんてどうだい?手軽だし、具材によっては辛いものもそれ以外も作れる。食パンも買い足したばかりだしね」

 

「じゃあ、そうする。マスターに話して良かった」

 

 そのまま部屋を出ようとするレコを呼び止める。きょとん、とした表情があまりに可愛くて昇天しかけるが、なんとか耐えた。

 

「僕も手伝うよ。ほら、せっかく起きたからね。二人で作れば、すぐ終わるだろう?」

 

「……良いの?」

 

「勿論。麻婆豆腐を我慢させたお詫び、という意味でもある。」

 

 そう言うと、レコは小さな笑みを浮かべて、こう言った。

 

「マスターと一緒に作業出来るの、とても嬉しい。ありがとう」

 

 あぁ、本当に。キラーチューンは皆顔が良くて、それに慣れることなどきっとこの先ずっと無くて。そこにこうして自分への好意をストレートに混ぜられると、反則級の威力が出る。つまるところ、今回のこれを僕は耐えきれずに、昇天する事となったのだ。

 

 

 

 

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「凄い音がしましたけど、どうしましたの?」

 

「マスターが倒れちゃった。サンドイッチ、一緒に作りたかったのに。」

 

「あぁ、まだ慣れませんのね、マスター。いえ、前よりは頻度が減ったので慣れたといえば慣れたのでしょうけど……。」

 

「サンドイッチ……」

 

「そう悲しまなくてもすぐに蘇りますわよ。私たちを悲しませることだけはしませんもの、この人。」




続きは鋭意制作中です。とりあえず下級とトラックメイカーさんの分までは書き切りたいところ。評価もコメントも励みになります。
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