キラーチューンとの生活   作:雪夜

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難産でした。


キラーチューン・キューと自室

 

 自室のドアを開け、中に入った瞬間、くぁ、とあくびが漏れた。夕食も終わり、今は20時。キラーチューン達と過ごす1日は濃密で、その分体力も消費する。それ故に、健康的な生活を送るようになってしまったのである。……いや、なってしまった、という表現は間違いだ。健康になるのは、とても良いことなのだし。

 

 そういう訳で、もう寝てしまおうか、とも思ったが風呂がまだである事に気づいた。既にお湯は湧いているので、自分の番が来るのを待つだけである。今日は確か、キューの後。最後が自分であったはずだ。

 

「マスター、お風呂上がったよ~。お次どーぞ」

 

「良いタイミングで来てくれた、キュー。そろそろ寝落ちしてしまいそうなところだったんだ」

 

 

 

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 という訳で、風呂から上がり、髪も乾かし、歯も磨き。寝る準備を万全に整えて部屋の前に戻ってきた。あとはもうふかふかのベッドに寝転んで夢の世界へと旅立つだけである。

 

「あ、おかえり~」

 

 だが、世の中思い通りに行く事なんて少ないものである。誰も居ないはずの僕の部屋には、客人がいた。キューである。僕のベッドに腰掛け、スマホを弄っている。恐らく、呼びに来た時からずっとこの部屋にいたのだろう。

 

「部屋に戻っていなかったのかい?もういい時間だ。キューも寝た方が良いと思うけれど」

 

「随分冷めた反応だね。もしかして美少女に囲まれすぎて慣れちゃった?」

 

「そういう訳じゃないさ。いや、慣れてきたのは慣れてきたけれど……。それでも気を抜けば可愛さにやられてしまう。今日も何回やられたことか」

 

「ま、朝も倒れてたしね~」

 

 

 キューがそう言って、あはは、と笑う。どうやら彼女は雑談に興じたいようである。こうして喋っている間に、少し目も冴えてきたので、付き合う事にした。

 

「どう?今日は楽しかった?」

 

「もちろん。レコと朝食を作って、ミクスのダンスを見て、トラックメイカーと話して、ロタリーと昼食を食べて、クリップを愛でて……こんな日常を何度夢見たことか。未だに現実だとは思えないな」

 

「大丈夫。ちゃんと現実だよ。むしろ、私達の方が夢見心地かも。こうしてマスターと喋って遊んで触れ合って……私達の求めていたことが全部出来る」

 

 雑談のはずなのに、キューの声色はどこまでも真剣だった。雰囲気も、どこかしっとりとしている、気がする。

 

「ただまぁ、私として不満なのは、今日は私だけ構ってもらえなかったことかな~。のけものなんて、悲しいよね」

 

「キューを除け者にするなんてありえない……と言いたいところだけど、今日は確かにキューとはあまり話せなかったね。この時間でチャラには出来ないかい?」

 

 

「チャラにするにはまだ足りないかな。もっと触れて、もっと喋って貰わないと」

 

 そう言って、彼女は寝転がった。キューの頭がちょうど僕の太ももの上に乗る。膝枕、というやつだ。

 

「僕の膝枕は別に心地よくないと思うけれど、大丈夫かい?」

 

「心地良さを求めてこうしてる訳じゃないから問題ナシ。ほら、撫でて撫でて」

 

 言われるがまま、キューの頭を撫でる。気持ちよさそうにしながら、頭を擦り付けてくる姿は、猫のようだった。ノックアウトされそうになりながら、なんとか耐える。実のところ、キューも眠いのだろう。先程から、どこかぽやぽやしている。普段であれば、こうなった時点で部屋に帰すし、帰るのだが、キューにその様子はない。もしかすれば、ここで寝るつもりなのかもしれない。

 

 まぁ、それもいいか、と思う。というか、今から送り届けて戻ってくるだけの体力は残っていない。残りの体力で出来るのはキューを少し移動させて、自分もベッドに寝転ぶくらいである。

 

 撫でている手を止め、不満気な顔をしているキューを膝から降ろす。そのまま寝転び、キューを引き寄せ、布団を被る。こうすれば、キューの体温と、布団の力で暖かく眠りにつくことができるのである。

 

 雑談で少し目が冴えたとはいえ、元から眠気はかなりあった。瞼はもはや鉄より重く、持ち上げる事は叶わない。最後の力を振り絞って、キューにおやすみ、と告げ、夢の世界へと旅立った。

 

 

 

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 目の前にある、穏やかな寝顔を見つめる。いつもはカッコイイマスターの顔が、今は可愛いと思える。

 

 こうして見ていると、精霊界での生活を思い出す。本来、人間界と交わらぬはずの精霊界に繋がりをもたらす、カード。カード越しに幾度も見たのだ。私達を使って戦うマスターの姿、デッキ構築をしながら、笑顔で私達を見るマスターの姿。多くのマスターの姿を見て、手を伸ばしても触れられぬという事実に胸を痛めた。

 

 それが、今はどうだ?今手を伸ばせば容易にマスターへと触れられる。更にいえば、マスターからも触れてもらえる。なんと夢のような世界だ。私達がこちらに留まると決めるのにいくつか理由をこねた覚えがある。だが、違うのだ。私は……いや、他のキラーチューンもそうだろう。

 

 マスターと共に過ごせる。それだけで私達の世界を捨てる理由になる。彼は私達と日常を過ごすことが夢のようと言ったが、それはこちらの台詞だ。

 

 マスターに手を伸ばす。頬に触れ、思わず顔が綻ぶ。そして、手を彼の背へと回し、抱きついた。彼を抱き枕にしてしまうのには少し躊躇があったが、きっと他のキラーチューンもこうしただろう。

 

 あぁ、本当に、心の底から思うのだ。

 

「─────大好き」

 

 小さく声が漏れた。それを最後に、瞼が閉じて行く。彼の体温を感じながらの睡眠は、いつもより数倍心地よかった。

 

 

 

 

 

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「マスター、朝食の時間ですわよ……って、キュー?なにをしているのです?」

 

「いや~添い寝してたら抱きしめ返されちゃって、出れなくなっちゃった」

 

「全く……まぁ、起こすつもりでしたし丁度良いでしょう。解放の時ですわ」

 

「わ、待って待って。私が起こして行くから大丈夫だよ」

 

「そうですの?では任せますわ。……すぐに起こして下さいましね?」

 

 

 

 ─────結局、キューは抱きしめられたまま10分、怒りを爆発させたロタリーにマスター共々強制的に叩き起こされたのである。

 

 

 




キュー、めっちゃ可愛いんだけど可愛さを活かすのが難しい。もっと良いシチュがありそうだしまた書きたいですね。キュー視点で書くのは割とチャレンジだったのですがどうでしょう。感想、評価頂けるととても嬉しいです。
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