起:規則正しい秒針と、血塗られた路地裏
コントロールルームの空気が、微かな安堵に包まれていた。
ポッドから身を起こした麗日お茶子が、憑き物が落ちたような穏やかな表情で涙を拭うのを見届け、飯田天哉は小さく、しかし力強く息を吐き出した。
「二人とも、本当によく無事に帰還してくれた!」
飯田は、緑谷とお茶子に向かって深く一礼した。その声には、クラス委員長としての責任感と、仲間への深い敬意がこもっている。
「緑谷くんの言葉通り、これは決して物理的な腕力で乗り越えられる試練ではないのだろう。……だからこそ、次は僕が行こう」
迷いのない足取りで、飯田は開け放たれたP.D.S.G.のポッドの横へと進み出た。
「飯田。お前は真面目すぎるきらいがある。仮想空間の出来事を、過剰に背負い込むなよ」
バイタルモニターの前から、相澤消太が忠告するように低い声をかける。
「お気遣い感謝します、相澤先生! ですが、A組の委員長として、自らの内面(おのれ)から逃げるわけにはいきません!」
背筋をピンと伸ばし、飯田は毅然とポッドに横たわった。
冷たい機材の感触が背中を伝う。未知の精神世界への恐怖がないと言えば嘘になる。だが、自分はインゲニウムの名を継ぐ者だ。どんな理不尽が待ち受けていようと、冷静に、正しく対処してみせる。
シューッ、とハッチが閉じる音を最後に、飯田の意識は暗転した。
*
――チク、タク。チク、タク。
最初に意識を叩いたのは、規則正しく無機質な「音」だった。
飯田はゆっくりと目を開ける。
「ここは……」
分厚い霧が、夜の闇を白く濁らせている。街灯の光すら届かない薄暗い空間。
出久やお茶子が語っていた通り、ひどく冷たく、生命感の一切排除された世界だった。飯田は眼鏡のブリッジを中指で押し上げ、委員長らしく、まずは冷静に周囲の状況を分析しようと試みる。
だが、その思考は、鼓膜を――いや、頭蓋骨の裏側を直接叩くような、巨大な時計の秒針の音によって酷く乱された。
チク、タク。チク、タク。
まるで、世界のどこかに見えない巨大な時計塔が存在し、自分の一挙手一投足を冷酷にカウントダウンしているかのような、不快な圧迫感。
「環境音にしては、過剰すぎるボリュームだ……プログラムのバグか?」
呟きながら、ふと足元に視線を落とした瞬間。
飯田の背筋を、氷の刃で撫でられたような悪寒が駆け抜けた。
ひび割れたアスファルト。無造作に積み上げられた、錆びたゴミ箱と粗大ゴミ。
そして、左右を塞ぐように高くそびえ立つ、薄汚れた雑居ビルの壁面。
「……ばか、な」
息が止まった。
見知らぬアメリカの田舎町ではない。朽ち果てた遊園地でもない。
そこは、濃霧に沈む深夜の街――かつて彼が、己の復讐心に呑まれ、兄の仇である「ヒーロー殺し」ステインに殺意を剥き出しにして挑みかかった、保須市の路地裏そのものだった。
途端に、鼻腔を鮮烈な匂いが蹂躙した。
雨に濡れたアスファルトの匂い。錆びた鉄の匂い。そして、濃密にへばりつくような、どす黒い『血』の匂い。
「く、っ……!」
冷静な分析など、一瞬で吹き飛んだ。
なぜ、この場所なのか。シミュレーターが「最もストレスを感じる環境」を構築するとはいえ、自らの人生において最も忌まわしく、最も愚かだった汚点(場所)を突きつけられるとは。
動揺を振り払うように、飯田は無意識に脚に力を込めた。
この忌まわしい路地裏から、一刻も早く抜け出さなければならない。時計の音が、彼を急かすように耳元で鳴り響いている。
――チクタク、チクタク!
「……っ!?」
しかし、身体が前に進まない。
ふくらはぎに備わった排気管(マフラー)が、まるでコンクリートで完全に塞がれてしまったかのように、恐ろしく重かったのだ。
個性「エンジン」が発動しない。それどころか、両脚に重い枷をはめられたように、走ることすらままならない。
「動け……動いてくれ……!」
飯田は焦燥に駆られ、己の脚を力任せに叩いた。
誰よりも速く駆けつけ、人々を救い出す。それが、インゲニウムというヒーローのアイデンティティのはずだ。
走れない。この因縁の場所で、自分はただ立ち尽くすことしかできない。
チク、タク。チク、タク。
無慈悲な秒針の音が、立派なヒーローに「なれなかった」彼を嘲笑うかのように、霧の路地裏に虚しく響き渡っていた。
承:彷徨う甲冑と、断罪のノイズ
チク、タク。チク、タク。
無慈悲な秒針の音に背中を押されるように、飯田天哉は濃霧に沈む路地裏を進んでいた。
ふくらはぎの排気管はコンクリートで固められたように重く、一歩を踏み出すのにもひどい労力を要する。
だが、立ち止まるわけにはいかなかった。あの夜、血の海に倒れていたネイティブや、駆けつけてくれた緑谷たちの姿が脳裏にフラッシュバックし、少しでも気を抜けば過去の幻影に呑み込まれそうになるからだ。
どす黒い血と雨の匂いが、肺にべったりと張り付いている。
――ガシャン。ギィィ……。
不意に、霧の奥から不快な金属音が響いた。
空き缶を乱暴に踏み潰し、アスファルトに擦りつけながら引きずるようなノイズ。
「誰だ!」
飯田は警戒し、両手を構えて低く身構える。
霧のベールが薄れ、這い出るようにして姿を現した『それ』を見て、飯田の呼吸が完全に凍りついた。
それは、ひしゃげた銀色の甲冑を纏った人型の怪物だった。
塗装は剥げ落ち、あちこちがへこみ、赤錆と黒いオイルに塗れている。だが、その装甲のフォルムは、飯田がこの世で誰よりも尊敬し、そして誰よりも憧れたヒーロー――兄である『インゲニウム』のスーツにあまりにも酷似していた。
しかし、致命的な欠落がある。
その怪物たちには、『首』から上が存在しなかった。
「あ……」
切断面のようにぽっかりと空いた首の穴からは、黒い泥のようなノイズがとめどなく溢れ出している。
畏敬の対象である兄の姿を、これほどまでに冒涜的で醜悪な形に歪められたことへの嫌悪感。飯田の全身の毛穴が粟立つ。
刃物のような武器は持っていない。ただ、ひどく不自然でカクカクとした操り人形のような動きで、首なしの甲冑たちは飯田ににじり寄ってきた。
そして、暗闇の首の穴から、感情の一切こもっていない機械的な合成音声が吐き出される。
『ギ……、偽物』
「……っ!」
『弟、失格。お前は、ヒーローじゃない』
ビリッと、心臓のど真ん中を冷たい針で貫かれたような痛みが走った。
怪物は言葉を続ける。それは、かつてステインに突きつけられた刃よりも、ずっと深く、残酷に飯田の精神を抉り取った。
『ただの、復讐者だ。兄の名を、語るな』
*
「……飯田のやつ、外見通り頑固だからな」 コントロールルームのモニターを見つめながら、相澤消太は重々しく眉間を揉み解した。 バイタルデータを示すグラフは、奇妙な波形を描いていた。未知の恐怖空間にいるにもかかわらず、心拍数や呼吸の乱れはほとんど見られない。彼の持ち前の「委員長としての冷静さ」が、肉体のパニックを理知的に押さえ込んでいるのだ。 だが、問題は脳波データだった。 「脳波のストレス値が、極めて局所的に跳ね上がっています」 発目明が、複雑に交差する波形を指差した。 「恐怖、ではありませんね。これは……強烈な『葛藤』と『自責』のパターンです」 相澤は、小さく息を吐いた。 真面目すぎる男だ。保須市での一件以来、飯田は決して己の過ちを許そうとはしていない。周囲がどれだけ彼を認め、仲間として頼っていようとも、彼自身が、心の奥底の法廷で自分を裁き続けている。 「自分自身を罰し続けるのは、時に敵(ヴィラン)からの拷問よりタチが悪いぞ……」 相澤の独り言は、機械の排気音に吸い込まれて消えた。
*
『偽物。偽物。偽物』
ガシャン、ガシャンと甲冑を鳴らしながら、複数の首なし怪物が飯田を包囲するように迫る。
「違う、僕は……!」
反論しようとして、喉の奥で言葉が詰まった。
違うと言えるのか。
あの夜、ヒーローとしての本分を忘れ、兄の仇を討つためだけに殺意を振るった自分を。ステインの言葉通り、ただの復讐者に成り下がったあの瞬間の己を。
怪物が発する合成音声は、他ならぬ飯田天哉自身が、毎朝鏡の前で自分に投げかけていた「呪いの言葉」そのものだった。
図星を突かれたことによる、激しい自責と後悔。
心の奥底に隠していた最も見苦しい汚点を、兄の姿をした怪物から突きつけられる拷問。
「く、そっ……!」
飯田は奥歯を噛み締め、身を翻した。
戦えない。個性が使えないからではない。この怪物たちが吐き出す言葉が、すべて「正しい」からだ。彼が反論できる言葉は、今の飯田の中には存在しなかった。
チク、タク。チク、タク。
無慈悲な時計の音に急かされるように、飯田は重い足を引きずり、屈辱に塗れながら、さらに深い霧の路地裏へと逃げ込むしかなかった。
転:暴走するエンジンと裏世界
チク、タク。チク、タク。
脳髄を直接叩くような秒針の音から逃れるように、飯田天哉は濃霧の路地裏をあてもなく駆けずり回っていた。
ふくらはぎの排気管は相変わらず重く塞がり、鉛のような両脚を引きずるたびに、激しい疲労と屈辱が全身を苛む。背後からは、首のないインゲニウムの甲冑たちが、ガシャン、ガシャンと不気味な足音を立てて執拗に追ってきている。
――ドンッ。
「……っ!」
不意に、飯田の身体が冷たいコンクリートの壁に激突した。
行き止まりだ。左右は高い壁に阻まれ、逃げ道はどこにもない。
振り返ると、霧の奥から這い寄ってくる甲冑たちのシルエットが見えた。もはや絶体絶命かと思われた、その瞬間。
チク、タク。チク、…………ピタリ。
狂ったように鳴り響いていた時計の音が、不自然に途絶えた。
静寂。飯田が荒い息を呑み込んだ、次の刹那だった。
ウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――……!
空気を、いや、空間そのものを激しく震わせる、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「な、んだ……!?」
飯田は思わず両耳を塞ぎ、その場に蹲った。
サイレンの轟音と共に、世界が悲鳴を上げて剥がれ落ち始めた。飯田が背中を預けていた雑居ビルのコンクリートが、まるで焼け焦げた皮膚のようにボロボロと崩れ去っていく。足元のひび割れたアスファルトは溶けるように沈み込み、赤錆に塗れた巨大な鉄網(グレーチング)へとテクスチャが反転した。
裏世界への変貌(ピーリング)。
霧は完全に消え去り、そこは「血と黒いオイルに塗れ、巨大な排気管と歯車が無限に回り続ける、狂気の工場跡」へと姿を変えていた。
噎せ返るような鉄と排気ガスの匂いに、濃厚な血の生臭さが混ざり合い、飯田の胃の腑を激しく掻き回す。
ズォォォォォォンッ……!
稼働し始めた巨大な歯車の奥、吹き上がる黒煙の向こうから、『それ』は姿を現した。
ギガァン、ギギギギギギッ!
火花を散らしながら鉄網の床を引きずられてくるのは、身の丈をゆうに超える、巨大で無骨な刃の欠けた刀。かつて「ヒーロー殺し」が振るっていた凶刃を、さらに禍々しく肥大化させたような得物だった。
それを引きずっているのは、半人半機の醜悪な怪物。
上半身は筋肉の隆起した人間のようだが、首から下、特に両脚のふくらはぎには、飯田の「エンジン」を乱暴に、そしてグロテスクに肥大化させたような無骨な機械が直接埋め込まれている。そこからは、排気ガスのような黒煙と、どす黒い赤いデータノイズ(血)が絶え間なく吹き出していた。
『ア、あクヲ……殺セ……ッ!』
怪物の口から、ノイズまじりの叫び声が工場内に響き渡る。
「……」
飯田は、呼吸の仕方を忘れたように立ち尽くした。
あの声には、聞き覚えがある。ステインの声ではない。尊敬する兄の声でもない。
紛れもない、飯田天哉自身の声だ。
『アニノ、あダヲ……討テェェェッ!!』
怪物が、欠けた巨大な刀を乱暴に振り回し、周囲の鉄柱を飴細工のようにへし折った。
その怒りに満ちた身のこなし。黒煙と血を撒き散らしながら暴走するエンジン。
その姿を見た瞬間、飯田の精神は、物理的な暴力とは比較にならないほどの強烈な戦慄と絶望に打ちのめされた。
(……あれは、僕だ)
あの保須市の夜。
ヒーローとしての本分を忘れ、兄を傷つけたステインへの復讐心だけで走り出した、あの時の自分。怒りと憎悪に任せて敵を殺そうとした、泥のように黒い『殺意』そのもの。
それが、この怪物の正体だった。
飯田は、雄英で正しくあろうと努めてきた。委員長として皆を導き、立派なヒーローになるために、あの夜の過ちを深く反省し、蓋をしてきたつもりだった。
しかし、消えてなどいなかったのだ。
自分の心の奥底には、あんなにも醜く、暴力的で、どす黒い殺意が、未だにヘドロのようにこびりついている。どれだけ正しい言葉を並べようと、自分の中に「人殺しの怪物」が棲んでいるという残酷な事実は、永遠に消え去ることはない。
自身の決して消えない『業』を目の当たりにし、飯田の足は完全にすくんでしまった。
ガガガガガッ!!
両脚のエンジンから爆発的な黒煙を吹き出し、殺意の怪物が一直線に飯田へと突進してくる。
見境なく振り上げられた巨大な刀が、飯田の頭上から無慈悲に振り下ろされようとしていた。
結:止まった時計と、泥臭い一歩
頭上から迫る、巨大な欠けた刃。
吹き荒れる黒煙と、噎せ返るような血の匂い。
圧倒的な暴力と死の気配を前にして、飯田天哉の心は、不思議なほどに澄み切っていた。
怖いとは思わなかった。
ただ、ひどく悲しくて、情けなかったのだ。
怒りと憎悪に身を任せ、理性を捨てて暴走するあの異形は、他ならぬ自分自身の姿なのだから。
(……あの日からずっと、僕は自分を許せなかった)
完璧な兄のようにならなければと、秒針の音に急かされるように焦り続けていた。
己の内に潜む黒い汚点を必死に隠し、正しい委員長として、正しい弟として振る舞おうとしてきた。だが、隠そうとすればするほど、過去の罪悪感は裏世界で肥大化し、こうして首を絞めに来る。
飯田は、ゆっくりと両腕を下ろした。
迫り来る過去の己の『殺意』に対して、防御の姿勢すら捨て去り、完全に無防備な姿で真っ直ぐに見据える。
「……僕は、完璧で立派な『インゲニウム』にはなれない」
その言葉は、サイレンとエンジンの轟音が響く狂気の工場において、ひどく静かに、だが確かな輪郭を持って響き渡った。
ピタリ、と。
飯田の脳天を唐竹割りにしようとしていた巨大な刃が、脳髄に響いていた時計の音と同じように、不自然に空中で停止する。
「あの夜、君という殺意に身を委ねた過ちも、ステインに向けたどす黒い憎悪も……一生、僕の心から消え去ることはないだろう」
飯田は、異形の脚で暴走を続けるエンジン――その痛々しいまでの熱と黒煙を、真っ向から受け止めた。
己の不完全さと、決して消えない罪の肯定。
それは、彼が保須市の事件以来、ずっと目を背け続けてきた「真実の告白」だった。
「それでも!!」
飯田は、腹の底から声を張り上げた。
冷たい眼鏡の奥の瞳に、確かな熱と決意の炎が宿る。
「僕は僕の足で、泥臭く! 何度転ぼうとも、何度己の弱さに絶望しようとも……正しいヒーローを目指して走り続ける!!」
それは、兄の模倣からの決別。
綺麗で完璧なヒーロー像を捨て去り、不完全な己の業を「背負って進むべき戒め」として抱え込む、一人の男としての宣誓だった。
『……ッ、ア……!』
異形の口から漏れたのは、怒りの咆哮ではなく、憑き物が落ちたような微かな吐息だった。
次の瞬間、怪物の両脚に埋め込まれていた無骨なエンジンが、限界を超えたように甲高い異音を立て、真っ赤に焼き切れた。
バチバチと火花が散り、吹き出していた黒煙と血のノイズが、ボロボロと黒い灰へと変容していく。飯田を殺そうとしていた錆びた巨大な刀も、怪物の身体も、自らの役目を終えたかのように、音もなく崩れ落ちていった。
チク、タク……。
飯田の精神を苛み続けていた強迫観念の時計の音が、完全に沈黙した。
同時に、重苦しい工場の暗い天井に、ピシリと巨大な亀裂が走った。
剥がれ落ちた鉄板の隙間から、眩いほどの光が差し込んでくる。血とオイルの匂いに満ちていた裏世界が崩壊し、静かで、どこか冷たくも清々しい、夜明けの空気が流れ込んできた。
『――シミュレーション・クリア。全プログラムを終了します』
夜明けの光のただ中で、飯田は目を閉じた。
脚のふくらはぎを塞いでいた重い枷は消え失せ、いつでも、どこへでも真っ直ぐに走り出せる、確かな大地の感触だけが残されていた。
*
シューッ……。
密閉を解く低い排気音が、現実世界のコントロールルームに響き渡った。
ゆっくりとポッドのハッチが開き、飯田天哉が身を起こす。
汗はかいていたが、緑谷のような荒い呼吸も、麗日のような涙もない。彼はただ、ポッドの縁に両手をつき、一つだけ深く、静かに息を吐き出した。
「飯田君! 大丈夫……?」
緑谷と麗日が駆け寄るよりも早く、飯田は自らの両脚でしっかりと床を踏みしめ、ポッドの外へと立ち上がった。
そして、心配そうに見守っていたクラスメイトたち、そして相澤消太に向けて、深く、角度の整ったお辞儀をする。
「ご心配をおかけした! 結論から言うと、極めて有意義な訓練だった!」
顔を上げた飯田の表情には、以前のような「焦り」や「強迫観念」に囚われた硬さはなかった。
そこにあるのは、自らの足元(泥)をしっかりと見据え、それでも前へ進もうとする、地に足の着いた揺るぎない安堵と決意だった。
「……フン」
腕を組んでモニターを見ていた相澤が、微かに口角を上げ、鼻を鳴らす。
「自分の業を背負う覚悟はできたようだな、委員長」
「はい! 相澤先生!」
迷いのない、一直線に伸びる声が、訓練室の空気を明るく震わせた。