洩矢の国に到着、いや洩矢の国だった所に到着した。
やはり手遅れだったのだ、悪い予感は当たった。
いつもと違う気持ち悪いくらいの静けさが辺りを埋め尽くし、何か変な感じがしてならなかった。
ふと、私は見つけてしまった。
諏訪子の視線の先には何か赤い液体が飛び散っている。その先にはうつ伏せの状態で肩からざっくりと斬られている者、そして首と胴体が離れた場所に落ちている者…それが何人も何人も所々に…いや、既に物か…
「嘘よ、嘘嘘…こんなの信じない」
諏訪子は目を見開いてぶつぶつと呟き、その言葉は虚空へと消えて行く。
「…遅かったか」
八坂が言う。
目の前の光景を見たらそういうしかなくなってしまうだろう。
動く物が何一つ無いこの場所で、私達は同じくらいの高さで少し離れた所に浮いている誰かがいることに気が付いた。
私は移動中の八坂の話を思い出す…
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「左軍司令官?」
私は問う。
「ああ、そうだ。奴は私と違ってな、所謂エリートでキャリアだ。経験と実績であの天照様の左腕という地位まで上り詰めた強者だ。奴は普段は温厚なのだが、戦となると話は別だ。冷酷且つ好戦的な性格で手がつけられなくなり止められなくなる、今まで沢山の牆壁となる者が奴の手によって葬られてきた。下っ端の神では太刀打ち出来ない、寧ろ太刀打ちする前にやられてしまう。無論私は一応奴と同じ地位だ、奴とは今までに何度も何度も対立した。その度に奴は強いと改めて実感していたな、実際勝って負けての繰り返しだった、しかし私が勝ったのは風の向きや奴の少しのミスで運であって完全に実力で勝ったの訳ではない。そういう意味では私は奴に勝ったことはほとんど無い。やはり奴は強い、しかし小娘、貴様なら出来る気がするのだ。これは半分勘半分見たことからなのだが、何故か倒せる様な気がするのだ。どうだ?大切な物を守るためにも闘ってみないか?まあどちらにしろ小さな希望を掴み取るならそれをするしか無いのだがな。」
私は諏訪子を見る。
しかし此方に見向きもせず、不安な表情を浮かべている。
やはり気が気ではないようだ。
自分の国、自分の愛した大事な大事な民、生活…
私は決める、いや元からそうすると決めていた。
「やるよ、大切な物を守るためにも」
「そうか、ちなみに奴の武器は、何と言ったか、腰の所に通常時は提げて、必要時にそれを抜き構える。丁度、剣の様で何刀と言ったか。」
それ、日本刀じゃない?時代錯誤過ぎるよ!
「まあ奴はそれで沢山の者を排除して来た、しかしその度に奴は悲しい顔をしていた。何でも復讐すると言っていたな。」
「それで、その奴の名前は?」
「名前は____
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「『御園生 冷夏』」
御園生 冷夏…アイツが奴なのか、アイツがこんな…こんな悲惨な、無慈悲な殺戮を繰り出したのか。それも見た限りでは1人で…
「奴は先程も言ったように冷酷且つ好戦的でな、奴について行こうとする者は誰一人としていない。そんな孤高な存在だ。奴は女だが、とても固く冷たい心を持っていてな、やはり何かの復讐のためなのだろう。」
私たちは奴の近くへと向かう。
諏訪子は俯いてぶつぶつと何か呟いている。
「おい!冷夏!何故こんなことを!」
八坂が叫ぶ。
すると、御園生は
「あら?神奈子?ふふっ、楽しいわよぉ?家々に火を放ち泣き叫んで出てくる人間を私の刀で散らせてあげるのは…ふふふ」
すると、横から何かが飛び出てきた。
諏訪子の鉄の輪だ。
すると御園生の方に向かっていった鉄の輪はスパッと切れて塵となり消えて行った。
諏訪子は驚きの表情を見せている。
「神奈子、何ですのぉ?そこに居るゴミ共はぁ?」
「此奴はこの国の王とその遣いだ。」
御園生は驚きの表情を浮かべたと思いきや、ニヤリとして此方を見た。
「あらあらぁ、まさか洩矢の国の王様がいるとはねぇ…どうしたのよ、神奈子?あ、この状況から見るに、国王様は負けたのねぇ?ふふふ…あははっ」
諏訪子は相変わらず俯いたままだ、先程のショックや攻撃が効かなかったことも相まってか動かない。
「で?どうして来たのよ、そんなゴミクズ共を連れて…」
私は手を出しそうになった、私だけでなく諏訪子も侮辱されたのだ。でも我慢するしか無かった。
「冷夏、お前は好戦的な性格の前にルールは守る奴だと信じてきた、天照様の指示も無いのにこんなことをして、ただで済むと思っているのか…っ!」
「ふふっ、相変わらず神奈子は固いわねぇ…指示?そんなのいいじゃない、焦れったくなったのよ、なら本拠地を潰して終結させた方が手っ取り早いじゃない…ほれに、人間共をゴミの様に散らして殺して行く程楽しいことはないじゃないの…それに私は大切な人材で左腕であり、天照様が脳であれば、私は心臓なのだから、それをみすみす手放す訳が無いわよねぇ?」
御園生は自信はかなりあるようだ。
やはりそれ程強い力を持っているのだろう。
「…やはりお前とは色々と合わないようだな?」
「あらぁ?またやるのぉ?」
御園生は腰に差していた日本刀らしき物を抜いた。
「いや、やるのは私じゃない…この小娘だ。」
すると八坂は私を差し出した。
「ふふふっ…あははははっ!正気?神奈子、こんな雑魚で闘わせるの?こんな敗戦国の、王でも無くその遣いなんて…あははははっ!」
暫く経ってやっと笑いが収まったようだ。
「ふふふっ…ごめんなさいね、余りにも可笑しくて、ふふっ…」
ここまで来るとさすがにイライラしてきた。
「さて、そこの娘さん、名前は何て?」
「空神 藍空…諏訪子の友達だよ」
「ふふっ、友達?遣いでは無くて?そこの所も甘いのねぇ?国王さんも…じゃあ国王さん、その友達が無様にも私に斬られて血を吹き上げる様をしっかり見ていてね?あははっ!」
「五月蝿い、私は負けない!」
「ふふっ、神ですらない妖が何か言っているわ…いいわ、すぐに終わらせてあげる…そして首を国王さんに見せつけてあげるわ…」
御園生は刀を構える。
来る、と思い、私も構える。
諏訪子、待っていてね!
私、絶対こんな奴には負けないから!
あんま、冷酷じゃなかったですね。
まあ彼女は普通の戦の時は好戦的で、何かに向かって復讐するときは冷酷なようなので、はい。