東方深空録   作:・落ち葉・

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漂泊の旅編
第三十四話 入るなって言われたら入りたくなるよね?


『旅』

 

旅と言えば目的地は勿論あるだろうがこんないきなり追われて都を飛び出して唐突に決めたのだから決まる方がおかしい……まあでもこの世界で場所知ってるのは諏訪子の所だけだし決めることも何もないのだけれども。

 

仮にも私達は追われている身なのでこういうのも心の余裕とかそういう所で何だが、里帰りするのも悪くないがそれではつまらない。

 

というわけで、

 

「小梅、目的地は『』だよ!」

 

「『』?」

 

小梅は昨晩の出来事で相当落ち込んでいたが、今はすっかり落ち着いている。

 

目的地『』とは要するに漂泊の旅。

あてのない逃避行ではあるが、そもそもこの旅の本来の目的は小梅の心を癒してあげることにあるので色々な体験をするためには遠い目的地より更にその先の「無」の方が良いんじゃないか…という魂胆である。ただ、どこかに暫く住むことも以前の様にあるかもしれないので悪しからず。

まあとりあえず小梅のケアが出来ればいい。

 

そんな漂泊の旅であることを小梅に伝え、とりあえず私達は紅月が去っていった方向とは逆の方向へ歩き出した。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

暫く雑草の生えた道を歩いていると土のみの舗装された様な道が出て来た。

 

「この先に何かあるのかしらね?」

 

村でもあるといいな、と思いながら道なりに進んで行くとこの道は道沿いの山に入って行くことがわかった。

 

「あら、村じゃないのね。」

 

小梅も村を期待していた様で、私も半ば残念に思った。

 

「どうする、小梅?このまま山に入る?」

 

「そうねぇ……この舗装された道も気になるし、入っても損は無いんじゃないかしら。」

 

私も同意見だ。

村に繋がって無さそうな舗装された道があって、その先に何があるのか気になる。

避けて通る意味も特に無いしね?

 

「そうだね。もし何かあれば直ぐに逃げればいい訳だし。」

 

 

そうして早速山へ踏み込んでみた。

道は山の斜面の比較的緩やかな所を選んで通っている様で山の中に道があるなんて今時珍しいなと思った。

 

 

暫く登って見たけれどまだ何かある様な気配は全く無い。

 

「こ、この道…一体何処に向かって…」

 

「あら、そら。もう疲れちゃったの?」

 

恥ずかしながら、体力の無さには自信がある。

この体だからなのかなぁ、などと私は私の身体を見回して嘆いてみる。

 

 

「まあ、それは置いといて…にしても薄暗いわね。」

 

小梅は私と同じ事を考えていた様で、まだ日は頭の上辺りだと言うのに高い木々が延々と林立していて暗く薄気味悪い程だ。

薄気味悪いと言えどもこれも妖怪の性だと言うのか、不気味ではないと言うのが本当の所だ。

 

「そうだね。それから…」

 

 

「…そらも気付いてる?」

 

どうやら察しているようだった。

さっき私は薄気味悪いと言ったが、その薄気味悪さは周りの木々の影からの視線が大部分を占めていた。

 

「どうやらこちらの様子を窺っているご様子で…」

 

「そのようね、数は分かる?」

 

「あー、えっと……」

 

私が視線を藪の方に目を向けようとすると、

 

「あ、そら。やっぱりいいわ」

 

と、小梅。

どうする気だろう、と見ていると

 

「ひょい、っと……これでいいかしらね。」

 

小梅は爪に能力で火を灯しで藪の方に向かった。

 

うーん、小梅が何をしようとしてるか容易に思いついてしまう。

 

 

「あー、そこに隠れてる誰かさーん?」

 

視線の元の方に向けて小梅は突然話しかけるが勿論反応は無し。

 

 

「今すぐ出てこないとこの藪に火をつけますよ?というか出てこなくてもつけます。」

 

瞬間、シュボッと藪に火がついた。

 

 

あ、ホントにやった。

 

私は無慈悲な行為をやり遂げて、こちらに微笑しながら戻ってくる小梅に、

 

「えっ、え?小梅?」

 

「大丈夫よ、大丈夫。もうすぐ飛び出してくるから。」

 

「いやいや、そういうことじゃなくて…」

 

中の人とか山火事になるとか、を慌てて伝えようとした所、小梅の言う通り、

 

「ッ!ああっ!熱っ、熱い!誰ですかぁ、こんな事やったのは!?」

 

大きな黒い翼が特徴の少女が慌てて飛び出して来た。

 

「私よ?」

 

小梅はしっかり答えたつもりだったが、当の少女は慌てふためいて耳に入っていない様子だった。

 

というかそうじゃなくて、

 

「小梅!火!火!どうするの!?」

 

私が同じように焦っていると、小梅は「あー」と言いながら、

 

「よっ、と」

 

燃え盛る炎の中に人指し指を突っ込んだ。

小梅は熱がる様子も見せずにいて、それよりも驚くべきは、小梅のその人指し指に炎が集まって来ている事だった。

 

やがて、炎が完全に元の人指し指に灯した火の大きさに戻った所で火は消えた。

 

呆然と見ていると小梅は察したのか、

 

「あー、これはね。」

 

聞くと、先の宿儺騒動の時に得た技で、人指し指から出した火を自らの任意で拡げたり縮めたり出来る、という事らしい。

 

 

私は小梅の話を真剣に聞いていると、

 

「うう……見つかってしまったのなら仕方ありませんね。」

 

飛び出して来た少女がやっと落ち着いた様で私たちに話しかけながら起き上がった。

 

「率直に申し上げます。今すぐここから出ていきなさい。この山は私たち天狗族の領地です、部外者が立ち入るのは禁じられています。族長様から許可が下りれば別ですが。」

 

「まあ取り敢えず出ていけってことね?」

 

小梅は問う。

 

「はい、そういうことです。」

 

私と小梅は顔を見合わせる。

どうやら考えていることは同じ様だ、なら話は早い。

 

「あー、すいません。実は道に迷ってしまって、ここら一帯の地図を貸していただけませんか?」

 

私は笑顔で頼んでみる。

 

「…仕方ありませんね。はい、こちらが地図です。」

 

その地図には案の定山頂までの図がはっきりと記されていた。

 

「これって正確な地図ですか?」

 

今度は小梅が問う。

 

「ふふ、そうですよ。我が天狗族が威信にかけて、上空から!地上から!地中から……は流石に無いですが我が天狗族の測量班が威信にかけて作り上げた地図です!間違っているなんて有り得ませんよ!」

 

 

「そう…」

 

私はニヤッとする。

 

「小梅っ!掴まって!」

 

「はーい」

 

「目標は山頂!それじゃ、どうも有難う御座いました!」

 

「えっ、ちょ、何を…」

 

え?私のこの技は行ったことのある所にしか行けないんじゃなかったっけって?

ところがどっこい、度重なる跳躍で高精度な地図ならある程度の距離は問題無くなる程に進化したのだった!

 

行ったことのある所に行くのより疲れるけどね。

…ホント、体力無いなぁ。

 

己の未熟さを感じながら、呆然としている少女を前に私達は空間跳躍をしたのだった。




今度の編は一話じゃ終わらせませんよ?(^-^;
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