勇者と怪盗の不夜城(パレス) ―偽りの神樹と真実の選択― 作:mitsuyo
部室に友奈と戻った。
「銀、ほら動かないの!傷口が開いたら大変でしょう!」
「美森~、そんなに心配すんなって、ほら、園子も笑ってんじゃん」
園子・銀・東郷の三人は談笑していた。明智の言った通りである。
東郷の手は銀の腕に添えられ、安堵したように微笑んでいる。
友奈が泣いて飛び出したことなど、本当に気づかなかったらしい。
「あ、友奈に蓮」
夏凛が声を掛ける。
「戻って来たんですね、よかったぁ!」
樹が駆け寄る。
「心配したわよ」
風も近づいてくる。
「友奈ちゃん、大丈夫?」
かすみ等、怪盗団も声を掛けてくる。
「みんな、心配かけてごめんね」
友奈は、はにかんだ笑顔を見せる。
東郷は銀の手当てが一段落したところで、ようやく友奈に気づき、
「友奈ちゃん、どうかしたの?」
東郷は無邪気に続けた。
「ごめんね、銀が心配で…… つい夢中になってしまったわ」
その言葉には悪気が一切ない。
けれど、
(もう友奈ちゃんは必要ないわ)
「…… っ」
また泣きそうになった友奈は、東郷から目線を反らした。
「かすみちゃん」
「なに?」
「明日からまた一緒に、登校してもらってもいいかな?楽しかったし」
そういわれ、かすみは嬉しそうにする。
「もちろんだよ、よろしくね。友奈ちゃん」
翌日から蓮とかすみと登校することになった。
「友奈ちゃん、東郷ちゃんはきっと……
銀ちゃん達と再会できて気が回らなかっただけだよ。
本当は友奈ちゃんのこと、すごく大事に思ってるよ」
かすみは、周りに聞こえないよう、小声で友奈に話す。
「うん…… ありがとう」
かすみに言われ、笑顔で返す、しかし、やはり何処か曇っていた。
帰り道、東郷・園子・銀の三人は並んで帰っていた。
「ねぇ、わっしー…… 今日ゆーゆが泣いて出て行ったの、気づいてた?」
唐突に、園子が言う。
「…… え?え…… ?友奈ちゃんが…… 泣いて?」
東郷が言われたことを理解できないとばかりに困惑する。
銀もため息をつく。
「気づいてなかったのか?」
「そ、そんな…… 気づかないわけ…… 」
言いかけて、口を閉じる。
(私…… 銀とそのっちのことで頭がいっぱいで…… 友奈ちゃんのこと…… 全然)
胸に小さな痛みが走る。
そんな東郷に、園子が優しく言う。
「ゆーゆ、ずっと無理して笑ってたよ、わっしーのことずっと見てた」
「っ…… 」
「美森、一度ちゃんと友奈と話したほうがいいぞ」
東郷は震える手を胸に当てた。
「友奈ちゃん…… どうして、そんなに…… 」
自分のせいで友奈が泣いた、その事実が東郷の胸を突いた。
翌日、放課後の勇者部部室。
「ここがポイントね、この公式を押さえればおうようもいけるわ」
真がノートに書き足しながら教える。
「ありがとう、真ちゃん!わかりやすいよ」
「ええ、よかった」
(友奈…… すごい集中力ね。一度やる気になったら一気に伸びるわ)
校庭のベンチ、友奈を真ん中に、左右には杏と春が座っていた。
「これも悪くないけど、ここにちょっと色足すともっと映えるよ」
杏が友奈の髪にリボンを当てたり、メイク道具を広げてはしゃいでいる。
「杏ちゃんってすごいプ…… ロみたい!」
「でしょ~?春、見てみて。友奈絶対化けるタイプだよ!」
春も笑いながら。
「とってもかわいいよ!友奈ちゃん」
「ありがとう、春ちゃん!嬉しいなぁ」
「…… 」
そんな二人を離れた所から東郷が見ていた。
少し前まで、友奈は勉強で分からない所があると、東郷に聞いていた。
しかし、最近は東郷には聞かず、蓮達に聞いている。
それどころか、東郷に声を掛けてくることすらなくなってきていた。
友奈と話し合った方が良いと、銀と園子に言われたが、自分から声を掛けづらくなっていた。
昼休み。
「お昼だー!」
「ちょっ!友奈、そんな急いでどこ行くのよ?」
弁当箱を抱えて廊下に出ようとしている友奈に夏凛が声を掛ける。
「勇者部の部室に、蓮君たちと一緒に食べる約束してるんだ」
友奈は笑顔で答えた。
「ああ、そういえばそんな話ししてたわね、というか、あいつら高校からわざわざ来るの?」
夏凛が疑問を口にする。
「ねぇ、夏凛ちゃんも行かない?」
「え?私も」
夏凛はきょとんとする。
「うん、真ちゃんに教えてもらった料理もいくつか入れてきたから、蓮君や夏凛ちゃんにも食べてもらいたいなって」
そういい、弁当箱を夏凛に近づける友奈。
夏凛は顔を真っ赤にしながら、
「し、仕方ないわね!…… そんなに言うなら、味を見てやろうじゃないの」
満更でもなさそうに答える。
「やったー!ほら夏凛ちゃん、早く早く!」
「ちょっ!引っ張らないでよ!」
夏凛は自分の昼食を何とか掴み、友奈に引っ張られながら教室を出て行った。
「…… 」
そんなやり取りを自分の席から見ていた東郷。
少し前までは、昼休みには一緒に昼食を、と声を掛けてきていたが。
夏凛や怪盗団の誰かと一緒であることが増えている。
声を掛けられるたびに断っていた東郷にも責任はあるが。
「わっしー?」
弁当箱を持った園子が声を掛けてくる。
いつもなら率先して二人を昼食に誘う東郷が黙って席に座ったままでいる。
「…… 友奈ちゃん」
二人の声が聞こえていないのか、東郷は友奈の名前を呟いた。
銀と園子が傍にいてくれて、何も不満はない、はずなのだが。
露骨に友奈が怪盗団、特に蓮と一緒にいることが増え、東郷は内心、穏やかではいられなかった。
平日の朝、結城家の友奈の部屋では目覚ましが起床のための音を鳴らしていたが、友奈は起きる気配がない。
そこにノックの後、かすみが入ってきて。
「友奈ちゃん、朝だよ」
声を掛けて、起こした。
「ん~…… おはようかすみちゃん」
「おはよう」
目を擦りながら起きる友奈、まだまだ自力で起きるのは難しいらしい。
「いつもごめんね」
「いいよ、それに最近友奈ちゃんのお母さんとも話してて楽しいし」
「お母さんもかすみちゃんや蓮君のこと話してたよ!」
「ほんと?嬉しいな」
「でも、お父さん蓮君との関係が気になってるみたい」
「関係って?」
「えっと、年上の男子が毎日起こしに来てて単なる友達なのかーって!」
「なるほど、つまりね友奈ちゃん。お父さんは、友奈ちゃんと蓮先輩が付き合ってるんじゃないか、心配なんだと思うよ」
「え!?」
思わず声を上げる友奈。
「わ…… 私と、蓮君が?」
「うん、ねぇ、友奈ちゃん」
「?」
「友奈ちゃんは、蓮先輩のこと好きなの?」
「えっ…… と」
言いよどむ友奈。
「私…… まだあんまりそういうの解らなくて」
胸に沸いた感情をの名前をまだ言語化できなかった。
「そっか…… 私は蓮先輩のこと好きだよ」
「そうなの!?」
「うん、友奈ちゃんもそうかなって思ってたけど」
「う~ん、やっぱりまだ分かんないな~」
腕組して神妙な面持ちになる友奈。
「変なこと聞いてごめんね。友奈ちゃん」
「いいよ、蓮君のこと好きかはまだ分からないけど、私かすみちゃんとはこれからも仲良くしたいな」
「私もだよ、そろそろ行こうか」
「うん!」
「いっくよー!!」
友奈は気合を入れて、
「えーいっ!!」
斧を振り下ろした。
そして、軽快な音を立てて、木が割れた。
「すごい!友奈ちゃん上手だね!」
春が絶賛した。
「えへへ、こういうのは得意だから!」
友奈は照れ臭そうに笑う。
勇者部の仲間、白鳥歌野の世話をしている畑、歌野が不在のため、残りの勇者部で世話していたが、春が積極的に手伝いをしてくれて勇者部としても助かった。
友奈も一緒に管理を手伝っていたが、話の中、春が薪割りを行うという話になり、
友奈も一緒に行っていたのだが。
思いのほかはまったらしく、既に結構な量の割れた薪が積みあがっていた。
「ふ~、友奈ちゃん、お疲れ様。紅茶を淹れたから一緒に飲もう」
春がティーセット等一式用意し、手慣れた所作で用意した。
「どうぞ」
「わぁ!すご~い!」
友奈は眼を輝かせる
「ふぅ~、やっと終わったな」
浜辺を見回し、竜司が一息つく。
「二人とも手伝ってくれてありがとう」
友奈が蓮と竜司にお礼を言う。
「構わない」
二人は勇者部のゴミ拾いを手伝っていた。
「にしても、この世界の四国は中々良い奴が多いってのに、ゴミ捨てる奴はいるんだな」
竜司が疑問を口にする。
「そうだね、残念だけど、だから頑張って拾わないとね」
友奈が前向きなことを言う。
「そういう考え、嫌いじゃないぜ!」
竜司が思ったこという。
「ありがとう、竜司君てやっぱりまじめだよね」
友奈に唐突に褒められ、竜司が戸惑う。
「俺?いや、俺は別に」
「でも、一緒にゴミ拾い最後まで一緒にしてくれたし、私はいい人だと思うな」
「お…… おう」
率直に言われ、竜司もしどろもどろになる。
「しっかし、腹減ったな」
竜司は腹を押さえて空腹をアピールする。
「あ、それじゃあ、帰りにうどん食べて行かない?」
友奈が提案するが、
「うどん?おれはラーメンの方が」
「え?」
ラーメンを提案し、友奈が表情を曇らせる。
「え、何この雰囲気?」
竜司は蓮に耳打ちで、
「なぁ、俺何か変なこと言った?」
尋ねた。
「ラーメンがいけなかった」
「なんで?」
場の空気が微妙なので、仕方なく友奈や勇者部行きつけの店でうどんを食べに行った。
「うめっ!このうどん!!」
乗り気ではなかった竜司だが、実際にうどんを啜った直後にハイテンションになった。
「良かった!気に入ってもらえて」
友奈も嬉しそうにうどんを啜る。
自分の好きな物を喜んでもらえて、嬉しいのだろう。
「ああ、うどんも悪くねーな」
「ほぅ、これは!」
「どうしたの?祐介君」
迷子のネコを探しに来た友奈と祐介、公園にいたが、そこの光景を見て祐介は感心する。
「いや、中々絵になると思ってな」
両手の人差し指と親指で額ブチを作る。
「祐介君絵を描くの好きなんだよね?」
「ああ、昔から画家になるために努力していたからな」
「なんだか、そこは夏凛ちゃんに似てるかな」
「?夏凛が」
「うん、夏凛ちゃんも勇者になるためにずっと訓練してたんだって」
「そうか、だが、彼女は勇者部にいて友奈たちといて、とても楽しそうだ」
「そうかな?そうだと嬉しいな!」
「俺も、怪盗団の皆といて楽しい、だからそこは一緒かもしれないな」
「じゃあ、祐介君今日は改めて宜しくね!」
「ああ」
ある日の、讃州中学内武道場にて。
「はぁ、友奈中々やるわね」
胴着を着た友奈と、真は荒い息を整えながら会話する。
先ほどまで、友奈と手合わせしていた。
「真ちゃんも、ホントに強かったよ!」
「ありがとう、合気道習っててね」
「私もお父さんに習って」
そんな様子を、離れて見ていた夏凛。
「真!少し休んだら、次は私とやりましょ!」
「ええ、いいわよ!」
「双葉ちゃん、何してるの?」
友奈が双葉に尋ねる。
「ふっふ~、豆を挽いてるんだ」
部室にて、双葉がレバーをぐるぐる回していた。
「豆?」
「おお、コーヒー豆をな」
「双葉ちゃん、コーヒー飲むの?」
「うん、家が喫茶店でな。蓮もそこの屋根裏に住んでたんだ」
「屋根裏に?」
「うん、居候だけどな。コーヒーやカレーの作り方習ってたぞ」
「へぇ~」
蓮の話になり、友奈も興味津々である。
特に屋根裏に住んでる、という点に惹かれたらしい。
「友奈も飲むか?」
「うん、ありがとう!」
挽いた豆を、コーヒーメーカーに入れ、抽出した。
「ん~、やっぱりルブランのコーヒーには及ばんな・・・」
一口飲むなり、呟きつつカップを置く双葉。
「そんなに違うの?」
コーヒーを啜りながら、友奈が尋ねる。
「うん、今度道具揃えて、蓮に淹れてもらうか、あいつ二代目ルブランマスターだからな!」
誇らしげに答える双葉。
「へぇ!なんかすごそう!ルブランマスター!」
カタカナを使った肩書きに反応する友奈。
「そーだろそーだろ?」
双葉も気を良くする。
「さぁ、明智君!次はおばあちゃんの荷物運びだよ!頑張ろう!」
明智の腕を引っ張り、移動する友奈。
(またこれか…… 、ボランティアなんて、苛立ちで死にそうだ!)
表面上は笑顔だが、内心では舌打ちをする明智。
唐突に、友奈は明智の腕を掴んでいる手を離すと、明智に顔を近づける。
「…… 僕の顔に何か付いてるかい?結城さん」
明智は笑顔で尋ねる。
「ううん、明智君すごく上手に笑うなって」
明智の笑顔を褒める。
探偵王子として、表面上演じてきた笑顔、おかげでテレビ等メディアでの評判も良かった。
女性ファンも多い、友奈も明智のファンになったのかと思ったが、
「この前の戦闘で、シャドウ斬ってた時の怖い顔が印象的だったから」
「!?」
思わぬことを言われ、絶句する明智。
まさか見られていたとは思わなかった。
「なんだか、今の笑顔は偽物みたいなんだもん。綺麗だけど、味がないっていうか、怒ってる時の明智君の方が、ちゃんと明智君が生きてる感じがするよ!」
(…… まいったな)
明智は一応この後の勇者部の活動に付き合った。
「今日は俺がぼた餅を作ってきた」
蓮が手作りのぼた餅を全員に配る。
「わぁ!東郷先輩のと同じくらい美味しいです!」
「あら、ホント!蓮て料理男子なのね、大したもんだわ」
勇者部からも中々の好反応。
「友奈どうだ?」
「ん~!!おいしい!」
ぼた餅を頬張る友奈。
「すっごく美味しいよ、蓮君!」
笑顔で応える友奈。
(すごく美味しい・・・・でも)
その様子を離れた席で見ていた東郷。
(そんな、友奈ちゃんのために、沢山創意工夫してきた味を、こんなに簡単に…… 友奈ちゃんのため?)
同じ味を作られたことに動揺しつつ、改めて友奈を見る。
(友奈ちゃん、可愛い笑顔…… 私以外にあんな顔見せるなんて…… )
そこで、ふと思う。
最近の友奈のことを東郷はよく知らない、最近は蓮と行動をよく共にしている、朝一緒に登校し、昼休みも一緒に過ごしている。
授業で分からなかった所があれば蓮や真に相談していた。
どれも蓮が来る前に東郷がしていたことだが、銀と再会してからはそれらを全くしていない。
友奈に何度も声を掛けられたりしたが、流して銀の所へ行っていた。
(私…… 友奈ちゃんを蔑ろにしてた?)
気付けば友奈は蓮の隣にばかりいた。
そればかりか、怪盗団と一緒におり、楽しそうに笑い、成長していた。
以前より朝起きられるようになったという話を聞き、勉強もより頑張っている。
東郷は急に恐ろしく思えた。
(このままじゃ…… 友奈ちゃんを取られちゃう?)
東郷の視界の中で、友奈と蓮が笑い合っている。その光景は、東郷には「自分から友奈を奪い去る侵略者」のように歪んで見えていた。
「…… あんな人に、友奈ちゃんの何がわかるっていうの?」
パレス攻略に来ていた、怪盗団と勇者部。
シャドウとの戦闘にも、勇者部は慣れてきており、攻略は順調に進んできていた。
「スカル、フォックス。前方の牽制、頼む!」
「おう!」
「心得た」
スカルとフォックスが前に出る。
「風、夏凛。左右は任せた!」
「了解!」
「任せなさい!」
夏凛、風共に武器を構えてシャドウに飛び掛かる。
「流石に、勇者部もバーテックスとの戦闘の経験がある分、順応が早いわね」
クイーンがジョーカーの背後に立ち、小声で言う。
『新手が来るよ、全員構えて!』
ナビの警告と同時に、仮面の神官型シャドウが現れる。
「正体を見せろ!」
ジョーカーが仮面を引き剝がす。
「ペルソナ!」
パンサーがペルソナを召喚し、敵を炎上させる、
そこに、東郷が狙撃し、園子が槍による追撃を掛け、仕留めた。
「これは…… 見取り図ね」
クイーンが壁の装飾を調べる。
銀が隣から覗き込む。
「ほんとだ…… どの階層のなんだろ?」
「おそらく、私たちのいる階層だと思うけれど」
東郷は銀に答えるように呟く。
「案内さん、そっちの端末に照合できますか?」
「だいじょーぶ!任せろだ」
ナビは元気に答えた。
「…… なぁ、東郷って頑なにカタカナ使おうとしなくね?」
スカルがジョーカーに小声で言う。
スカルは頭蓋骨、パンサーは豹など、コードネームを訳して呼んでいる。
「東郷はね、護国意識が強いのよ」
そんな二人に、風が小声で話しかけてくる。
「護国?」
スカルが護国という単語をオウム返しする。
「ええ、つまりお国を守るために、外国のことや外国語があんまし好きじゃないのよ」
「あぁ、それでか」
何となく納得したスカルだが、
「ん?それならよ、クォーターなパンサーとか大丈夫なのか?」
疑問を思いつく。
「あぁ…… それはね」
風が目線を東郷に向ける、釣られて、二人も目線を向ける。
銃口をパンサーの背中に向けて歩いている東郷の姿。
多少なりとも、外国人の血が流れているパンサーにあまりよくない感情を抱いているのは理解できた。
そして、その様子を不審に思いながらも、誰も何も言えない状況が出来ていた。
「あぁ…… そゆこと」
スカルが納得していた。
「ごめんね・・・・少ししたら落ち着くと思うから」
「…… 苦労しているんだな」
ジョーカーが労った。
「樹、後ろ!」
「はいっ!」
樹はバックステップで避ける。
「銀、左へ回り込んで足を止める!モナ、サポートを!」
モナがパチンコを飛ばし、銀が一気に距離を詰める。
「はああっ!」
足元に銀が渾身の一撃を叩きこむ。
シャドウがよろける。
「総攻撃だっ!!」
怪盗団と勇者部が一斉に飛び込む。
銃声、拳、刃等、様々な攻撃が叩き込まれる。
「絶対に負けない、私たちは勇者だから!」
最後に、友奈の一撃が決まり、シャドウは崩れ落ち、霧散した。
全員が息を整える。
「連携、うまくいったわね」
風が笑う。
「勇者部の動き、スムーズだったよ」
ノワールが褒める。
シャドウとの連戦を終え、ジョーカーがセーフルームの扉を開く。
「ここは安全だ、休もう」
全員次々と腰を降ろしていく。
「はぁ…… ここなら少しは落ち着けますね」
樹がほっと息をつく。
「本当に…… なんだか異世界の保健室って感じね」
周りを見回し、夏凛が呟く。
夏凛が隣のクイーンに、
「さっきのシャドウ、動きが少し読めたわ。突進のあと一瞬だけ硬直が入る」
「そうね、その観察力助かるわ。私たち怪盗団が苦戦した敵にも通じるものがある」
助言し、褒められ、夏凛は頬を赤くする。
「そ、そんな大したことじゃないわよ…… 」
その隣では、
「いやぁ!銀、さっきの斬り込み、マジですごかったなぁ!!」
スカルが笑って銀を褒める。
「ありがとな、あんたの電撃もすごかったよ!」
ハイタッチで互いにノリノリである。
「樹、ワイヤー捌き見事だった」
「そ、そうですか?」
「ああ、あそこまで容赦なく、敵を細切れにできるとは、その容赦のなさをまた」
「そ…… それって褒めてるんですよね?」
フォックスはあくまで悪気なしに、褒める。
「乃木さん、戦闘のたびに、周りの状況をしっかりと把握してたようだね」
「それほどでもないんよ~」
「のんびりしてるようで、なるほど、天才というのも伊達じゃないか」
「そうかな~」
「君はどうも得体が知れないな」
「ごろろんも、そんな感じじゃないかな~?」
「…… 」
クロウが黙る、呼び名に反応したのか、それとも、別のことにか。
「これは、扉か?」
パレス攻略も、勇者部が戦闘に慣れてきたおかげで、大分進んだ。
シャドウを撃破し、仕掛けを解いていったが、大分最深部にくると、扉があった。
「反応、ばっちり出てるよ。お宝はその先に間違いない」
ナビが端末を確認する。
「けどよ、開かねーんじゃ取りにいけないぜ」
スカルがぼやく。
取っ手を引いてみるが、押してみてもびくともしない。
「ていっても、辺りには何も仕掛けはないわよ」
「ここに来るまでの間にもそれらしきものはありませんでした」
「モナ」
ジョーカーがモナを見る。
「ああ…… こいつはもしや」
「なによ、何か心当たりでもあるの?」
夏凛が眉をひそめる。
「ああ、前にもパレスに入れなかったり、扉が開かないことがあってな」
「あったわね…… 」
懐かしそうにする怪盗団。
「それで、どうしたの?」
風が尋ねる。
「認知を変えるんだ、現実の」
「現実の?」
樹が首をかしげる。
「ああ、現実で扉を開いたり、建物内に招いてもらえばいい」
「つまり~、一旦は現実に戻る必要があるんだね~」
「そうだね、ここが大赦なら、大赦関係だと思うし」
「それじゃあ、一度戻りますか?」
「そうね、どっちにしろこれ以上探索のしようもなさそうだし」
「現実世界で情報を集めるべきだね」
「一度帰ろう。現実で準備を整えてから、もう一度ここまで来る」
勇者部も怪盗団も、それぞれ頷いた。
パレスから帰還した、不夜城はそのまま残り、彼らを見送った。
「はぁ…… 」
放課後の 教室にて、東郷はため息をついた。
パレスから帰還して数日、明智や真など、怪盗団はパレスの先に進む手段を模索しているが、成果は芳しくない。
しかし、東郷にとってはそれよりも大事な問題があった。
(友奈ちゃん…… )
いつもは隣にいた友奈、 しかし最近は怪盗団、特に蓮と一緒にいる。 銀が来た当初こそ、三人でまたいられることに喜び、楽しかった。 しかし、蓮と友奈がいるのを見、仲良さそうに、なにより友奈が成長している姿を見るたびに、東郷は恐ろしくなった。
未だに友奈とは、話せないでいる。
(友奈ちゃんが遠くに行ってしまいそう、私が友奈ちゃんを蔑ろにしたから?)
「どうした?美森」
「何か悩み事~?」
一緒にいた銀と園子が声を掛ける。
「あら?私そんなに悩んでるように見えたかしら?」
「そりゃあ、そう何度もため息つかれたらな」
「もう十回以上ため息ついてるんよ~」
思わずつっこむ、二人。
「実は、友奈ちゃんのことで」
「やっぱりゆーゆのことなんよ~」
「まだちゃんと話してなかったのか?」
「え、ええ…… 」
東郷は歯切れが悪い、
「なぁ、今更なんだけど、美森と友奈ってそんなに仲良いのか?」
銀が園子に尋ねる。
「ミノさんが来る前は、わっしーはゆーゆにべったりだったんよ~」
「へぇ、とてもそうは見えなかったけどな、なんか友奈に悪い事してるかもな」
「ミノさんが来てからは、わっしーも私たちとずっと一緒だったからね~」
そこで、園子が急に真顔になる。
「私も、また三人でいられるのは嬉しいよ~、でもね、ゆーゆのことも大事なんだ」
園子は続ける。
「仲が良かったのに、わっしーに急にほったらかしにされたらゆーゆも寂しいと思うんよ」
「寂しかったのに、なんで何も言わなかったんだ?」
銀が尋ねる。
「そこがゆーゆの良いところでもあるんよ~、自分よりも、他人を気遣って自分が我慢するからね~」
そう言われ、東郷は内心、
(そうよ、友奈ちゃんなら、私のために我慢するわ。銀やそのっちばかりにかまけていても…… )
そう思っているが、園子と銀の話は続く 。
「そんな寂しい時に気にかけてくれてるのが、雨宮さんか」
銀が納得したとばかりに言う。
「そーそ!ゆーゆとレンレン、急接近なんよー!」
園子も嬉しそうに乗っかる。
「年頃なゆーゆに、魅力が魔性の男は劇薬過ぎるんよ~!」
盛り上がる園子と銀。
「…… 二人とも?」
置いてきぼりにされて、声のトーンを低くする東郷。
「「あ」」
ようやく東郷のことを思い出す二人、
「…… ってちょっと待って、今友奈ちゃんと雨宮さんが急接近て?」
園子の発した友奈と蓮の急接近に反応する東郷。 気になることを言われ、内心益々穏やかでいられない東郷は。
「友奈ちゃん、雨宮さんと!?どういうこと?」
部室で叫びまくる東郷、そんな東郷を冷ややかに見る銀と温かく見る園子。
「なんか、美森しばらく会わない間に変わったな…… 」
「ゆーゆの影響なんよ~」
「落ち着け須美、友奈だって年頃なんだ、異性が気になっても不思議じゃないって、分かるだろ?」
銀は指摘する。
「全っ然分からない!」
「でもさ、雨宮さんとおかげで仲良くなってるのは怪我の功名かもな」
「見てて何だか、うきうきするんよ~!」
「はっ!!?」
唐突に顔を上げる東郷。
「美森?」
流石に心配になる銀。
「…… 」
「だけどさ、あの二人めっちゃお似合いにも見えるぞ」
「それに、レンレンと一緒に行動してから、ゆーゆーも、前よりしっかりしてるし、それに少しお洒落になったんよ~」
「…… 」
またも押し黙る東郷。 少しして
「うわああああーーーっ!!!」
唐突に叫び出し、教室内で暴れ出す東郷。
「「!!?」」
驚く銀と園子。
机が一つ宙を舞う。
廊下へと避難し、落ち着くまでまっていたが、途中で勇者に変身して、発砲しようとしていたので、そこで二人も変身し、取り押さえ、なんとか落ち着いた。
教室内は机や椅子など、物が散乱し、窓まで割れている、校庭には椅子と机がいくつか落下したあとがあった。
「…… なぁ、美森普段からこんなことあんのか?」
園子に小声で聞く銀。
「わっしーは、ゆーゆのことで暴走して、皆に取り押さえられるまでがお決まりなんだ~」
「私が…… 友奈ちゃんを手放してしまった?」
そう呟く。
「急に冷静になるなよ…… 」
銀はツッコム。
「…… 友奈ちゃん、もう私は必要ないのかしら」
再度俯き、呟く。
「勉強も、朝起こすのも、それにぼた餅のことも、私が友奈ちゃんの傍にいる理由がなくなったじゃない!」
スカートを両手で掴み、声を震わせる。 やがて両目に涙が滲む。 そんな東郷に、
「美森、私達はずっ友だけど、いるのに何か理由はあるか?」
銀が訪ねる。
「え?ないけど」
「それなら~、ゆーゆとのことも同じなんよ~」
「友奈と一緒にいたい、友達だからな、それだけでいいだろ?」
「銀、そのっち…… 」
二人にそう言われ 、意を決した。
「ありがとう二人とも!そうよね、友奈ちゃんは一番の友達だもの、一緒にいたいからいてもいいのよね!友奈ちゃんは私の友奈ちゃんだもの!」
席を立ちあがり、
「友奈ちゃんに謝って来る!そして雨宮さんから友奈ちゃんを取り戻してくる!」
高らかにそういい、教室を出て行った。
「…… なんか、最後さらっとすごいこと言ってなかったか?」
教室内に残された銀と園子、銀が尋ねた。
「メモメモ~」
園子はマイペースにメモを取っていた。