ホモ、現代ファンタジー世界にTS転生したので異性愛者です   作:稲光結音

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01ホモ、TSして美少女になる

 この世界は、不思議だ。最初は普通に地球なんだと思ってた。

 けど実際は魔法とかダンジョンがあって。

 そこで生計を立てる人々がいる。命がけの仕事だ。

 科学と魔法の二重構造で発展した世界は不景気とは無縁で、命はちょっと軽いけど人類は楽しく暮らしている。

 なにより不思議なのが……

 

「茨城小学校出身、守谷乙子です。ボクは自認男なので男友達だと思って気軽に接してください。よろしくね」

 

 男だったボクが、TS転生して女になった事。

 これには大歓喜。

 なんたって前世では上手く隠してたが、性癖はバイ。まあ大体女も好きだしホモもいけるくらいだと思っていい。

 あの頃のボクは昔から父親がいなくて、父性に飢えていたんだと思う。

 今度の人生ではお父さんがいるのでめっちゃ甘えてる。でも、それはそれとして男が好きなのは変わらない。まあ今世では女子だから当然なのかも。それとも三つ子の魂百までか。

 

「男……? あんなに可愛くて?」

「ばっかおめー、あくまで自認。自分がそうだと思ってるだけだよ。普通に女」

「なんで?」

 

 ボクの自己紹介にざわつく周囲。

 背が低くて、胸は歳の割には大きい。髪型はショートカットにしている。それでいて超絶美少女。

 自分で言うのもなんだけど、そんな目を惹く女の子がそんな事言ったら驚くよね。でもボクは自分を曲げられなかった。

 両親も困らせたけど、それでもなおボクは男なんだという意識で中学一年生となる今まで生活してきた。

 

「はい静かにー。守谷は性同一性障害と診断されているそうだ。本人も言ってる通り、男として接してやってくれ。じゃあ次の自己紹介。与謝野ー」

 

 先生の注意は効果があったのかなかったのか。珍しいものを見る目で見られている事を自覚しながら、クラスの自己紹介は終わった。チャイムが鳴ると、先生は言う。

 

「んじゃ次、適性検査があるからなー。トイレ行きたいやつは今のうちにいっとけよ」

 

 身体測定の言い間違いではない。この世界では中学生からダンジョンに潜る際の適正を調べてくれる。

 これが終わるとダンジョンに潜る許可証が貰えるのだ。

 とはいえ最初は命の危険の少ない本当に低級のダンジョンだけしか許可は出ないが、それでも危険な事に変わりはない。

 中学生のうちにダンジョンに潜る許可なんて貰ったら、そして適性検査による能力覚醒なんてした日には多感な学生はその日のうちにダンジョンに突入するだろう。

 実際、今この休み時間では男子達が学校終わったらダンジョン行こうぜなんて話をしている。

 

「で? 結局適性検査って何やるんだ?」

「ばっかおめー、下調べが足りないぜ。特別な水晶球に触れるとそいつが就ける職業の一覧が出る。その職業の中でもF~S、SS、SSSがあってそして最高のEXランク。これらが個人差によって決まってくる。あとは好きな職業を選ぶだけ。もちろんランクが高い方が強いんだが、どうしても攻撃魔法が使いたいっていうならランクが低くても魔法使いになるやつもいるのかもなあ」

「へー、その選択ってやり直したりとかは?」

「無理だな。一生モノだから真剣に選ぶべきだ」

 

 うへぇ、という顔をする少年と、ばっかおめーが口癖の少年の会話に口を挟む。後者とは小学校の頃からの友達だ。

 

「やあ、白部くん。相変わらず人に物を教えるのが好きだね」

「も、守屋さん!?」

「キミは須藤くんだっけ? これからよろしくね」

「お、おう! うん!」

「ばっかおめー、なに照れてんだ」

「照れてないわい!」

 

 うへへ、美少女なボクを女として意識してる男の子可愛いね。

 

「……守谷。あんまりお前に慣れてないやつを誘惑するのはやめろよ」

「何言ってるのかわかんなーい。なにかあったとしても男同士のボディタッチってやつだよ。こんな風にね」

 

 そう言って白部くんに横から抱き着く。大きな胸は男の腕に押し付けられ、形を歪ませる。

 石化した彼はしばらくするとすーっと深呼吸をしてボクを睨んだ。

 

「お前に慣れてるやつなら誘惑していいって話じゃない」

「だからボディタッチだって」

「ばっかおめー、いつも言ってるが男は男に抱き着かないんだよこのホモ野郎」

 

 そんな会話を繰り広げていると、それを見ていた須藤くんが口を開いた。

 

「いつも……? いつもそんな事をしてるのか? 二人は付き合ってらっしゃる?」

「ばっかおめー、守谷は誰に対してもこんなもんだ。抱き着いて欲しけりゃお願いすれば大体抱き着いてくるし、お願いなんてしなくても抱き着いてくる」

「まじか。お、おれもお願いしても?」

「いいよー」

 

 美少女に生まれたからには男にサービスするべきだ。男だった時は嫌がられただろうけど今なら相手も嬉しいし俺も男に触れてウィンウィンだね。

 そんな訳で彼にもハグ。

 

「お、おお……」

 

 言葉もない、そんな様子の彼が正気に戻ると一言。

 

「ありがとうございます!」

「いいよー、あ、そろそろ時間だから席につくね」

 

 チャイムが鳴り、担任の教師が戻ってくる。

 

「トイレは行ったかー? んじゃ体育館に移動するぞー」

 

 クラスのテンションは爆上がりだ。なにせ職業に就くというのは一人前……とは言わないが、それに近い証である。二分の一成人式といったところか。

 

「気持ちは分かるが私語は慎めなー」

 

 移動するボク達は周囲と雑談しながら移動をしていると、担任から注意が入った。

 といっても本気の注意ではないゆるいものだ。先生が言っているように先生の頃もこんな感じだったのだろう。

 そりゃ職業に就いて、身体能力や魔法の力が覚醒するのだから楽しみってもので。

 しかし、なぜ中学一年生なんていう早い段階でそんな力を与えてしまうのか。それは自衛のため。

 ダンジョンというのは魔物ひしめく魔窟。そこから採れる素材は社会、経済を回す。

 だけならいいのだが、稀にダンジョンから魔物が出てくる事がある。そういう時に探索者――ダンジョン素材を集める人達が処理してくれるのだが、絶対ではない。

 もし新しいダンジョンが学校の付近に発生したら? そこで凶悪な魔物が地上に飛び出して来たら?

 勿論、先生達だって職業に就いている。だから生徒であるボク達を守ってくれるはずだ。

 でも逃げるにしても最低限の自衛の力は必要である、という考え方。

 だからといって小学生までに強力な力を渡すのは危険である。最低限の善悪、そしてどんな職業が自分にとって最適と考えられるか。そんな判断力を持つまで育てられたのがこのファンタジーな地球にある日本という国の中学生という事だ。

 などというおさらいをしていると、体育館についた。

 

「よーし、名前の順に並べー。当然悩むと思うが、どうしても悩んで悩んで選べないやつは後でギルドで個人的に受付してもらえよー」

 

 うちの中学校の一年生は三クラス。だいたい九十人の生徒がいるように見える。

 ちなみにギルドっていうのはダンジョンに対する前線基地とでもいうのだろうか。依頼とか、素材の買取なんかをしてもらえる。

 職業選択の水晶球なんかも普段はここに保管されているのだが、この時期になるとそれぞれの学校に貸し出される。

 体育館入口から向かって三方向にそれぞれのクラスにそれぞれ水晶が十個割り当てられているのだけれど。

 それでまあ、名前の順ということはモリヤオトコであるボクは最後の方になるわけで……

 

「剣士Dが一番高いのかよ……嘘……俺、才能無さ過ぎ……」

「運び屋C! 大事なのは分かるけど地味よね。でも安全ではあるのかしら」

「レアクラスの教師が選択肢にある! ランクは低いけど。悩むー」

 

 楽しそうに悩む少年少女達を見て、早く自分の番にならないかとやきもきするのだった。

 

「ねえ、守谷さん?」

 

 そんなボクに声をかけてきたのは三つ編み眼鏡の同級生。渡辺さん。

 

「なに?」

「さっきクラスで男の子に抱き着いてましたよね? しかも二人に」

「うん」

 

 ずれていた様には見えなかったが、とにかく眼鏡のずれを直すと彼女は赤面しながらボクに告げる。

 

「風紀が乱れるのでよくないと思うんですよね女の子が男の子に抱き着くのって」

 

 早口で告げられるそれは、なるほど正論である。しかし。

 

「んー、でもボクは男だし」

 

 くいくいっと二度、眼鏡のフレームをいじると太陽光の反射でレンズが光ったように見える。

 

「それっておかしくないですか? 自分の事を男だと思ってるなら、これ幸いと女の子をターゲットにすると思うんです」

「んー、ボクは男が好きな男だからねえ。女の子も嫌いじゃないけど」

「それは、一周回って貴女は普通に女の子なのでは?」

 

 そう言われてもねえ。こっちは今の生活より長く男やってた訳で。

 

「好きな相手の性別がどっちかでボクの性別って決められるの?」

「いえ、そういうわけでは……というか、身体は女の子な訳で、性別ってそうやって決められるものじゃないですか」

「うん、それは分かる。でもボクは自分が男だと思ってるから」

 

 あー、これは平行線だなあ。などと思っていると、職業選択の水晶を使う順番が来た。

 

「じゃあボク、職業決めてくるから。それじゃ」

「あ、はい」

 

 周囲には職業が決まって高まった身体能力を確かめるように跳躍を繰り返す生徒や、出力をミスって魔法を思い切り出してしまった生徒なんかが視界の横を掠める。なるほどだから教室でやらずに体育館に集められたんだなあと納得するなど。

 で、ボクが水晶に触れると目の前にウィンドウが広がる。そこに選択肢は無かった。

 

【魔導司書 EX】

 

 ただその一文だけがあった。

 世界がボクにこの職業に就けと囁いている、という訳か。

 学校の授業でも聞いたことも無い職業だけど一体どんな職なのか。でも最高ランクのEXだしいいかあ、という気持ちもあって、その一文に触れる。

 すると、空中に浮かんでいたウインドウが形を変えて、一枚のカードになる。

 これがダンジョン許可証の最低レベルのものか。

 そして水晶からボクに青い粉のような光が流れ込んでくる。これが力の源……。

 光が収まると、『理解』した。ボクに与えられたのは高い身体能力でもなく、分かりやすい魔法の力でもない。

 ただ一冊の本。『魔導天書“ライブラリ”』が与えられたのだと。

 用も済んだので水晶から離れて、何もない空間からその本を取り出す。一種の召喚魔法だ。

 ページを捲っていくと、なるほどこれはEXランクの力だと納得がいく。

 だが大器晩成の力だ。

 今出来るのは魔導天書の召喚と送還。つまり出して戻す事。

 そして魔導天書に魔力を込める事。これだけだ。

 魔物と戦うすべは、今のボクには無かった。これでは身を守る事もできない。

 なんなら、悪意ある職業持ちの人間相手でもまともな反撃手段はない。

 

「おーい守谷。学校終わったらみんなでダンジョン行こうって話だったんだけどお前はどうする?」

 

 白部くんがそう言って誘ってくれる。

 足手まといの、ただ可愛いだけのボクはしかし。

 

「うん、行くよ」

 

 それでも、何の遠慮もなくその誘いを受け入れた。

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