ホモ、現代ファンタジー世界にTS転生したので異性愛者です   作:稲光結音

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04ホモ、父親は偉い人

 ボクは目の前の男との会話を切り上げてページを捲っていく。すると、一つのページのスキルツリーの最初だけが輝きを放っている。

 その力は。

 でも……

 

「須藤くん」

「ん? なんだ」

「もう体力大丈夫? 魔力は残ってる?」

「おう、どっちも大丈夫。特に魔力はほとんど残ってる。前衛だから身体強化くらいにしか使わないからな」

 

 困惑した様子を見せるのは謎の糸目の男だ。

 

「あの、ですね。その学生服からして今日職業を得たばかりの子達でしょう? さすがにそれで二階層は厳しいですよっていうのを伝えるのも私の役目でしてね」

「あ、これで駄目だったら諦めまーす」

 

 それならいいですけど……と渋々と言った様子で引き下がる糸目の男。

 

「朗報でーす、ボク新しいスキルを覚えましたー!」

「おおー!」

 

 上がる歓声。おめでとうという祝福の言葉。

 

「ただし、本に魔力を注ぎすぎて今すぐは使えません!」

「ああー……」

 

 一転、落胆の声。しかし。

 

「なので、須藤くんにスキルを貸し出します! それでイージースライムを倒してください!」

「まじか! 任せとけ!」

 

 腕を捲り上げ、やってみせるぜと言わんばかりのポーズを見せる彼に向けて、開いた本を突き出した。

 

「魔導天書ライブラリ――銀のページ第一章、ナイフ生成レベル1を彼の者に貸し出せ。ボクは魔導司書、理を本に写す者」

 

 開かれた本から小さな本が浮かび上がり、須藤くんの胸の中へと吸い込まれるように入っていく。

 彼はゆっくりとその利き手から鉄のナイフを一本生成すると、凍って硬さを増したイージースライムへと振り向き、一閃。

 あっという間に倒して見せた。

 

 上がる歓声と、驚きの声。

 前者は我々中学生組、後者は糸目の成人男性だ。

 

「そんな、ありえない。入学式を終えたばかりの中学生が二階層のイージースライムを倒してみせるなんて」

 

 敵を倒して得られた魔力がボク達五人に入ってくる。なるほど、この量はただ空気吸ってるのとは比べ物にならないほどの量だ。そりゃ皆空気だけ吸いに二階層に来ない訳だね。

 

「そこのナイフ使いの君! 職業とランクは!?」

「剣士っす。ランクはD」

「まさか、そんなはずは! あんな一撃はただのランクD剣士が放てるものではないですよ! それじゃあそのナイフに秘密が?」

「あるかもしれないっす。でもよく分かんないんで。俺のスキルじゃないし」

「そういえばスキルを貸し出すとかなんとかさっきの少女が……」

「ちょっと待った」

 

 須藤くんと糸目の男の間に入る白部くんは、半目で須藤くんを見ていた。

 

「お前……本当に剣士か? よーく思い出してみろ」

「ん? いや剣士だよ。剣使いってジョブだから剣士って事だろ?」

「ばっかおめー! 剣使いってのは所持してる刀剣類の質に応じてその性能を上昇させるレアジョブだ! なに雑に括ってるんだ!」

「えっ! 俺レア職業なのか!? やったー!」

 

 すごく嬉しそう。あと、だから木製の剣では力が出なくて鉄製のナイフだと一気に力が増したのか。よかった、これで解決だね。

 

「よかったですね。それはそうとしてそのナイフも見せてほしいのですが」

「ちょっと待ってください。知らない大人をそこまで信用するわけにはいかないので俺達はこの辺で」

 

 うーん、白部くんは警戒心が強いなあ。焦ってるよ男の人。

 

「まあまあまあ、名乗らなかった事は謝罪します。私は忍野。Aランクの忍者です。所属ギルドは茨城騎士団」

「えっ、あの茨城騎士団か!? 茨城の上位ダンジョンからダンジョン災害が起こらないように守ってくれるあの!?」

 

 なんと、いつも無知でばっかおめーと白部くんに言われてる須藤くんでさえ知っている。

 そのくらい有名なのだ。

 

「そうですよー、なのでご安心ください。私はここで職業に就いたばかりの少年少女を一階層に追い返す仕事もそうですが、スカウトも兼ねています。君達のようなよっぽど才のある卵達なら、ね」

 

 そういってウインクをする忍野さん。いや待て糸目がウインクって今どうやったの!? もういっかい! もういっかい!

 その違和感に気付いた者がいなかったのか、それともあえてスルーしたのか。誰にもそれには触れないのでボクも気にしなかったことにして、白部くんが話を進める。

 

「守谷、君のお父さんに連絡を取ってくれ。俺達もそうだが、君は特に親御さんの許可がいる」

「そうだね。聞いてみる」

 

 そう言ってパパにスマホで電話をかけた。

 

「はあ、彼女は守谷さんと言うのですねえ。……守谷?」

「あ、もしもしパパー?」

『おー、どうした乙子ー? 無事職業は決まったのかい』

 

 でれでれとした声がボクの耳に伝わる。パパはボクに甘いからねえ。ボクも甘えてるんだけど。

 

「うん、それで今帰りに磯浜最下級ダンジョンに寄ってるんだけどー」

『ダンジョンに!? 怪我はないか!?』

「あははー、イージースライムと戦っただけ。全く心配ないよ――ただ、今二階層で茨城騎士団に入らないかっていう風に忍野さんからスカウト受けててー」

 

 電話越しからも感じる圧力。うーん、流石だなあ。

 

『二分待て、そっちに行く』

「うん、よろしくー」

 

 といったところで電話を切った。そして皆に伝える。

 

「パパ、もうすぐこっち来るって」

 

 冷や汗をかいているのは糸目の男、忍野さんだ。

 

「あの、守谷さん? その苗字もしかして……」

 

 彼が不安要素を言い切るより先に、パパが到着した。すごいね、二分どころか一分も経ってないんじゃない?

 

「おーとーこー!!!」

 

 そう叫びながらとんでもない高速で思い切り僕にタックルするように抱き着く男。

 そのまま流れるようにボクの頬にキスがされる。

 

「きゃ~っ」

「可愛い乙子! パパが来たからにはもう大丈夫だ! 何の心配もいらないよ!」

 

 ちゅっちゅっと繰り返されるキスに、こちらも親愛の情を返す。

 

「ありがとーパパ。大好き。ちゅっちゅっ」

 

 テンションの上がるパパ、そしてボク。

 

「乙子ー!」

「パパー!」

 

 ただテンションが高いのはボク達だけで、周りは引いていた。

 慣れているのはボクら家族のスキンシップを知っている白部くんだけだ。

 

「な、何してるんですか……?」

 

 潔癖症気味の渡辺さんが一番ドン引きしているようだ。もう反抗期なのかな? 父親とこういう接し方はしないのかもしれない。

 

「竜星さん……あなたがこの少女の父親だったのですか」

 

 忍野さんの一言に、ボクを抱きしめたまま頷いた。

 

「ああ、オレの可愛い一人娘だ。白部くんは久しぶり、乙子には必要以上に近づくなよ。それ以外の連中は初めましてか。乙子には必要以上に近づくなよ。女の子もだ。うちの乙子は繊細なんだ」

 

 いや、図太いですけどね。なんせ元男だから。

 

「それはそれとして、自己紹介はしておこうか。茨城騎士団の団長、守谷竜星。職業は竜騎士、ランクはSS。いいか、乙子に近づくやつは……こうだ」

 

 そう言って、ダンジョンの空に向けて、口から炎のドラゴンブレスを放つ。竜と共に生き、竜の力を放つ。それが竜騎士。

 ちなみにSSランクは国内数人レベルの希少ランクだ。これがSSSともなると世界数人レベルになる。

 EX? 歴史に数人だよ。ボクすごいでしょ。

 で、須藤くんが震えている。なぜかってボクとハグをするくらいの接触をしているから。かわいいね。

 ああ、いい思いしたーと思ってた男の子がパパに脅されて震える様子は可愛いなあ。これでまたハグしたらどうなるんだろ。楽しみだ。

 

「まあ、それは置いておいてくださいよ。守谷のお父さん」

「はっはっは、白部くんは冷静だなあ。その冷静さで乙子と距離を取ってくれればよかったんだけどなあ」

「まあまあ、それより忍野さんの話ですよ。今、俺達は茨城騎士団にスカウトされてるんです。守谷も」

 

 ボクを横に抱きながら、パパは大きく両手でバツの字を書いた。

 

「反対! 却下だ! 探索者の仕事がどれだけ危険かはオレが一番知っている! 乙子を魔物狩りに付き合わせる訳にはいかん!」

「でも、娘さんと一緒の職場になれますよ?」

「むむっ」

 

 流石に同じギルドだけあって、親馬鹿は知られてるか。というか今の様子見れば分かるか。

 ちなみにギルドってのは同じ目的を共有した探索者の集団の事だ。お金を稼ぎたいとか、強くなりたいだとか。

 で、茨城騎士団はとにかく人々を守るために活動している。特にダンジョンから魔物が出てくるような事態を防ぐ為に日々その力を振るっているのだ。

 

「それでですね守谷のお父さん。守谷のやつはとんでもない珍しいクラスになっちゃいまして。力をつけないとむしろ危ないんです」

「ほほぅ、白部くん君でも知らないとは珍しい」

「お恥ずかしい限りです」

「乙子~どんな職業になったんだ? パパに教えてくれるかい」

 

 ボクはにっこにこでパパにピースサインを出した。

 

「魔導司書。EXランクだよ!」

「うーん、知らんな! だがEXか! さすがオレの娘! 天才だ!」

 

 そう言うと抱き上げて高い高いを始める。

 扱いが幼児! でもそういうところも好き!

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