欲を出していいなら、感想も欲しいところ。もっと多くの人の目に止まってくれると嬉しいのですが。
「よく来たな、マスター。ミクスと一緒にいると聞いたが…ミクスは別行動かい?」
「誘ってみたんだが、余程お腹が減っていたようでね。先に帰ってしまったよ。」
ミクスのダンスを見た後、僕はトラックメイカーの元を訪れていた。ジュークジョイント"Killer Tune"。キラーチューン達の来訪と同時に現れていた建物である。名前の通り、精霊界での彼女らの拠点がここに来たらしく、今はトラックメイカーが管理してくれている。
「そういえば、ここはどうする予定なんだい?精霊界ではキラーチューン達がライブをしていたと聞くけれど…」
「精霊界では、そうだな。ただ、こっちやるにはもう少しかかりそうだ。書類仕事もしなけりゃならんしな。ま、そこら辺は俺がやっておくさ」
「そうかい?じゃあ楽しみにしておくよ。なにか力になれる事があれば良いんだけど」
「構わないさ。衣食住の提供だけでも随分世話になってる。これ以上世話になるのはちょいとしのびないからな。ま、たまに話し相手になったりしてくれや。それで十分だ」
「そう言ってもらえると嬉しいな。たまに、なんて言わなくてもいつだって話し相手にはなるさ」
トラックメイカーとの話はよく弾む。無論、それなりに気が合うというのもあるだろうが、他のキラーチューンのように毎日顔を合わせている訳ではない、というのもあるかもしれない。近況や、他のキラーチューン達の様子などを話していると、ふと金と緑の髪が目に入った。ロタリーだ。向こうもこちらに気づいたようで、小走りでこちらへと駆け寄って来た。
「マスター様。来ていらしたの?」
「帰りにトラックメイカーに挨拶でも、とね。勿論、ロタリーに会えれば幸運とも思ってはいたけれど」
「幸運、はこちらのセリフですわ。今日はマスターの傍にいられない、と思っていましたから」
手を隠してしまう長さの袖……いわゆる萌え袖で口元を隠し、上品に微笑むロタリー。確か、設定上ではカルト的な人気を誇る、と言われていたが、それも納得できる可愛さである。そんなロタリーと話をしながら癒されていると、スマホが震えた。なんの通知かと思えば、キューからである。昼食を先に食べる、という内容だった。
「あら、昼食を先に?もうそんな時間でしたのね。……その、マスターさえ良ければ、なのですが……」
「昼食かい?僕も誘おうと考えていたところだ。……まぁ、近くのファミレスにはなるけれど」
「構いませんわ。もう私は貴族などではありませんし…なにより、マスターの傍なら貴族の頃の食事より、何倍も楽しいものになりますから」
「……嬉しい事を言ってくれるね。マスター冥利に尽きるというものだ。」
相変わらずストレートに好意をぶつけてくるキラーチューンに昇天させられかけながらも、なんとか耐えた。好意を向けられる事に慣れていなかったから、こういったものには特に弱い。そんなこんなで、トラックメイカーに別れを告げ、ファミレスに行く事になった。
休日で、昼頃のファミレス。正直、行列も覚悟していたが、そこまで混んでいるわけではなさそうだ。とはいえ、3組ほどの待ち時間はありそうではあるが。とりあえず、名前を書いて待つことにした。
「こうしてマスターの苗字を使うと、家族になった気分になりますわね」
「まぁ、今は家族のようなものだしね。僕の名前くらい好きに使ってもらって構わないよ」
そう言うと、ロタリーは頬を染めて口元を萌え袖で隠してしまった。そんなに変なことを言っただろうか。今は共同生活しているのだし、家族のようなもの、だと思っているのだが。
「……マスター様、そういう事を軽々しく口になさらない方がよくてよ?キューやレコに勝手に使われるかもしれませんし」
「別に構わないけれど……何か問題があるかい?」
「名前を書かれるのが婚姻届だとしても?」
一瞬、固まる。いやいや、そんな事を彼女らがする訳、と言おうとしたが、ロタリーの真剣な顔を見て、やめた。
「…………ふふ。冗談ですわ。いえ、あの二人ならやりかねませんけど。苗字というものは重要なものですから、ね?」
「冗談か。良かったよ。苗字、か」
「えぇ。私は特にそういったものに縛られてきましたから」
彼女は元々、貴族である。それが策略に嵌められ、没落し、その復讐の場面にキラーチューンが居合わせて、仲間入り。そういう経緯があったのだと聞いている。確かに、貴族ともなると名前は重要なものになってきそうだ。
そんな話をしていると、店員が僕の苗字を呼んだ。席へと案内され、メニューを開く。肉料理、魚料理、ハンバーガー…様々な種類の料理がある。どれにしようか、と悩んでいると、目を輝かせたロタリーが、あるページを見せてきた。
「これ、一緒に頼んでみませんこと?完食できれば全額返金、アングリーバーガー!ふふ、チャレンジメニュー、いい響きですわ。」
チャレンジメニュー。テレビなんかで聞くことはあるが、こんな近所にもあるとは思っていなかった。しかし、アングリーバーガーという名前、どこか聞き覚えがあるような気がするが…。
「どうしますの?勿論、マスターが嫌なら構わないのですけれど……」
そう言ったロタリーは、目に見えてしゅんとしてまう。これはもはや選択の余地はない。ロタリーから──というよりキラーチューンから笑顔を奪う行為は、万死に値するのだ。
頼もう、と言った瞬間に元気を取り戻したロタリーは、すぐにボタンを押して店員を呼んだ。チャレンジメニュー2人分を頼んで、数分。やけに美人な金髪のシェフに運ばれてきたのは何故か動いているハンバーガーだった。
「こちら、アングリーバーガー2つです。制限時間は25分。では、ごゆっくり」
「……とりあえず、食べようか」
「えぇ。量はそこそこありますけれど、25分もあればいけますでしょう。目指せ完食、ですわね!」
とりあえず、ニコニコのロタリーが見れたし、既に元は取れているだろう。という訳で、食べてみることにした。多少動きはするが、味に問題はない…どころかかなり美味しい。25分どころか、10分もあれば食べきれそうである。
「こういうと失礼だけど、拍子抜けだね。もうすこし、トンデモな料理を期待してまっていたんだけど」
「そうですわね。……あら?」
「どうしたんだい?」
「マスター、食べ終えたはずですわよね?」
「勿論。かなり美味しかったから、無料というのは気が引けるけど…」
「お皿に、まだ残っておりますけれど。」
いやいや、そんな訳、と笑い飛ばそうとした僕の声はすぐに無くなった。ロタリーの言う通り、目の前にはまだハンバーガーがある。それも、丸々1個。
「なるほど、チャレンジメニューは伊達ではなかった、という訳か」
「えぇ、わたくしのも、もう1つ出現しましたわ。ファイト、ですわね。」
という訳で、もう1つ平らげなければならなくなった。
……変わらず、味は絶品であった。
「…悔しいですわ」
結局、ロタリーは途中でギブアップ、完食出来たのは僕だけだった。まぁ、胃の容量的にも納得ではある。小柄なロタリーに、あの量は厳しいものがあるだろう。赤い髪のシェフらしき人に、会計をしてもらい、店から出た。そういえば、金髪の人といい、見かけない店員が二人いたが、新人でも入ったのだろうか。少し気になって、帰り道、ロタリーに話を振ってみる。
「あぁ、あの二人ですの?精霊ですわよ、あれ。」
「精霊?君たち以外にもこちらに来ている精霊が?」
「案外いますわよ、こっち。買い物に出かけると、時折すれ違うこともあるくらいですし」
今明かされる衝撃の真実である。この街にはどうやら精霊がそこそこいるらしい。今度、少し街を巡ってみるのもいいかもしれない、と思いながら、帰路を辿った。
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「あ、ロタリー帰ってたんだ。マスターは?」
「一緒に帰ってきましたわよ。今は、クリップの部屋にいるはずですわ」
「そっか。暇そうならちょっかいかけようかとも思ったけど、ダメそうだね。……ところで、それ何書いてるの?」
「秘密、ですわ。まぁ、これが受理されれば教えてあげてもよろしくてよ?」
「なんか怖いこと考えてない?……ちなみに、私たちまだ戸籍ないから婚姻届は出せないよ」
「えっ」
他の精霊、出すかどうかはかなり迷ったのですが出すことにしました。キラーチューン以外の精霊がメインになる予定はないですが、ここから先にもチラチラ精霊は出てくると思いますのでよろしくお願いします。
それはそうとしてロタリー、カワイイですよね。アドレナリン全開ロタリーもいずれ書きたいところ。