うたわれるものssオリ主物   作:影後

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うたわれるもの〜散りゆく者への子守唄編1

「……嘘だろ」

 

それはハクオロとウルトリィがトゥスクルの城下に

赴いた時に起こった事件。

ウルトリィに赤児を預け、失踪したその赤児の両親。

そして赤児、フミルィルを育てると言うウルトリィ、

しかしハクオロの指示の下、

水面下で親探しが始まろうとした矢先だった。

 

「たう…」

 

「きゃっ…うぅ…」

 

まるでウルトリィの保護した赤児の兄のように

その子が段差から落ちようとするのを全力で防いでいる。

 

「リオ、大丈夫ですか?」

 

「だう!」

 

「ウルトリィ?この子は……」

 

「……拾い子です」

 

ウルトリィは暗い顔で話し始めた。

カミュとアルルゥに連れられ郊外の穏やかな場所へ、

散歩に向かった3人だったが、

その際に野党に襲われたと思われる一団を発見。

生存者は1人もおらず、数体の無残な死体が散乱するのみ。

直ぐ様ベナウィとクロウに報告し周囲を二人の部下が

散策してみると、掘立小屋があり、

中で泣き叫ぶ赤児を見つけた。

 

「……それでか?」

 

「身分を示すものは全て焼き捨てられていました。

尻尾もなくもしかしたらハクオロ様と

同じ一族かとも思えまして。

それにフミルィルが懐いていまして」

 

「だー?」「なぅあ!」

 

フミルィルが危ないと思えば直ぐ様、

その赤児はフミルィルを引っ張り止まらせる。

 

「まー!まー!」

 

「あらあら……フミルィル?」

 

ウルトリィに抱かれるフミルィル、

しかしそれを見た赤児いやリオは何処か不機嫌そうに

そっぽを向く。

 

「歳はいくつだ?」

 

「フミルィルよりも大きいので1歳程度ではないかと。

リオ、私の事は?」

 

「まー!」

 

「おいで」

 

「まー!」

 

リオは這い這いをしながらウルトリィに近付く。

その際にゴテンと頭をウルトリィの膝にぶつけてしまう。

 

「………」

 

「リオ、痛くない。痛くない」

 

「泣かないんだな」

 

「えぇ、リオは泣かないのです。

痛かろうと、お腹がすこうと、泣かず我慢する。

すこし、そんなリオを誇らしく思えてしまうんです」

 

「誇らしく?」

 

「はい、フミルィルが居ないと泣いてしまうんです。

でも、フミルィルの前では絶対に泣かないんです。

まるで、お兄ちゃんの心配はしないでね?

そう、フミルィルに言っているように思えてしまい」

 

「そうか」

 

ハクオロはそんなリオを無でようとすると、

怯えるように身体が下がる。

 

「大丈夫、その人は貴方のお父さんよ」

 

「ん?!」

 

フミルィルとは違い、

ベナウィとクロウが動くほどの問題。

野党狩りもより厳しくしなければならない。

 

「……」

 

「おいで」

 

ゆっくりとハクオロの隣に進むリオ。

 

「よしよし」

 

だったが、ハクオロに撫でられると泣き始めてしまう。

 

「え?!」

 

「……あらあら」

 

何が怖かったのかと頬をかこうとして、

忘れていた物にふと指が触れてしまう。

 

「これ……か」

 

ハクオロの決して外れる事ない仮面。

周りに居るのが大人ばかりで忘れていたが、

赤児にとってはこれも怖いという対象だろう。

 

「あーう?」

 

「あぅ…」

 

フミルィルは怖がって居ないのはまだリオよりも情緒が

幼いからだろう。

リオは怖いという感情が根底にあり、

それ故にハクオロを恐れている。

特に理由がない、怖いから怖い。

何故怖い、何故恐れる、それを赤児は理解できない。

 

「大丈夫…大丈夫よ」

 

それをウルトリィは聖母のようにあやし、

ゆっくりとハクオロに近付ける。

隣には信頼している母親と妹か姉か、

兎に角リオにとっての家族がいる。

 

「リオ、ハクオロだ。よろしく頼む」

 

「だぁぶ」

 

撫でられようとした所を一瞬逃れようとしたが、

ハクオロに敵意がないのを理解するとその大きな手で

ゆっくりと撫でられる。

 

「……フフ、すっかり大人しくなったな」

 

ハクオロの低くとも落ち着く声。

その安心感からか、リオはウトウトとし始める。

 

「おねむですか?リオもお布団に行きましょうねー」

 

「まー……や……」

 

「あらあら……」

 

布団ではなく、ウルトリィの膝の上で眠ってしまうリオ。

それに釣られてか、フミルィルもウトウトし始める。

 

「フミルィルもリオが居ると夜泣きが無いんです。

その代わり、リオ居なくなると泣いてしまうんですよ。

リオはフミルィルが居ないと這い這いで部屋中を

探そうとするんです」

 

「大変だな」

 

「えぇ、ですが……リオはまるで大神が遣わせてくれた子。

そう思えて仕方がないのです、夜泣きもせず、

私が目を離している時もフミルィルを護ろうとしてくれる。

それでも、私やフミルィルが居ないと寂しくて心細くて

泣いてしまう。……フフ」

 

「………」

 

ハクオロはその姿を見ながらも、

己の選択を捨てはしなかった。

 

 

数日後、ウルトリィとカミュの部屋

 

「てぃ!」「キャッキャッ」

 

「なっ……」

 

トウカはフミルィルとリオの遊び相手を務めていた。

可愛いもの好きのトウカとしては抱いたりしたかったのだが、

何故か撫でようとすればリオの腕に弾かれ、

フミルィルはそれを見て笑っている。

 

(ぷいっ)(ぷいっ)

 

「何故某がこのような事に……」

 

「あっ……めんね……」「んね…」

 

「喋っ?!いや…ごめんねと…」 

 

「ねー!」「ね!」

 

フミルィルはリオの隣に居たからか、

よく喋るようになっていた。

生後数ヶ月程度の赤児の成長としては早い方だ。

赤児は成長速度が速いと言うが、

隣に参考に出来る存在が何時も居るのだから余計に早くなる。

 

「ねー!ねー!」「ね!」

 

「ウルトリィ殿!フミルィルとリオが喋ったぞ!!」

 

エヴェンクルガというか、自身の身体能力で

フミルィルとリオを抱き抱えると会議中の

ウルトリィに突撃する。

 

「キャーーう!!」「キャキャキャ!!」

 

風になれたのが楽しいのか、

フミルィルもリオも大笑いしているがそれよりも

今現在の状況が不味かった。

 

「見ろ!私をねーと」

 

「ねー!ねー!」「ね!」

 

「トウカ、今軍議の」

 

「え?では、何故某が呼ばれないのでしょう!

聖上!某では実力不足と」

 

「いや、軍議と言ってもリオの親族の事とかの野盗団の事だ。

他にも何処か見落としがないか、櫓を建てるか。

そのような点で」

 

「ですから聖上!」

 

ベナウィは無視というか、会議を進行しクロウは

『すいやせん』と言った顔で平謝り。

ウルトリィはトウカの顔で笑っているフミルィルとリオを

見てご満悦であり、オロオロとしているのはエルルゥだけだ。

 

「第一、2人の護衛を買って出たのはトウカだろ」

 

「それは……そうなのですが……」

 

トウカが2人と戯れたいからと進言したのだが、

その会議の内容が軍議であれば変わっていた。

まぁ、〘うっかり侍〙が居ても対して変化はないだろうが。

 

「トウカ、行きますわよ」

 

「カルラ?!よせ、某はまだ聖上と?!」

 

「あれ?どうしたの、ウルトリィさんは」

 

カルラが痺れを切らし、トウカを連れて出ていく。

 

「え?リオが居ない?!」

 

慌てるトウカだが、

視線を下げると何故かエルルゥの足元で戯れるリオが居た。

何時トウカの腕から抜け出したのかわからないが、

エルルゥの裾を触ろうとしている。

 

「ばっちゃ」

 

「ばっちゃ?!坊主、さすがにそれは……」

 

「クロウさん……何が流石にそれはなんですか?」

 

「いや…姐さん……それは……その」

 

「ばっちゃ!ばっちゃ!」

 

「……フフ…リオ?誰に教えられたのかなぁ…」

 

「あるちゃ!」 

 

「アルルゥ!」

 

誰が犯人なのか直ぐ様理解し、駆け出していくエルルゥ。

そんなエルルゥの風圧で倒れそうになるのをハクオロが

支え、膝に乗せる。

 

「ぱー!ぱー!ふーちゃ!ふーちゃ!」

 

「はぁ……会議どころじゃないな」

 

「えぇ、聖上。

それと、かの盗賊団ですが数人程度の規模ではない

と思われます」

 

「どういう事だ、死体は」

 

「総大将、対象の言う通りでさ。

部下の報告を確認するために生きましたがね、

まるで殺し合ったみたいな惨状でした。

壁どころか天井にも血が行ってまして、

その中でリオ。その坊主は血一つなく泣いてた。

もっと言えば、血は坊主を起点として外側に」

 

「ありえません!」

 

叫ぶのはウルトリィだ。

ウルトリィは知っている、リオはフミルィルの兄として、

ウルトリィの子として彼女を支え、フミルィルを守っている。

それに、まだ1歳程度の子供なのだ。

そんな子供が人を殺すなどできるはずがない。

 

「ですが、血はリオを起点にしているのは事実です。

私は、敢えて言わせていただきますが、

リオを処分するべきだと進言致します」

 

「そんな…リオを」

 

「おい、ベナウィ!おま……いや……すまん」

 

ベナウィの言葉にハクオロとクロウは

苦虫を噛み潰したような顔をし、オボロは叫ぶ。

だが、ベナウィ自身もそのような事を

言うつもりは無かったのだろう。

子供を殺すなどという、下衆な発言。

敢えて、憎まれ役を買って出たのだ。

 

「ベナウィ、リオの事はもういい。

何か有れば私が全責任を持とう」

 

「…ハクオロ様、ありがとうございます」

 

ウルトリィはその言葉に安堵し、涙を流す。

そんなウルトリィの涙を拭う存在が居た。

 

「まー?」

 

「大丈夫、大丈夫よ」

 

「……こんな赤児がそんな事をできるはずがない。

親の涙に寄り添える、そんな優しい奴が」

 

オボロの言葉に頷き、その日の会議は解散となった。

 

 

そして、夜。

プカプカと浮かびながらにへら顔で笑みを浮かべるトウカ。

そして、パシャパシャと水を掛け合うリオとフミリィル。

 

「トウカ、その顔は気色悪いですことよ」

 

「なっ!某は聖上に願い!2人の護衛として」

 

「ばっちゃ!」「ばぁ!」

 

「エルルゥですよ~!エルルゥ!」

 

「えううう?」

 

「うーん…」

 

そして、そのように遊ぶ2人の隣では何とか呼び方を

直そうとするエルルゥと一緒になって遊ぶアルルゥ。

 

「あるちゃ!」「あうちゃ!」

 

「ふふっ…」

 

末っ子であるアルルゥにとって、2人は既に可愛い弟妹。

稀に、ムックルの背に乗せて一緒に居たりする。

 

「……ふひぃ……アルちゃんも

リオとフーちゃんも元気……へ?」

 

そんな時に気が付いたのはカミュだった。

 

「ねえ、お姉様。リオの背中、変じゃない?」

 

「…カミュ?」

 

「ほら、なんか…ボコって」

 

「ふぇ………うええぇえええ…ええ………ん」

 

「え?なんで…どうして?!」

 

カミュがリオの背中の瘤に触れると、リオは急に泣き出す。

ウルトリィも初めての事であり、驚きながらもリオを抱き抱える。

 

「大丈夫…大丈夫だから……リオ?」

 

「ウルトリィ殿、血が…」

 

「リオ?!」

 

リオの背中から血が出ていた。 

水で洗い、傷口を探してもどこにもない。

ただ、血が出ているのだ。

更に痛むのか、只管に泣いている。

ウルトリィはなんとかしたいが、止まらない。

 

「一度上がってから考えましょう!

トウカ、私達は先に上がり主様達へ」

 

「え…………」

 

カルラがそう指示した瞬間、エルルゥの声が聞こえた。

ふとそちらを向けば、リオの背からオンカミヤリュー族の

翼と同じ物が生えていた。

少なくとも、リオには尻尾も無く、

ハクオロに近い一族だと思っていたが今のリオは

オンカミヤリュー族だ。

だが少なくとも、子が行方不明という話は本山でも

聞いたことがなかった。

 

「それに……翼の色」

 

そう、翼の色は白と黒まるでウルトリィとカミュのようだ。

 

 

 

「ムント、それは……」

 

「ウルトリィ様、リオの翼は異常です。

異なる色など聞いたことがありません。

それどころか、急に血が出て生えてくるなど………」

 

ムントは僧正として有数の知識人であり、

直ぐ様相談した次第だった。

ハクオロの御膳なれど、涙ぐみながらリオを抱くウルトリィに

言葉を話すのは居た堪れない。

 

「ムント殿、リオはオンカミヤリューではないと?」

 

「えぇ、トゥスクルに来た者は我々のみ。

他に来るものは居ないはずですので……

更に、オンカミヤリュー族は生まれつきで翼を持っています。

急に生えてくる、ましてや2色など……それに、

黒は始祖様に近しいものであります故」

 

「わかった、それ以上詳しい事は聞かない。

…リオは、今は大丈夫なのか?」

 

「泣きつかれ、寝ています。

…血を出しすぎたのか顔色も悪く今夜は油断ならないと」

 

「そうか……ウルトリィ。今夜は」

 

「いえ、私も…フミルィルも共に居ます。

私の子です……私が親なんです」

 

「…まー……ま……フー…ち」

 

「大丈夫よ、直ぐ側に居るから……リオ。大丈夫」

 

酷い顔だが、病気なのか、一切判別できず、

リオの容態は悪化するのみ。

夜中には高熱を出し、泣くことすらできなくなっていた。

 

「……リオ」

 

「……まーま?」

 

「大丈夫、フミルィル。大丈夫だからね」

 

眠たい筈のフミルィルもリオの側から離れようとしなかった。

血の繋がりはないはずなのに、心の繋がりは深いのだ。

そして、睡魔に襲われているのはウルトリィも同じだ。

気疲れだけではない、心からの心配。

 

「え……」

 

だからこそ、夢だと思えてしまった。

自分がフミルィルを抱いていても、

風景がトゥスクルのハクオロが用意したあの部屋ではないのだ。

 

「……まさか、母親が生えてくるとは」

 

「誰です!」

 

ウルトリィは叫んだ。

ハクオロと同じ様に尻尾のない青年。

しかし、その背中には妹と同じ様に黒翼が確かに有る。

 

「……俺は……そうだな。

其奴の、リオの守護霊とでも思ってくれていい」

 

「守護霊……ですか?」

 

「本当は違うが、言った所で理解できない。

それに……今はもう守護霊には違いない」

 

そして、虚空に映し出されたのはリオを中心し

血溜まりが広がっている様子。

おかしいのは、リオが浮いているのだ。

いや、霞のような人影がリオを抱いていた。

 

「あの者たちは俺から――を奪った。だから殺した」

 

「では…貴方がリオの父親しかし!」

 

「父親…でもない。

どちらかといえば『兄』が正しい。

兎に角だ、お前には感謝しているぞ。

よく俺の――を護ってくれた。

もう、必要ない。俺に返せ」

 

「……あの子は私の子です、例え親族の方と言えど」

 

「……良いだろう、別に親族というわけでもないからな。

あくまでも俺の――に過ぎない。

俺も、もう何もかも終わりにしたいからな」

 

「終わりに……したい?」

 

「ああ、俺はもう十分だからな。

名前は確かリオだったよな。良い名前だ。

愛してやってくれ、ソイツに家族はもう居ないんだ」

 

男は虚空に映し出された物と同じ様に霞となって、

ゆっくりと消えていく。

 

「待って!」

 

だからこそ、問わねばならない。

ウルトリィは託された。

だが、目の前の青年が酷く泣きそうな顔に見えたのだ。

 

「お願い………待って………」

 

何故自分も泣きそうなのか、判らない。

だが…

 

「待って……―――」

 

「待って!」

 

「まーまー!ふーちゃ!」

「にいちゃ!にいちゃ!」

 

「え……夢?でも……」

 

座りながら寝ていたのだろうか、

既に日が昇り部屋を照らしていた。

 

「え……えぇ?!」

 

だが、そんな夢の話をしている余裕はなかった。

 

「ウルトリィ、どうし…へ?」

 

「ウルトリィ様、大丈夫です……か?」

 

ハクオロとエルルゥが入ってくると、

黒翼と白翼を羽ばたかせて、フミルィルと一緒に

空中を舞うリオが目に入る。

 

「こらぁ…駄目です!リオ!フミルィルを降ろして!!」

 

「まーま!まーま!!」

 

「きゃぁ……」

 

そのままフミルィルと共にウルトリィの胸にドンっと、

着陸する。

 

「キャッキャ!」「キャッキャ!!」

 

「もう……貴方達」

 

昨日の顔色が嘘のように元気になっている。

それに、ウルトリィも怒るに怒れなかった。

 

「……ムント殿、これは」

 

「私にも、わかりません」

 

「キャキャキャ!」

 

「あっ!リオ!!危ないよ!!降りてきてぇ!」

 

「リオ!フミルィル!だめ!!」

 

「ねーちゃ!ねーちゃ!」

 

「フォフゥ……」

 

リオに抱かれ、フミルィルが飛んでいるのだ。

フミルィルを抱き抱えて飛んでいるリオもおかしいが、

それを笑いながら居るフミルィルもありえない。

 

「オジサマ!そっち行ったよ!」

 

「ぬぉあ?!」

 

「ぱーぱ!ぱーぱ!」

「パ!パ!」

 

 

フミルィルとリオのダイブ。

無論、リオは気をつけているのかハクオロに

ダメージは一切無い。

 

「この様に幼くとも自由に飛べるとは……

何と才能豊かな」

 

「じーじ!じーじ!」

 

「む?じーじとは…わしの事で」

 

「だっこ!だっこ!」

 

「ホホホ…良いですぞ!」

 

リオはたった数日で拙いながら、

簡単な言葉は覚えたのだ。

天才児と言えるが、主にウルトリィの読み聞かせが

大きいのだろう。

 

「ムント、リオとフミルィルには甘いのに」

 

「いや、赤ん坊と同じ対応されるのは駄目だろ」

 

「オジサマ!

私はそれでももう少し優しくされても良いと思うの!」

 

「カミュちー」

 

アルルゥは頷きながらもリオ達を見る。

ついこの間までリオ関連で騒があったとは思えない元気さ。

 

「……ムント殿、ウルトリィは」

 

「分かっております」

 

遊ぶ、カミュ、アルルゥ、リオ、フミルィルには

聞こえないよう小声で話す。

もうフミルィルの両親は見つかった。

返す算段も付き、後はウルトリィと話すだけ。

 

「そんな!フミルィルは私の…

リオの妹で」

 

「お言葉ですが、フミルィルはウルトリィ様の子ではない。

両親は見つかっております。

明日、城まで来る手筈となっています。

それに、リオの方も養子に出すという」

 

ベナウィの言葉をウルトリィは理解したくなかった。

聞きたくなかった。

この2週間近く、ウルトリィはフミルィルを。

そして、リオを育てて来たのだ。

フミルィルを捨てたのは、相手だ。

ウルトリィはそんな事はしない。

ウルトリィにとって、もう二人は己の子供。

腹を痛めて産んだ訳ではない、

だが愛する子供なのだ。

自室に戻ったウルトリィは静かに荷物を纏めた。

 

「私が……私が守るの」

 

ウルトリィはその夜、トゥスクルの居城から姿を消した。

 

 

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