東方深空録   作:・落ち葉・

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遂に30話目です


第三十話 宣告

「そら、また仕事よ!」

 

「うぇ…また?…もう疲れたぁ」

 

数年前とは打って変わって、特に最近は妖怪退治で大忙しの毎日で絶賛フル稼働中の日々である。

 

「仕方無いじゃない、それに知名度上げるんでしょ?」

 

「知名度は上がり過ぎても駄目なんだよ」

 

「仕事が無いよりはいいじゃないの…ほらさっさと行きなさい?」

 

「はーい…」

 

そして私は草鞋を履いて扉を開けて依頼人に言われた方向へ向かう。心なしか足が速くなった様な気がするが日々の仕事の副産物と言ったところだろう。

 

「キャアアアア!!」

 

「キシャアアアアッッッ!!!」

 

女性の悲鳴と妖の奇声が交じる。

 

「あ!そらさん!彼処の角です!」

 

逃げてきたであろう男の人が指を指して私に教えてくれる。

 

指を指した方向に向かい、角を曲がるとそこには細身の長身で木の枝の様な身体をした妖が暴れ回っていた。

 

この種の妖は見た目通り折れやすい。

 

しかし気付かれると色々面倒なので背後から一気に駆け寄って裏拳で叩き折る。

 

「…っらぁっ!」

 

「キシ…ャアァ…ッ…!」

 

ポキッと軽快な音を立てて断末魔の叫びを上げた細身の妖は地面に伏して動かなくなった。

 

因みに私は最初の方は手っ取り早く片付けるため、得意の空間圧縮で文字通りぶっ潰していたが、それだと周りの人が見ていたら、流石に自身が妖怪だと気づかれてしまうかもしれない。それにぶっ潰しているために私は見慣れているが残骸がショッキングなのでそれを見させるのはどうかと思うので止めた。

 

まあ何よりの理由は一々それ使ってると流石に疲れるからなんだけどねぇ……

 

だから今は最低限の体力と妖力しか放出しない様に、妖の特徴を抑えておいてそれに応じて一気に殺す。

 

先程のは裏拳で殴る時、妖と私の拳の間の空気を押しつぶした瞬間に瞬間的にその空気を膨張させ、妖の細身を一気に折り、殴るように見せかけた物だった。

 

その際、勿論膨張した空気は妖だけでなく私の身体も押す…が、こっちは拳が跳ね返るだけで更に殺し切れなかった時の回避行動にも繋がるので一石二鳥!と言ったところである。

 

「ん~!終わった終わった、やっと一段落できるかなぁ…」

 

その時…

 

「キャアッ!」

 

「ん?また妖?」

 

一段落出来なかったなぁ、と思いながら女性の悲鳴が聞こえた方へ向かう。

 

するとそこには…

 

「んー?何だ、お前は…私に当たっておいて勝手に悲鳴上げおって…」

 

「も、申し訳ございません…」

 

頭を下げて女性が謝る、最も驚いたのはそこではなく謝る対象だった。

 

「私はお前らの命を守る陰陽師だぞ…謝るだけで済むと思うか?」

 

男は女性、そして周りの群集に向けて指を指しながら偉そうに言った。

 

そう、その男は陰陽師だった。

 

「陰陽師もここまで落ちぶれたかぁ…」

 

陰陽師はそれこそ都、それから民の命を護ると言った立場を理由に民に対して高圧的な態度をとっていた。

 

だがそれは些細な物で群集の多々いる通りをふんぞり返って歩き、民が避けていく様子を楽しむと言った馬鹿馬鹿しい物ではあったが、それでも直接絡むという物は見たこともなかった。

 

「んー?どうしてくれる?」

 

「申し訳ございません…」

 

「謝るだけでは済まないと言っているだろう!」

 

叱咤を受けている女性は涙目になりながら必死に謝っている。

 

耐えきれなくなった私は人混みを掻き分け、静止しようとした。

 

「ちょっと、やめな」

「おい、そこら辺にしとけ…」

 

声を掛けようとした時、どこからか静止の声が掛かった。

 

その声は何処かで聞いたことのある声だったが声の主はすぐ判明した。

 

「止めとけ、それ以上言うな」

 

聞きたくもない声だったが…

 

「何だ、お前は?」

 

「お前になど名乗る名前は無い…はぁ、陰陽師も民間人を理不尽に叱責するまで堕ちたのか?」

 

ほら、と座り込んだ女性に手を伸ばし、立ち上がった女性はそそくさと去っていった。

 

「黙れ!私は陰陽師だぞ?民を護っているのは私達だぞ!そいつらをどうしようが私の勝手だ」

 

やってることが正に本末転倒している。

 

すると、紅月は

 

「黙れ、それ以上何か言うと、首が吹っ飛ぶぞ…」

 

あ、少し妖力解放した。

 

周りが凍りつくような睨みと妖力で陰陽師は怯んでしまったらしく、

 

「ひっ……!…次は、覚えてるがいい」

 

と、捨て台詞を吐いて逃げていった。

 

「それはこっちの台詞だ」

 

そして、群集が散り散りになり私はそれに乗って帰ろうとした……が、

 

「おい、空神……見ていたろ」

 

嫌な奴に気付かれてしまった。

 

「…見てたけど、それがどうかした?」

 

私は仕方無く口を開いて睨んでやった。

 

「いや……特に何も無い」

 

だったら呼ばないでよ!と、相変わらず愛想の無い奴に向けて更に睨んでやった。

 

「そう……じゃ、私は帰る」

 

そう言って私もそそくさと帰ろうとした時に、

 

「あ、空神…ちょっと待て、時間あるか?」

 

これはどういう意味だろうか。

遂に私をどうにかするつもりなのだろうか。

まさか、誘拐?

有り得ないことではあるが、旗から見れば、齢17位の男と齢10位の少女が連れられていけば危なく見えてもおかしくない。

 

だがこいつがそんなことをする筈も無い、ではここで一つかけてみよう。

 

「…時間は、まあ一段落した所よ」

 

こいつにやっと空いた時間を取られるのはいい気分では無かったが聞いてやることにした。

 

「ここじゃなんだ、少し来い。」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

人通りの無い所まで連れていかれた。

これは客観的に見るとかなり危ない。

 

「…で、何の用?」

 

「空神も薄々感づいているかもしれないが、最近、妖共の活動が活発と思わないか?」

 

すると、紅月は私が最近最も気になっていることを上げてきた。

 

「…確かに最近、多いと感じる」

 

「やはりな、実はこれにはちゃんと原因があった…いや、まだ小耳に挟んだ程度だが」

 

「…」

 

「最近、陰陽師が愚痴を吐いているのを聞いてしまってな…『結界を破る妖め、折角私が張った結界を…』と言っていた。これがどういうことかわかるか?」

 

紅月の質問に応えることさえも癪ではあったが、仕方無く応える。

 

「…新種が現れた?」

 

「そうだ、従来の妖が結界内に入る際は陰陽師達の隙をついて結界のスキマから入ってくる。

だが件の妖は『結界を破壊し、堂々と入ってくる』妖だ。

つまり最近妖が都によく現れるのはこの妖が結界に大穴を開けてそれに続いて従来型の妖が入ってくるらしい。

そいつの厄介な所は聞いての通り結界に耐性があること、そして既に数箇所に穴を開けているらしい。」

 

「…うん」

 

相槌を打つ私に紅月は衝撃の言葉を口にする。

 

「ここからは俺の予想だが、このまま奴が穴を空け続けると結界はその役目を果たさなくなるだろう。

そして、近々、妖共が大勢で都に押し寄せてくると踏んでいる。

いくら陰陽師でも奇襲されれば対応できない。

ここは人口密集地だ、妖共にとっては最高のスポットだ。しかしそれを邪魔する結界が普段はある。

それも件の妖によって取り除かれている。

言ってしまえば、もういつ来てもおかしくない…そんな状況だ。空神も警戒しとけ。」

 

「…わかった」

 

紅月の言うことに驚いてしまったが、私もいつかあの人妖大戦の時のように押し寄せてくるのではないかと考えていた。

ただこれでその考えは確信へと繋がりつつある。

 

 

「俺から言うことはそれだけだ、それじゃあな…」

 

そして、紅月は去ろうとしたので、私も帰ろうとした時、

 

「あ、空神、あと一つだけ…」

 

「何よ」

 

私はまたまた睨みつける。

 

「…俺はお前を殺そうなんて思っていない…あの大戦は終わったんだ。今はただの同業者だ。」

 

私の考えを見透かしたかのように言ってきた。

 

「…どうだか」

 

「信用しなくてもいい、俺は俺でやっていく」

 

今度こそ紅月は去っていった。

 

そして私も紅月に不信感を未だ抱きつつ次の仕事の準備のため帰路についた。

 

 




今回は比較的多く書いたなと思います(小並感)
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