勇者と怪盗の不夜城(パレス) ―偽りの神樹と真実の選択―   作:mitsuyo

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9,押し花と、明日へ

翌日、勇者部部室。

集合した勇者部と怪盗団。

「なぁ、俺ら元の世界に戻んの?」

竜司が言い出す。

「はずだよね?」

「何も起きないぞ」

怪盗団は口々に言う。

「あれ?」

唐突に銀が呟く。

銀の言葉に、そして銀に全員が注目した。

なんと銀の体が足から透けていた。

「そっか…… 私からか」

「銀!!」

「ミノさん!!」

東郷と園子が銀に駆け寄る。

二人とも今にも泣きそうな顔をしている。

「せっかく、せっかくまた一緒にいられたのに…… 」

「泣くなよ園子、行ってるだろ、私たちの友情は永遠だって」

「銀…… 」

とうとう涙を流す二人。

そんな二人をなだめながら。

「友奈、二人をよろしくな」

「銀ちゃん…… うん!任せて!!」

友奈も泣きそうだったが、笑顔で伝えた。

「怪盗団のみんなも、ありがとな! お前らのおかげで、最後に最高の『お役目』ができた。…… またね!」

そして、光に包まれて、銀は消えた。

 

 

「ん?おい!」

続いて竜司の手も透け始めていた。

「次は俺らか、なんかトラウマを思い出させるな」

「あの時は本当にびっくりしたわね」

「いざ帰るとなると、少し寂しいね」

「なんだかんだで馴染んでいたからな」

「ああ…… 」

「なぁ、お前らの戦いは終わったかもしんねーけど、世界のこととか、これから大変かもしんねーけど…… その」

「?」

竜司が勇者部に何か言おうとしている。

「つまり、竜司なりにがんばれって言いたいのよ」

真がフォローに入る。

「そう!それが言いたかったんだ!」

竜司は即乗っかる。

「…… ありがと!」

竜司の不器用ながらも、思いやりに感謝する勇者部。

 

 

 

 

「東郷、お前のハッキング能力も中々だったぞ」

東郷を褒める双葉。

「ありがとうございます、佐倉さんの域に達せるよう精進します」

「お前ならそのうち大赦、ハッキングしたりしてな!」

(実際にやったことあんのよね・・・)

風が内心思う。

 

「…… 」

消える蓮を見つめる友奈。

「友奈ちゃん」

友奈の肩をたたく東郷。

反対側から芳澤も来て、

「今伝えなきゃ、後悔するよ」

友奈の肩を叩く。

「二人とも…… うん!」

力強く頷き、蓮に近づき、

「蓮君!」

蓮に声を掛けた。

「友奈」

蓮が友奈に向き直る。

「色々ありがとう、天の神のこと、東郷さんとのことも。私…… 自分の幸せも大切にするから!」

「ああ、無理せず、自分も幸せにな」

「無理せず自分も幸せに…… 」

蓮の言葉を繰り返す友奈。

そして、ポケットから押し花を取り出し、

「これ、私が作ったの。皆の分もあるよ!」

蓮に押し花を渡す。

「ありがとう、友奈」

笑顔で礼を言う蓮、そんな蓮を見上げ、何度か口を開くも、躊躇い、そして

「蓮君!!」

「ん?」

「私…… 蓮君が好き!」

蓮に告白した。

言われ、微笑む蓮。

しかし、その直後に蓮含む怪盗団の全身が光り、消えた。

蓮も、他の怪盗団も同じく消えていた。

返事は聞けなかった。

「…… 」

俯く友奈。

「友奈ちゃん…… 」

東郷が心配そうに声を掛ける。

顔を上げた友奈の眼には涙が滲んでいた。

「大丈夫だよ、東郷さん…… 」

それでも、笑顔を見せ。

「きっと、また会えるから!」

 

 

 

「はい、友奈ちゃん」

ぼた餅を友奈の前に置く東郷。

「ありがとう、東郷さん」

笑顔の友奈。

そんな友奈に、東郷はぼた餅を切り分け、

「はい、あ~ん」

「あ、あーん」

友奈の口に入れる。

「なんか…… 最近東郷の友奈に対するスキンシップ激しくない?」

夏凛が呆れる。

「私はいいと思うな~、メモメモ!」

園子は満足そうにしている。

「今日も平和ですね」

樹が言う。

「そうねぇ、風が顔を出さなきゃもっと静かで平和なんだけど」

「そんなこと言って~、にぼっしーってばふーみん先輩が来ないと、寂しいんよ~」

「んなわけないでしょ!」

勇者部は相変わらず賑やかだが、

「でも、なんか前はもっと賑やかだったような気がするのよね」

風が呟く。

「あ、それ私も思ったのよ」

「私も~」

「風一人いないだけで、そんな変わるとも思えないんだけど」

夏凛が風をチラ見する。

「ですよね、もっと沢山人がいたような」

各々が不思議そうに考え込む。

「くるくる、くるくる…… 」

そんな中友奈はコーヒーミルのハンドルを回していた。

「珍しいね、友奈ちゃん。コーヒー淹れるの?」

ぼた餅を配膳していた東郷が友奈に声を掛ける。

「うん、なんだろうね」

友奈はくすっと笑う。

「って、なんで七人分淹れてんのよ?」

夏凛が七つコーヒーの入ったカップを指差す。

「東郷も、なんで七人分ぼた餅用意してんの?」

同じく七つ並べられたぼた餅。

「あれ、なんでだろう?」

「本当に、不思議ね」

友奈と東郷共に不思議そうにする。

「もう一人、勇者部にいたような気がして」

「うん、私も…… それに」

友奈がコーヒーミルを掴み、

「誰か大切な人を思い出しそうな気がして」

だが、それが誰かは、まだ思い出せなかった。

友奈は、壁に掛けられた六箇条の最後に目を向ける。そこには、あの日、誰かが教えてくれた「自分を大切にする」という想いが刻まれている気がした。

 

「行くぞ、みんな」

丸喜のパレス。

現実の世界に戻るため、怪盗団はこの日決戦を迎えようとしていた。

ジョーカーはポケットの中に手を入れ、そこに何かあるのに気付いて取り出す。

取り出したのは、一輪の花の押し花。

友奈から渡された大事なもの。

「お、なんだジョーカーその押し花?」

スカルが覗き込む。

「分からない、だが…… 大切なものだ」

ポケットに押し花を仕舞い。

「…… なぜかな。これを見ていると、絶対に負けられないって気持ちになるんだ。…… 行こう、俺たちの現実へ」

思い出せなくても、その感覚だけは残っていた。

怪盗団は未来のために、進み出した。

 

たとえ夢は覚めても、共に戦った記憶の温もりは、消えることはない。

勇者は折れず、怪盗は止まらない。

それぞれの現実(あした)で、彼らは今日も、自らの手で未来を切り拓いていく。

 

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