ホモ、現代ファンタジー世界にTS転生したので異性愛者です 作:稲光結音
男子生徒達がボクでお楽しみした事実でボクも楽しみながら、着替えの時間を終えた。
当然、これは男同士の秘密だ。
だから多目的教室から出たら誰も公言しない。第二回をみんな楽しみにしてるからね。
おそらく女子もそこまでやってるとは思わないんじゃないかなあ。
さて、グラウンドに出ると二人の大人が並んでいて、ボク達を整列させた。
そして男子と女子が合流する。
「よーし集まったな。俺は剛力。武闘家の体育教師だ。こっちは国営探索者ギルドの召喚士、神田翔子さん」
筋肉質な男が、細身の女性を紹介する。女性がお淑やかに一礼する。
「おそらくお前らは昨日ダンジョンに行った事だろう。そして、第一層でイージースライムを倒し、調子に乗って第二層まで行って打ちのめされたと思う」
頷く生徒達があまりにも多い。
それくらいが普通だという事なんだろうね、ボク達は例外。
「ただし、いつまでも反撃されないぬるま湯で戦っても成長は出来ないと先生は考えている。だからこちらの神田さんに力を貸してもらい、ゴブリンを召喚してもらうからそれと戦ってみろ。パーティは五人まで」
「先生! 武器はないんですか?」
「ないな。相手はイージースライムと同じ最下級ダンジョンのモンスター。お前らがイージースライムを倒せたなら問題なくやれるはずだ。さあ。パーティを組め」
そうしてそれぞれがメンバーを揃える中、ボク達は昨日の面子で揃っていた。
だが、渡辺さんがボクを見る目が冷たい。
「守谷さん、アナタ何やったんですか? 男子達のアナタを見る目があまりにも危険というか。風紀の乱れを感じます」
そう言われても本当の事を答えるつもりもなく。
「えへへ、ちょっとサービスしすぎちゃったかな?」
などと適当にぼかすのだった。
「まあ、いいじゃないか」
与謝野くんもそうフォローしてくれる。当然、彼もお楽しみした一人である。
「そ、それより! あのゴブリンなんとか倒さないとな!」
須藤くんもそうやって話題を逸らす。
「男子達と守谷さんは一体何をしてたんですか……」
ジト目でボク達を見る渡辺さんに、視線をただ逸らすのみ。
「渡辺さんは大丈夫なのか? 武器は当然だが防具もない。盾無しの盾士は大変だろう」
「白部くん。ええ、まあ私はおそらく大丈夫ですよ。職業に就いたのは勿論ですが、二層のイージースライム狩りでさらに頑丈になった感じがあります」
「攻撃してくる相手は初めてだ。盾士の渡辺さんの負担が増えると思うが、そういう事なら頑張ってもらいたい」
こういう状況での話題逸らしは流石に手慣れてる白部くんだ。小学校の時はお世話になった。これからもボクのホモ活動のために頑張ってもらおう。
代わりにボクも白部くんの白部くんをお世話するからね、ふふふ。
「準備はいいか!? さ、神田さん。召喚をお願いします」
「はい、ゴブリン召喚!」
魔法陣が地面に現れ、一体の小鬼……ボクら中学生より少し小さいくらいの緑色のモンスターが姿を現した。手には棍棒を持っている。
「相手は武器持ちかよ!?」
怯んだ様子を見せる生徒の一言に、剛力先生は一喝した。
「この程度の不利、根性でなんとかしてみせろ! さあ、我こそはというやつはいないか!」
「はい!」
手を上げたのは須藤くんだった。
「ほう、やれるんだな?」
「いけます! ――やろうぜ、守谷さん、白部、与謝野くん、渡辺さん」
ボク達は頷くと、一匹のゴブリンの前に陣取る。
「それじゃあ、はじめ!」
体育教師の号令と共に、召喚士が命じる。
「いきなさい、ゴブリン!」
それと同時に、須藤くんがボクに指示を出した。
「守谷さん! スキル貸してくれ!」
「おっけー! “貸出”!」
これで須藤くんは鉄のナイフを装備できる。武器の持ち込みのできないこのルールにおいて、あまりにも大きなアドバンテージ。
相手は木の棍棒、こっちは鉄のナイフ。向こうの方がリーチがあるとはいえ、頑丈さが違う。
そして、須藤くんは装備した刀剣類の性能に応じてその能力を上昇させる――
棍棒の根本をナイフで切りつける。そのまま後ろに周り、ナイフで背中を一裂き。
「げぎゃ!?」
と焦ったように一鳴きするゴブリンは自身を害する少年が後ろに通り抜けた事を理解して、後ろを向く。
そこに体当たりをかけたのはランクが高く、高い身体能力を持つ盾士の少女、渡辺さん。背中の傷に大ダメージだ。
「ぎゃああ!」
慌てて今度はさらに渡辺さんの方を向き、棍棒を振り下ろす。その一撃は確かに少女を捉えたが、棍棒が折れてしまった。
最初の交戦で行った、棍棒に切り付けた彼の一撃が功を奏したというわけだ。
あとは素手のゴブリンを倒すだけ。
与謝野くんはそもそも弓兵なのに弓はないし、斥候を必要とする場面でもないので当然だが、魔法使いの白部くんの力も必要無かった。圧倒的な勝利だ。
渡辺さんがゴブリンを身体能力で押さえつけている間にナイフがゴブリンを襲い、召喚された魔物はドロップ品に変わった。
そしてそれぞれに魔力も入ってくる。第二層イージースライムよりも魔力の量が多い。同じ最下級モンスターでも違いがあるんだなあと思うなどした。
「ほう、お前はやれる側の人間か」
そう言って、須藤くんを感心したように見る体育教師。
「よろしい! 次!」
ボク達は下がって、渡辺さんの様子を見る。棍棒で叩かれてたからね。
「大丈夫?」
「はい。まったく痛くなかったです」
そう言って眼鏡のズレを直す仕草を見せる。前衛職ってのは丈夫なんだなあ。
さて、問題なさそうなので他のパーティの戦闘を見る。
新しいゴブリンが召喚される。
前衛が殴り合いをして、後衛の魔法使いがトドメを刺す。そんな流れだ。それを見ていると白部くんが言うのだ。
「俺もああすべきなんだろうな」
何の仕事もせずに終わった白部くんがちょっと悔しそうに自分の右手を見つめる。
とある女子のパーティはもっと圧倒的だった。全員魔法職らしく、ゴブリンに近づかれるよりも早く、五人同時に魔法を放ち、一瞬にして魔物を消滅させていた。
逆に、男子五人のパーティで全員近接職という偏ったパーティは全員がかりでボコボコにしていたのだが……トドメが刺せていない。
どうしたものか、と見ていると先生は戦闘をやめさせた。
「そこまで!」
泥仕合と化したそれを、先生は一撃でゴブリンの頭を破裂させて戦闘を終了させた。
「今の戦い、問題があった。分かるな?」
腕を組む体育教師に、戦っていたクラスの男子が答えた。
「倒しきれませんでした」
「何故だと思う?」
「武器が無くて……」
そう言う彼に、しかし先生は首を横に振る。
「違う。殺す覚悟がなかったからだ。やろうと思えばゴブリンの首を絞めてもよかったはず。違うか?」
その言葉に、男子五人パーティは俯く。
「殴るのは出来る。戦いだからな。だが殺すという最後の一線は超え辛い。とくに素手ならそうだ。スライムなら大丈夫だろう。だが、ゴブリンのような人型に近い魔物を倒すのは抵抗があるものが多い」
なるほど、言われてみれば。
「前衛で魔物を殺すのは特にそうだ。やれたのは最初の一人だけだった。それ以外は全パーティが魔法で倒していた。これは武器が無いからじゃない。素手で相手の命を奪うという行為に関する忌避感からだ」
「でも、俺達だって武器があれば殺せます!」
「素手でも殺せるようになれ。いざという時、それが自身の命を守る分水嶺になる。今日の授業はここまで! 来てくださった神田さんに礼!」
ボク達は一斉に声をあげた。
「ありがとうございました!」
「いえいえ。面白かったですよ。みなさん頑張ってくださいね。最初に戦ってくれたパーティの方、前へ」
そう言われて、ボクらは前に出る。
「あなた達になら、これを渡してもいいでしょう。祝町最下級ダンジョン……つまりはゴブリンの出るダンジョン前にあるギルドへのワープストーンです」
そう言って、ボクら五人に小さな石が渡される。
「ぜひ、遊びに来てください。貴方達とまた会えるのを楽しみにしています」
しかしそれにいい顔をしない人がいた。剛力先生だ。
「む、神田さん。しかしゴブリン相手というのは……」
「大丈夫です。大丈夫ですよ。私の見る目は確かですから」
「うーむ。ああ、お前ら解散だ。次の授業に遅れるぞ」
そう言われて、ボク達は着替えに向かった。そこで須藤くんが言うのだ。
「ワープストーンってなんだ?」
渡された小石を眺めながら白部くんに聞いている。
「ばっかおめー、ワープストーンってのはギルド間を移動するアイテムだ。例えばイージースライムしか出ない磯浜最下級ダンジョン前ギルドでこれを使う事で他のギルドに一瞬でワープできる仕組みになってる。俺達は近くにある磯浜最下級ダンジョンまで足を運べば、これを使ってゴブリンの出る祝町最下級ダンジョンまで瞬間的に移動する事が出来るようになったわけだ」
「おお、便利だな。でも無くしそうだ」
「安心しろ。職業を決めた時にダンジョン許可証ができただろ? あれに吸い込ませてやればダンジョン許可証をかざす事でワープストーンは効果を発揮する」
「へー、本当に便利だなあ」
イージースライム殴りに飽きたらボク達はゴブリン狩りにいけるようになったという訳だ。
あ、そういえば。
「ねえ須藤くん」
「な、なんだ守谷さん! もしかして、また……」
おっと、サービスシーンを期待させてしまったか。でも目的はそれじゃない。
「ううん、そうじゃくて。スキル返してね。“返却”」
「ああっ、俺のスキル!」
だから君のじゃないっての。