勇者と怪盗の不夜城(パレス) ―偽りの神樹と真実の選択―   作:mitsuyo

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8,勇者パンチ、炸裂

「ここは…… 」

「外からも見えていた、大木の…… 」

ジョーカー・ヴァイオレット・友奈・東郷の四人は、神官を追いかけて、巨大な木の生えている吹き抜けの部屋に来ていた。

天井が取り払われており、空へ巨大な大木が伸びていた。

その大木を背景に神官は静かに、両手を広げて立っていた。

四人は神官へ近づく。

「この世界は、神樹様あってこそ、そんな神樹様を拒むなどありえない」

友奈は神官に向かい、

「私たちは、神樹様に頼らずに、生きていくと決めたんです!」

言い放ち、東郷も友奈の隣に立ち。

「私も、友奈ちゃんや銀を失うのが怖くて、あなたに同調しようともしました、でも、やっぱり元の世界に戻ります!」

続いて、ヴァイオレットが、

「彼女たちの幸せは、彼女達自身が決めます!」

最後にジョーカーが、

「お宝は頂戴する!」

宣言した。

怪盗団と勇者達が面と向かってこの世界を否定する。

「おろかな、何故理解しようとしないのか、選ばれし勇者が!」

神官は大木に向き直り。

「勇者と言っても、所詮は子供…… いくら話しても無駄なようだ」

大木に触れた。

「ならば、この世界を、神樹様を守らねば。反逆者と、その仲間になった勇者達からな!」

その直後、神官の身体が大木の中へと、水面に入るように、入っていく。

そして、大木がわずかに動き、地面から多数の太い根っこが出てくる。

加えて、巨大な樹冠からは、星屑を始めとした、多種多様なバーテックスが姿を現した。

戦ったことのある友奈と、東郷は驚愕した。

「これは…… !?」

「バーテックス!?」

「しかも、造反神 や中立神のも?」

歴代の勇者同様、認知上の存在だろうが、それでも数が多く、充分脅威と言える。

驚きつつも、東郷が銃を構え、大木目掛け、数発発砲する。

しかし、樹皮が思いのほか硬く、弾丸は弾け飛ぶ。

「っ!!」

ジョーカーとヴァイオレットが身構える。

「自らを神樹と重ねているんでしょうか?」

ヴァイオレットがジョーカーに尋ねる。

「止めるぞ」

戦闘開始となり、バーテックスを繰り出し、根を操っているであろう神官、その本体は大木の中にいるのは先ほど見ていたので分かる。

ジョーカー・ヴァイオレット・東郷の三人が銃器で集中砲火を大木に浴びせるが、

「まるで効いてない!」

やはり内部にダメージが入っていない。

「勇者ぁぁぁぁ…… パーンチ!!」

友奈が跳躍し、大木を勇者パンチで殴るが、やはり通じない。

「攻撃が、通じない?」

東郷が呟く。

そこに、大木は容赦なく攻撃を仕掛ける。

根っこの一本を振り上げ、四人を叩き潰そうと振り下ろす。

四人は回避するため左右に分かれて飛ぶ。

加えて、バーテックスのシャドウ達が襲い掛かってくる。

迫るバーテックスと応戦するも、次から次へと新手が来る。

このままでは消耗し、やがて押し切られる。

「どうしよう?ジョーカー君」

隣を跳躍している友奈が訪ねてきた。

「…… 」

思案するジョーカー、そこで

(トリックスター)

ここに来る前のことを思い出した。

 

ベルベットルーム

予告上を出し、パレスに来た直後、ラヴェンツァに呼ばれ、ベルベットルームを尋ねたジョーカーに対し、

「あなたがこの世界で紡いだ絆、それは現実世界同様、あなたの助けとなるでしょう」

そう告げた。

ジョーカーは、友奈と築いたコープを元にペルソナを合成して生み出した。

 

「ペルソナ!!」

ジョーカーがペルソナを呼び出す、すると、丸っこい、牛のぬいぐるみに羽根の生えたような、そんなペルソナが出てきた。

「かわいい…… 」

ヴァイオレットが呟き。

「え…… 牛鬼!?」

友奈はそのペルソナを知っていた。

以前手助けしてくれていた精霊、牛鬼。

天の神との戦いが終わり、消滅したが、ペルソナとして、再度友奈の手助けをしようとしてくれていた。

(行こう!友奈ちゃん!)

「!!」

友奈には聞こえたような気がした、かつて天の神との件で、祟りのことを聞いてくれ、最終決戦の時、神樹の力を友奈に繋いでくれた、自身と同じ名前の少女、初代勇者の一人。

高嶋友奈。

この世界でも、もう一人の友奈は手を貸してくれた。

牛鬼から発せられる光、それが友奈を包む。

それは再現、最終決戦の時同様、友奈に力を与える。

光が収まると、先ほどとは違う装束に身を包んだ友奈の姿があった。

「友奈ちゃん、あの姿…… 」

ヴァイオレットは神々しいその姿に息を飲むが、東郷は、

「あの時の…… 」

一度見た姿を再度見ていた。

「大満開…… 」

そう、天の神を撃退した、友奈の勇姿を体現したその姿、大満開。

「皆さん!友奈ちゃんを…… !」

東郷がジョーカーとヴァイオレットに呼びかける。

ジョーカーだけでなく、この場においては、友奈もまた切り札だった。

友奈にジョーカーは手を差し出す。

「行くぞ、友奈!」

「うん!」

その手に、逆手を乗せる友奈。

ジョーカーは友奈の手を掴むと、ワイヤーで自身たちを高く飛ばす、

そんなジョーカーと友奈へ、大木の根っこや、バーテックスの攻撃が襲い掛かる。

「友奈ちゃんの邪魔はさせない!満開!!」

満開した東郷の戦艦を思わせる起動兵器から砲撃を発射する。

上空の敵に対し、マルチロック後、砲撃を浴びせる。

「菫色 さん!」

ヴァイオレットが跳躍し、東郷の起動兵器に乗る。

東郷が右手をヴァイオレットに向ける。

「任せて!!」

東郷の右手の平に、ヴァイオレットが右手の平を叩き合わせる。

バトンタッチである。

「エラ!!」

そして、ヴァイオレットのペルソナの攻撃が大木の根を潰していく。

すぐにバーテックスも根っこも生成される、しかし、それでもわずかに攻撃は止んだ。

今が好機である。

「先輩!」

「ああ!」

ジョーカーは友奈を更に上空へと放り上げる。

それと同時に、ヴァイオレットが跳躍し、ジョーカーとバトンタッチをする。

防御の心配のいらない状態になったジョーカーは、厳かにその名を呼ぶ。

「サタナエル!!」

召喚したペルソナ、大木と同等の巨体の悪魔を思わせるペルソナ、右手には拳銃を持っており、天を突く大木を見下ろすように、漆黒の六翼がパレスの空を覆う。

「すごい…… !!」

「なんて巨大な!」

友奈と東郷が驚く、ここまでいくつかペルソナを召喚したが、ここまでサイズは初めてだった。

サタナエルが大罪の徹甲弾を装填する音は、偽りの平穏の終焉を告げる鐘のようだった。 大木に向け、大罪の徹甲弾 を放った。

弾丸が放たれ、暗い不夜城を一瞬火花が照らした。

回転する弾丸は、真っすぐに伸びる。

弾丸は、大木を穿ち、そのまま貫通した。

その貫通し、ぽっかり空いた穴には、神官の姿があった。

ただでさえ、巨大なサタナエルが現れ、且つ自身の防御が破られ、丸裸にされた状態である。わずかながらも、神官は攻撃も防御も忘れ惚けた。

そこに、友奈が空中から落下し、ジョーカーとすれ違い様にバトンタッチする。

「頼んだぞ」

「うん!」

すれ違いざまにジョーカーが呟く。

落下しつつ、神官めがけ、友奈は拳を振り上げる。

「全部乗せ…… !!」

静かに、しかし力強く呟く友奈。

そして、腹の底から精一杯張り上げる。

「勇者ぁぁぁ…… パーンチ!!」

勇者パンチを繰り出す友奈、貫通した穴を通り過ぎる僅かな瞬間に神官の顔面を殴った。

その一撃は神官に命中し、神官のシャドウを吹き飛ばした。

そして、大木もまた灰のように消滅した。

「ぐっ…… !」

大木から殴り飛ばされ、地面に激突した、神官。

周囲に掴まるものが何もないながらも、よろめきつつ、なんとか立ち上がる。

今にも崩れ落ちそうなその様子は、ゾンビのようであった。

そこに、友奈が降り立った。

大満開も解け、元の装束姿に戻っていた。

そして、牛鬼もまた消滅していた。

「あ…… 」

友奈が咄嗟に手を伸ばすも、既に散った花びらのように、消えていた。

「…… 」

「おのれ…… !!」

そんな友奈に向って、

「小娘ぇぇぇぇ!!」

両手を広げ、神官が襲い掛かろうとする。

「!?」

完全に油断していた、友奈。

そこに、二人の間に降り立ち、銃を構えるジョーカー。

勢いを無くさず、肉薄していた神官の額に、銃口を押し当てる形になる。

「チェックだ」

銃口を突きつけられた神官が、震える声で呟く。

「私はただ・・・・もう誰も、勇者の少女たちが傷つかない世界を…… 」

「そのために誰かの『今』を奪うなら、それはただの独りよがりだ」

ジョーカーの言葉と共に、引き金が引かれる。

銃声が響き、仰向けに倒れた神官。

決着が着いた。

 

 

「ジョーカー!」

「ヴァイオレット!」

「友奈!東郷!」

怪盗団と勇者部の仲間たちが駆けつけてきた。

「みんな!」

「そっちは片付いたみたいね」

「はい!」

元気に笑顔で返事する友奈。

「くっ…… まさか私が敗れるとは」

神官が身を起こす。

「何故だ!神樹様のいない世界で、どう生きろと!?僅かな人類でどう生きて行けば良いのだ!」

声を荒げる神官。

「目を覚ませ」

ジョーカーが言う。

「黙れ!異世界人の貴様が神樹様を否定するのか!」

激高する神官、仮面で分からないが、ジョーカーを睨んでいるのだろう。

「俺らは確かに、この世界の人間じゃねえから、分かんねえし、これが正しいなんて、言うつもりもねえ」

スカルが返す。

「それでも、私たちは現実の世界で生きるわ」

風が続ける。

「勇者部を作ったことで、みんなを巻き込んで、樹の夢を潰して、そう考えると本当に辛かった」

「お姉ちゃん…… 」

樹がなんとも言えない表情で風を見る。

「園子様!東郷様!良いのですか!?このままこの世界が消えれば、三ノ輪銀様は元の通り、死ぬ!」

未だに納得がいかない神官、今度は東郷と園子に矛先を変え、

「三ノ輪銀様!貴方様もお二人と生きたいのではないですか!」

銀にも訴える。

「たしかに、二人ともいたいし、みんなともいたい。何より、弟達や家族を悲しませたくないからな」

独り言のように銀は呟く。

「でも、やっぱり私は、皆に現実で生きて貰いたいって思う、消えるのが怖くないと言えば噓になるけどさ」

「銀…… 」

「ミノさん…… 」

銀の言葉に、東郷と園子が哀しげな表情になる。

銀にも否定された神官。

「ホントに辛いことが沢山あった、もうダメだって、何度も思った。それでも、乗り越えられた!みんながいるから、そんな一つ一つ積み上げて生きてきた現実が私の居場所だから!」

「私も、もう迷いません。辛い過去も、これから過酷な現実も全て受け入れて生きていきます。って中立神の人類絶対管理でも同じようなこと言ったけれど…… 」

「天の神が襲来してきて、神樹様と一つになろうって時もね」

「やっぱり、人のことは、人に任せ欲しいよね~」

「私たちの世界も、沢山人がいるけど、必ずしも幸せな世界じゃないもんね」

「こいつらみたいな奴がいるんだ、なんとかなるんじゃねーか」

「神樹だって、そんな彼女たちの姿を見たから、後を託したんじゃないですか?」

「実際にこの世界で、幸せになってる人間もいれば、これからも幸せな人間もいるだろう、しかし、この世界は、三百年積み重ねてきた人の意思を、神樹の意思を否定するものではないのか?」

「中学生ですら、前向きに生きようとしてるんだ。大人がしっかりしなくてどーすんだ?」

「…… 何とも愚かなことを」

神官は再度身を下ろす。

「だが、私は負けた。現実の世界に戻るか…… 」

そういい、神官は消えた、そしてそこにはお宝があった。

それを拾うジョーカー。

そして、パレスは毎度の通り、地震のような揺れを起こし、

「消失するぞ!脱出だ!」

警鐘を鳴らす。

「これって…… 」

勇者部の誰かが呟く。

彼女たちがいつも樹海から帰還する際、花吹雪が吹雪き、現実の世界へ戻されていたが、ここパレスでも、同じように花吹雪が舞っていた。

 

 

 

全員気が付くと、元の世界、そして何故か讃州中学の屋上にいた。

全員頭を突き合わせ、輪を作るように寝ていた。

「あれ?」

「私たち、大赦にいたんじゃ?」

「ワガハイもこんなこと、初めてだぜ」

「カガミブネを使ったわけじゃないのに」

「まるで、樹海から帰って来た時みたいね」

各々呟きながら起き上がる、帰還に慣れてる怪盗団・勇者部共々戸惑っていた。

全員が起きたのを確認し、

「蓮、それって」

蓮の手にあるものに全員が注目する。

「これが、お宝?」

それは、掛け軸だった。

一本の木が描かれていた。

「書かれているのは、神樹か?」

祐介が覗き込み言う。

「あの神官にとって、神樹様はそれだけ大事な存在だったんだね」

「この世界の人たちにとっては、同じかもしれないわね」

「うん…… そーかもね」

「これで改心は終わった…… だね?」

明智が確認するようにいう。

「とりあえず、今日は帰って寝ようぜ」

モルガナが全員に言う。

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