キラーチューンとの生活   作:雪夜

2 / 6
元気っ子って良いですよね。


キラーチューン・ミクスと公園

 レコにKOされて数分、僕は目を覚まし朝食作りを手伝っていた。用意するのは、厚焼き卵と、レタス、ハム、チーズ。これらを切った食パンで挟めば、2種類のサンドイッチが出来上がる。切り離した耳はあとでラスクにでもしておけば、皆がつまんで直に無くなるだろう。しかし、サンドイッチだけ、というのもどこか味気ないような。

 

「どうかしましたの?」

 

 そう話しかけて来たのはキラーチューン・ロタリーである。元々貴族であったが故か、大抵の物事を器用にこなす彼女であれば、なにか良いアイデアを出してくれるかも、と相談して見たところ、昨日のコーンポタージュの残りがあるから、それを使えばどうか、と言ってくれた。サンドイッチと合わせるのにも良かったので、即採用した。

 

 そんなこんなで、サンドイッチも出来上がり、コーンポタージュも温まってきた頃、キューが起きてきた。おはよう、と声をかければ、にこっとした顔で挨拶を返してくれた。その挨拶だけで危うく昇天しかけるところだった。気を抜けばすぐに可愛さで昇天してしまう、この共同生活の唯一ともいえる欠点である。

 

 さて、起きてこないのが2名。キラーチューン・ミクスとキラーチューン・クリップである。キューに二人を起こして来てもらうよう頼んだところ、いいよ~、と部屋の方へと向かっていった。これで大丈夫だろう、と出来上がった料理をテーブルへと配膳していく。全員の分がテーブルの上に並んだ時、ちょうど二人を連れてキューが戻ってきた。

 

 それぞれ、席につき、手を合わせる。それぞれがいただきます、と言って朝食が始まった。精霊界には、というか彼女らが住んでいた地域にはいただきますの文化は無いらしく、来た当初はかなり困惑していたのを思い出す。ここでの生活に慣れてくれた、というのは、どこか嬉しさを感じるものである。

 

「ね、ね、マスター!食べ終わったら遊びに行こ!」

 

「勿論、構わないとも。どこへ行くかは決めているかい?」

 

「んー……。公園!行こ!」

 

「じゃあ、そうしようか。あ、スピーカーは?」

 

「持っていく!」

 

「よし、それじゃあ準備をしていこうか。あと、お皿の片付けもね。」

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 そういう訳で、近くの公園にやってきた。他の皆もどうか、と誘ってみたのだが、元よりインドア派のレコとキューは留守番、クリップはネムイ、と言って部屋に戻って行った。ロタリーは途中まで一緒だったものの、トラックメイカーに用事があるようで、一旦別れた。トラックメイカーにも挨拶はしておきたいし、後で顔を出してみるのも良いかも、と考えながらミクスについて行き、開けた場所へと辿り着いた。

 

「それじゃ、スピーカーはここに置くとして、曲はどうする?」

 

「テンポが速いやつ!」

 

「なるほど……これとか、どうかな?」

 

 スマホとスピーカーを繋げ、適当に選曲してみる。テンポが速めで、かなり激しさのある曲だ。これからやる事にも、それなりに合う曲ではあるはずである。……多分。

 

「!!これ、ちょーどやりたいなって思ってた!イシンデンシン、ってやつ?」

 

「それは何よりだ。それじゃ、始めようか。3カウントしてから流すよ。」

 

 ミクスの雰囲気が、変わる。目を瞑り、全身を程よく脱力させ、準備をしているのだ。今の彼女の全神経は耳に集中しているのだろう。宣言通り、3カウントをして、音楽を流し始める。

 

 そして、ミクスのダンスが始まった。

 

 

 ダンスに関して、僕は素人である。キラーチューン達と過ごすうちに、多少の知識こそ頭に入りはするが、それもかじった程度のもの。素人の域を超えることはない。だが、目の前のミクスを見て、凄さを理解できないほど無知という訳でもなかった。ずば抜けた身体能力から出力される大胆な動き。だが、それだけではない。止まる所ではきっちり止まり、静と動のメリハリを生み出している。これがキレ、というものなのだろうか。いつもは快活で可愛さが溢れるミクスだが、この時はカッコ良さが前面に押し出される。何度見ても素晴らしいダンスに、僕は呼吸も忘れ、音楽が止まった後も、暫くミクスに見とれていた。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

「はいこれ、水」

 

「わーい!ありがと!」

 

 ダンスも終わり、公園内のベンチ。持参した水を手渡せばミクスは勢いよく飲み干した。あれだけの運動量である。今日はそこまで暑くないとはいえ、喉が乾いていたのだろう。

 

「マスター、どうだった?」

 

「……凄かった」

 

「マスター、いっつもそればっかり」

 

 むー、と頬を膨らませるミクスに、ごめん、と必死に謝る。決して適当な事を言ってるのではないのだ。ミクスのダンスが魅力的すぎて、見蕩れて、余韻に浸って。そうすると、凄かった、という表現しか残らなくなってしまう。そろそろ、ちゃんと見ていなかったのでは、と疑われてもおかしくないくらい、感想が単調である事は理解している、しているのだが。

 

「でも、いーよ」

 

 膨らませていた頬を元に戻し、微笑みを浮かべたミクスが、そう言った。許してくれる……のだろうか?

 

「だって、ミクスとマスターはイシンデンシン、だもん。凄かった、っていう言葉の中にどんな褒め言葉が詰まってるか、なんていくらでも分かるよ!」

 

 そう言うミクスの顔にはいつもの快活な笑みが浮かんでいる。そんな優しい言葉に、愛情とか父性とか、そんな色々が刺激されて───────

 

 思わず、ミクスを抱きしめてしまった。

 

「わっ、びっくりした!……へへ、いいね、これ。幸せ!」

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ただいまー!」

 

「おかえり~。あれ、マスターは?」

 

「トラックメイカーのとこ行くって言ってたよ」

 

「そっか。じゃ、こっちはこっちで昼ごはんにしよ。ロタリー達は多分食べて帰ってくるでしょ」




次はロタリーの話になります。多分。評価と感想無限に欲しい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。