私は現在、ブルブル震えながら座っている。
いや、震えてはいないかな?ただ、そんな心情であると察してほしい。
理由は私の目の前にある。
「で?何で砂漠の中に居たのですか?那由多 アユムさん?」
「………。」
目の前に恐ろしい表情を浮かべた小鳥遊 ホシノがいるからである。
どうしてこうなった?
なぜ私はこんなにも殺気を向けられているのだろうか。
マジで怖い。ちびりそう。
こんなに怖いのはこの世界に転生してから初めてだ。
「あ、あのね?ホシノちゃん?アユムちゃんも何らかの、やむを得ない、じ、事情があって砂漠にいただけかも知らないよ?ほ、ほら。私を助けてもくれたんだし………。」
「……ユメ先輩は黙っていて下さい。」
「ひぃん…。」
助け舟を出そうとしていたユメさんはホシノにあえなく撃沈されてしまった。助けてくれることは嬉しかったものの、何だか罪悪感が湧いてくる。私は今までの状況をそのまま伝えても良いと考えているが、信用を得ることは難しいと考えている。何せ、私は制服のような衣服を着ているものの、この制服が実在しているものなのかが判別できない。また、私はさっき生まれた立場。つまり、個人情報が登録されていないのである。訝しむ要素は満載だ。逆にそんな私を庇う姿勢を見せるユメさんに心配してしまう。だが、現状を打破するためにはそれしか無いと考えている。ただし転生の部分は省いて説明しよう。頭を疑われるかもしれない。
「……今から話す内容は、結構、荒唐無稽なものであると自覚しています。ですが、それが私にとっての現実であり、事実です。それでも聞いてくれますか?」
「…良いでしょう。話してみて下さい。」
「ありがとうございます。事前に訂正しておきますが、私とユメさんは今日初めて会っただけの間柄であり、決して彼女を嵌めたという訳ではありません。その辺りはご理解いただきたい。」
そうして、私は今までの状況を話していくのだった。
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最初に二人に話した反応は二人とも信じられないことを聞くかのような表情を浮かべていた。そりゃそうだろう。砂漠の中は殆どの建造物がなく、あったとしても残骸のような廃墟のようなものである。その中の廃墟に研究所が含まれていることなど知らなかったことだろう。その研究内容も。当然、疑われ、証拠の提示を示されたがそこは用意周到に用意していた私だ。きちんと用意しているとも。
「…確かにこれは、アビドス生徒会のサインですね…。」
「こんな事していたんだ……。知らなかったよ……。」
「それはそうでしょう。結構、巧妙に隠されていましたからね。」
「………ですが、貴方自身は何処から来たのですか?」
当たり前とも言える質問が来た。
私が答えたのはあくまで研究所がアビドスの砂漠にあったから砂漠に居ただけという話であり、私自身のことは何ら話していない。
いつか分かる事だし、いっそのこと全て話してしまうか…。
いや、やめておこう。厄ネタだし。
「…なぜ、私が研究所にいたのかは分かりません。そもそも、私には記憶が有りません。所謂、記憶喪失という状態です。……申し訳ありませんが…。」
「身分証等も無いのですか?」
心配している様子でホシノは聞いてくる。
「…有りません。今、私が着ている制服も何処の学校なのかが分からないですし、学校に所属しているのなら学生証があるはずなのですが……何処を探しても見つかりません。……唯一覚えていたのは名前だけでした。」
「……。」
空気が重い。というか、暗い。
そんな状況の中でユメさんの鶴の一声が。
「ならさ、アユムちゃんもアビドスに入らない?…ホシノちゃん。どう?」
いやいや、流石に許可しないでしょう…。
「…良いと思います。」
そんな馬鹿な。
これがさっきまで殺気を向けていたやつか?
「最初は、何故、砂漠にいたのか。その理由が分からないため警戒していましたが、きちんとした証拠も提示してくれましたし、ユメ先輩も助けてくれたため納得することにしました。……それに、私は、目の前で困っている人を見捨てる程、落ちぶれてはいません。」
か、かっこいい……。
あ、あれ?目から汗が…。
「!? な、何で泣いているんですか!?」
「あ〜あ。ホシノちゃんが泣かせちゃった。」
「ッ! それは!大体貴方がーー」
言い争うように会話する二人を見る。
二人が会話している様子は騒がしいような、しかし暖かい場所なような気がして…。そして、これからここが私の新しい居場所になるのだと思い、堪らず、笑ってしまった。
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それから私はアビドスに入学するための手続きを済ました。
いくら生徒の人数が少ないとは言え生徒会である。戸籍や身分証の発行はユメさんとホシノさんにしてもらった。本当に感謝しかない。
というか、手続きできるんだ……。
そして現在。私は制服の採寸を行なっている。
「うーん。何となく思っていたけど、ホシノちゃんとあまり身長が変わらないね……。」
「ユメ先輩?どういう意味ですか???」
「ナ、ナンニモナイヨー?」
うん。私は結構小さいからなぁ……。
「ほら!見てください。アユムさんのあの表情!」
「わ、わぁ!?ご、ごめんなさいー!!」
「うぇ!?き、気にしてませんよ!?」
どうやら表情に出ていたらしい。失敬。
ただまぁ、ユメさんが言った通り、私の身長はホシノさんとほぼ変わらないのだけど。お陰で爆速で制服の調達ができたのだけれど。何だろうなこの何にも言い難い感情。
「よしよし!似合ってるね!」
「アユムさん………。ドンマイです……。」
「あ、あはは……。ありがとうございます……。ホシノさん…。」
こうして、私のキヴォトスでの生活は幕を開けたのだった。