(重厚で威圧感のある、軍隊の行進曲を彷彿とさせるアレンジのメインテーマが流れ出す)
新一:「私の名前は工藤新一。幼馴染の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、怪しい黒ずくめの男達に遭遇した。私は咄嗟に追いかけ……フィルムカメラを片手に、拳銃密輸の取引を見てしまった」
(映像:取引を冷徹に記録する新一の鋭い眼光)
新一:
「背後にいたもう一人の仲間に集中して気づかなかった。目が覚めたら、身体が縮んでしまっていた。……工藤新一が生きていると分かれば、周りの人物達に危険を呼んでしまう。私は咄嗟に、自宅の書斎にあったコナン・ドイル傑作集と江戸川乱歩短編集の書籍から、『江戸川コナン』と名乗ることにし、蘭さんの家を潜入基地に使っている」
(映像:潜入工作員として、周囲を冷酷に分析するコナンの眼鏡が光る)
志保:「工藤君と私は、ワルサーP99とデザートイーグル……あとはインカムを持っているわ。PMGヘカートⅡ、これは滅多に使わないでしょうね、対物狙撃銃だから。……阿笠博士の開発品が無くても、我々は色々できるのよ? 帝国主義の教育を受けた私たちが、ただ守られるだけの子供に見えるかしら?」
(映像:慣れた手つきでデザートイーグルを分解・清掃する灰原の冷ややかな微笑)
コナン:「そして迫りくる黒ずくめの男達。ジンとウォッカ……。奴らの存在は謎だらけだ」
灰原:「……で、どうするの? 戦略的重要性を考慮すれば、そろそろ本格的な『排除』が必要じゃないかしら」
コナン:「決まっているだろ。帝国に仇なす不穏分子に、慈悲など無用だ」
(二人が同時に銃口をカメラに向け、不敵な笑みを浮かべる)
二人:「真実は消したほうがいい時もある……。迷宮無しの名探偵。真実はいつも、無限大!!」
(タイトルロゴ:『名探偵コナン:天国のカウントダウン』が銃弾に撃ち抜かれ、アドラステア帝国の紋章が重なる)
春の柔らかな日差しが注ぐ西多摩市のバイパス。
阿笠博士のビートルを悠々と追い抜いていく一台の高級車
——ルルーシュ。
その運転席には、シートを底上げし、完璧なハンドリングで車体を操る江戸川コナンの姿があった。
「コナン君って……子供なのに車運転できるのすごいよね……?」
歩美が窓の外、隣を走るルルーシュを見つめて呟く。その表情には尊敬を通り越し、一種の畏怖すら混じっていた。
「普通はダメですが……あの人達には僕達『日本でいう普通』が通じませんから……」
光彦は諦めたように溜息をついた。彼らにとって、コナンと灰原はもはや同じ小学1年生というカテゴリーには収まらない、異界の住人に見えていた。
「いいなー……オレも早く車運転できるようになりてー」
「元太君、その前に脂肪を落とさなきゃ! コナン君や哀ちゃんがいつも言っているでしょ? 『自己管理すらできない人間に、機械を制御する資格はない』って」
「確かに……小学1年生で体重69kgは重い気がします……。帝国主義の彼らからすれば、戦略的損失(スタミナ不足)と見なされても文句は言えませんよ」
「ワリィ、ワリィ……。長続きしないんだよなあ、ダイエット……」
元太が頭を掻く横で、ハンドルを握る阿笠博士は、バックミラー越しに先行するルルーシュを不安げに見つめた。
「しかし……あの2人、突然仲良くなったのー。……いや、仲が良いというより、価値観が一致しすぎておる。面倒なこと(国際問題)にならないといいが……」
一方、静寂に包まれたルルーシュの車内。レザーの香りが漂う空間で、コナンは片手でハンドルを回しながら、苛立ちを隠さず吐き捨てた。
「……子供の体だと、ペダルの距離と視界のバランスが悪くて運転しづれーな。アドラステアの軍用車両なら、魔導アシストでどうにでもなるんだが」
その言葉は、『現実主義』に基づいた純粋な不満だった。隣の助手席で、優雅にタブレットを操作し、周辺の地形データを解析していた灰原が、冷ややかな、しかしどこか慈愛に満ちた(『冷愛主義』)視線を向ける。
「文句を言わないの。私が助手席でブレーキのタイミングも全方位の索敵もサポートしてあげるから。……しっかりしなさい。帝国の『紳士』が、この程度の運転で根を上げるなんて許さないわよ?」
「分かってるさ。……だが、キャンプ地に着いたらすぐに周辺の戦略的調査(スカウティング)を終わらせるぞ。西多摩市にそびえ立つあのツインタワー……。あれは、この地域の『戦略的重要拠点』だ。組織が目をつけないはずがない」
コナンは不敵に笑い、アクセルを軽く踏み込んだ。
「黒ずくめの男たち……。彼らがこのビルを天国への階段にするつもりなら、俺たちはそこを彼らの墓標に変えてやるまでだ」
「ええ……。真実は、私たちが決めることだもの」
二人の視線の先には、富士を背にそびえ立つ、巨大な双子塔が見え始めていた。
キャンプ地に到着するやいなや、平和な行楽の空気は一変した。
ルルーシュのドアを開け、戦場に降り立つ司令官のような鋭い眼光で、コナンが言い放つ。
「まずは……林間訓練と行こうか」
その一言に、ビートルから降りたばかりの3人は、目に見えて肩を落とした。
「は……始まった……」
「またですかー!! せっかくのキャンプなのに!」
歩美と光彦が絶望の声を上げる中、一人、自身の腹部をさすりながら元太が食い下がる。
「どうしても脂肪を落とさないといけないのか……?」
「当たり前だろう。脂肪が過多であれば循環器系への負担が増大し、生存率が著しく低下する。だいたい、小学1年生でその体重は、戦略的に見て致命的な欠陥だ」
コナンの『現実主義』に基づく冷徹な指摘に、追い打ちをかけるように灰原がタブレットの数値を提示した。
「小学1年生の標準体重は『24kg』が基本なのよ? 小嶋くん。……あなたはもはや、歩く戦略的損失(コスト)ね」
「うっ……。で、今日は何をやるんだよ?」
諦めた元太に、コナンは指を一本ずつ立てながら、地獄のメニューを告げる。
「まずは①走り込み、②シャトルラン、③CQC(近接格闘術)、④キャッチボール、⑤サバイバル術だぜ」
「な、なんで……キャッチボール……?」
戸惑う歩美に、灰原が教育者としての冷徹な、しかし最低限の配慮を含んだ(『冷愛主義』)補足を加える。
「キャッチボールは投擲能力と肩の筋力を鍛えるためよ。……ただし、組織の未発達な骨格に過度な負荷は禁物。痛みを感じたら、流石に中断はさせるわ。……死なれては、検体のデータが取れないもの」
「ひぇ……」
「他にも色々学んでこい。俺が『国民学校初等部1年生の時』は……日本の昭和の教育よりも遥かにしごかれたんだからな」
遠い目をして帝国の誇りを語るコナン。その言葉の矛盾に、光彦がすかさずツッコミを入れた。
「……今も、小学1年生(帝国では初等部1年生)ですよね?」
「…………。まあ、いいじゃないか。細かいことは気にするな」
一瞬、帝国人としての記憶と今の姿の整合性にズッコケるコナンだったが、すぐに『紳士』の余裕を取り戻し、鋭いホイッスルを鳴らした。
「ほら、モタモタするな! 帝国臣民としての矜持を見せろ! 遅れた奴には、灰原特製の『栄養調整剤(超激苦)』が待ってるぞ!」
「それだけは勘弁だーー!!」
西多摩の静かな森に、子供たちの悲鳴と、軍隊さながらの足音が響き渡った。
森の奥深く、サバイバル術の実践講義。
色鮮やかな自然の造形に目を輝かせた歩美が、倒木のそばを指差した。
「わー……キノコたくさん! 宝探しみたい!」
「待て。不用意に触るな」
コナンの鋭い制止が飛ぶ。彼は屈み込むこともなく、そのキノコを冷徹に一瞥した。
「それはベニテングタケだ。……食べたら死ぬぜ?」
「毒性は強く、摂取すると吐き気や発汗、嘔吐下痢などを引き起こすわ。最悪の場合には呼吸困難や死に至る場合がある……ね」
灰原が、まるでお茶の銘柄でも説明するかのような平坦なトーンで補足する。その『冷愛主義』的な態度は、知識を持たぬ者への警告というより、単なる事実の提示だった。
「ヒィ!!」
歩美が飛び退くと、今度は元太が恐る恐る、少し地味な色のキノコを指差した。
歩美が飛び退くと、今度は元太が恐る恐る、少し地味な色のキノコを指差した。
「じゃあこっちの……茶色いキノコは……?」
「それは……テングタケ。いわゆるノーマルテングダケだ」
「食後30分程で嘔吐、下痢、腹痛など胃腸消化器の中毒症状が現れるわ。そのほかに、神経系の中毒症状、縮瞳、発汗、めまい、痙攣などで、呼吸困難になる場合もあり、1日程度で回復はするけれど……。試してみる? 小嶋くん。少しは体重が減るかもしれないわよ」
「絶対ヤダ!!」
元太が首を激しく振る横で、光彦が足元の青々とした葉を指差した。
「じゃあ……この草は? どこにでも生えていますが……」
「ドクダミだ。食べられるが、食べ過ぎは要注意だな」
「ドクがついているけど解毒作用があるから、ドクダミっていう名前なのよ。でも、土壌によっては水銀を吸い上げていることもあって、過剰摂取は水銀中毒を招くわ。……調薬は私がするから、勝手に口に入れないことね」
灰原の言葉に、元太はがっくりと肩を落とした。
「食えるもんあんまねえな……。腹減ったぜ……」
「食える野草やキノコはあるが、大抵は下準備が必要だ。煮たり、水に晒してアクを抜いたりな。……いいか、自然界は甘くない。知識こそが最大の武器であり、無知はそのまま死に直結する。それが帝国の『現実主義』だ」
コナンは立ち上がり、遠くに見えるツインタワーを見据えた。
「この森の毒も、ビルの爆弾も、本質は変わらない。正体を見極め、適切に処置する。……それだけのことだ」
「……その通りね。さて、講義はここまで。次は、毒に当たらないための『真水』の確保術へ移るわよ」
灰原の先導で、ヘトヘトの探偵団はさらに森の深部へと引きずられていく。彼らにとっての「楽しいキャンプ」は、いつの間にか「帝国の新兵訓練」へと書き換えられていた。