恋愛ゲームの世界を願ったらなぜかヒロインになった俺は、攻略を回避するのに忙しい   作:うちっち

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接敵、主人公 / 遭遇、貝森ちゃん(上)

 そして、俺が教室に着いて幾ばくも経たないうちに、級友の女子生徒Aが早速の敵襲を告げた。どうやら我がクラスは安寧の地というよりは戦場に近いらしい。もちろんこの場合の「敵」といえば、該当する人物は1人しかいなかった。

 

 

 

 

「――ほら、竜造寺くん、今日も来たよ」

 

 さて、朝からさっそく来よったか、主人公、すなわちゲームの世界の俺。――竜造寺崇高(りゅうぞうじまさたか)。背が高めで爽やか系で運動神経も高く親が金持ちついでに人望もあるという、この世のバグから生まれたみたいな存在だ。

 

 

 合戦で敵の軍勢が押し寄せるのを見る気分で、俺は駆け寄ってくる男子生徒を見つめた。しかし、ゲームの世界の俺を実写にするとこんなにイケメンだったのか。全然嬉しくない。

 

 

 ……だがお前なあ、こんな教室に来てる暇があったら、中庭の貝森ちゃんとか屋上の高宮城先輩の所に早く行けっての。特にその2人は時間制限あるんだから。主人公としての心構えが足りとらんぞ。しっかりしろ。

 

 

 

 

 すると、俺のそんな駄目出しの気持ちが表に出てしまっていたのか。主人公はどこか心配そうな顔で話しかけてきた。

 

「な、なんでそんな顔……? あ、ひょっとして体調悪いのか?」

「体調は……いいんだけどねぇ……」

 

 この口調慣れねぇ……。しかし俺の胸の内には常に手本とするべき汐音ちゃんがいる。ありがとうフルボイス。君を汚さないよう、俺、頑張るわ。見ててくれ。

 

 

 

 

 

 さて、じゃあこいつを他のヒロインのところへ連れて行ってやらんといかんわけだが。中庭と屋上、どっちにする……? 俺は貝森ちゃん推しだから先に校庭に行っとくか? 最終的に選ぶのはこいつと相手だとしても。そのくらいの贔屓は許されるだろう。よし。

 

 

 俺はそっと手を合わせながら、自然に主人公を誘導すべく口を開いた。

 

「ごめんね……ちょっと中庭に行きたいんだよ」

「それでそんな眉間にしわ寄せることある⁉」

 

 あ、いかん。やっぱり相当表に出てしまっていたか。とりあえず俺がニコニコ笑って見つめると、主人公はちょっと赤くなり、それ以上追及しては来なかった。ちょろい奴だぜ。

 

 

 しかしまだここで疑われてはまずい。疑われるのは、俺以外のルートを確立してからでも遅くはない。

 

 

 

「ねぇ……。私、今すぐ行きたいな……」

 

 奴の袖を引っ張り、再度アピールする。本当は、さっさとついてこいやと尻を蹴飛ばしてやりたいのだが、それでこいつが素直についてくるかと言われると心許ないので我慢しておく。

 

 

 すると、傍で俺たちの会話を見ていたクラスメイトその1が、慌てたように口を挟んだ。

 

「いやいや待って汐音ちゃん! もう授業始まるよ?」

「行ってくるよ。こいつがこうまで言うならきっと何か理由があるんだ」

 

 キリッと決め顔でそう言う主人公。この節穴野郎め。ゲームの世界の俺だけど。

 

 ……まあいい。貝森ちゃんは今はアクシデントに見舞われてる最中のはずなので、授業中だろうが中庭にいる。そこで今日も落とした親の形見のペンダントを探しているはずなのだ。じゃ、行くぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごそごそと低い植え込みをかき分けながら、中庭で何かを探している女子生徒。普段なら元気いっぱいな表情が浮かべられているであろうその顔は、泣き出しそうに歪んでいる。

 

 

 ――貝森 亜佑実(かいもり あゆみ)。後輩キャラ。父親を幼少に亡くしているせいか、家族というものに大きな憧れを持つショートカットの元気っ娘。転校危機を乗り越え、いつものように「センパーイ!」と言いながら駆け寄ってくるラストの姿にはおそらく多くのファンが涙したことだろう。

 

 

 

 

 ……しかしあれだな、ゲームの世界を実際に見ると、ちょっと違和感あるな……。だってこの貝森ちゃんって、主人公が他の子に会いに行ってる間も2週間くらい1人で中庭探し続けるからね。雨の日とかも。気の毒すぎるだろ。誰か手伝ってやれよ。

 

 

 

 

 

 とりあえずこっちばっかり見てる主人公に、貝森ちゃんを指さして存在を教えてやることにした。ていうかお前はまず前を向け前を。

 

「あれ? あの子、どうしたんだろうな?」

 

 よし、気づいたな。じゃあ未来の嫁をさっさと助けに行こうか。

 

 

 

 

 

「実はあたし、お父さんの形見のペンダントをあそこの窓から落としちゃって……」

 

 どういう状況だとペンダントが窓から飛んでいくのかはいまいちはっきりとしなかったが、そういうことらしい。しかしこれもあらためて聞かされると不思議だな……。廊下を歩きながらヘドバンでもしてないとそうはならない気がするが……。

 

 

 まあいい。ほら、とっとと探すぞ。ま、そうは言っても、俺はどこにあるか知ってるけどね。中庭の隅っこにある排水溝の蓋をどけたところにひっそりと落ちてるんだな、これが。

 

 

 

 ……いやでもこれもさ、よく考えるとおかしくない? 貝森ちゃんひょっとしていじめられてない……?

 

 落ちてる場所も変だし、俺はなんでそんな場所の物を見つけられたんだ。まさか貝森ちゃんをいじめてたのは主人公である俺だった……?

 

 

 

 

 隣でガサガサ探してる崇高の野郎をじろりと睨む。いや、まあそんなわけはないか。というかなんでこいつ探す時も俺から離れないんだよ。もう少し効率ってものを考えろ。

 

 

 

 

 俺たちはしばらくそこらの草むらを探し回ったが、当然ながらペンダントを見つけることはできなかった。速攻で排水溝に駆け寄らなかった理由は1つ。客観的に見たら非常に怪しいであろうことに気づいてしまったからだ。

 

 

 しかし、これだと1か月経っても見つけられる気がしないな……。そんなに待っていたら俺が海外に強制送致されてしまう。かといって排水溝に直行するのはやっぱり変だよな……。

 

 

 

 

 

 そこで俺は、一計を案じた。まず、財布から取り出した小銭を地面にばらまく。チャリンチャリンと音をたてて、小銭はあたりに散らばった。そうして俺は排水溝の方へ、何かを追いかけるように歩いていった。

 

 

 そして予想通りついてきた崇高に、排水溝のコンクリートの蓋を指さす。ばらまいた場所から排水溝までは30メートルほど離れているので、正直そんな距離を小銭が転がるわけがないのだが、見つけてしまえばこちらのものよ。

 

 

 ……あ、よく見たら排水溝の蓋って端に小さな穴開いてるわ。ここからペンダント入ったのか。……そうならそうで貝森ちゃん運悪すぎない? 君、普段の行いとか大丈夫? 道のお地蔵さん片っ端から蹴ったりしてない?

 

 

「崇高くん、落としたの入っちゃった……大事な私の小銭が……」

「……あーあ。……でも、これは無理じゃないか……?」

 

 そんなすぐ諦めんなよ。お前ならできるって。俺が保証する。そんな思いを込め、崇高を見上げてじっと見つめた。すると、崇高は頭をがりがりとかいた後、大きくぽんと胸を叩いた。

 

「あーもうそんな目で見るな! しょうがないな! この俺に任せとけ!」

 

「えぇぇぇ……? こっち……? で、何やってるの……?」

 

 

 

 

 後ろから追いついてきた貝森ちゃんは俺と崇高を何度か見比べ、明らかに妙なものを見る目つきになった。しかしそれ以上何も言ってはこなかった。これを、幸いにも、と言っていいかは微妙なところだ。

 

 

 

 

 そして、うおおおぉぉ! とおそらく授業中にも関わらず思いっきり叫び声を上げてコンクリートの蓋を持ち上げようとする崇高。その雄姿を、俺たちはただそばで見守った。

 

 

 

 

 ゴトン、と重い音とともにやがて蓋がどけられる。そしてそこには、確かにペンダントが。これでなかったら崇高の単なる骨折り損なところだったので、めでたしめでたし。

 

 

 一方、貝森ちゃんはペンダントをばっと手に取り、ぎゅっと抱きしめ、ぽろぽろと可憐に涙した。おお……良かった……良かったなぁ……!

 

「これ、これだよう!! よかったぁ……ありがとうっ……!! ありがとうね……っ!」

 

 

 

 なぜか俺の方を向いてお礼を言ってる気がするので、貝森ちゃんには崇高を指さし、誰がこれを発見したのかを再度注意喚起しておく。これこれ、こっちが君の彼氏候補ね。

 

 

 

 

 

 

 

「「ありがとう!」」

 

 あらためて俺たち一同*1に礼を言われ、崇高はまんざらでもない顔になった。よーしよし。これで貝森ちゃんの中では崇高は恩人として刻まれたはず。……おや? 他のヒロインとくっつけるって、これ意外にすぐいけるんじゃないか? いやいけるな。間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「……ええっ! 先輩だったんですか!?」

 

 貝森ちゃん、俺、崇高の並びで座り、彼女がお礼と言って奢ってくれたジュースを飲みながら俺たちはあらためて自己紹介し合った。そこでなぜかやたらと驚かれる。

 

 いやどう見ても崇高は年上だろ……。こいつ無駄に身長180cmくらいあるんだから。そんなに貝森ちゃんの周りでは高身長が溢れているのだろうか。君、バスケ部のマネージャーでもやっておられる?

 

 

 

 

 俺の気持ちが伝わってしまったのか、貝森ちゃんは顔の前でぱたぱたと手を振った。

 

「だって、あなたが小さいから……。あ、ごめんね! いや、ごめんなさい……」

 

 うるせー余計なお世話だ。病弱だから小さいし薄いんだよ。たぶん俺今150cmないしな。道理でだいぶ視界が低いわけだ。だが、優しい汐音ちゃんのイメージを崩すわけにはいかないので、とりあえずニコニコ笑っておいた。

 

 

「いいよ、仕方ないと思うから……」

「汐音先輩、って呼んでいいですか?」

「いや別に構わんけど……あ。……いいよぉ……」

「なんで同じこと言い直したの? ……あ。言い直したんですか? あっ……」

 

 

 ふふっ、と俺と貝森ちゃんはなんとなく顔を見合わせ、同時に笑った。そういや貝森ちゃんも言い直す癖、あったっけ。にしても、そうだよこれだよ。この子には元気に笑っていてほしい。プレイヤーを代表して俺は表明する。この子を曇らす奴は問答無用で無期懲役に処する。

 

 

 

 

「ねえそうすると崇高くんも先輩……だよねぇ。ほらもう少し喋りなよ」

 

 ほら、お前ももうちょいなんか言え。熊の置き物とか人体模型じゃないんだからさ。俺は口を開くのを止め、後は2人のやり取りを見守ることとした。

 

 

 

 

 

 ……ところが。しばらく時間が経過したものの、俺の期待に反し2人の会話は一向に始まる様子を見せなかった。

 

 

 ……すまん、ゲーム世界の俺よ。具体的な会話ってゲームじゃいちいち表示されなかったから俺は手助けしてやれん。……あ、でも。ここでペンダントの話をしたから彼女の家庭環境を聞くきっかけが生まれたはずだし、それは最低限やっておかないとな。

 

 まあ、もう少し待てば会話も弾むことだろう。

 

 

 

 

 

 

 しかし10分経ち、2人が発した言葉は信じ難いことになんと4つだけだった。いや4つて。3歳児同士でももう少しなんか喋るぞ。……君たち、ひょっとして恥ずかしがり屋?

 

 しかしいかん、見てるだけでも気まずい……。この世界の俺ポテンシャル低い。いやこいつもやる時はやる男なんだけど。ただ今もやる時のはず。だからさっさと発揮しろ。

 

 

 

 俺はいつの間にかこっちを向いている崇高にそんな念を送ったが、いまいち伝わっているような様子はなかった。この鈍感野郎。……こうなったら……。

 

 

 

 俺はじーっと貝森ちゃんのペンダントを見つめる。ほらお前も気になるよな。あれだよあれ。「なんであんなに一生懸命探してたの?」って言いたくなってきただろう。

 

 俺の目が少々血走っていたからか、少し引いた様子を見せたものの、崇高は貝森ちゃんのペンダントへ無事目を移した。よしよし、お前はやる男だと思っていたよ。

 

 

 

 そして俺の期待通り、崇高は貝森ちゃんに遠慮気味に話しかけた。よし。これで……。

 

 

 

「そのペンダント、貰えたりはしない……よな?」

 

 何言ってるんだお前。あれが見つかった時この子がどれだけ喜んでたのか、お前見てなかったの? 崇高、後で補習な。

 

「えぇ、駄目ですよう! だってこれは私の父の形見で……」

 

 あ、でもなんかルートに乗ったわ。あれでいいんだ。貝森ちゃん、俺の推し№3だけあって心広いね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺と崇高は神妙な顔をして彼女の身の上話を拝聴した。内容については俺のゲーム知識と同じだったので要約しよう。

 

 なんでも貝森ちゃんのお母さんは一生懸命働いてくれてるんだけど、そのせいで彼女は家で夜中までずっと1人なんだって。だから寂しいけど、そんなことを級友に相談することもなかなかできず。学校で笑って過ごせる一方で、家に帰ってずっと1人でぽつんと過ごすそのギャップがきついらしい。知ってたけど、生で聞かされるとやはり悲しい。これは何とかしてやらねばと誰もが思うはずだ。

 

 

 

 

 

 貝森ちゃんは何かを我慢しているように、じっと地面に目を落としながら、ぽつりぽつりと寂しそうに呟いた。

 

「きっと我儘なんでしょうけど……私って今1人だなぁ、ってふと感じちゃって……」

 

 

 

 しかし貝森ちゃんの話を聞いた後、「そうか……」とだけ言って崇高は黙りこんでしまった。

 

 ……マジか。さっきからどうしたこいつ。携帯ショップの店頭によくいるペッパー君*2の方がまだ愛想あるぞ。こらお前、「なら俺が一緒にいてやるよ」くらい早く言わんかい。

 

 

 

 

 

 

 俺は崇高を貝森ちゃんの方にぐいっと向けた後、ごしょごしょとその背中に囁いた。

 

「なら俺が一緒に……!」

「なら……俺が……一緒に……?」

「いてやるよ」

「……いてやるよ……」

 

 声が遅れて聞こえるよ、みたいになってしまったがいいだろう。意図を読み取った崇高、偉い。ちゃんと貝森ちゃんを見ながら言えたのも俺的にポイント高い。

 

 

 

「いやー、でも……今日会ったばっかりの人にそこまでしてもらうのも……悪いですし」

 

 あ、やばい。なんかでも貝森ちゃんちょっと引いてる。これ崇高の言い方に問題あったんじゃないか? しかしこれはいかん。ここは任せろ。俺が手本を見せてやる。

 

 

 

「崇高くんは、『貝森ちゃんにはこれで言える場所が1つ出来た。だからこれからも、辛い気持ちを言えない時があったら1人でため込まずに話してほしい』って言いたいんだよ」

「……あ、そうだったんですか……。ありがとうございます。じゃあもし、また落ち込むようなことがあったら、聞いてくれたら嬉しいです」

 

 なぜかこちらに言ってくる貝森ちゃん。お、おう、俺も聞くけど。でもこいつにも言ってくれ。しかし俺の再三送った視線の意味を、貝森ちゃんはどうも汲み取ってくれた様子はなかった。ニコニコと黙って俺に微笑む貝森ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 ……崇高って存在してるよな? 俺にしか見えない存在とかじゃないよな? いや教室で認識されてたから大丈夫なんだろうけど。そして同時に理解する。このままだと貝森ちゃんはどうやら崇高には同じ言葉を言ってくれないっぽい。

 

 

 

 そこで俺は貝森ちゃんの向こう側に移動し、彼女の両肩を掴んで、くいっと無理やりに崇高の方に向けた。そしてその背中にこれまたごしょごしょと囁く。

 

「落ち込むようなことがあったら」

「……え? えーっと……落ち込むようなことがあったら……?」

「あなたにも聞いてほしいと思うんです」

「あなたにも聞いてほしいと思う……んです……」

 

 

 

 よし解決!これで貝森ちゃんルートには乗ったな……多少無理やりとはいえ。崇高お前、貝森ちゃんルートのラストの一枚絵ヤバいからな、楽しみにしとけよ。この幸せ者!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございましたー! 汐音先輩! 竜造寺先輩!」

 

 今日の昼食を一緒に食べる約束を交わした後。手をぶんぶん振り、貝森ちゃんは去っていった。ここで、なんで俺が名前呼びで崇高が苗字呼びなんだ、と思われたかもしれない。しかしこれには訳がある。貝森ちゃんは本当に信頼した相手は「センパイ」とだけ呼ぶのだ。いやしかしこうなったら、この世界の俺がそう呼ばれているところを早く見たいね。

 

「汐音は、ひょっとして、中庭であの子が困ってるって知ってたのか? だから……」

 

 とりあえず飛んできた都合の悪い質問は普通に無視しておく。……そうだそうだ。それよりも確認しておかんといかん。

 

 

 

 

 俺は少し前を歩く崇高を追い抜き、振り返って笑顔で尋ねてみた。ふわりとスカートが舞い、不本意ながらちょっと可愛くなってしまったが、必要な犠牲だと割り切ろう。

 

「さっきの子、すっごく可愛かったよねぇ!」

「あ、ああ……まあ」

「好きに、なった?」

「……いや俺、他にちゃんと好きな人いるからな!」

「…………あっ、はい。……そう……じゃあもういいや。この話おしまいね」

 

 この野郎。まあいい。貝森ちゃんの存在を認識したなら今日のお前は100点だ。この後の昼食でさらに仲良くなってくれたら十分。橋渡しは俺に任せておけばいいからさ。

 

 

 

 

 

「しっかし、汐音先輩のお弁当めっちゃくちゃおいしいですね……!」

「だろ?だろ?しかも聞いて驚くなよ。これ、全部……こいつの手作りなんだぞ!」

「なんで竜造寺先輩が自慢気なんですか……」

 

 そしてやってきた昼休み。俺と貝森ちゃんと崇高は、中庭で仲良く昼食を囲んでいた。俺はお弁当、二人は購買で買ったパン。俺はなるべくお上品にちまちまと食べることに集中し、結果として自然と口数は少なくなった。すると二人はなぜかあんまり喋らない。

 

 ……いや君達さ、まずお互いもうちょい興味持とう? 

 

 

「でも汐音先輩、なんかおかず多くないですか? このペースで食べられるのかな……」

 

 確かに、弁当箱開けて分かったんだけど、これ明らかに二人前くらいある。汐音ちゃんに大食い属性があった記憶はとんとないのだが、ゲーム内で描写しきれなかった新たな彼女の側面だとすると、なんかそういうのに触れるのは正直テンション上がるな……!

 

 

 

 

 俺がひそかに感動を覚えている横で、嬉しそうに俺のおかずをひょいひょいとつまんでいく崇高。俺は秒単位で減っていくおかずを見て、真実を理解した。

 

 ……まあ、男子高校生の食欲だと仕方ないかもしれんな……。その代わり、食った分だけ後で働いてくれよ崇高。

 

 ただ、俺の隣に座る貝森ちゃんが明らかにヒモを見るような目で崇高を見てるのがちょっぴり気にかかる。というか一応そいつ君の恩人だよ? しかしこれはいかん。

 

 

 

 

 俺は空気を変えるべく、いそいそと別の話題に移った。

 

「ねえ! ……実は私、今日用事があって商店街に行こうと思ってるんだけど、貝森ちゃんよかったら一緒に行ってくれないかなぁ? 私達だけだとちょっぴり心もとなくて」

「放課後……? ひょっとして……さっきの話で、気遣ってくれてます?」

「ううん、心もとなくて」

 

 もう一度そう答え、ちらりと崇高を見た。あー、と納得した顔をする貝森ちゃん。

 

 即わかってもらえたようだが少し複雑だ。そいつ未来の君の彼氏候補だぞ。君もそこんところ、わかってる? 頼むからいつかわかってくれな? 今すぐとは言わんから。

*1
2人

*2
最近あんまり見ない

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