ゲマトリア兼デカグラマトン所属、エンターと申します。以後お見知りおきを 作:エンター・■■■■
第三次特別学力試験戦
第1幕『始動』
「⋯⋯可哀想に、眠れないのですね」
「っ!? あ、あなたは⋯⋯!」
扉を蹴破りコツコツと足音を鳴らし、暗闇の廊下から常夜灯に照らされたのは浦和ハナコだった。
「どうしてあなたがここに⋯⋯!?」
疑問を送る形にはなっているものの、ナギサの脳内は至って冷静であり、概ねの察しは付いていた。
これはあくまでも時間稼ぎ、問答の合間にこの状況を切り抜ける最適解を探る方向へシフトしていた。
「それもそうですよね、正義実現委員会が殆ど側にいない状態⋯⋯不安にもなりますよね、ナギサさん?」
ニッコリと笑顔を浮かべるハナコ。だが、明らかに目は笑っていなかった。
「それはこのセーフハウスをどうやって知ったのか、という意味ですか?それはもちろん、全て把握しているからですよ。合計87個のセーフハウス、そしてそのローテーションまで⋯⋯ふふっ♡」
「なっ!?」
時間稼ぎの話題。それが想定以上の結果を編み出したが、それ以上にそれを把握しているという事実がナギサを襲う。ここを出ようにも屋根裏部屋。出ることは難しい。
まぁ、簡単に言えば詰みなのだ。
そして、次の瞬間には頭の後ろに銃口を突きつけられていた。
「動くな」
その声で瞬時に誰なのかを把握した。白洲アズサ、彼女が後ろに立っていたことは声で直ぐに分かった。想定通り⋯⋯とまでは行かないが、ナギサが警戒していた2人がそこにいた。
「白洲アズサさん、浦和ハナコさん⋯⋯あなた達が⋯!」
「えぇ、確かに裏切り者は2人ですよ?Mademoiselle?」
『!?』
その傍から聞こえた声、それにナギサ、アズサ、ハナコは瞬時に警戒する。この場には3人しかいないはずの場所に、1人の人がいたのだから。
「Ça va?トリニティの皆さん?」
それが、影から姿を現す。服装は⋯⋯明らかな怪盗とも呼べる姿だった。怪盗が如何にも使いそうな黒色のアイマスクに黒色のスーツ。警戒する対象としては十分なものだった。
「Bonjour、私は『怪盗・ブラックバスター』以後、お見知りおきを」
「!?」
「⋯⋯⋯」
裏切り者でもない第三者の襲撃。それを想定している人がいただろうか。
いや、少なくとも作戦立案者のハナコはもうとっくに分かっていただろう。想定外のことが起きるのは作戦でもあるある。即座に対策法を編み出していた。
が、その人の口から出たのはまた更に想定外の言葉だった。
「おや、メンバーも忘れたのですか?」
「! ⋯⋯⋯遅いですよ?遅刻です」
ハナコは、それを利用することにした。
可能性的には先程ナギサが私たちの名前を語っていたから分かったのだろうか、それとも元から調べたか⋯⋯だが、それを利用しない手はなかった。
「彼も私も下っ端の下っ端。私たちはただの駒にすぎません。指揮官は別にいます」
「それは、誰ですか⋯⋯!」
「その話の前にナギサさん⋯⋯ここまでする必要、ありましたか?」
トリニティの才女であるハナコ、高い戦闘能力を保有するアズサ。そして、謎の怪盗らしき人をを手中に収める恐るべき指揮官。
その存在を明かす前にハナコはナギサに問うた。
「最初から怪しかった私や、アズサちゃんは仕方ありません。ですが⋯⋯ヒフミちゃんとコハルちゃんに対しては、あんまりだと思いませんか?」
「特にヒフミちゃんは⋯⋯ナギサさんと、仲が良かったじゃないですか」
ヒフミとナギサはかなりの仲だった。それも、ナギサが直々にティーパーティーの一室に招き入れて語り合うほどには仲が良かった。平凡()なヒフミだからこそでもあるが。
「どうしてこんなことをしてしまったのですか?ヒフミちゃんがどれだけ傷ついてしまうのか、考えなかったのですか?」
「そ、れは⋯⋯」
ナギサも薄々は感じていた。罪悪感というもの、もう条約を結ぶために捨てたと思っていた感情。それが、彼女の胸をチクリと刺していた。だからこそ、彼女は非を認めた。
だが、
「⋯⋯そう、ですね。ヒフミさんには悪いことをしたかもしれません」
「ですが、後悔はしていません。全ては大義のため。確かに彼女との間柄だけは守れればと思っていたのですが⋯⋯」
全ては大義のため、犠牲になってくれ。それが彼女の決意。だが、ハナコから言われた言葉は⋯⋯想定内であり、想定外の言葉だった。
「では、改めて私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね」
「『あはは⋯⋯えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ』とのことです♡」
「なっ⋯⋯!?」
それは、予想もしたくない言葉。微かに信じていた希望が打ち砕かれた瞬間であった。その言葉に、ナギサの頭はフリーズした。
(ヒフミさんも裏切り者?じゃあ私に近づいたのは⋯⋯)
「そ、そんな⋯⋯!まさ、か⋯そんな!⋯⋯あふんっ」
高速で怪盗らしき人物がコードを使って首をトンとして意識を奪った。そして、腕から伸びるコードを使ってナギサを巻き付けて怪盗の方へ引き寄せ、腕で背負った。
「なっ!?」
それは瞬きした瞬間。ゲリラの達人であるアズサでも、それを捉えきれなかった。かなりの速さであったことは一目瞭然。すぐさま警戒した。
そして、ハナコは問う。
「⋯⋯さて、あなたは何者ですか?」
「そうですね⋯⋯」
「もう一度いいますが、学園を騒がす怪盗、ブラックバスター⋯⋯ですね。では、Adieu」
次の瞬間には、煙玉が爆発し屋根裏部屋が煙に包まれる。そして、煙が晴れた頃にはその人はいなかった。すぐさま辺りを隈無く探すと⋯⋯机の上に1枚のカードがあった。
それを見た2人は疑いつつも、顔を見合わせ頷いた。裏面を見れば、白紙。アズサはこんなこともあろうかと持っていたライターを取り出して、その紙を炙ると⋯⋯文字が浮かび上がった。
彼女たちは直ぐに暗号に気が付いたのだ。
そして、その文字を読み終えると、彼女たちはそうしなくても表に出てくればいいのに⋯⋯と思いながらもそれを懐にしまう。
「⋯⋯あの人も凄い人を持ってきましたね」
「本当の裏切り者か⋯⋯」
それから外に出て連絡をした。目標を確保して近くに隠したという嘘を。そして敵を誘導し別れるということを話し合ったあと、アズサがハナコに聞く。
「⋯⋯ところで、さっきのあの最後のセリフ、必要だった?」
「あぁ、あれはヒフミちゃんの頑張りの分、勝手な仕返しと言いますか⋯⋯ちょっとくらいはショックを受けてもらおうかと」
アズサはこれを聞いた後にハナコの顔を見れば、後ろに修羅が立っているような幻覚を見た。顔はニッコリとしているが目は完全に笑っていない。少しだけ恐怖していた。
「じゃあ一旦ここで、合流地点でまた会おう」
「では、また!」
そうして、作戦通りに進めていった。
《sideエンター》
「学園を騒がすRTAはーじーまるよー!」
という冗談はさておき、ブラックバスターこと私、エンターです。可能性的にあの2人なら私とセイアが制作した暗号には気づくでしょうから大丈夫でしょう。
今回の衣装については、過去に見た特命戦隊ゴーバスターズの『怪盗・ピンクバスター』と『快盗戦隊ルパンレンジャー』の服装を参考にしました。中々に楽しかったですね。
「ワープが出来ないから面倒くさいですが、まぁすぐ着きます」
トリックワイヤーなどを使って私は建物建物を移動していく。合流地点はトリニティ総合学園の近くの川。そしてそのまた近くの駐車場である。
「さて、着きました」
ワイヤーフックを外して華麗に着地する。着地の衝撃は無くしました。そうして、彼女の車に近づく。彼女⋯⋯もといセイア所有の車であり、黄色いオープンカー。
「来ましたよ」
「随分早かったじゃないか」
「えぇ、2人に抵抗させる前にカード渡して撤退しましたから」
それに私とナギサを乗せる。前座席には私とセイア。後部座席にはミネ、眠りのナギサ、そしてエスケイプの3人。そして、ミネはナギサをゆさゆさして起こす。
「起きてください。ナギサ様」
「ん⋯⋯ふわぁぁ⋯⋯へっ!?」
膝枕から起きて欠伸をすると同時に今の状況を瞬時に把握して顔が赤くなったりなんか色々と大忙しですね。そうして横と前を見れば、目を見開いた。
「蒼森ミネさんに⋯⋯セイア、さん⋯⋯?」
「お久しぶりと言うべきだね、ナギサ。確かに私は百合園セイアだ」
「同じくお久しぶりです。救護騎士団長、蒼森ミネです」
そして、後ろを振り向くセイア。その顔はまさにキリッとした表情である。してやったりみたいな顔をしているが、された人からすればたまったものではないということを覚えていてくださいね。
ナギサは涙目になりながらも問う。
「なん⋯⋯で、生きて⋯」
「生きてたら悪いかい?まぁ、それはおいおい話すとしよう。先に言っておけば、私たちは裏切り者ではないということだ」
「そちらの、方々は?」
そうして顔を交互に向けたのは私とエスケイプ。早速私たちは自己紹介する。
「セイアさんの協力者その1のエンターです」
「同じくその2のアリス・エスケイプです」
簡易的なものでも彼女には十分伝わったようだが、なんか別の雰囲気を感じる。まさか、疑心暗鬼加速させて私たちを裏切り者と勘違いしないですよね?
「成る程、そうですか⋯⋯あなた達が本当の、裏切り者の司令塔ですね」
⋯⋯フラグというものは偉大ですね。こんなにも考えたことがピッタリ当てはまるんですから。どうしましょう、私、フラグ建築士の資格取れるかもしれませんね。
「ふむ、どうしてそう思ったんだい?」
しかも、なんかセイアさんノリノリじゃないですか。最近何故かふざけるようになったと思ったら今度はこれですか。わんぱくFOXも大概にしてくださいね。本当に。
「⋯⋯最初から、妙だとは思っていたんです。今回の騒動、トリニティの内情を詳しく知らなければ出来ないことです。冷静に考えれば、疑うべき容疑者はどこかの組織の上層部。一般生徒は兎も角としてです」
「ふむ、成る程。トリニティの内情に詳しいのはトップ層の人物たち。必ずその者の中に司令塔がいるというわけか」
「そうなれば候補など少数です。しかも、私たちも知り得なかった『クリーナー』の存在。それを容認できるのはティーパーティーでも自由に動けるようになった者、つまりセイアさんしかいない訳です」
「ヒフミさんが司令塔を出来るとは思えません。より論理的な思考力を持っているセイアさん。貴方たちが本当の司令塔だと思ったんです」
そんなナギサの推理に、セイアは目を鋭くしながら振り向きナギサを見る。
ミネさんは手を頭にやっている。その顔から「何やってるんですかセイア様⋯⋯」という苦悩が読み取れることだろう。うん、私も思っていますから安心してください。
というか、凄いくらいすれ違ってますね。もうホントに面白いくらいにはすれ違ってます。エスケイプについてはもう笑いを堪えていますし。
数秒だけ、張り詰めたような沈黙が車の中を満たした。と言ってもオープンカーだからどっかに消えていくのですが。
「ふむ、成る程⋯⋯確かにその解釈はあながち間違いないね」
「⋯⋯ならっ!!」
「だが、全くの不正解だ。ナギサには『頑張って推理したで賞』を授与できるね」
「へ?」
「さて、こんな茶番はこのあたりで終いにするとして。話を始めようか」
というか、コントしてるんじゃありませんよ。セイアさんも面白がらないでください。まぁ確かに面白いですけど。面白いですけど!
そうして話したのはあの日⋯⋯アリウス襲撃の真実。
あの日の前日、夢に接続した私たちは会議した後に目を覚まして、トリニティのセイア専用ルーム。そこにワープして現実での邂逅を果たした。
そして、セイアさんと、事前に作ったコピーロイドを入れ替え、彼に血ノリを持たせた。アリウスが勘違いするように仕向けて。
そして、セイアとコピーロイドを通信で繋ぎ、来たアリウスの質問を本物のセイアが通信で答えれるようにした。その結果があの日の真実。
「まぁ、簡単に言えばアリウス分校を欺くためにわざと色々仕組んだわけだ。確かに裏切り者の線もあるかもしれないが、そんな事をするメリットが無い。意味が無いんだ、私がこのようなことをするのはね」
「というか、セイアさんを襲撃したのは『アリウス分校』なのですか!?」
「あぁ、そして今回の主犯はそのアリウスと協力しているミカだ」
「ミカ⋯⋯さんが?」
「あぁ、ミカがトリニティの本当の裏切り者⋯⋯と言いたいのだがね。今からそこに突撃しにいく」
「へ?」
そうすると、セイアは自身のオープンカーのエンジンをかける。そう、これはセイアの車。セイアが運転するのだ。それを察した瞬間、ナギサの顔が青褪めていく。
「ナギサさん、腹を括ってください」
「いや、まさか、そんな」
「ナギサ様、諦めてください。最近セイア様は元気なのです」
「肯定します」
「しかも丁度良い頃合い。諦めてくださいね」
「嗚呼⋯⋯嘘、ですよね?」
「さぁ」
「ひとっ走り付き合い給え!」
そうして、アクセル全開で車を走らせた。
なお、ナギサがマーライオンになったのは無理もないことだった。
特殊タグの怪文章についてはパソコン版の方は見えにくいかもしれませんが、ご了承くださぁぁぁい!!私にはどうにもできませんでしたぁ!!
因みに特殊タグ演出にアネモネ様の特殊タグを使わせて頂きました。
アネモネ様にこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。