「んー、暇、暇以外も無いよ…」
私、空神藍空は妖怪退治屋であり、都を妖から護る役割を持つのだがそれは緊急なworkであるため結果的半ニート状態になってしまう。
「だから自分の足で仕事探しに行けばいいじゃない」
そんな簡単に言うのは多野小梅、唯一無二の友人で同じく妖怪である。
「だってさぁ?都周辺の警備は陰陽師たちがやってるし、充分な強さ持ってるからわざわざ出向く必要も無いし…」
「伊達に帝直属してないわね……まあ、妖怪退治屋も本当は必要ないのよね」
じゃあ、なんで私に勧めたのさ!
まあ、職を紹介してくれたことは感謝するけど…
ふと、私は素朴な疑問が浮かんだので聞いてみた。
「というか、ここら辺の妖ってどんな姿してるの?」
職が職なのでしっかり聞いておくべき事なんだろうけど、傍から見たらその職に就いてる者がそれを聞くことは可笑しいと思うだろう。
「うーん、まあこの前そらが倒したずんぐりむっくりの妖みたいに歪なのがうじゃうじゃいる感じかな、文字通り妖って感じ」
想像してみるとなかなか混沌とした絵が出来上がったが、本当にそんな形をしていそうで気持ち悪い。
「中には人語を解して口にする個体も存在するらしいけど、口にする奴らは大体が理解していない知能の無い奴らよ…」
どちらにしても気持ちの悪いものだが、これからそんな得体の知れない生物に遭遇するとなると嫌になる。
というか辞めたい。
まあ、折角勧めてくれた仕事を辞めることにもいかないので渋々続けることにする。
「まあ、頑張るよ、うん」
「そうね、慣れるまで、ね」
慣れる日は来るのだろうか?
そろそろお昼時で、太陽も天の頂きに上っている。
「平和ね…」
「そうだね…」
平和だと仕事が無いが、まあ平和な世の中にする為に仕事をすることになるんだから半ばボランティアみたいだなと思う。
「そういえば、そらのお隣さんもそらと同じ職に就いてるみたいね」
私は衝撃の事実を知り、同時にマイナスの思考となる。
「なんでまたアイツが?」
「そらと同じで居候の身だから、就いたみたいよ?」
妖怪退治屋ってそんなフリーな仕事なのかな?
まあ普段仕事なくて、兼業ってレベルじゃないくらいには職を掛け持ちできる位だからわかる気がする………
が、今はそんなことよりもアイツが同じ私と同じ職業だということにショックでたまらない、嫌だ、アイツと一緒なんて嫌だ、絶対に嫌。
それにこの辺…というより都全体の妖怪退治屋は前に言ったとおりかなり少数なようなので、事件が起きた場合同じ場所に集まりやすい……これはつまりアイツとエンカウントしやすいことを表す。
「うああ……どうしようもないぃ」
「そんなに嫌なの?」
「嫌!」
何が嫌かって、勿論あの大戦のこともそうだけど何より一番の理由は単純に好かない性格ということだった。あっちがどう思っているかは知らないけど好いていないことは確かだろう。
「まあまあ、ここは平和なんだから大丈夫よ」
「問題なのは日常生活でも会ってしまうことだよ」
「お隣さんなのだからそれは仕方無いじゃない?」
こんな感じでいつも愚痴を聞いてくれる小梅は大好きだ。それこそ今話題にしてる誰かと比にならない位。
「それはそうと……私達出会ってもうすぐ2ヶ月ね。」
「まあ、妖怪だと時間が人間に比べて早く感じられるみたいだけどね……なんでこんなに仲良くなれたのかなぁ?」
「平和だからじゃない?」
小梅が笑って応える。
「そうだねぇ…平和平和…」
だいたい「平和」と言えば片付いてしまうが、正にその通りであるので他の理由は必要無い。
そんな平和が二、三年続いたある日のこと……
「ふぅ……最近は仕事が沢山入るなぁ…」
「仕事欲しい欲しい言ってた二、三年前よりはいいじゃない?」
「そうだけどさぁ……流石に最近多すぎない?」
「多すぎないかと言われてもずっと藍空のこと見てるわけじゃないから分からないんだけれど…」
最近、妖怪退治屋としての仕事が増加傾向にある。
勿論、都の警備は今までと変わらず厳戒な物ではあるが、侵入してくる妖怪が増えてきた。
しかし、陰陽師達の結界は何ら問題は起きていないらしい…ただ、あくまでも「らしい」なので真実かは分からない。
実際、彼らはプライドが高く、「妖怪を倒し、都を守る」という意味では同業の妖怪退治屋を目の敵にしていることが多い。
また、そのプライドを貶される様なことがあると一般人にも暴行したり隠蔽したりするので都の住人を守る身としては本末転倒である。
そういったことがバレてしまうと勿論、都の住人は帝の物とされているので解雇されてしまいもう陰陽師には戻れない。
しかし、やはり都には欠かせない存在のため、無下には出来ない。そういった点で改めて難しいものだと思う。
閑話休題
「何か悪いことが起きてないといいわね……」
「そうだね…」
仕事が増えることが嬉しいとは言ってもやはり増えてはいけない仕事であるため、複雑な気持ちだ。
それでも何よりもきついのが、
「何より知名度が上がらないのが大変だよ…」
知名度は上がれば上がるほど仕事に呼ばれやすくなる。それが腕利きとなると尚更だ。
「でもそらは知名度上がるくらいにはあちこち動き回ってるわよね?それに割と強いとは思うし…」
最近は知名度関係無く総動員状態なので本当に1日にあちこち動き回らなくてはならない。
出動が一般人からの要望という訳では無い緊急時のこの仕事は帝から報酬が出るので妖怪退治が終わったらそこに留まる必要が無く、次の仕事の準備のためにまた見回りを続けるため一般人に知れ渡らない。
寧ろ、私達を目の敵にしている陰陽師には知れ渡り、たまにすれ違うと舌打ちされる。これはひどい。
それでも仕事ではあるし、こうでもしないと生きていけない。
「そうでもないよ」
「そう?色々大変なのね」
「ただ知名度は無くても私の妖怪としての力、というか体力は鍛えられるからいいかなって最近思えてきたんだ。」
「鍛える…ね、私もご無沙汰だし、いざって時のために体力付けておくとするかしらね。」
「まあそのいざって時が来ないくらいにはまた平和な時が来て欲しいね。」
実際、あまり言いたくないが、これだけ陰陽師の隙を通り抜け私達の妖怪退治の仕事が増加傾向にあるということは何かが確実に起きているというのは確かだった。
その何かというのはまだ詳しくは分からないが今までこんなことが無かったという点からその「何か」は大きく不吉なものであるのはわかる。
今も何かが動いているかもしれない。都の危機が迫っているかもしれない。
そういった心配を胸に、私達は平和を望む日々であった。