好きなことは食べること、好きな場所は動物園。
ちょっぴり怖がりで、少し人見知りなごく普通の女の子。
家が隣で、誕生日は1日違い。
生まれたときからずっと一緒にいる幼馴染み。
日に焼けて、チョコレートみたいな色になった黒髪。
いつもゆるりとニコニコしているから分からないけど、実は結構つり目なことを僕だけが知っているきらきらの目。
「まぁくん」
保育園からのあだ名を呼ぶ声は、その頃からの名残りで少しだけ舌足らずだけど。
「おはよ」
普段の声は落ち着いていて、少しだけ眠くなる。
僕を見て、ゆるりとした目が更にとろりとするのに、僕もまた自然と表情が緩んだ。
可愛い。
自然と湧き上がるその気持ちは、生まれてこの方15年間、毎日新鮮に抱くものだ。
迎えに来た僕にする挨拶を優先して、玄関先で通学用のローファーを履くのに手間取る姿すら可愛い。
中学まではスニーカーだったもんね、なんて思えば自分が履いてるまだ硬いローファーもなんだか収まりが悪いような気がして。
お互いまだ着られているような馴染んでいない制服姿が見慣れなくて少しだけ眩しい。
「おはよ、さくちゃん」
大好きな彼女の名前を呼ぶ。
僕、
一歩、二歩、と駆け寄って来てくれた彼女を、僕は見上げた。
189cm。
日本の女性の平均身長どころか男性の平均身長すら軽々と超えるその数字が、さくちゃんの身長だ。
ちなみに僕は173cm。
男子の成長期はこれからだし、まだまだ伸びると信じている。
まぁ僕のことはどうでもいい。
さくちゃんは昔から大きかった。
身長もだけど、食べることが大好きなのもあってか体重も。
92kg。
これは去年、偶然見えてしまった身体測定の記入用紙に載っていた数字だ。
体重を勝手に見てしまっただなんて、きっとさくちゃんは傷つくだろうからこのこと自体は墓まで持っていくつもりである。
そしてこれは誤解しないでほしいことなのだが、僕はさくちゃんの体重に文句など一つもない。
さくちゃんは、ふんわりしていて可愛いのだ。
ふにっとしたほっぺも、いつもご飯を食べた後に満足げに撫でているお腹も。……えっと、存在感のある胸、も。
ハグした時とか、もちもちで堪らない。
……もちろん、さくちゃんにはそんなこと言っていない。
だってセクハラだ。
けど、僕もまた健全な男の子なので許してほしい。
とにかく!
さくちゃんは、周りと比べてとても大きい。
そのせいで嫌な思いもしたこともあるのを知っているし、さくちゃん自身も自分が好きじゃなかったりする時があるのも知ってる。
だから、その分。
僕が沢山さくちゃんに、さくちゃんのことが好きだよって伝えるって決めてる。
実際、僕はさくちゃんが好きだし。
普通の女の子と変わらないところも、普通じゃない大きなところも、全部引っくるめて大好きだし。
でっかくて可愛い、縮めて、でっかわいい僕の彼女。
「さくちゃんとクラス離れちゃったのちょっと寂しいな」
「でも、隣のクラスだからすぐ会えるよ?」
「それでも寂しい」
少しだけ拗ねたように言えば、くすくすと控えめに笑うさくちゃん。
口元に手を持っていく姿が可愛い。
「……私も、ちょっとだけ寂しい」
眉を下げて、内緒話のようにこそりと言う姿にぎゅうっと胸が鳴った。
ほんの少しだけ俯いて視線を反らした表情は、僕のほうが背が高かったらきっと見えなかった顔だ。
可愛い。
「お昼のお弁当、一緒に食べよう。迎えに行くから」
「……!うん!」
待ってるね、と笑うさくちゃん。
まるいほっぺがほんのり赤くて、そんなに可愛い顔をされたら僕の心臓のほうが保たなくなっちゃう。
……今更だがこれは、僕がただひたすらにさくちゃんのことを可愛い可愛いとノロケるだけの、ただそれだけの話である。