「『ヤマト』に紡がれる歴史 内惑星戦争の真実」 作:お猿プロダクション
一応、あるんだけどね。未完のままカビが生えてるやつ。
私は、確定した未来というものを信じない。一介の番組記者でしか無い私だが、やはり信じられない物は信じないし、怪しい者は訝しむ。
18世紀の数学者が生み出した悪魔は、20世紀に掛かる頃には形骸化し、その名だけが一人歩きして市井の間に広がっていったと記憶している。だがこの23世紀の世になってその悪魔は骨肉を揃えて「未来人」を自称し、再び我々の前に現れた。
彼らの技術。彼らの情報。彼らの言葉。そして何より、彼ら自身の姿。………我々は
彼ら───デザリアムを名乗るあの異星人は、今や地球にとって最大の友邦となっている──────血の同盟を得たはずの、ガミラスに背を向けて。ガトランティス戦役で太陽系の各地で沈ん何百何千というガミラス軍艦の犠牲は何だったのか………先日、失意にも似た表情を浮かべ、私達の勤めるオフィスから追い出されるようにして退職したガミラス人の同僚を思うと、不憫に思えてならない。彼らは先日、ガミラスの輸送船に乗って新天地ガルマン星に向かったらしいが、無事にたどり着けただろうか……?
そのデザリアムは、今や地球を滅亡の窮地から幾度となく救い、かつての敵手ガミラスをも救い出した伝説的戦艦、宇宙戦艦『ヤマト』とそのクルーを強く敵視し、その行動と結果を強く赫怒しているようだ。それは、彼らの市井に流す情報やその報道の仕方によって幾らでも判ったが、それ以外にも私が確信めいてそう断ずる理由───根拠では無い───がある。
1年前放映され高い視聴率を獲得した“「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択”と題される、宇宙戦艦『ヤマト』を主題としたドキュメンタリー。私の携わる番組は、この名作ドキュメンタリーの後釜を任されたのだが、デザリアム───正確には、現地球政府───の介入がここにもあったらしい。らしい、というのは私が直接見聞きしたわけではなく、どちらかと言うと勘や憶測に近いのだが……。
私達の番組はデザリアムの影響の強まりと前後して、誤解を恐れずに言うならば「反『ヤマト』的番組」へと、その装いを変えていた。ここで主張しておくが、私たちの番組はなにも親『ヤマト』的な物を作っていたわけではない。つまりは、大して親『ヤマト』的な内容でない我々の場所にまでも、態々───そう、態々である───彼らの手がこんな所にまで侵食して来ている、という事だ。
表立って『ヤマト』を批判的に描く番組構成では無かったが、見る人によっては今現在の『ヤマト』の行動と、それに連動していると見られる反デザリアム派のレジスタンス運動に対して目くじらを立てさせようと云う目論見が見え隠れする、
即ち、今や、我々メディアすらもデザリアムの声と化し、彼らにとって耳障りよく、その喧伝すべきとされた事柄だけを口走る走狗と成り果てたのだ。いずれ何が真実で、何れが本当で、そして誰が何だったのかも判らない日が来るのかもしれない。或いはもう、そうなり始めているのかも──────そして、私自身すらも、そうならないという確証はどこにも無い………未来は不確定なのだから。
そのため私は、以前の番組制作の為に集めた、幾つもの証言と取材から得られた過去の「事実」と「真実」を、私以外の全てと、
やりたいから、やるのだ。
なお、これはあくまで番組制作のために集めた、精査前の情報である事には留意されたい。個々人の記憶を基にしていることから曖昧で、半世紀前にまで遡る内容すらある。なかには、嘘の情報も紛れている事だろう。だが、この中にもきっと、歴史の中で埋もれ、見えなくなってしまう運命にあった「事実」や「真実」があったと、私は心から信じている。
最後に。
私はこの文章を書き終わった後は、私でも分からない適当なパスワードでロックを掛け、メモリーを物理的に別の場所に保管するが……願わくばこの文面を目にしているのが「人」の子である事を願っている。
A.D.2207 11
「『ヤマト』に紡がれる歴史 内惑星戦争の真実」旧番組クルー
前々から考えてた内惑星戦争のお話を紐解くお話です。好評なようなら続くかも?