勇者と怪盗の不夜城(パレス) ―偽りの神樹と真実の選択―   作:mitsuyo

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5,東郷美森、敵対

友奈達は部室に戻った。

「あとは…… 東郷さんか」

友奈が呟く。

先ほどの銀と園子の言っていた、友奈に謝るというのは気になり、最近疎遠な東郷と話すのは緊張するが、それでも話さない訳にはいかない。

「友奈、東郷と連絡は?」

蓮が尋ねる。

「それが、東郷さんのスマホに電話してるんだけど、繋がらなくて。家にも帰ってないみたいだし、園ちゃんと銀ちゃんも知らないって」

「そう…… 」

「でも、いつまでも探してる訳にもいかないよね」

杏が机に頬杖をつく。

「ああ、ワガハイ達もパレス攻略を進めねーとな」

モルガナが言う。

「でも、あの扉を攻略しないと先に進めないわ」

「友奈ちゃんがこの世界が曲解されてるって認めたことで、何か変化はないでしょうか?」

かすみが提案する。

現実を自覚した勇者部がいれば、先に進めるかもしれない。

「それは分からないけど、一度行ってみない?」

真もまた提案する。

「明日行ってみよう」

蓮が結論を出す。

全員がそれぞれ頷く。

全会一致し、そうして、その日は解散となった。

東郷は行方不明。

風、樹、夏凛、銀、園子、皆それぞれ揺らぎを抱えたまま。

それでも、翌日彼らは再び不夜城のパレスへ向かうことになる。

 

「みんな、おっはよー!」

朝の大赦前。

いつものように元気な声を上げて、友奈が手を振る。

隣には、蓮とかすみも一緒だ。

すでに集まっていた怪盗団と勇者部が一斉に振り向いた。

「おはよう友奈」

「おはようございます!」

「遅いわよ!」

「おっはよ~なんよ」

「おはよう」

風・樹・夏凛・園子・銀もいた。

それぞれの声を聞いて友奈は胸がじんわり温かくなるのを感じた。

「みんな…… 」

樹が一歩前に出る。

「事情は怪盗団の皆さんから聞きました」

「まさか、神樹様や造反神でもない世界だったなんて」

夏凛が苦笑交じりに肩をすくめる。

「そりゃ、若葉も芽吹もいないはずよね」

銀が静かに続ける。

「私もな…… 最初は信じたくなかったけど」

「ミノさん…… 」

銀を複雑そうに見る園子。

各々事情を知り、胸中を明かす。

「でも、やっぱり帰りましょう」

「私たちも、そう決めたんです」

「完成型の私がいなきゃ、現実世界も困るってもんよ!」

夏凛が胸を張る。

「私も、やっぱりみんなには現実で生きて欲しいから」

「私も~」

「良いのかい?」

明智は小声で尋ねた。

「良いんです、やっぱり友達には現実で生きて欲しいから」

全員覚悟は決まったらしい。

「うし!先に進もうぜ」

竜司が高らかに言う。

しかし、友奈の表情は曇っていた。

(東郷さん…… どこにいるの?)

怪盗団が来てから、すっかり疎遠になっていた東郷だが、やはり友奈にとっては一番の友達であり、大事な存在である。

一緒に現実の世界に戻りたいと思っている。

このまま疎遠になるというのは嫌というのが本心である。

 

 

 

パレス、不夜城の最深部近く。

例の扉の前まで来た。

「あ!扉が開いてる!」

勇者部が扉を確認し、そう言った。

巨大な扉は開かれ、その先には通路が伸びていた。

「本当だわ、通路が!」

「これで先に進めますね」

大盛り上がりの勇者部だが、

「おいおい待て…… どういうことだ?」

スカルが尋ねる。

「分からないわ、ナビ?」

クイーンが問いかける。

「ダメだ、まだ扉の反応はまだあるぞ」

「それも怪盗団にだけ、らしいな」

「まだ、何かやることがあるってことかな」

「え?みんなはまだ扉があるの?」

友奈が怪盗団を見る。

「ああ」

勇者部が不思議そうに見てくるが。

「どういうこと?」

首をかしげるパンサー。

「見えてるの?」

風が確認すると、ジョーカーが頷く。

「勇者部のみんなには開いてるけど、わたしたちにはまだ塞がってるって判定だな」

ナビが冷静にまとめる。

「勇者部は、現実世界をちゃんと見ようと決めた。だから扉が無くなった」

クイーンが顎に手を当てる。

「ってことはよ…… 」

スカルが頭をかく。

「俺たちにまだ扉が残ってるってことは、俺たちも何か見て見ぬふりしてるってことか?」

パンサーが唇を噛む。

「私たちも何か忘れてる?まだ認めきれてないものがあるってこと?」

怪盗団が話していると。

「ここから先に行かせるわけにはいきませんな」

「!?」

唐突に大人の男性の声。

全員が弾かれたように、声の方を見ると。

神官服に仮面、大赦の神官、最も服装は少々アレンジされているが。

だが、その神官の隣には、

「東郷さん!?」

友奈の声が裏返る。

東郷が隣にいた。

凛とした青い勇者装束。

銃を構えた、見慣れた姿で立っていた。

「なんで、東郷が神官の横に?」

スカルが誰となく、尋ねる。

「まさか、シャドウとか?」

「いいえ、私は本物です」

怪盗団が口々に疑問を口にするが、

東郷は一歩前に出て、毅然と答えた。

「皆さんに、この世界を戻させる訳にはいきません」

「東郷!?」

「何いってるんだ?」

東郷の宣言にざわつく勇者部と怪盗団。

「東郷さん、どうして?」

友奈が悲痛な表情で尋ねる。

問われた東郷も悲痛な表情を浮かべる。

「友奈ちゃん…… 」

だが、表情をきつくしめる。

「聞いてしまったの、友奈ちゃん達の会話を」

 

 

 

数日前

保健室の前で怪盗団と友奈の会話を聞いた東郷。

世界の曲解に、銀の死、それらを聞き、

「っ!!?」

東郷の脳内、以前の、記憶がフラッシュバックする。

鷲尾須美として、勇者のお役目に就き、そして、銀が戦死したこと。

その後、友奈と出会い、勇者部に入部したこと。

園子と再会し、壁を破壊し、友奈が意識不明になったこと。

その後、天の神の怒りを鎮めるため、自身を生贄にしようとしたが、助かり、結果友奈に祟りを押し付けてしまい、それを知らずのうのうと学園生活を満喫していたこと。

神婚しようとした友奈を説得し、大満開した友奈が天の神を撃退したこと。

「全部…… 思い出した」」

手が震えていた、いやそれどころか身体中が震えていた。

「でも…… それならなんで西暦の勇者達のことまで?」

乃木若葉などの記憶があることに戸惑うも、

「…… これが、曲解のせい?以前の造反神の記憶も思い出したのも?」

頭の中で思考を巡らせる。

(怪盗団が大赦の人を改心させたら、この世界は消える?そうなったら、本来死んでいる銀は…… 、それに、このままじゃ友奈ちゃんは雨宮さんに取られる上に、祟りのことをまた思いだして苦しめる?)

友奈の笑顔と、血に染まった銀の姿が何度も交互に浮かぶ。

「そんなの…… そんなの、絶対に嫌!!)

視界が揺れる。

そして、東郷は思いついた。

(なら、改心さえされなければ…… )

 

「だから、皆さんに改心はさせない」

「東郷さん!」

「東郷!!」

直後、銃声が響くと、足元が抉られていた。

東郷が銃を構えている、撃たれたのだろう。

「マジで撃ってきやがった!!」

「どうする?」

モルガナが小声で問う。

「今の東郷、完全に聞く耳持ってないわ」

クイーンが歯噛みする。

「このままじゃダメだ、一旦退くぞ!」

ジョーカーが判断し、怪盗団と勇者部は一斉に後退した。

東郷は追撃こそしなかったが、銃を構えたまま、その場に立ち尽くしていた。

 

パレスから帰還後。

勇者部部室には、重い沈黙が垂れこめていた。

「まさか、東郷が敵になるなんて」

風が重々しく口を開く。

「わっしー…… 」

園子も膝を抱えている。

「聞く耳持たないって感じだったぞ」

銀は腕を組んで外を眺めている。

「それに、私たちには未だに扉があるなんて」

杏がため息をつく。

「それもだが、とりえあずは東郷をどうにかしないとな」

祐介がきっぱりという。

「…… 」

その中で、蓮は友奈の様子を見ていた。

「友奈」

名前を呼ぶと、肩がびくりと震えた。

「蓮君…… 」

「お前はどうしたい?」

短く、それだけを問う。

友奈はしばらく口を開けなかった。

感情がまとまらず、言葉が出なかった。

「私は…… 」

友奈は俯く。

「私が悪いのかな?蓮君と仲良くしたから。東郷さんのことに、もう少し気を配ってたら…… 」

「それは違う、東郷は東郷で友奈を蔑ろにしていた。銀と園子ばかり見て、怪我したお前に気づきもしなかった」

「うん、でも…… 」

友奈は唇を噛み、

「それでも、東郷さんの邪魔したくなかった。銀ちゃんや園ちゃんと一緒にいられる東郷さん、楽しそうだったから」

そして、絞りだすように続ける。

「でも…… 本当は、寂しくて…… 苦しくて…… 今みたいなの、やだよ」

「あきらめるのか?」

「え?」

友奈は顔を上げ、蓮を見る。

真剣な表情で尋ねる蓮。

「東郷をここで諦めるのか。しょうがないと、自分に言い聞かせて、終わりにするのか」

そう問われ、

「…… 諦めたくない」

ぽつりと呟く。

「私、東郷さんを取り戻したい!銀ちゃんや園ちゃんと一緒でも…… 私の大事な東郷さんでいてほしい」

「なら、行こう!」

蓮が友奈に手を差し伸べる。

それを取る友奈。

「うん!」

怪盗団と勇者部、主に園子と銀に。

「みんな、私…… 東郷さんと向き合う!」

「友奈…… 」

「今までにも、こんなことあったし、向き合ってどうなるか分からない…… でも」

友奈が決意をの乗せた声色で言う。

「それでも、東郷さんとは、一緒に生きたから、現実で!」

現実に戻れば、銀は死ぬ、自身が祟りで苦しんだ事実がトラウマとして残る。

それを承知で、友奈は決めた。

「ゆーゆならそういうと思った」

園子嬉しそうに言う、銀のことがあり、複雑さはあるだろうが、東郷に戻ってきてほしい、という想いは友奈と同じだろう。

「おう!行こうぜ友奈!」

「私たちもばっちりフォローするから!」

「ま、それでいいなら付き合おう」

怪盗団も乗り気である、明智ですら、乗り気なように、思われた。

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