仕事の無い日は平和である。
「おお、そらちゃん!散歩してるってことは、今日は仕事は無いのかい?」
私は今、巡回しているつもりなのだが何故か巡回している時は妖は人を襲わない模様。
んで、大抵の場合、これまた都合の悪いことに家に帰った途端、妖は人を襲う様で私が外に居れば妖は人を襲わないのでは…と、錯覚する程だ。
「いえ、見回りを…」
「そうかそうか!散歩してるんなら家に来ないか?いい品があるよ?」
だから、私が巡回をしている時は何も起きないので散歩だと思われてしまう……道具屋の親父さんは話を聞かないことで近所で有名なので他の人とは違い、否定しても無駄な位だが。
「いえ…遠慮しておきます…」
理由は勿論、アイツが居るから。
「そうか、残念だ。じゃあ仕事頑張って!」
有り難うございます、と会釈して立ち去ろうとしたが
「あ!待ってそらちゃん!」
親父さんに呼び止められ、
「家の狐狛とどんな因縁があるのかは知らないけど、仲良く知ってやってくれ、アイツも悪い奴じゃないからな」
何かと思えばその話かぁ……それは無理な話だけど一応言っとくだけ言っておく。
「はぁ、まあ考えておきます。」
まだ信頼仕切っているわけでは無いけれど、最近はあの忠告もあったわけだし本当に悪い奴じゃなさそうに思えてきたからだ。
「うん、よろしく……それにしても…」
「?…なんですか?」
「いやぁね?狐狛がそらちゃんのことを『凶暴女』って言ってたんだけど…こんなに可愛いのにそんな風には到底、狐狛もどうかしてるな。」
前言撤回
可愛い、は置いといてアイツ少しでも気を許そうと思っていた私が馬鹿だった。
じゃあね、と親父さんは店に戻っていった。
それにしても、親父さんは私が見た目、齢10と少し位でどうして妖怪退治屋やってることにおかしく思わないのか、私は素朴な疑問を持ったので小梅に聞いてみた。
「ああ、そういえばそうね。多分そういう性格だからそもそも気にしてないのよ、だから多分紅月のことも気付いて無いわよ?」
さらっと、親父さんを貶している様に見えるが私も大体そう感じてた。うん。
そもそも、私を妖怪だって知ってる人は極僅かではあるし、違和感を持つ人自体、出動する時は逃げ惑う人たちを避けながら進むので誰も私のことを気にせず、逃げるのでいない。報酬は都を通じてご主人に入るので行政側も気付かない。
勿論、今までにも例外はあるが、それは一回二回の話なので問題は無い。
既に夕暮れ時だが私は散歩という名の巡回に出ようとして、
「…」
エンカウントしてしまった。
普段なら『いつも通り無表情な奴だ』で終わるのだが、今日は先程の親父さんの話の文句を言ってやる。
「ねぇ、親父さんから聞いたんだけど私のこと『凶暴女』ってどういう意味?私凶暴なんかじゃ無いわよ!」
「そのままの意味だが?…実際前に闘った時、容姿に似合わない位無理矢理やってたじゃないか」
冷静に言う紅月に私は更にイラついた。
「はぁ?もうあの時のことは水に流すって言ったじゃない!」
「それとこれとはまた話が違う」
「もういいわ、表出なさい!」
「そういう所だ、自分で示してるじゃないか」
「ぅ…」
悔しいが何も言えなかった。
紅月と話すとやはり疲れる、そう思った私は小梅には悪いが押し付けようと思って、そそくさとその場から立ち去ろうとしたその時、
パリッ、パリッ、パーンッ、と何かに亀裂が入り破裂したかの様な音がした。
また妖か…と、私は思った。
こういう、普段聞かない音を聞いた時は大抵、妖の仕業である。
普段、何故か力の弱まる日中にやってくる位には能が無い妖であったが今回は力の強まる夕暮れ時にやってきた。
やっと学習したか、と私は音のした方向へ……向かおうとしたが、
「待て、空神」
紅月の静止が入った。
素直に止まるのも癪だったが、
「何か嫌な予感がする…」
「はあ?今度はどうしたのさ」
「…」
「…何かあるの?」
そいつは確かに無表情ではあったが、いつもとは違う無表情であった。
…これまでに無い深刻な目で
「……空神、来たぞ」
「…え?」
「奴だ、俺の予想が当たった。」
『奴』…以前、紅月が言っていた『結界を破壊する妖』そしてそんな奴が単体でやってくる筈が無いと
私も理解していた。
「勿論、単体じゃないのよね?」
「ああ、恐らく…」
近所の人も音を聞いて家に篭っているらしく、この静寂な空間は薄暗い空を余計に不安を募らせる。
「…行くぞ、空神」
「…わかった」
相槌をうつ…と、そこに
「そら、行くの?」
小梅が家から出てきた、と同時に紅月はまたしても
「多野…お前も来い」
衝撃の発言をする。
「なんでよ、小梅まで来る必要は無いよ!」
「多野も妖怪だ、今回の敵は普段の雑魚とは違う……力が必要なんだ」
「だからって…」
そう言った私の言葉を小梅は遮る。
「いいわよ、行くわ」
「なんで、大丈夫だって、小梅は来なくても!」
「いいじゃない、私だって戦力にはなるわよ?最近、少し動きたいと思ってたのよ。それに、そら達だけに任せておくわけにもいかないわよ」
「…わかったよ、小梅」
「話はついたな、行くぞ……空神、俺達連れて現場まで跳べるか?場所は前に俺達が話していた所だ、分かるな?」
私はうなづいた。
瞬間、私は二人の腕を掴んで、空間跳躍した。
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「着いたッ!」
ガーンッ!と、何かを破壊する様な音の中、私達は降り立った。
「わっ、本当に一瞬で…そら、凄いわね」
「場所は合ってる…わね」
すぐそこの角を曲がった所から破壊音や奇声が聞こえてくるので間違いは無いだろう。
「ああ。早速だが、やるぞ?いくら雑魚とは言えこの数は多すぎる。俺は敵の親玉をやるからお前達は雑魚を塞き止めておけ…来て欲しいとは思わないが直に陰陽師も来る、それまでが正念場だ。陰陽師が来たらお前達も来い。」
「言われなくとも」
そうして、私は群れを成す妖共の陣に特攻をかけ、裏拳もどきもとい、空間圧縮技を喰らわせてやる。
すると、思いの外吹っ飛び、他の妖共まで巻き込んで直線道路を限りなく進んでいった。
「あっちゃぁ、やり過ぎちゃった?」
小梅に目を向けると、既に交戦しており、キャンプファイヤーしているかの様な炎が上がっていた。
「おーい!大丈夫?」
群がる妖共を直線道路の彼方へ吹っ飛ばす快感を覚えながら、小梅に問うてみる。
「あー、あはは…?そら、久しぶりの能力使用のせいか、少し加減が効かないみたい…」
先程の炎は更に燃え広がり、そこに能のない妖共が飛び込んできて面白いことになっている。
「まあ、いいんじゃない?建物に燃え広がってもここら辺に住居は無いし、宮中には誤魔化せるでしょ?それに…」
「それに?」
「久しぶりの戦闘だし、楽しまなきゃ!」
妖怪としての本能なのか先程から興奮が収まらない。
「ふふっ…それもそうね!」
小梅も同じ様な感じなので良かった。
そうして私達は炎を飛び越え、敵陣へと突っ込んでいった。
…東方要素が最近皆無ということに気付いてしまった