In The Myth, God Is Force
神話の御世にあって、神とは即ち力のことである。
神話の世界の始まりはリンクス戦争より4年前の出来事、『国家解体戦争』と呼ばれる戦争であった。
国家解体戦争
以前より存在する汎用性を高めた陸戦人形兵器アーマード・コア、それに革新的な技術を多数投入ることにより造られたアーマード・コア
通称『ネクスト』
次世代の兵器は圧倒的で僅か26機のネクストにより1ヶ月で国家は打倒され解体された。
これは国家を解体する戦争の記録である。
『聞こえますか、ベルリオーズ。』
「通信は明瞭だ、よろしく頼むオペレーター。」
『承知しました。⋯⋯ミッションの再確認をします。アメリカ軍ネバダ基地の襲撃。国家解体の初戦です、徹底的に破壊してください。』
「了解している⋯⋯。」
ベルリオーズを駆るネクストAC『シュープリス』は大型輸送ヘリの中で機動の時を待っていた。
『作戦領域に到達しました、出撃してください。』
「シュープリス、出撃する。」
大型ヘリの下面が開き差し込む光が白い霧で幻想的に光る。コジマ粒子の活性化を抑えるためごく低温にされている空気が外気と触れたた霧が発生するのだ。
シュープリス、中量の二脚人形兵器。
実弾ライフルを両手に肩にフレア、背面にグレネードランチャーを装備した機敏な機体。
ヘリとの接続が解除されシュープリスは重力に引かれていく。
「オーバードブースト、機動」
シュープリスの背中が開き大型のブースターが露出する。
まばゆい光がブースターに集まり、次の瞬間に機体は弾かれたように飛んでいく。
一瞬で音速を超え飛んでいく十数メートルの巨大人形兵器。
ヘリ投下地点から20キロしかない基地にはすぐに着く。
突然の飛翔体に基地は対処が遅れて自動迎撃ミサイルがわずかに飛んでくるのみであった。
「ミサイルが数発のみか。」
シュープリスはミサイルをロックオン、ライフルの射撃ですべて破壊する。
『司令部を最初に、格納庫を次に叩いて。』
「了解した。優先攻撃目標通り破壊する。」
司令部を背中の折りたたみ式グレネードランチャーで攻撃する。大爆発が起こる。戦艦の主砲並みの大口径砲の火力はすさまじく、辺りを火の海にした。
「司令部を破壊、あっけないものだな⋯⋯。」
淡々と戦闘をこなすベルリオーズだが、始めての大規模戦闘と既存兵器に対する圧倒的な強さに驚いている。
その後も格納庫数個を中の兵器とともにスクラップした後にようやく敵の迎撃が始まった。
『敵反応、複数のMTとACです。』
MT、マッスルトレーサーとはAC、アーマード・コアの祖先的存在であり作業機械から発展し武装化するなどにより高コストパフォーマンスの汎用兵器である。
AC、アーマード・コアは汎用性をより重視し頭部、胸部、腕部、脚部、武装、その他内装を選択式とすることでどのような戦場でも対応できる最高の陸戦人形兵器⋯⋯戦場の花形であった。
「ノーマルにMT多数か⋯⋯。」
シュープリスは両手のライフルを構えて射撃する。従来のACでは不可能な多数目標の同時攻撃、技術革新による圧倒的火力。
ゴリゴリと装甲を削られてフレームも破砕され崩れ落ちるMT。
ACがこちらを狙い発砲。
シュープリスはすばやく建物に身を隠す。
建物から出ると同時にライフルで射撃をする。
実弾に対する防御性能が優れたGA社製のACがライフルの十数発で撃破される。
ネクストACはその圧倒的なまでの強さによりそれまでのACをノーマルにしてしまった。
ノーマル数機がミサイルを発射。
シュープリスは加速し、両肩のサイドブースターを使い一気に反転して射撃、ミサイルを迎撃する。
『やはりノーマルとMTではあなたの敵ではないですね。』
「油断はしない、ただ壊すだけだ。」
『プライマルアーマーもあるでしょう。』
「無効化ではなく減衰するだけだ、食らわない方が良い。」
『慎重ですね、国家を敵に回しているというのに。』
「柔軟性のない存続のみが目的な組織など価値はない。」
ブースターを使い高速で移動しながらノーマルを攻撃する。旋回性の低いノーマルではろくに照準を合わせられずに翻弄され撃破されていく。
ミサイルは肩に装備されたフレアとライフルで効かず射撃戦では話にならない。グレネードランチャーで地形ごと吹き飛ばされ、残る戦力はノーマル1機となった。
シュープリスはノーマルの背後に回り込み、左手に持つ突撃ライフルを突き刺した。
ノーマルは頭部と胸部が大きく変形し、ライフルを抜きとると油圧の作動油が噴き出て返り血のようにシュープリスへとかかる。
『目標、すべて破壊しました。帰還してください。』
「了解した。」
まさしく悪魔のような戦い、圧倒的なまでの強さ。単騎で基地一つを無傷で陥落させた。
これがネクストAC、次世代の兵器であり世の中を大きく変える原動力。
『しかし、我が社の精密な突撃ライフルをそのように使わないでください……。』
「あの状況では一番速かった。」
『そうですか⋯⋯⋯⋯。』
パシュッ。
機体に常時展開されているコジマ粒子装甲、プライマルアーマーが攻撃を防ぐ。
物陰から兵士が対物ライフルで撃ってきた。
意識を向けると自動で頭部が動きカメラアイが捕捉しロックオンする。ネクスト独自の制御系AMSによる思考制御だ。
人は目標ではない。攻撃する理由も価値もない。
ブースターの出力を高め空へ飛んで行き、オーバードブーストで離脱していく。
国家解体戦争から1年、戦争最初期の一番最初に襲撃を受けた基地の元軍人に取材をすることができた。本人の希望で名前は伏せている。
軍人 「当時オレはレイヴンだったんだ、アーマード・コアに乗る戦場の花形、それがすっかり今はノーマルになっちまってレイヴンも価値のない呼び名になったんだよ。」
記者 「それは⋯⋯。当時はどのように襲撃されたのですか?」
軍人 「まず警報が鳴った。そこから走って機体の方へ向かうんだが、1分もしない内に司令部が大爆発してもう大混乱だ。そしたら向かってた格納庫まで攻撃されて愛機もスクラップにされちまった⋯⋯。迎撃のミサイルもぜんぶ撃ち落とされたんだぞ!! 普通ミサイルってのは旋回半径より内に潜るかフレアを使って避けるんだ。⋯⋯マグレ当たりじゃないんだ、全部ロックオンして射撃、当然のように命中。その時点で勝てないと思った。」
記者 「圧倒的な速さと精度、他にはどのような印象がありましたか?」
軍人 「火力も高かった、GAの重装甲のACがまるでチーズのようにボロボロにされたんだよ。戦車の砲撃数発じゃびくともしないのにな。最後の1機は尖った銃を突き刺されて倒されたんだ、高密度のフレームに高品質装甲がぐっちゃりとな!!」
記者 「流石はネクストACと言ったところでしょうか。その後はどうなったのですか?」
軍人 「愛機の怨みって事で近くに落ちてた対物ライフルでカメラを壊そうと思ったんだ。普通のACじゃ人はロックオンできないか難しいんだ、だからカメラだけでもぶっ壊してやろうと思ったが。プライマルアーマーって奴に弾かれた上、こっちを睨むつけてきたんだ。」
記者 「それは⋯⋯。」
軍人 「あの赤い目、黒い機体、悪魔のような戦い。今でも思い出すたび嫌になる。ここで終わると思うには十分な圧力だった。けども何もしてこないでふわっと浮いて消えていった。」
記者 「国家解体戦争は人死にがかなり少ない戦争でした。後の企業統治体制に支障が出ないよう、人はターゲットではなかったのでしょう。」
軍人 「そうかもしれないな⋯⋯。けどな、コジマ粒子って奴のせいで後遺症を持った奴はゴロゴロいるしアクアビットのネクストが戦ったとこじゃ草も生えず、住めなくなったらしい。俺だってネクストの近くに10分もいなかったが半年は吐血に不調と最悪だった。」
記者 「⋯⋯コジマ粒子の技術進歩で無毒化が研究されているので、少しでも良くなる事を祈っております。」