私はいつも通り起き、ご主人と奥さんに挨拶をした。
娘さんはどうやら友達のところに出掛けているらしい。
私と小梅は職探しのため、再び街を歩いていた。
前回は都の右半分に行ったのだが、今回は左半分に行くことにした…とは言っても、小梅曰く、左半分は都の防衛関係の建物が多く、店というか職業自体に近いが陰陽師や妖怪退治屋等が多く住んでいるらしい。
素朴な疑問が浮かんだので小梅に聞いてみる。
「陰陽師と妖怪退治屋って何が違うの?」
小梅は、
「陰陽師ってのは、特殊な呪文とかで悪い物を追っ払う、言わば『魔除け』の上位互換ね、この職業は天皇直属の人が多くて技を習得するにもかなりの労力と時間を要するの、それに天性の何かがあるみたいで職業としては不向きね。それに対して妖怪退治屋って言うのはそんな特別な技能も天性も必要無く、力があれば誰でもなれるのよ、でも陰陽師はちゃんと天皇直属だから給料は一定期間に一度出るんだけど、妖怪退治屋は…少ないわね、でも収入は依頼が入れば沢山入るの。陰陽師は基本、命令があるまで動かない緊急出動型なんだけど、退治屋は依頼されたらやっちゃう感じだから依頼されたら都の外までやるわ、意外と貴族とかには重宝されててよく依頼が入るのよ。陰陽師もまあ貴族くらいの地位になると依頼することはできるけど汚職とかそういう内部とかでは割と汚いのよ、だから貴族は退治屋に頼んだりするの。まあでも、さっきも言ったように、退治屋の数は十数程しかいないの。いくら高収入とはいえ頼まれたことはしなきゃいけないし、それくらいのことはこなせるような人だったりより強さを求められるのよ、陰陽師のように呪文を使ったりするわけじゃないからね?まあでもそんな人達だから、退治屋と陰陽師は基本的に仲が悪いのよ…手柄を取られちゃうからね、街に妖怪が入ってきて人を襲ったりする時はそんな人達が緊急出動するからそんな時は皆必死なのよ。」
そう聞いていると、人の命より自分の生活という形に聞こえ印象が悪く感じられるが、それで都は守られていると考えると皮肉なものだと思う。
「まあ誰でもなれるって言ってもさっきも言ったけど、強い人じゃないとやってけないから寧ろこっちの方が特別な技能が必要かもね」
なるほど、よくわかった…流石小梅だ。
そして、私達は前世で言う八百屋のような店に来たのだが、やはりこちらも駄目だった。
日は高く登り折り返し地点にたどり着きそうになった時に一度昼ご飯を食べに雑貨屋に戻った。
ご主人も奥さんもいつも通り接客や品揃えに忙しそうだったので少し会釈をして奥に入った、娘さんはまだ帰ってきていないようだ。
私たちは昼ご飯を食べたあと、再び職探しに出た。
今度はまた右半分の方に向かった。
途中、大工の家の角を曲がると娘さんを見つけた。どうやらその大工の家の友達と楽しく話しているようだった、邪魔すると悪いのでさっさと通り過ぎて職探しを続けた。
日が傾き始めたころ、帰路に着いた。今回も収穫無し、
「ごめんね?毎日付き合わせて…」
そう言うと、小梅は
「いいよいいよ!大丈夫!元はと言えば私が言いはじめたんだし…」
「いやいや、小梅は私のことを考えてくれてやってくれたんだから寧ろ感謝することだよ!」
だから、大丈夫!と、言おうとしたその時、後ろの方から悲鳴が聞こえてきた…と、同時に悲鳴の発生源から人がどんどん逃げてきた。
私達は逃げ惑う人の一人から話を聞いた。
「化け物だ!今、あっちの方で…暴れてやがる!お、お前らも早く逃げないと食い殺されるぞ!」
と、若干パニックになりながら再び逃げていった。
嫌な予感がする…実際悲鳴の聞こえてきた方向は大工の家の方だ。あそこには娘さんがいた筈、娘さんは話をし出すと止まらないタイプだからまだあそこにいる可能性が高いことを考えて、私は小梅を見て頷くと小梅も頷いた。
私達は、娘さん達がいたところに向かう…徐々に人気が少なくなってきたころ、二度目の悲鳴が聞こえた。やっと、大工の家の角を曲がるとそこには…この世の物とは思えない3mほどもあろう高さの形の化け物が腰を抜かした娘さんの友達を庇うようにして化け物の前に手を広げて仁王立ちしている娘さんに今にも襲いかかるように追い詰めている。
咄嗟に小梅が助けに行こうとしたが、私は止めた。
相手が何か隠しているかもしれないので仕方なかった。
私は小梅に
「こういうのって緊急事態よね!?陰陽師や退治屋が来るまであとどれくらいかかる!?」
小梅は慌てて
「え!?ええっ、と!まだ少しかかるわね?」
ならば迷っている暇は無かった。
その化け物は幅1m程もあろう拳を振り上げて今にも降りおろさんとする状態であり余裕は無かった。
私は角から飛び出し、娘さんたちには少々グロテスクなものを見てもらうことになるがそれも仕方無い。
私は化け物を包むように直方体を頭の中で作り、能力を発動し、その化け物のいるところだけ空間圧縮した。
すると、化け物は姿を消し、辺りには化け物のものであろう血だまりが残り、四方八方に飛び散ってそれが娘さん達にかかってしまった。
すると、突然目の前が歪んだかと思うと地面が迫っていた。やはり久々の能力使用ということもあり、体が慣れていなかったようだ。
私は娘さん達を守れた安心感を抱きながら、目を丸くして驚いてこちらを見ている小梅を見ながら暗闇に落ちた。
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うう…知らない天井だ…
と、いうこともなく、目が覚めると雑貨屋の寝室だ。
起き上がるとそこには小梅と娘さん、それからご主人と奥さんがいた。
小梅は私が起きるなり抱きついてきた、豊満な胸が当たり少し嫉妬するが
「もう!そら、大丈夫!?揺さぶっても反応しないからどうしちゃったのか心配で心配で…」
そう言う彼女の表情は今にも泣き出しそうなものだった。
娘さんは
「そらさん、危ないところを助けて頂いてありがとうございました!」
私は、当然のことをしただけです、というとさらに感謝をしてきた。
ご主人や奥さんに関しても同じような形で
「いつもお世話になってるので恩返しみたいなものですよ」
と言った。
後から小梅に聞く話だと、私が倒れた後少ししたら陰陽師の方達が来たそうで色々事情を話したり誤魔化したりするので大変だったという。小梅は
「もうあんな無茶しないでね?」
と言うがあれは仕方なかったと言える。
何はともあれ全員無事でよかった、と思いながらその日は過ぎていった。
次の日、小梅に
「そらって、どんな能力を持ってるの?」
と聞かれた。能力と言う概念がこの時代に流通している限り、あの幼女サマがどうにかしてくれたんだろうと思った。
「私は『空間を操る程度の能力』だよ。正確には『空間及びその空間に存在するありとあらゆるものを操る程度の能力』って名前なんだけどね?」
小梅は少し目を丸くしたが、
「じゃあ、あの化け物の時は?」
「あれは、あの化け物を含んだ周りだけを圧縮して、潰したんだ。あの時はああするしかなかったからね」
小梅は更に驚いた。こんなことが前にもあった気がするがスルーしておく。
「へぇー…前からそらが只者じゃないって気がしてたけど、やっぱりそうなんだねぇ」
そして私は気になっていたことを聞く。
「じゃあさ、小梅は…何か能力持ってるの?」
「うん、私の能力は『炎を操る程度の能力』って言うんだけど…」
まあその名の通りだよ、と小梅は言う。
じゃああの時、化け物に向かっていこうとした時は、灰にしようとしたのかな?と、思いながら話をしていると、突然こんなことを言われた。
「そら…貴女、妖怪退治屋になりなさい!」
「ふぇ?」
また素っ頓狂な声を出してしまった。
「そらのその強さならすぐ信頼されるわよ!丁度よかったわね!職も見つからなかったし…ちなみに退治屋は申請しなくてもすぐに始めることができるから早速明日から、ね?」
そう言って、私の職業はあっさりと決まった。
この選択が私のこの後の人生を大きく変えることとなるのだが、それはまだ先の話…
日常編でした(ニッコリ)