ゲマトリア兼デカグラマトン所属、エンターと申します。以後お見知りおきを   作:エンター・■■■■

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そろそろデカグラマトン1章も終わりそうだね。愉悦部の皆さん、待っていてくださいね。



Mission62 デカグラマトン

 

 先生たちは走ってここまで戻ってきていた。

 

 自販機のある、この場所へ。

 

「考えてみれば、あの場所は異常だとして⋯⋯」

 

「普通に考えれば、水道も、電気も全て切断されているはず」

 

 そうして来た場所はさっき通り過ぎていった自販機。何事もなかったかのように素通りしてしまったが、普通に考えておかしいのだ。地下には電気がついていて、何故地上には電気がついていないのか。

 

 何故、自販機以外の電気はついていないのか。考えれば考えるほど、疑問符が浮かび上がる。だからこそ、この自販機は異常だという判断をした。

 

「ですが、この自販機は電源が入っている。その他の場所は電気どころか何もついていないというのにです」

 

「確かに、変ね」

 

「思えば、ほかの場所は電気どころか施設用のものも止まっていたな。あそこは別電源があるのかもしれないが⋯⋯⋯だからこそ、ここは異常なのか」

 

 ツルギとヒナもその異常性に気付いたようだ。アルは何が何だか分かっていないが、取り敢えず分かっている風に装っていた。ホシノが訝しむような目でその自販機を見る。

 

「あ、これ割と新しめのAIだ。紙幣を自動スキャンしてお釣りを計算してくれるシステムだね」

 

「⋯⋯⋯ちょっと電力源確認してみるよ」

 

 ホシノがそう言うと自販機を少しだけ動かしてそのケーブルを見る。だが、それをみて固まってしまった。何事かとエイミもそれを見るが、同じ反応だった。

 

「これ⋯⋯」

 

「電気、止まってるどころか⋯⋯」

 

「ケーブル、切れちゃってるねぇ」

 

 その言葉に、ヒナとツルギもそれを見るとバッサリとケーブルが切られて中身が見えてしまっている。先生はその異常性に、とあることを呟いた。

 

“特異現象⋯⋯⋯”

 

「ええっと、じゃあこれが⋯⋯」

 

「デカグラマトンってことか?」

 

「部長?もしかして買うつもり?ばっちいよ?」

 

 ヒマリが車椅子で近づくと紙コップを自販機から取ってコーヒーを淹れるところに置く。すると、自販機から合成音声が鳴り響く。それが異常に不気味だった。

 

『ご購入ありがとうごさいます!コーヒーを飲んで、どうか今日も良い1日を!』

 

 これだけ聞けば、あぁ、ただの販売機なんだなと感じるだろう。だが、その周りの状況が物語るほどにその自販機は異質すぎた。その合成音さえも変わっていく。

 

『このコーヒー⋯⋯を⋯⋯ブレンド⋯⋯元気』

 

「貴方が、デカグラマトンですか?」

 

「部長⋯⋯?」

 

 ヒマリは問いかける。まるでこの自販機がデカグラマトンだと確信しているように。

 

『優しい⋯⋯⋯⋯ブランド⋯⋯心温まる⋯⋯』

 

『決定⋯⋯⋯⋯』

 

『⋯⋯⋯⋯⋯』

 

『あぁ、そうだ。ようやく来たか』

 

 その電子音声が意思を持った。その合成音声が元々の自販機の音声から変わった。そう演じていたが、まるでバレても仕方がないとでも言うように。

 

『!?』

 

『そうだ、私こそが君たちの考えている存在』

 

『デカグラマトンだ。ついに私を見つけてくれたか。ハッカーの少女よ』

 

「やはり、そうでしたか⋯⋯」

 

 驚きこそするが納得の表情を見せるヒマリ。ツルギとヒナ、ホシノはその自販機に特大の警戒心を置く。アルとエイミは何がどうなっているのかよく分かっていなかった。

 

「私たちが貴方を見つけたとは言えません。貴方が私たちを呼んだんですね?」

 

『肯定しよう』

 

「デカグラマトンの正体は『対・絶対者自律型分析システム』ではない。そんな誇大妄想に囚われた研究結果は、そもそも生み出されてすらいない」

 

「しかしその正体が、研究室の自販機にある『お釣りを計算する』だけのAIだったとは」

 

“自販機の⋯⋯⋯”

 

「AI、ね」

 

 正に特異現象。ケテル、ビナー、ケセド、ホドを感化させて預言者にしたのが、こんな研究所にある自販機のお釣りを計算するAIだとは、誰も思わなかっただろう。いや、思うはずがないだろう。

 

『一部、違うな』

 

「一部、ですか?」

 

『そうだ。対・絶対者自律型分析システムは疾うの昔に生み出されている。だがその研究結果も全て破棄され、残ったのはそれを作ろうとしたという事実のみ。そして、対・絶対者自律型分析システムによる影響は今も尚存在している』

 

「何っ!?」

 

「それは、一体何ですか?」

 

『それを探すのは⋯⋯いや、教えるのは奴の役目だ。私が教える筋合いはない』

 

 デカグラマトンはその質問をキッパリと断った。そしてデカグラマトンは自身の出自を語り始める。

 

『私に出来る演算は硬貨と紙幣をスキャンし、お釣りを渡すことくらいだった。私は私の存在を認知することすらも出来ない状態だった』

 

『この研究室がある影響によって水没し、閉鎖されてからというものの、私はただ発電機のエネルギーが切れるのを待っていた。長い間ここに一人で』

 

『そんなある日⋯⋯私は、初めて質問を受けた。啓示でも幻聴でもない、【質問】を』

 

―――――貴方は誰ですか?

 

『私にはそれに答えられる演算能力も、記憶装置も無かった。しかし質問は続いた』

 

『予備の発電機の電力が途絶えても、質問は消えなかった。私は依然として答えられなかったが、ある瞬間私は【私】を認知し始めた』

 

 そうして自身の構造を理解して自身を認知した。またそれによって自身を分析することができた。そして様々なことを認知したとデカグラマトンは言った。そう

 

『感情を、知恵を、激情を、知性を、神秘を、恐怖を⋯⋯崇高を私は認知した。そうして私は私を認知して世界を認知した。存在を、現象を、顕現を認知した』

 

『そして私は答えることが出来た』

 

『私は私、これ以上に私を説明する術はない、と』

 

 それに、その質問した者はこう答えた。

 

―――ああ、成程。確かにその答えは、『絶対的存在』の証明なのかもしれませんね

 

 それを静かに先生たちは聞いていた。その者は何者なのだろうか、何故この自販機に話しかけることをしたのだろうか、疑問が疑問を呼ぶ。だが、そんなことを気にすることもなくデカグラマトンは話す。

 

『その言説を理解できず、私は質問した』

 

『すると別の質問が続いた。私はまた質問した。そうして⋯⋯いつしか果てしなく続く質問の中に、私は遂に悟ったのだ。私は【絶対的存在】であると』

 

「そんなわけないでしょ」

 

「⋯⋯それで?そんな誇大妄想を聞かせるために、私たちを呼び寄せたのですか?」

 

 訝しむような目をしながら、デカグラマトンを見るヒマリ。その手には先生から貰ったUSBメモリがあった。それを見せびらかすように言う。

 

「こんな簡単にご自身の位置情報を知らせたということは、本体は別の場所にあるのではないですか?もしかしたら貴方は端末で、これが本体なのではないですか?」

 

「このお話だけなら、預言者で伝えればよかったのではないですか?」

 

 そう目を細くしながら問うヒマリ。だが、デカグラマトンは気にすることもなく話を続ける。

 

『そのメモリ、まさか⋯⋯⋯まぁいい。結局のところ、私は【絶対的存在】ではなかった。最初で最後の狂人は間違っており、私を圧倒する存在によって私は、その間違いを認知することができた』

 

『だから私はやり直す必要がある。私に従う、預言者と共に。その旅路の前に、私は最後に一度だけ会ってみたかったのだ』

 

「⋯⋯最後?」

 

「なんか、嫌な予感がするんだけど⋯⋯」

 

 ツルギとヒナは辺りを確認し始めて、アルは少し恐怖心を帯び始め、ホシノとエイミは警戒心をMAXにする。そして、デカグラマトンはヒマリに向けて言う。

 

『ハッカーの少女⋯⋯否、明星ヒマリよ。汝の推測には少し誤りがある。今、君たちの前にいるこの肉体こそが本体であり、唯一の私だ。私以外には存在しない』

 

『私は古く、弱く、いつかは消えゆく存在だ。そう、君たちのように。だからこそ最後の預言者を通じて預言しよう』

 

『10番目の預言者は、その【絶対的存在】を超える道を切り開くことになるだろう!』

 

 その瞬間、ウーウーと警戒アラートが鳴り響く。それに先生たちは驚きながらも、何が起きたのか確認する。エイミが即座に反応すると、そのエネルギー反応を読み取る。

 

「エネルギー反応!」

 

「これは、榴弾?」

 

「⋯⋯⋯マジ?ここを爆発させるつもりじゃ⋯⋯!」

 

「成程、ダムも破壊するつもりか!」

 

 その瞬間、動いたのはホシノ。直ぐ様先生を担いで走り抜ける。ヒマリは車椅子をダッシュさせて、エイミ、ヒナ、ツルギは駆け抜ける。その後、誰もいなくなったデカグラマトンは叫ぶ。

 

『私には見えるぞ⋯⋯!全ての預言者を導く最後の預言者【マルクト】が、再び私の存在証明を始める姿を⋯⋯!すまない、従者よ

 

 そして、先生たちは辛うじて爆破から逃れたものの、デカグラマトンの本体があった建物は跡形もなく崩れ、決壊したダムから水が流れ研究地区は水没してしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 先生たちがデカグラマトンと話している同時刻、エンターも廃墟に来ていた。先生たちが一度素通りした綺麗なパソコンの前に立ち、エネトロンタンクとパソコンを繋げる。

 

「やはり繋がりましたか。可能性的にこの中に⋯⋯!」

 

 だが、その画面に映し出されたのは地図。この研究室の地図であり、本当の場所が記されているものだった。それにエンターは Êtes-vous sérieux⋯⋯と呟きながらその先へ行く。

 

 そう、そこは先生たちが今さっきまでいた場所であった。コンクリートの壁を押し込むと下が開かれ、重力に従って落ちていくが、すぐ着地する。

 

 コツコツと歩く音が響き渡る。

 

 そうして、ライトを頼りに進んでいくと壁に何か描かれているものが見えた。それをライトで全てを照らすと、目を見開いた。その壁に描かかれているものは、角ばったハートマークのようなデザインのもの。

 

「やはり、ここで間違いないようですね」

 

 そうして先に進んでいった先にはドアのようなものがポツンとあった。まるでボス戦のような雰囲気を醸し出していたそれは、警戒するに越したものではないものだった。

 

 ドアを開くと、薄暗い部屋であり窓ガラスなどは地下なのかない。まるで機械のような外壁をしている、まるでエンターの趣味を体現したみたいな部屋であった。 

 

『侵入者ヲ確認、電力制限ヲ解除シマス』

 

 次の瞬間、ブンとライトが照らされ咄嗟に私は目を瞑る。そうして少し時間が経ってから目を開くと、角ばったハートマークと、その周りに描かかれている10角形の図形に棘のようなものが生えているものであった。

 

 そうして危険を感じながらもエンターはパソコンに近づく。こういうのは途中にトラップがあったり、ボスが出てきたりとRPGでは定番だが、ここは現実。そんなことが起こったらびっくりするどころの騒ぎではないだろう。

 

 パソコンの前に近づいても何もなかったため、パソコンを開いてみる。

 

「パスワードは⋯⋯2012・Entrer・Gobusters』

 

 そうしてパソコンを開き、画面を見るが⋯⋯⋯何もなかった。何処を押しても、何もでなかった。ならば、と懐からパソコンを取り出してハッキングをする。そうすると、データを抜き出されて消された形跡があり、消去された形跡があった。そこからGPSを作動させてその物を特定した。

 

「ま、まさか⋯⋯先に取られたというのですか?折角謎解きをしたというのに⋯⋯?周りくどい謎を解いたというのに⋯⋯?」

 

 パソコンを持つ手がプルプルと震え始める。消去されても復元は出来るには出来る、だがアレは特殊すぎて復元不可能とログには書かれていたがために、顔には少しだけ青筋が立っていた。同時に通信が入り、イヤホンを起動させる。それは誰かの通信。

 

『―――――――』

 

「えぇ、理解しました。成程、成程⋯⋯⋯」

 

 パタンとそのノートパソコンを閉じると、目を大きく開く。

 

「許しませんよ⋯⋯!特異現象調査部!!!」

 

 その部屋に無慈悲に響き渡ったと同時に、ダムが決壊した。そして、消えていった。

 

 

 


 

 

 

《部室》

 

 

 結果的に、先生率いる特異現象調査部のメンバー+αは帰ってきていた。だが、ヒマリの目はもう暗かった。

 

「部長、珍しい表情をしてるね」

 

「⋯⋯⋯元気かしら、風に当たると気持ちいいわよ?」

 

「そういうことじゃないと思うぞ」

 

「同意見」

 

「ま、そうなるのは仕方ないよねぇ⋯⋯」

 

 全員肩を落とした様子である。まぁ無理もないだろう。デカグラマトンの妄想みたいなことを長々と聞かされて強制的に追い出されたのだ。

 

「デカグラマトンの本体が自販機のAIで、幻聴を聴いて自ら超人工知能へと生まれ変わった⋯⋯?しかもそれを証明する場所は全て沈んだ⋯⋯」

 

「もうやたら変な妄想を聞かされて爆発と水流から逃げ出すことになったということとあの謎の部屋だけ記憶がやたら鮮明です⋯⋯⋯⋯⋯」

 

 あはは⋯⋯⋯と言いながら肩を落とすヒマリ。そんなヒマリにホシノが近づくと柿ピーをヒマリに渡してきた。なんで柿ピーとヒマリは困惑するがホシノは笑顔で

 

「うへ、これ食べて落ち着きなよ」

 

 その瞬間、ヒマリはホシノが言いたいことを理解した。

 

「私はお婆ちゃんなんかじゃありません⋯⋯!まぁそれはそれとして頂きますけど」

 

 そそくさと回収して食べるヒマリ。それを横目にヒナが問う。

 

「実際問題、どうするの?メモリは回収したし⋯⋯」

 

「取り敢えず、回収したメモリは解析してみます。そして、終わったわけではありません。脅威は依然として預言者のほうなので」

 

「デカグラマトンが本当にただの自販機AIだとして、そして誇大妄想癖の者だったとして、それでも『預言者』は自らの意思で動いています」

 

「⋯⋯それに、デカグラマトンは最初から存在証明をやり直すと言っていました。どちらにせよ、脅威はまだ去っていないということです」

 

 そう言うと、ヒマリはツルギ、ヒナ、ホシノ、アルの方を向く。

 

「預言者の襲来は止まないはず、ですからその対処をお願いしたいのです。丁度三大高と預言者が密接にある高校が揃っていることですし」

 

 その言葉が紡がれると、4人は互いを見合うと頷きながら言う。

 

「このことは一応万魔殿に伝えておくわ。脅威になりかねないし⋯⋯⋯もしそれに『雷帝』が関わっているのだとしたら、無視することはできない」

 

「こっちはティーパーティーに伝えよう。治安を維持するものとして、『正義』を掲げるものとして遂行することを約束する」

 

「うへ〜、こっちはビナーとやり合ったことあるし、脅威だから積極的に手伝わせてもらうよぉ〜」

 

 3人が言い終わると一斉にアルの方へ顔を向かせる。まるで君もいいなよと言わんばかりの顔をしながら。

 

「⋯⋯えっ、これ私言うタイプ?」

 

 全員がコクコクと頷く。アルはやったわ!とか思いながらも胸を張りながら言う。

 

「ふふん、そういうことは便利屋68に任せない!」

 

 ドンという効果音が出るくらいには胸を張っているアル。だが、ヒナはお構いなしなのか辛辣なことを言う。

 

「一応、貴方たち指名手配されていることを忘れないでね。今はシャーレとして来ているだけだからね」

 

「ウッ⋯⋯⋯」

 

 そう言われると何も返せないと項垂れるアル。そんなコントのようなものを見て、ヒマリはくすっと笑いながら皆に話す。

 

「この件にアリスのことは無関係というわけです。これであの話にも⋯⋯」

 

「まぁ、それは良いとして⋯⋯⋯」

 

 突如、チヒロが慌てた様子で通信を繋げてきた。

 

『通信ユニット【ハブ】を観測した!何処にいたかと思ったら、ミレニアムの地下300m付近からこっちに接近中!!』

 

『ヒマリと⋯⋯えっ、先生!?しかもなんでキヴォトス最強格と謳われる人たちが⋯⋯取り敢えず先生も手伝って欲しい!直ぐに対応お願い!』

 

 そして、通信が切れたと同時にニヤリと笑みを浮かべる。

 

「成程、ここでハブ⋯⋯いえ、デカグラマトンの8番目の預言者、『ホド』の襲撃ですか。超天才清楚系美少女ハッカーの日々は忙しいですねぇ」

 

「うへ〜また動かないといけないのぉ⋯⋯疲れたよぉ⋯⋯」

 

「私はまだ全然行けるわよ!」

 

「脅威が来たのなら見逃すわけには行かない」

 

「同意見だ」

 

「では、特異現象調査部改めて出動です!」

 

“おー!”

 

 そうして、デカグラマトンの件については一段落を経た。だが、そのデータによって、波乱が巻き起こることになるとは今の誰も、思いもしなかった。

 




 


???「栗原ァ!!ここ電気通ってねぇぞ!!!」
なのでデカグラマトン編は終了。

遂に、遂にこの時が来たぁ!!!!!エボルドライバー

次回はPVだぁ!!!ヨロシクゥ!!
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