東方深空録   作:・落ち葉・

28 / 37
最近忙しくて眠いです


第二十八話 お隣さん

「はぁ……よし、今日もいい天気!元気にやってくよ!」

 

朝の光を浴び清々しい風に吹かれ、今日も気持ちのいい一日が始まる…

 

「ふぅ…」

 

横で伸びをしているこいつが居なければの話だが

 

「はぁ……どうしてあんたがお隣さんなんだか…」

 

「…仕方ないだろう、親父さんがここに住めって言うんだから」

 

 

こいつこと紅月狐狛はかつての大戦にて闘いを交えた云わば宿敵である。

 

数日前、ご主人の師匠と言った方が雑貨屋の隣の隣の隣に引っ越してきた。

すると何故か会いたくなかった奴まで付いてきた。それが因縁の相手、紅月狐狛だった。

 

そしてそいつは私の借りている空き家の隣の空き家に住むようになってしまい、今に至る。

 

 

こうして、不機嫌に朝を過ごし、小梅に挨拶をしに、雑貨屋に入る……のだが、

 

「なんであんたまで着いてくるのよ」

 

「仕方ないだろう、親父さんに頼まれていた物を受け取りに来たんだから」

 

気に食わない奴だ……というか、最初のあの気迫は何処に行った?

 

小梅が見えたのであまり気にせず店に入る。

 

「小梅、おはよう」

 

「あっ、おはよう、そら!……と、」

 

「紅月だ」

 

「あ、ごめんなさい、紅月さん!」

 

「こいつのことはいいよ、小梅」

「どうして?」

 

「いいから!」

 

そう言って私は小梅の手を引っ張って小梅の部屋へ行く。

 

「小梅…あいつは危ないんだよ?」

 

「何を言ってるの?……あ、もしかして喧嘩でもした?」

 

「喧嘩する位まで仲良くなってないよっ!」

 

というか、あいつなんかと仲良くなるつもりも無いんだけどなぁ…

 

「え?仲良くなりたいの?」

 

とか、考えてたら同じ様なこと言われた。

 

「ならないよっ!…とりあえず、危ないから近づかないでよ?」

 

「そんな、子供に言うように言っちゃってどうしたの?」

 

駄目だ、全く伝わらない…確かにあいつは拍子抜けする位にはコミュニケーション力に欠けてる奴だけれども…

 

「なるべく、近寄らないでね?」

 

「はいはい」

 

 

そうして、小梅の部屋を出て、まだ店の中にいる紅月を横目に雑貨屋を出た。

 

「…家に帰ってもすること無いし、散歩でもするかぁ…」

 

 

そして、私は都の中を歩くことにした。

 

 

仕事?…そんな物は知らない、というか仕事が舞い込んでこない。

 

都は見ての通り、人間が沢山住んでいる。

すると、それを狙ってたまに妖が襲ってくるのだが、例外を除き、だいたいが侵入することはできない。それは私達妖怪退治屋の商売敵であり同業に近い陰陽師の行動によるものであり、普段は彼らが都周辺の警備をしている。

 

そんな彼らが居るおかげで、妖怪退治屋の出番は先程述べた「例外」以外は殆ど無い。

例外というのは、先日娘さん達を襲って私が倒した、ああ言った警備の間をすり抜けてくる妖である。

幾ら、陰陽師が優秀とはいえ、人間である上に彼らには結界という概念が無いようで、どうしてもスキが生まれてしまい、そうした所から入ってくる。

 

しかし、このスキも稀に起こるだけなので、やはり妖怪退治屋の出番は殆ど無いと言っていい。

なので私達妖怪退治屋は兼業し、普段は別の仕事をしている。

 

 

閑話休題

 

 

そうこうしているうちに結構歩いていたようで、いつも娘さんが友達と遊んでいる所までやってきた。

 

そして、今日も遊んでいた。

 

「あっ、そらちゃん!」

 

向こうが気付いたようで手を振りながらこちらに向かってくる。

さり気なく、「ちゃん」と言われているが、気にしていたらキリがないので何も言わないでおく。

 

「ん?どうしたの?」

 

「えっとね、この前のお礼がしたいんだってさ」

 

すると、もう一人の少女がこちらに向かってきた。

恐らくこの前襲われていた、娘さんのご友人だろう。

 

「あ、あのっ……この前は助けて頂き、有難う御座いましたっ!」

 

そして、深々と慌てながらお辞儀をする。

 

「あはは、いいっていいって、顔上げなよ」

 

「そうですか…」

 

「こちらこそ、何をするか決めることが出来たし…」

 

決める?そう言った顔でそのおどおどとした少女は首を傾げている。

 

「あのね…そらちゃんは妖怪退治屋になったんだよ!」

 

「えっ?」

 

少女は驚いた顔でこちらを見た。

そうでしょうね、だって小さいもんね…

 

「実はそらちゃんは私達よりも年上なんだよ?」

 

「えっ?」

 

「それと、小梅さんと同じ…」

 

「えっ!?それってつまり妖怪……」

 

そこまで言いかけた所で口を抑えた。

 

周りの人がこちらを見ている。

まずい…

 

「とりあえず、移動するよ?」

 

そして、人気の無い所に移動した。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

「大丈夫だって」

 

気付かれなければそれでいいんだけどね。

 

「よくよく考えてみたら、あの妖怪を簡単に倒したのにそれが妖怪じゃない筈無いかぁ…」

 

「気付くの遅くない?」

 

と、少女は娘さんに突っ込まれる。

 

「あはは…」

 

 

そうして、私は娘さん達と別れ、散歩の続きをしよう……と思ったけれどもう残りの場所に行くとしても陰陽師の住む地区を通らないと行けないので、あまり行きたくない場所には勿論行きたくないのでここで散歩を止め、帰ることにした。

 

 

 

帰りに雑貨屋を見てみると、

小梅は接客していて、ご主人は……道具屋の親父さんに絡まれていた。

奥さんはいなかったが多分買い物だろう。

そして、あいつは既にいなくなっていた。

まあ、隣なのでどう足掻いてもエンカウントは避けられないのだが……

 

 

その後、特にすることも無かったので雑貨屋を手伝った。というか、私もう無職と変わらなくないかな?

 

 

すっかり暗くなり、店を閉めて夕飯をご一緒させて頂いた後、家に戻った。

 

「てか、あいつは本当になんなんだろう?」

 

あいつとは勿論、紅月のことである。

 

幾ら、都がこの国の要所と言えども、この広い土地の中で隣になるのは些か偶然にしてはありえないのでは無いかと思う。

 

まさか、私を殺しに来たのでは無いか…

いや、それは考え過ぎか、仮にそうだとしても合わない点が沢山ある。

まあ、あいつのことは後々考えていくことにしよう。

 

その時、戸をノックする音が家に響いた。

小梅だろうか、そう思って開けてみると、

 

「夜分に悪いな、空神」

 

紅月だった。

 

「何の用?」

 

「すまないが、布団を貸してくれないか?何度も水を零してしまって乾かしていたのだが、残った最後の布団にも零してしまってな…」

 

「……」

 

ただひとつ紅月について分かったのは、抜けていて馬鹿、ということだった。




合間に出していきたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。