勇者と怪盗の不夜城(パレス) ―偽りの神樹と真実の選択― 作:mitsuyo
「どうやら、茶番で終わったようですな」
声が廊下に響く。
「大赦神官!」
ナビが声の主を指指す。
廊下の先に、大赦の神官服に仮面を付けた男が立っていた。前回の時と同じく、どこか芝居がかった、嫌な余裕を纏っている。
「東郷様お一人では荷が重いと思ってましたが、予想以上にあっさり敗れましたな」
「テメェ!こいつにだって色々あんだよ!勝手なこと言ってんじゃねえ!」
スカルが怒鳴る。
先ほどまで敵だったが、東郷のことを最早誰も責めない。
「そうよ!東郷だって、辛かったんだから!」
パンサーも続く。
「あんたに、そんなこと言わせない!!」
「わっしーのこと、悪く言うの許さないよ!」
園子も真剣な口調で言う。
勇者部も同様に、寧ろ付き合いが長いからこそ、東郷の痛みが分かるのだろう。
「ふん、甘いな。やはり子供だ。なんにせよ、敗けた駒には用はありません」
神官が切り捨てる。抑揚のない声で、仮面で表情は伺えないが、わずかな優しさも感じない。
「随分と自信満々ですね、この人数相手に、そんな口が利けるとは」
クロウが笑いながら言う。
しかし、神官は自信満々の態度のまま、
「ええ、東郷様の援軍にと、連れてきた方たちがいますから」
神官が手を挙げる、すると、神官の両脇から影が床からせり上がり、人の形を作る。
ひとり、ふたり、あっという間に、数十人の影が出来上がる、
「!?」
「嘘…… !!」
勇者部が驚愕した。
それに対し、
「?なんだか、勇者部の服装に似てるけど」
怪盗団が訝しげに呟く。
「おい、知り合いなのか?」
モナが尋ねる。
「若葉…… 」
「それに芽吹達防人までいるわ」
「ひなたさん達巫女もいます!」
そう、西暦の勇者、乃木若葉・上里ひなた・郡千景・土居球子・伊予島杏・安芸真鈴・白鳥歌野・藤森水都・秋原雪花・古波蔵棗・天馬美咲・鏑矢の赤嶺友奈等
歴代の勇者・巫女・鏑矢達、友奈達と造反神や中立神の世界で戦った仲間たちが勢ぞろいしていた。
「ちがう…… 」
友奈が首を振る。
「彼女たちは私たちの知ってる勇者じゃない!」
見かけこそ、かつて一緒に戦った仲間だが、同一人物ではないと、勇者部達には直感的に分かった。
「シャドウ…… か」
「…… 」
勇者達のシャドウは応えない。
怪盗団には分かった、何より、全員目が金色だった。
影の勇者たちは無言のまま歩み寄り。
各々が武器を構え、勇者部と怪盗団に襲い掛かってくる。
瞬間、若葉の顔がフォックスの目の前にあった。
「くっ!」
若葉の刀がうねりを上げ、フォックスの前に迫る。
フォックスも抜刀し、受け止める、刀身が擦れ、火花が散る。
「ゴエモン!」
間髪入れず、ペルソナを発動させ、反撃に移ろうとするが、離れた若葉の一閃、ゴエモンの攻撃は避けるでもなく、簡単に消される。
「なっ!」
驚くフォックス。
そして、接近戦を仕掛けるクイーンやノワール。
「はぁっ!」
クイーンが正拳突きを放つが、盾を持った勇者に止められ、轟音が響く。
「せいっ!」
ノワールの斧も防人の一人の盾に阻まれ、弾かれる。
他の面子も勇者達に苦戦を強いられていた。
「強い…… !!」
クロウが呻くように呟く、その顔には普段の冷静さはなく、明らかに苛立ちが見えた。
更に、
「七人御先」
郡千景が呟くと、何と言葉通り七人に増えた。
「くそっ!」
舌打ちするスカル。
「キャプテン・キッド!」
電撃のペルソナを発動させ、殲滅を狙うが、簡単に避けられ、攻撃を仕掛けてきたスカルに一斉に襲い掛かる。
勇者のシャドウたちは、バーテックスとは別格の脅威だった。
「このままじゃ敗ける!」
他の勇者たちも切り札を続々と使用していき、相対していた怪盗団と勇者たちは追い詰められていく。
そんな状況を見て、モナは、
「前にもあったが、退くぞ!」
叫んだ。
「最近こんなんばっかだな!」
スカルが悪態をつきながらも、撤退の動きに入る。
先ほどから戦闘中だというのに、泣いた状態で、その場から動かなかった東郷の腕を友奈が掴むが、それでも動かず、仕方なく、友奈が東郷を背負って撤退となった。
戦闘から離脱し、パレスから脱出した。
なんとか、全員逃げ延びた。
「くそっ!なんなんだよ、あの勇者達!」
竜司がイライラした様子で言う、手近な壁を蹴り、樹が驚く。
結局扉の問題は、怪盗団には残っている上に、今度は歴代勇者の妨害である。突破口どころか、状況は悪化していた。
「いくら歴代勇者といっても、流石に苦戦し過ぎね」
真が考える、そう、苦戦し過ぎなのだ、歴代勇者達が経験豊富といっても、怪盗団達もそれなりに修羅場を潜ってきた。
あそこまで苦戦するのは流石におかしい。
「それに、未だに怪盗団にだけ扉があるのは…… 」
春がつぶやく。
そう、勇者部は通路が開けていたが、怪盗団には扉が遮っている。
歴代勇者を攻略したとしても、これでは、先に進めない。
「これは…… 勇者部だけでなく、私たちも考えを改めないといけないってこと?」
怪盗団も、まだ向き合ってない現実がある?
「何か、見落としてるのか?」
「どう思う?蓮」
真が蓮に尋ねる。
『そのことについては、私がお話ししましょう』
声、と同時に青い蝶が舞う。
「え、なに?」
勇者部は初めて見たが、蝶がラヴェンツァに変身した。
「な!?」
「これは…… 」
絶句する勇者部。
「そういえば、話の途中だったね」
明智が言う。
友奈の体調が悪くなり、中断されてしまっていた。
「曲解の能力の一部が流れて来たって、言ってたね」
ラヴェンツァが頷く。
「そうです、統制の神が死に、その能力を受け継ぎ、大衆の認知を歪めたもの…… その者はマルキ」
「まるきって…… 丸喜先生!?」
杏が声を上げる。
「丸喜先生がどうして?」
思わぬ名前が出てきて、混乱する怪盗団。
「ねぇ、誰?そのまるきって」
疑問を口にする風、他の部員も同じ疑問を抱いている。
「私たちの世界でカウンセラーしてた先生」
春が優しい口調で端的に伝える。
「覚えていませんか?怪盗団」
「え?」
ラヴェンツァに聞かれ、間の抜けた声を出す。
「私は以前にも、あなた方にこの話をしたのですよ」
「?」
何を言っているのか、最初は分からなかった。
「そんな…… だって、この世界に来る前の私たちって…… あれ?」
「ここに来る前のことを思い返してみよう」
蓮は言う、勇者たちが今までのことを忘れているように、怪盗団も何か忘れているのではないか。
勇者部は現実を受け入れ、それにより、扉は消えた。
ならば怪盗団も直視しなくてはならない現実があるのかもしれない。
「統制の神を倒して…… 」
昨年のクリスマス間近、大衆の認知により、サタナエルを召喚し、統制の神を倒した。
「それから…… 」
「えっと…… 」
新年からどこか現実がおかしかった。
「そもそも、私たちなんで丸喜先生と戦ってたんだっけ?」
杏が尋ねる。
「それは、私たちにとって理想的な現実だけど、それを否定して自分たちが嫌だったから」
「その理想的な現実って?」
友奈が尋ねる。
「なにって…… あれ?」
竜司が言いよどむ。
「えっと…… 」
他の面子も同様に言えなかった。
確かに向き合う現実が存在した、それにも関わらず、何故か何かを言えない。
そのために、自分のことと向き合い、そして、しばし考えた後、怪盗団の中で何か弾けた。
「!!」
唐突に、本当に唐突に思い出した。
全員の脳裏に、自分自身のもう一度向き合った現実が流れ込む。
「そうだ、ワガハイ達…… 現実を所々忘れてるぜ!」
モルガナや仲間たちが思い出す。
「おいおい、俺らのペルソナ…… そうだぜ!俺達丸喜先生を止めるためにペルソナを更に強化してたじゃねえか!」
さらに、自分たちの本来の力も思い出した。
「私たち、自分のことと向き合ってたわ」
足を負傷し、その現実を丸喜に塗り替えられた。
追い詰められ、自殺未遂し、転校した親友、その現実が無かったことになった。
殉職したはずの父親が生存していた。
自身を幼少から育ててくれた師が、善人のままだった。
交通事故で死んだはずの母親が生存。
記者会見で死んだはずの父親が、生存していた。
猫の姿ではなく、人間の姿をしていた。
そして、自分を庇って交通事故で死んだ姉に、自分がなりきっていた。
「そうです、私の本当の名前……!!」
かすみこと、芳澤が叫ぶ。
そんなかすみに、
「かすみ…… ちゃん?」
友奈が呼びかける。
「友奈ちゃん、私の本当の名前は……」
芳澤は友奈に自身の本当の名前を伝えた。
喜びと安堵、それらの交差する空気。
「なんで忘れてたんだろうな…… 」
竜司の声は震えていた。
「しかし…… 今一度、向き合うことになるとは」
祐介が言うと、みんなも同じ気持ちなのだろう、各々表情が少し硬い。
「でもさ、なんでこんな中途半端に忘れてたんだろ?」
「それに、こんな記憶を改ざんなんて、曲解の影響をまた受けたとでも?」
現実を選んだはずの自分たちがこんなことになっていることに、怪盗団は腑に落ちない。
「それなんだけど」
風が口をはさむ。
「前にも私たち記憶を改ざんされてたことがあったのよ」
「本当に!?」
風の話に真が飛びつく。
「ええ、私たち揃って忘れてたのよ」
「東郷先輩のことを」
風の話を引き継ぐように、樹と夏凛も話す。
「私たちの記憶どころか、写真やあらゆる記録まで無くなっていたわ」
「記録までなんて、そんなこと!」
友奈と園子が思い出すまで、勇者部は本当に東郷が存在していないと信じて生活していた。
「神樹様に、私が願ったから…… 」
東郷が重々しく口を開いた。
「丸喜先生も、曲解で私たちを消せたのに、消さず、最後まで話し合いをしようとしてたね」
「あの大赦神官の場合、話し合いしそうにないが…… 」
祐介が率直に言う。
東郷をそそのかし、敵対するよう仕向けた辺り、怪盗団が自身を改心させるのが目的なのも、気づいているかもしれない。
それなら、最初から怪盗団を消しておいた方が早いが。
「あくまで曲解の能力の一部だから、私たちを消すことは出来なかったのかも」
真は推測を話す。
「だから、せめて記憶を消して弱体化を狙った…… か」
明智が冷静に言う。
大赦神官はあくまで力を借りただけ、統制の神ほど存在じゃない、故に完全な改変はできず、記憶や力、一部だけ封じた。
友奈が怪盗団を見回す。
いくら向き合ったとはいえ、怪盗団は現実を思い出し、気持ちが少なからず乱れている。
話すのを辞め、改めて後日にすべきと。
そんな空気が出来上がりが出来た。
「神樹は確かにこの世界に曲解の能力を流用されるのを防ぐことがきでませんでした。
しかし…… 代わりに、呼び寄せたのです。現実を選んだ、あなた方を」
「それは…… 」
蓮が呟く。
「現実世界は、あなた方を待っています」
ラヴェンツァはそういうと、蝶になり、去って行った。
「あ、待って!」
真が呼び止める。
「何でしょう」
再度人になる、ラヴェンツァ。
「私たち、この世界に来るとき、丸喜先生のパレスに行くとこだったんだけど、まさか戻ったら時間が経過してたりしない?」
「おいおい、期日過ぎたら俺らの世界丸喜先生に曲解されたままで終わりじゃねーか!」
竜司が慌てる。
「それは大丈夫です神樹の能力の理で、皆さんはこの世界に来る時の時間に戻されます」
「なら、丸喜先生のパレスに乗り込む時だね」
「私たちは、天の神との戦いが終わった直後に…… 」
今度こそラヴェンツァは去って行った。
話が終わり、沈黙が訪れる。
「みんなごめん、今日はもう帰る」
真が鞄を掴み、さっさと部室から出ていく。
「私も…… 」
「俺も」
怪盗団が帰宅していく。
勇者部が自分と向き合ったように、怪盗団も再度向き合うために。
「今日はもう、解散しよう」
明智が言うと、勇者部も納得した、つい先日、自分たちも経験したことのため、よくわかるのだろう。
二度目とはいえ、辛いものがある。
「友奈、東郷と話すと良い」
蓮が友奈の肩に手を置く。
「うん、ありがとう。蓮君」
そうして、友奈と東郷は一緒に帰宅していった。
少しぎこちない、二人一緒に帰るのは久しぶりだ。
夕焼けが視界に入る、校門を出ると既に夕方だった。
少し冷たい風が吹いていた
「東郷さん、帰ろ」
東郷は頷く、並んで歩く。
「…… 友奈ちゃんが、遠くへ行っちゃう、そう思ったの」
そういう東郷の声はかすれ気味だった。
「ううん、どこにも行かないよ。約束したもん」
友奈は首を振り、否定する。
「でも私、結局友奈ちゃんの寂しさに気づけなかった」
東郷は空を見上げる。
「友奈ちゃんのこと、大事に思ってたはずなのに、結局は自分のことしか考えてなかった」
「そんなことないよ、私や銀ちゃん、それに皆のことを東郷さんなりに考えてくれてたんでしょ?」
「それは…… 」
友奈は東郷の手を握る。
「大好きだよ、東郷さんは私の一番の友達だから」
「…… ありがとう、友奈ちゃん」
率直に、ただただ友奈に感謝した。
「いらっしゃい、友奈ちゃん」
「お邪魔しまーす、東郷さん」
その日の夜、東郷は自宅に戻り、友奈が泊まりに来ていた。
「友奈ちゃん…… 」
「?」
「本当にごめんなさい!」
そういうなり、いきなり土下座した。
「東郷さん!?」
困惑する友奈。
「色々あったけれど、とにかくごめんなさい!陳謝!!」
早口で喋る東郷。
本日何度目か分からない謝罪である。
「と、東郷さん!頭を上げて!」
東郷が頭を上げる。
「でもね、東郷さん」
不思議そうな顔をする東郷。
「前に、蓮君がぼた餅作ってきてくれたことあったよね、ホントに美味しかった、でもね、それからは東郷さんがぼた餅作ってくれなくなったのは辛かったな…… やっぱり私は東郷さんのぼた餅の方が好きだよ。」
「友奈ちゃん…… !!」
それを聞き、感極まる東郷。
涙目になりながら、立ち上がると、友奈に抱き着いた。
しばらくして落ち着いた東郷は
「でも、元の世界に戻ると決めたけれど、まさか西暦の勇者たちが敵に回るなんて」
「うん、みんなと戦うのは辛いよ…… 」
例えシャドウでも、仲間と戦うのは友奈にとっても辛いことだった。
この世界が造反神の作ったものでもなく、神樹関連でもなく、歪められたものであり、様々な現実を思い出すのも、
「それに、怪盗団の皆が扉を突破できないと」
「それは大丈夫だよ、東郷さん」
「え?」
「きっとすぐに怪盗団の皆は扉を突破できるようになる」
「…… そうね」
東郷は友奈の言わんとしてることを察し、同意する。
怪盗団との付き合いは短いが、それでも彼らが心身共に逞しいことだけは分かっていた。
「…… ねぇ、東郷さん」
「なぁに?友奈ちゃん」
友奈は意を決して、東郷を真っすぐ見て、
「私…… 蓮君が好き!」
「友奈ちゃん…… 」
思いもがけない友奈の告白に言葉の出ない東郷。
「東郷さんと同じくらい、大好き!」
「…… 」
この世界で、友奈と蓮が過ごした期間は短い、それでも、確かに二人は絆を築いていった。
大事なのは時間の長さではない。それは、東郷自身が園子達と小学生の頃に交流した経験したことなので、良く分かった。
しばし黙る東郷と、顔を赤くしながら、そんな東郷の言葉を待つ友奈、そして、
「そうね、雨宮さんになら、友奈ちゃんを任せて大丈夫かもしれないわね」
まっすぐ友奈を見て。
「私…… 友奈ちゃんの恋を応援するわ!」
友奈の両肩に手を置き、そう言い切った。
「ありがとう!東郷さん!」
だが、その日の夜、東郷は涙で枕を壮大に濡らしたという。
翌朝、目が真っ赤な東郷に起こされて、友奈は驚いたという。
東郷が勇者部に戻ってその翌日、
勇者部部室に、勇者部と怪盗団は集まった。
改めて、互いの事情を最初から最後まで話した。曲解により、曖昧になっていた記憶のことも含めて。
勇者たちのことは、先日友奈が話したが、東郷達は、自身の小学生時代のことを含め、詳細を補足する形で話した。
蓮達は、蓮が冤罪事件から東京に来たことに始まり、統制の神を倒したこと、
「だけど、新年に入ってから、私たちの日常は大きく変わっていたわ、現実が書き換えられ、それに何の疑問も抱かなかった」
「それが、曲解?」
「そう、異変に気付いたのは僕や蓮だけだったけどね」
明智が怪盗団を一瞥する。
「つーか、明智。あんたは怪盗団にそんな酷いことしといて、よくここにいられるわね」
夏凛が明智を責めるその声は刺すように鋭い。
口にこそ出さないが、他の勇者部も明智には思うことがある様子。
双葉や春の親が死んだ原因とも言える存在である。
いわば親の仇、いくら丸喜が強大な敵とはいえ、納得し難いはずである。
「夏凛、いいんだ」
双葉が止める。
「でも…… 」
「いいの、私たちが決めたことだから」
春も夏凛に面と向かって言う。
「なによ、そう言われちゃ、もう何も言えないじゃない…… 」
「ありがとうな、夏凛。私たちのために怒ってくれて」
「別に…… そんなんじゃないわよ」
真っ赤な顔で否定する夏凛。
「にしても、蓮。あんたも大変だったのね」
「人を助けようとして、罪に問われるなんて…… 」
風と樹が蓮に話を向ける。
「俺も最初聞いたときはムカついたぜ!」
竜司が声を荒げる。
連も初めて会ったとき、竜司が怒りつつ、蓮は悪くないと言ってくれた時は嬉しかった。
「さぁて、行こうぜ!」
怪盗団と勇者部は大赦前にて集合。
「あんたたち、昨日の今日で大丈夫なの?」
風が心配するが、
「ええ、私たち、一度経験してるから」
「散々悩んだからな」
「もう答えは出てるよ」
「この世界から抜けだして、丸喜先生から現実の世界を取り戻す!」
誰一人として、迷っているものはいない。
そうして、パレスへと潜入した。
「…… ていうか、あんたなんなの?その恰好」
夏凛がクロウに尋ねる。
何故か恰好が黒を基調とした甲冑のようになっている。
「ああ、これかい?これが本来の恰好でね」
クロウはにやりと笑う。
「なんか、明智さん雰囲気変わってませんか?」
樹が呟く。
それは他の勇者部も同意らしい。
「…… まぁ、そこは今は触れてやるな」
ナビが一応は止めた。
扉の前に来た一行。
勇者部には既に開いているが、怪盗団には未だ扉が行く手を阻んでいる。
「…… 忘れていたわけじゃない。俺たちは一度、この痛みを選んで進むと決めたんだ。都合のいい理想じゃなく、泥臭くても自分たちの足で歩く現実を」
ジョーカーの声に呼応し、巨大な扉は光の塵となって霧散した。
「扉が無くなった!」
パンサーが声を弾ませる。
先日まであった扉が無くなり、通路が伸びている。
「これで、全員先に進めるわね!」
「…… 私たちが現実を選んだからだな!」
そうして、先に進むと。
「オタカラだ!」
見事にオタカラを見つけた。
モナがはしゃぎながら飛びつく。
「なんか、モナのテンションがおかしいんだけど」
「いつものことだ」
「気にしないであげて」
「これでオタカラまでのルートは確保できたな」
「西暦の勇者達の妨害があるかと思ったけど」
辺りをクイーンが見回す、今もここまでの道のりでも、妨害はなかった。
そこが不気味に感じたが。
「それは必ずな…… 」
必ず、妨害がくる、それは薄々分かっていた。
「とにかく、一旦戻るか」
そう、ルートを確保した以上ここには用はない。
パレスを後にした。
「いいか、オタカラを盗む前に予告上を出す、そしてパレスの主の警戒心を持ったらオタカラは具現化する、そこを盗み出すんだ」
怪盗団お馴染みの手段をモルガナは勇者部に説明する。
「なら、次は予告上ね」
「ねぇ、せっかくだし、今回は勇者部にお願いするのはどうかな?」
春が提案する。
「お、いいな」
他の者も同意する。
「どんなのが良いかな?」
友奈はどこかワクワクしている。
「そんなの、普通でいいのよ」
夏凛が言うが
「普通って?」
「それは…… だから普通によ!」
夏凛は答えに詰まった。
「私にお任せ頂ければ」
東郷が立候補するが、
「あんたは国防丸出しになるから却下!」
却下された。
「いざとなると、中々難しいね」
「あ!閃いた~」
園子が閃いたらしく。
「おや、園子様。どうなされました?」
大赦、今度は普通に正面から入り、幹部が出入りする部屋に対象の神官はいた。
「これを~、渡すように頼まれたんよ~」
園子が一枚のカードを渡す。
「これは…… 」
神官が受け取り、見てみる。
赤を記帳とした、シルクハット帽のプリントされたカード、文面が掛かれており
『予告するよ。
あなたの作った偽りの平和、
一見優しく、でも虚無に満ちた世界。
私たちは決して、見逃しません。
みんなが笑えるように。
怪盗団と共に、
明日
あなたの心の奥に隠されたオタカラを頂きに参ります。
鍵を閉めても、壁を作っても無駄だよ。
勇者は折れず、怪盗は必ず盗み出す。
だから目をそらさないで。
あなたが臨んだ幸せが、
誰かの本当の未来を奪ってないか。
これは奪うためじゃない。
本当の現実を取り戻すための予告状。
心の怪盗団より』
内容を読み、怪盗団の名前を呟く神官。
「それじゃ、私は帰るね~」
「…… 」
園子を黙って見送った神官。
「ついにきたか、怪盗団」
仮面の中の表情は邪悪な笑みを浮かべる。
「盗れるものなら、盗ってみろ!」
そして、パレス内の警戒がMaxになった。
「いよいよだね!」
パレス内、友奈は身体をほぐすように両腕を伸ばす。
「ああ、全員準備はいいか?」
ジョーカーが仲間に尋ねる。
「もちろん!」
「この完成型に任せなさい!」
「いつでも行けるよ!」
「愚問だね」
「行けます!」
返ってくる声には迷いがない、仲間は準備万端である。
「!」
ジョーカーはパレス入り口に見覚えのある扉を見かけた。
鉄格子を思わせ、青色を帯びている。
ベルベットルーム。
ラヴェンツァとは先日会ったが、ベルベットルームまであるとは思わなかった。
ジョーカーは準備のために、ベルベットルームの扉を潜った。
「これがオタカラ…… 」
最深部内、黄金の光りを放つオタカラは静かに浮かんでいた。
空気は重く、しかし惹き寄せられるような輝きを放っていた。
「これを回収すれば」
「ああ、現実の世界へ戻れる」
「なら早速」
ジョーカーが近づく。
「!」
だが、手を伸ばした瞬間、槍が飛んできた。
オタカラの前の床に突き刺さった槍を見た後、飛んできた方向を全員が見る。
「残念ながら、それを渡すわけにはいきませんな」
神官が立っていた。
そして、その両脇には西暦の勇者達が並んでいる。
そして、神官が手を挙げると、オタカラが神官の手元に移動する。
「あ!」
「では、私はこれで!」
神官が踵を返す。
「テメェ!!」
「待ちなさい!」
スカルと夏凛が追いかけようとするが。
「あなた方の相手は彼女たちがしてくれますよ!」
そういうなり、西暦の勇者達のシャドウが立ちはだかる。
「ちっ、やっぱり出やがったか!」
スカルが舌打ちする。
「倒すしか、なさそうね」
拳を握るクイーン。
「もう壁は十分だぞ」
ナビが呟きながら端末を展開させる。
「でも、神官も追わないと!」
ノワールが仲間を見回す。
「行け!ジョーカー!!」
「ジョーカー!ヴァイオレット!頼む!!」
「友奈!東郷!頼んだわよ!」
モナと風がそれぞれ任せた。
「分かった!」
「はい!」
「行こう、東郷さん!」
「ええ、友奈ちゃん!」
四人が神官の後を追う。
通路の前にいた勇者たちに向け、怪盗団は銃撃を、樹のワイヤーや夏凛の刀を投擲で放つ。
勇者達が回避行動で散開し、通路が空き、そこに四人が飛び込む。
四人を追撃しようと、防人の一人が銃を構えるが
「させっかよ!」
スカルが発砲し、それを遮る。
何人かが今度は逆に通路前に立ちはだかり、勇者達が通らないようにする。
改めて対峙する歴代勇者達、怪盗団と勇者部。
「前回はいいようにやられたが、今回はそうはいかない」
フォックスが抜刀する。
「うん、私たちも本気で戦えるね」
今回は、怪盗団もペルソナが万全の状態で使用でき、本調子である。
「全く、わらわらと、目障りな…… 血祭りだ!!」
クロウが狂気的に叫ぶ。
「え?クロウ…… 」
勇者部が服装だけでなく、性格も豹変しているクロウに対し、引いている。
「よし、みんな行くぞ!パワーアップ!」
ナビの支援が送られた。
怪盗団と勇者部の全員力が漲るのを実感し、開戦となった。
歴代勇者達のことは、勇者部が一緒に戦ったため、それに合わせてメンバーを決めるなど、対策は出来ていた。
対して、歴代勇者達が怪盗団の戦力をどの程度把握しているのかは、正直不明という点は残った。
棗・若葉・千景等接近戦に特化した勇者達が突進してきた。
「棗…… 」
風が呟く、棗の攻撃を防ぎ、大剣を振りかぶり、跳躍。
棗も跳躍し、大剣が振り下ろされる前に顔面目掛け、ヌンチャクを振るう。
「!」
小回りの利かない風は対応が遅れ、そんな風にうねりを上げるヌンチャクが迫る。
「させるかよ!」
モナがパチンコを放つ、パチンコ玉はヌンチャクに命中し、軌道が反れる。
「ナイス、モナ!」
モナに礼を言いつつ、攻撃直後で無防備な棗に風の大剣の斬撃が見舞われる。
「っ!!」
斬撃を諸に受けた棗は吹き飛ばされ、地面に激突する。
着地した風は油断なく、大剣を構える。
棗の体が発光し、ギンバイカの花びらが舞ったかと思うと、棗は瞬時に起き上り、風に肉薄していた。
そして、わずかに勇者の装束が変化し、武器もヌンチャクから棍に変化していた。
棍の突きを大剣で防ぐ風。
(切り札!…… それなら!)
切り札相手にこのままでは分が悪いと判断し、
「満開っ!!」
風もまた切り札を展開した。
服装・武器が多少変化すると同時に、防御体制からそのまま棗を押し出す。
「行くわよ…… 棗!!」
風が追撃を掛ける。
大剣を振りかぶる、棗とは距離が離れているが、刀身はその長さを変えることが可能である。
棗のシャドウもそのことを承知なのか、好機と捉えているのか、大剣を振りかぶるまでに、距離を詰めようと動く。
「!?」
しかし、何かに引っ張られるかのように、棗の動きが止まった。
自身の腕や胴体を確認する、すると、ワイヤーが何本も巻かれていた。
ワイヤーの伸びた先を見ると、風の妹、樹がワイヤーを伸ばしていた。
身動きを封じられた棗、動こうと、ワイヤーを剝がそうともがくが、その間に、風が大剣を振り下ろす。
振動と、地鳴りの音が響き、風の叩きつけた先に、棗のシャドウの姿はなかった。
倒され、消滅したのだろう。
「棗…… 」
棗と仲が良かった風には複雑な心境だったが
「お姉ちゃん…… 」
樹が声を掛けてくるが、風は軽く笑い。
「大丈夫、ほらみんなの援護に行きましょう」
「うん…… 」
「芽吹…… 」
脇差サイズの刀を二本構える夏凛、対する楠芽吹もまた銃剣を二挺、互いに二刀流である。
先に突っ込んだの夏凛、芽吹も銃剣で狙撃体制を取り、発砲する。
じぐざぐに動き回り、被弾しないよう接近する夏凛。
発砲しては、慣れた様子でスピンコックする芽吹。
近距離に夏凛が近づいてくると、狙撃体制から、近接戦闘へとシフトし、銃剣の刃を展開させる。
このまま切り結ぶかと思いきや。
「!」
片方の銃剣が蛇腹として伸び、夏凛の左腕に巻き付こうとする。
咄嗟に日本刀を手放す夏凛。
もう片方の銃剣で追撃を仕掛けてくると、確信し、右手の刀を投げる。
芽吹もまた、咄嗟の判断で銃剣を盾に、刀を防ぐ、しかし脇差サイズといえど、質量のある刀がぶつかったことにより、わずかに体制を崩される。
夏凛は肉薄し、顔面に拳を叩き込む。
床に倒れ、背中を打つ芽吹、刀を取り出し、逆手に持ち、そのまま仕留めようとするが。
銃剣の刃が腕に巻き付く。
もう片方の銃剣の銃口が夏凛を狙う。
体制をずらし、銃弾を避ける。
腕に巻き付く銃剣を持つ手に蹴りによる攻撃を加え、片腕が自由になる。
立ち上がる芽吹き、距離の近い二人は、片手に持っている武器を構え、空いているもう片方の手で、相手の武器を掴む、至近距離にて膠着状態となった。
そこで、互いに距離を取り、切り札を展開した。
夏凛は巨大な赤い刀を握った四本のアーム、それを展開させ、かつて勇者の地位を競い合ったライバルへと挑む。
芽吹は巨大化した銃剣を構え、迎撃する。
先ほどの同じく、芽吹へ突っ込む夏凛、さっきから突っ込んでばかりだが、迫る夏凛へ強力なビームを放つ芽吹。
武装等強化されたが、それは芽吹もまた同じ、寧ろ、銃剣が巨大化し、標的となる夏凛もまたアームで巨大化しているため、夏凛は不利になった感があった。
ビーム全弾は避けきれず、何発か被弾する。
何とか致命傷は避けつつ、芽吹に接近し、アームの持つ刀で、芽吹の身体を刺し貫く。
倒され、消滅する芽吹のシャドウ。
「はぁ…… 」
被弾し、アームが一本持っていかれ、片足もやられた。
それでも、勝利したのは夏凛である。
「あいつは…… 芽吹は、こんなもんじゃないのよ!」
満開が解かれ、夏凛は叫んだ。
芽吹を仕留めたことに、内心穏やかでいられず、叫ばずにはいられなかったのだろう。
「行くぞ、園子!」
「いつでも行けるんよ~」
園子と銀は、小学生時代の銀、園子、鷲尾須美と対峙していた。
「にしても、美森は弓で園子は傘になる槍か、なんか懐かしいな」
「ミノさんは、変わらず斧なんだよね~」
「ところで、同じ人間二人に相手が三人て、不利じゃないか?」
「あ~そういえばそうだね~」
自分とはいえ、敵相手にふわふわした会話をする二人。
「オマエラ、少しは真面目に戦え!」
モナがやってきて、注意する。
「あ、がなにゃん。いいところに~」
「丁度一人足りなかったんだ、手伝ってくれよ」
「まったく…… だが仕方ねぇ、ワガハイの華麗なる姿にホレるなよ?」
カトラスを取り出すモナ。
銀と銀が、園子と園子が、切り結ぶ形となった。
しかし、体格差のこともあり、中学生の二人が押す形となる。
不利な二人を援護しようと、須美が弓を構える。
そこに、パチンコ玉が飛んできて、須美の手に当たる。
「させるか!」
片手をやられながらも、距離を取りつつ、再度弓を構えようとする須美。
モナもパチンコを構えようとするが、小学生銀がモナに斬りかかる。
「おっと!」
須美の前に小学生銀が立ちふさがる。
中学生の園子が、槍を伸ばし須美とと銀に攻撃を仕掛けるが、小学生の園子が槍を傘のように展開し、ガードする。
モナ達三人が小学生三人を追い詰めていく。
左右そして正面から距離を詰めていく。
その時、不利だと判断したのか、小学生達は切り札、満開を発動させた。
船のような台座、戦艦を思わせる台座、巨大な四足獣型の台座がそれぞれ出現し、乗り込んでいた。
「おお!なんだありゃ!?」
モナが驚く、事前に満開については聞いていてが、それでも初めて見る分には衝撃が強かった。
「園子、私たちも!」
「うん!」
銀と園子が互いに、
「「満開!!」」
叫び、相手方と同じ台座が現れる。
「…… ワガハイはどーすんだこれ?」
モナが呟く。
しばし考えて、
「いや…… 待てよ」
何か思いつき、
「ノワール!」
大声で戦闘中のノワールを呼ぶ。
「なに?モナちゃん」
「あの満開と戦う、手伝ってくれ」
「分かった!」
車に変身するモナ、それに乗り込むノワール。
陸戦型の銀二人の満開が激突する。
どちらも、全く同じタイプなため、互角になるのは必然である。
拮抗状態の中、側面から。
「めっ!だよ」
モルガナカーのルーフに乗ったノワールがグレネードランチャーを、小学生銀目掛け、発砲する。しかも数発。
爆発に巻き込まれないよう、防御の態勢を取るが、そこに中学生銀の台座が迫り、銀が乗り込んできて、斧を振るう。
斬撃で身体を裂かれた、小学生銀、そのまま消滅した。
「…… なんか、自分で自分を殺すって複雑な気分だ」
「銀ちゃん…… 」
「あ、ごめん。今はそれどころじゃなかった」
そういいつつ、上を見る銀。
満開による台座が三台、飛んでいた。
園子二人のと、須美による台座。
二体一で、園子が劣勢気味だった。
「行くぞ、二人とも!」
モナが車から元に戻り、ノワールと銀に呼びかける。
跳躍する三人。
園子の台座に乗り込み、
「あ、三人とも~」
園子が嬉しそうな顔を見せる。
須美の台座は、砲撃を得意としているらしく、旋回しながら、的確に砲撃を浴びせてきていた。
「ノワール、頼む!」
「ルーシー!!」
ノワールがペルソナを展開させる。
トレンチコートの下から、多数の重火器を出し、須美目掛け、一斉射撃を行う。
「うわ…… 」
それを見て銀は唖然とした。
東郷や怪盗団も銃器による攻撃は行っていたが、ノワールのペルソナによる銃撃は過激だった。
それが温厚そうなノワールが行うのだから、尚更である。
唐突の銃撃の嵐に、須美も驚いたのか、砲弾による攻撃が一時的に止んだ。
そこにノワールが跳躍し、須美の台座に乗り込み。
斧を振りかぶる、
完全に反応の遅れた須美、そんな須美目掛け、ノワールは斧を振り下ろした。
「ふふっ、お片付け完了です」
「うわ…… 」
友達が容赦なく斧でやられたのを見て、銀としてはあまり気分の良いものではないが。
「ノワールっていつもあんなん?」
モナに小声で尋ねる。
「ああ、あの戦い方がノワールの戦闘スタイルだ」
モナはどや顔で答える。
「そう…… なのか」
一緒にパレスを攻略したが、改めて怪盗団のすごさを実感せずにいられなかった。
「っとと!」
そんな話をしていると、園子二人の台座が激突し、互いに揺れる。
操縦主二人の園子が槍を構える、同一人物のため、同時に攻撃を繰り出す。
「おぉ…… 流石に同一人物なだけあるな…… 」
モナが感心する。
「だけど、小学生だし、私たちの園子が勝つんじゃ?」
「だよな、そこは負けらんねーよな」
そんな話をしている間に。
「あ、園子が園子を突き刺した」
「おぉ…… 割と容赦ねーなあいつ」
中学生園子が小学生園子を撃破した。
「…… 二人とも、なんでそんなにのんびりしてるの?」
戻って来たノワールがツッコミを入れた。
正面から、旋刃盤を投げる球子。
クロウの顔面目掛けて、飛んできたが、クロウは顔を横に反らし、躱す。
その左側面からは、杏がボウガンによる矢を連射してくる。
跳躍し、後退する。
「無様だな」
そう毒づき、
「さっさと死ねっ!」
球子に銃を構え、銃撃を見舞うが。
旋刃盤を楯に防ぐ。
今度は杏に接近し、サーベルを振るう。
しかし、球子が二人の間に割って入り、サーベルを防ぐ。
「ゴミの癖に!」
イライラした様子で呟く。
対する、二人は人数の優位故かクロウが強敵と判断したのか、輪入道・雪女郎、切り札を発動させようとし、
「殺せ…… ヘリワードォ!!」
黒い弓を持つペルソナが召喚される。
切り札を発動させようとしていた、杏と球子は、反応が遅れヘリワードによる攻撃を諸に受ける形となった。
吹き飛ばれる二人、何とか戦闘続行しようろ、ボーガンを構える杏。
そして、そんな杏を守ろうと、前に立つ球子。
そんな二人に、接近していたクロウ。
サーベルで球子の腹部を刺し貫く。
そして、その後ろにいた杏の腹部もまた、刺し貫かれた。
「ヒャハハハハァ!!」
ご満悦な様子で高笑いをする。
あまりに高笑いが響くため、戦闘中の怪盗団や勇者部もクロウの方を一時的に見た。
「次だ!」
消滅した二人のことは全く意に返さず、他の敵へと向かって行った。
戦闘中にも関わらず、惚けてしまった樹。
そんな樹の肩に、夏凛が手を置き。
「樹、戦闘中よ!」
「あ、はい!!」
あわてて我に返る樹。
「あいつ、改めてああいう奴なのね。あんまり関わんないようにしなさい、樹」
「はい…… 」
「おいおいっ!!」
スカルが全力で走る。
その後ろでは、チェーンソーを振り回し、スカルを真っ二つにしようと迫る勇者、柚木友奈。
「なんで勇者があんなもん使ってんだよ!?」
そうツッコまずにはいられないスカル、怪盗団の女性陣も過激なのが多いが、流石にチェーンソーを持ち出すのはいない。最も、ベルベットルームの住人にはいるが。
不思議な恐怖感を感じたスカルはひたすら、逃げていたが。
「ん?」
唐突に、チェーンソーの電源をオフにし、下がり、変わりに薙刀を持った芙蓉・リリエンソール・友奈が前に出てきた。
柚木と違い、小柄な上にチェーンソーの後なためか、スカルは鉄パイプを構え。
「っしゃあ、やるぜ!」
気合十分にリリエンソールに向かって行く。
鉄パイプを叩きつけるように振るう。
防御のことをあまり意識しない戦い方だが、押している辺りは、流石に場慣れしているが故であろうか。
しかし、そこにチェーンソーの起動音。
「げ!!」
その音を聞いてスカルは、即反応し、背中を向けて走り出す。
再度電源をオンにした柚木がチェーンソーを起動させてスカルを追う。そんな柚木の後ろからは、リリエンソールがスカルを追う形となっていた。
戦闘しながら、何度も走ったためか、スカルのスタミナも限界を迎えつつある。
息が上がるスカルに、柚木は容赦なくチェーンソーを振り下ろす。
「っと!!」
鉄パイプを盾に、チェーンソーの回転する刃を凌ぐスカル。
火花が激しく散る。
そう簡単に切断されることはないと思いつつも、切断された瞬間、自身の頭部から真っ二つにされるかと思うと、スカルは冷や冷やした。
そんな身動きの取れないスカルに、好機とばかりにリリエンソールは容赦なく迫る。
「やべっ!!」
自身の危機に、
「ウィリアムっ!!」
ペルソナを呼び寄せる。
近場にいたリリエンソールと柚木に容赦なく、電撃を浴びせる。
電撃により、感電する柚木とリリエンソール、加えて長時間ふかしたためかそれとも、電撃による影響か、チェーンソーもオーバーヒートし、停止した。
「ん?」
スカルが唖然と、柚木とリリエンソールも、「あ」と言わんばかりの顔をしている。
三者がチェーンソーと、互いにの顔を見やるが。
「おっしゃあ!」
スカルは停止したチェーンソーを弾き、距離を取りる。散弾銃を構え、弾切れになるまで、二人に発砲する。
銃弾を何発も受け、柚木とリリエンソールは倒れ、消滅した。
「いっちょ上がり、ってな!」
どや顔のスカル。
フォックス・パンサー・クイーンが銃器を構え、掃射する。
アサルトライフル・サブマシンガン・リボルバーの弾幕。
対する乃木若葉・歌野・赤嶺・千景は散開して避ける。
銃撃が止むタイミングに合わせ、
「七人御先」
千景が呟くと、彼女の衣装がフードの付いた衣装に変わり、七人に分身した。
七人に加え、散開していた歌野・赤嶺・若葉がフォックス達を取り囲む。
包囲された三人だが。
「アグネス!」
クイーンが自身のペルソナを召喚する。
高貴さと刺々しさを感じさせるバイク型、アグネスが突進し、包囲網に強引に風穴を空ける。
その際、二人ほど分身した千景に激突した。
包囲が崩れ、攻撃に移るフォックスとパンサー。
抜刀し、若葉に斬りかかるフォックス。
若葉もまた刀を抜き、応戦する。
パンサーも鞭を歌野めがけ振るう、対する歌野もまた鞭を振るう。
ペルソナを消したクイーンは赤嶺と対峙する。
どちらも、拳を使っての接近戦を使う。
「はっ!」
クイーンが正拳突きを放つが、躱され赤嶺が反撃を放つ。
「おっと…… 」
明らかに対人戦闘に慣れている。
「話には聞いてたけど、ホントにそっくりね・・・・」
仲間に瓜二つな敵に戸惑いながらも、臨戦態勢を取る。
三者共互角に戦っていたが、そこに七人いる千景が加わったため、数により、劣勢に追い込まれる。
しかも、一人倒してもすぐ復活するため、それがより厄介だった。
「なんなの?あれ!」
「このままでは…… !」
ジリ貧になりつつあるこの状況、打破すべくクイーンは離れた場所にいるナビに。
「ナビ!何か弱点はないの?」
クイーンがナビに助言を求める。
『そいつらは各個撃破しても復活する、だから一度に全員撃破すれば倒せる!』
ナビからのアドバイス、しかし、
「一斉にって言っても」
「こっちは手一杯だ…… !」
歌野と若葉を相手取り、千景まで相手取るフォックスとパンサー尋ねたクイーンもまた同じ状態である。
「みんな!お待たせ!!」
戦闘を終えたノワールが、三人に合流しにやってきた。
「ペルソナ!」
ノワールのペルソナが再度多数の銃火器が火を吹いた。
銃弾の嵐が複数の千景を撃ち抜く。
「大天狗!!」
千景のリタイアに、若葉が続いて切り札を発動させる。
黒い羽根や鼻の長い仮面など、天狗を思わせる。
「先ほどと言い、何とも絵になるな」
フォックスが感心する。
「言ってる場合!?」
歌野の蹴りを避けつつ、パンサーがつっこむ。
その二人の間にノワールが斧を振り下ろして乱入する。
「それでも、これで…… 人数的には有利になった!」
赤嶺と取っ組み合いながら呼びかけるように呟くクイーン。
四対三と有利そうだが、若葉が展開した切り札が驚異的なため、そうとも言えなかった。
空中を高速で飛びながら、攻撃してくるため、当てるのも避けるのも困難である。
以前双葉のパレスで空中を飛ぶ敵に苦戦強いられた経験を持つ、クイーンとフォックス。
(飛んでる相手は、後に回した方が良さそうね)
そう考えたクイーン。
その意図を察したかはともかく、距離を取るフォックスと、それを追撃する若葉。
「ノワール!」
「うん!」
赤嶺を抑え込むクイーン。
正確には、赤嶺が攻撃した際に、相手の腕や身体を掴む、一時的にしろ、敵の行動を封じた。
「セレスティーヌ!」
パンサーがペルソナを発動させる。
強力な炎が広範囲に、歌野を襲うが、
歌野は跳躍し、パンサーの元へ来ると鞭を振るう。
「っ!!」
強力な一撃を受けるパンサーだが、
「捕まえたっての!!」
歌野の鞭を掴む。
「「ノワール!!」」
クイーンとパンサーに呼ばれ、
「任せて!」
ノワールがグレネードランチャーを撃つ。
「「!!」」
歌野と赤嶺がそれを察し、動きを封じられていたが、砲弾による攻撃を避けるべく、後退する。
爆風による被害はなかった、しかし、同じく回避していた、パンサーとクイーン。
「アグネス!」
「セレスティーヌ!」
パンサーによる炎が二人を覆う。
そこに加え、クイーンのペルソナが歌野と赤嶺の二人に容赦ない体当たりを加え、撃破された。
「フォックス!」
女子三人が、独り奮闘しているフォックスを気にかける。
心配したとおり、フォックスは苦戦を強いられていた。
それでも、回避と攻撃を行っていたのは流石だが、桁違いなスピードで空中から攻撃してくるのは、やはり不利である。
「二人とも、援護を!」
クイーンが声を掛ける、即座に行動を起こすパンサーとノワール。
左右から鞭と斧による攻撃、そして背後からクイーンが鉄拳による攻撃を仕掛けてきた。
慌てることなく、三方からの攻撃に対応する若葉。
防戦しつつ、反撃の機会を伺っていた所に、
「ゴロキチ!!」
フォックスが好機とばかりに、ペルソナを発動させる。
「っ!?」
直撃した氷の攻撃に撃破されずとも、わずかにひるむ若葉。
そのわずかな瞬間に仕掛けるフォックス。
音速を思わせる速度で若葉に迫り、親指を鍔に添える。
すれ違い様に抜刀。
斬撃をガードされつつも、ふわりと態勢を整え、フォックスは俳句を詠むように。
「絶景かな…… 」
だれが聞いているというわけでもなく、ただの独り言を呟き。
連撃を仕掛ける。
「切り捨てる!」
先ほどのダメージの影響か、さきほどまで凌ぎ、防御出来ていた攻撃だったが、段々と斬撃が重く感じるようになり、やがて連撃は容赦なく若葉を切り裂いた。
やがて、若葉は消滅した。
フォックスは静かに、納刀した。
巨大なハンマーを振り下ろす夕見子、避けたクイーンに蓮華が刀で追撃をかけてきたが、フォックスが割って入り、受け止める。
鍔迫り合いの二人、夕見子が再度ハンマーを振り上げ、フォックスを叩き潰そうと振り下ろす。
今度はクイーンが間に入り、正拳突きをハンマーにぶつける。
金属音が響き、どちらも膠着状態になるが、
「ゴロキチ!」
再度ペルソナを発動させるフォックス。
先ほど若葉がやられたのを見ていた二人は回避行動を取ろうとする、実際に後退し、避けたが。
「アグネス!」
今度はクイーンがペルソナを発動させる。
先ほどのように乗らず、核熱の攻撃を放ち、二人に容赦のない攻撃を浴びせる。
もろに攻撃を受けたが、それでも踏みとどまる二人、二人へ追撃をかけるフォックスとクイーン。
夕見子の顎に渾身の一撃を打ち込むクイーンと、斬撃による一閃のフォックス。
見事に撃破した。
「制裁完了!」
右手拳を左手の平に叩きつけ、クイーンが高らかに宣言する。
「世紀末の人?」
風がぽつりと呟いた。
「おぉぉ!!なんだ、特空機か!?」
テンションの上がるナビ。
雀の操る大小2つのロボット型ユニットを見て、戦闘中にも関わらず大興奮である。
「ナビ、なんか今日テンションすごいね」
シズクが拳銃による銃剣で攻撃してくるのを捌きながら、パンサーが呟く。
パンサーが振り下ろした鞭の先端を踏み付ける、わずかに反応の遅れたパンサー目掛け、シズクが銃剣の一撃を見舞おうと、肉薄する。
「やばっ!!」
パンサーの前に、クロウが躍り出る、サーベルでシズクの片方の銃剣を弾く。
更に、立て直したパンサーが鞭でもう片方の銃剣を弾いた。
丸腰になったシズク、二人が畳みかけようと飛び掛からんとするが。
二人の前を槍が飛来する。
「おっと、危な!」
「ちっ!!」
その間に、シズクが銃剣を二挺拾う。
再度攻撃を仕掛けるシズク、交戦する二人目掛け、雪花が槍を構える。
しかし、雪花の眼前をパチンコ玉が飛ぶ。
「!」
パチンコ玉の飛んできた、方角を雪花が見る。
モルガナがパチンコを構えていた。
即座に矛先をモルガナに変える雪花。
走りながら雪花へ肉薄するモナ。
投槍する雪花、降り注ぐ槍を避けつつ、距離を縮めるモナ。
小柄なモナに命中させるのは困難であるが、それでも一撃一撃を紙一重で避ける形になっている辺り、高い命中精度を思わせる。
距離が縮まり、真正面にて睨みあう形となった両者。
雪花が槍を逆手に持ち、モナを串刺しにしようとする。
「ディエゴ!!」
モナがペルソナを召喚、強力な疾風が間近で吹き荒れる。
「!!?」
風に吹き飛ばされそうになるのを、なんとか耐える雪花。
槍を床に突き刺し、吹き飛ばされることはなかったが。
「行くぞー!」
モナが飛び掛かり、カトラスを振るう。
すれ違いざまに、一閃。
斬られた雪花は、片膝を着く。
「いっちょ上がりだ!」
勝利を宣言するモナ、しかし、雪花から光が発せられる、他の勇者の切り札と同様に。
光が消えると、顔半分を仮面に、武器は槍から巨大な手甲。
「んなっ!?」
倒したと思っていた、モナは完全に油断していた。
雪花が手甲を構える。
そこから槍の矛先がモナ目掛け、放たれようとし。
「満開っ!」
離れた場所から樹の声。
神官を思わせる服装に変わった、樹のワイヤーが雪花・シズク・雀のロボット型ユニットに伸びる。
雪花の腕に巻き付いたワイヤーは、腕をずらし、モナに放たれた矛先はずれた場所に突き刺さった。
「ナイスだぜ!イツキ!」
樹を褒めつつ、再度雪花に近づき。
「威を示せ、ディエゴ!」
再びペルソナを召喚、攻撃を仕掛けた。
ラッシュ攻撃を受け、今度こそ雪花は消滅した。
別の場所では、樹のワイヤーで片腕の動きを封じられたシズク。
もう片方の腕は自由なため、銃剣をクロウに向けようとしたが、パンサーが鞭を振るう。
鞭はもう片方ホ腕にも巻き付き、両腕を封じられたシズク。
「消えなよ」
クロウの低い、冷めた声色。
直後、クロウがサーベルでシズクに縦横無尽な斬撃を浴びせ、倒した。
最後に、雀のロボット型ユニット大小の内、大の方にワイヤーが巻かれていた。
そこに、スカルとノワールが。
「おらぁ!!」
「はい!」
鉄パイプのスイングと、斧を上段から振り下ろした。
頭部に強力な攻撃を諸に受け、大のユニットはショートし、機能を停止した。
雀が大のユニットに駆け寄る、芽吹もやられ、自身を守る存在が無くなり、狼狽している。
そんな雀に、もう片方、小のユニットが近づき、彼女に密着した。
「?」
「ふっふー、お前の命はあと10秒だ!」
ご機嫌なナビの声が聞こえる。
「意外に簡単にハッキング出来るんだな」
「シャドウで、神樹なのにハッキングなんて出来んのかよ?」
「さぁ?でも実際にやってるみたいだし…… 」
ハッキングしたことに、呆れるスカルとノワール。
「つーか、10秒って?」
「もうすぐそいつ爆発するから」
スカルの疑問に淡々と答えるナビ。
「なっ!?」
それを聞いて、即座に避難するスカルとノワール。
慌てる雀だが、小のユニットがぴったりくっついている。
そして10秒経った。
「あれ?」
「おい、何も起きねーぞ」
不発に終わったのか、爆発が起こらず、訝しむナビ。
雀に近づき、彼女にくっついているユニットを何回か小突いてみた。
直後、ユニットが発光し、爆発した。
雀とナビがその爆発に巻き込まれた。
広間の敵を全て掃討した一行。全員が肩で息をし、満開の反動や戦闘の傷に耐えている。
「…… 倒した…… 」
勇者達を倒し、その場には勇者部と怪盗団が残った。
「何とかなったみたいだね」
クロウが一息つくように言う。
「…… 急に冷静になるのね、あいつ」
「あのぶっ飛んでる時と冷静な時の落差、東郷と通じるものがあるわね」
「東郷がどうかしたのか?」
ナビが尋ねる。
「普段友奈関係でね、特にバレンタインの時とか…… 」
苦笑いを浮かべながら答える風。
「…… なんだか、悲しいですね」
「そうね、なんだかやりきれないわ」
「はい…… 」
勇者部にとっては、シャドウとはいえ、共に戦った仲間である。思うところがあるだろう。
「いいと思うんよ、みんな、私たちに未来を託していったと思うんだ」
「園子…… 」
前方の巨大な通路を見据える。
「ああ。あとは……ジョーカーたちに託すしかねーな」
スカルが鼻をすする。
「そうね、いつまでも落ち込まず、少し休んだら追いましょう!」