「『ヤマト』に紡がれる歴史 内惑星戦争の真実」   作:お猿プロダクション

2 / 2
ああらすじだけじゃアレなんで、突貫でなんとか仕上げたちゃんとした1話目的な。


第一報 戦前
2───「木星の火薬庫 1」───


 ガミラス戦争によって、地球上では少なくない史料の喪失があった。特に内惑星戦争前後に纏わる史料は当時の軍事的機密的観点からも多くが民衆に触れられる事なく、無くなったことすら判らないという状況となってしまった。

 

 そこで我々番組スタッフは、いくつかの取材班に分かれ、私のいた班は軍事分野に関する史料集めの一環として、個人への証言、取材を行う事とした───私がこの班のことをクルーと呼び始めたのはこの取材が始まってから暫くである───。そこでまず最初に集めるべき情報は何かを精査するうち、"原因"を探るのが最初だろうという結論に至った。

 

 ガミラスが、惑星の寿命に起因する民族の絶滅を回避する為、地球を攻め滅ぼそうとした様に。

 

 ガトランティス───ズォーダー───が、絶望から汎ゆる生命の「救済」を目論んだー様に。

 

 物事には「始まり」の前に原因が存在する。

 

 私達はその一因を探るべく、内惑星戦争以前の星間情勢、ひいては当時の惑星地政学に詳しい2名に接触することができた。両名とも当時は産まれていないか歳幼い頃であったが、この分野の研究において一目置かれる方である。

 

 1人は宇宙防衛大学で教鞭を振るい、宇宙軍史研究を専攻している三川(みかわ) 重則《しげのり》教諭。彼は第二次内惑星戦争に従軍しており、その件でものちに取材させてもらう事になるが、これは別件であるためここでは割愛する。

 

 そして今1人は、地球連邦大学の宇宙物理学部長を務めるサイモン教授である。彼は宇宙物理学者であるが、木星の持つ物理的な性質が当時の星間情勢に大きく影響を与えていた事を理解しており、当時の史料を個人公人の立場を問わず多く収集している。

 

 この日はサイモン教授の休暇を偶然割いて貰うことができ、取材に漕ぎつけた。場所はサイモン教授の邸宅にある書斎。………失礼な話、宇宙物理学の世界的権威として知られる教授の住む場所としては、些か簡素に思えた。だが当のサイモン教授は絵に描いたような研究者気質で、自宅に求める物はリラックスできるリビングと、最高に睡眠を提供してくれるベッドがあれは、それで良いのだという。

 

 そして我々の前に家主が現れた。今年───取材時2206年───63歳を迎えたサイモン教授はしかし、鉄筋でも入れている様にピンと伸びた長身を、とても軽やかに、2足で運んで現れた。

 

 

 ───よろしくお願いします。

 

 

 ああ、よろしく。

 

 

 ───改めてお聞きするのですが、サイモン教授は宇宙物理学者にも関わらず、内惑星戦争前後の惑星地政学に詳しいと伺いました。それは、何故ですか?

 

 

 ………これは、意外と簡単な話です。惑星の持つ物理的性質が、当時の星間情勢を左右していたからなのです。それは惑星の大きさであったり、惑星の組成であったりします。当時の………いや、今もそうかも知れませんが、我々地球人類の科学技術力は、惑星程巨大な天体の持つ物理的性質に抗える程のパワーを、あらゆる面で有していませんでした。つまり、人類の宇宙活動は、この太陽系惑星に左右されていたと言っても、過言ではありません。これらの惑星の秘密を紐解こうとすると、自然に当時の星間情勢も、知識として調べなければ……ならないのです。

 ……では、当時の話をしましょう。当時の惑星地政学的に、地球と火星に大きな関係があったわけではありません。正確には、これに木星を加える必要がありました。

 

 

 ───木星、ですか。

 

 

 ……そうです、太陽系最大の惑星。今更言う話でもありませんが、あの惑星は組成の大半がガスで出来ています。当時───具体的には、核融合推進機関が発達する以前───は、ガスや化石燃料を利用した非常に効率の悪いエネルギー機関が主力でした。その原料として、木星という惑星それそのものが利用されていたのです。

 ……火星は、地球と木製を繋ぐ中継地点として理想的な位置にありました。これと、木星=太陽間のラグランジュ点にあるトロヤ群やヒルダ群を合わせて、巨大な空間交通路(スペース・レーン)が完成していました。火星はその中心的立場(チョークポイント)として、宇宙開拓史の初期から栄えていたのです。デルタV……昔に使われていたロケット推進に関する公式なのですが、こうした式が使われていた宇宙技術が未発達な時代、直接地球から宇宙船を打ち上げるのはコストが掛かりすぎていました。より、重力の少ない星──────月や、それこそ火星などが、当時の中継点として強く重要視されたのです。

 ……結果、火星には人と物と富が集まり、発展し、政治的

 な独立性を確立する基礎が出来上がったのです。………と、こんなところでしょうか。

 

 

 ───ありがとうございます。しかし、惑星は動いています。惑星地政学では、こうした惑星の公転はどのように扱われるのでしょうか?

 

 

 ……そこが少し難しいところです。例えば、火星に入植が開始された2111年は、まだ木星への航路も完成していませんでした。また数年おきに、火星を中継するより地球から直接木星へ向かうほうが効率的なタイミングもあります。この場合、火星では地球との物的交流が少なくなり、火星での対地球比重が薄れた原因でもありました。

 地球上でかつての国家が、様々な気象に悩まされたと言っても、それは現地の話です。惑星はその現地そのものが動いてしまうわけですから……「これ」という明確な正解は無いんです。まぁ、私の専門が宇宙物理で、惑星地政学は必要から齧ってるだけだから……と言えば、それまでですが。

 ……あぁ、そうだ。少し失礼。

 

 

 サイモン教授は一通り話し終えると、書斎から資料らしいメモリの束を手にした。そこから一本を取り出しデスク上のデバイスに挿し込んだ。どうやらそれは空間投影機であるようで、サイモン教授は授業を取り仕切る様にして再び口を開いた。

 

 

 ……これを見てください。木星のガス。これらは多くの場合、先程言ったように火星を中継して地球に送られていました。これはその量を示したグラフです。……このグラフ自体は、昔、私が木星から採掘(……)されたガスの総量から木星に与えた影響を考察する為に作った物です。

 ある時期から、地球行きのガスの量が減っているのがわかりますか?ガスの採掘量は大きく変わっていないのに……公転の影響で輸送量が上下する事はあるにせよ、この時期からずっと右肩下がりです。ここ……2150年代。

 具体的に何があったのかは今少し覚えていないのですが、地球が火星を必要としなくなったタイミングがここでありました。なんだったか……ああ、こんな事ならもっと当時の歴史書を漁っておくんだったね。

 ……とにかく、この時期を境に地球と火星の間柄が悪くなっていたのは、間違いない。元々、木星からのガス供給の中継点として栄えていた訳だから、何かのタイミングでその中継が必要無くなってしまえば、それは火星も干上がってしまうでしょう。世代を重ねてテラフォーミングをしていたと言っても、惑星そのものを根本から変えられる訳じゃない……それこそ、コスモリバースじゃないのです。

 ……知っていますか?火星の土壌は毒なのですよ。過塩素酸塩という猛毒です。火星の開拓者はまずこれに大いに悩まされていたのは、想像に難くありません。それに環境を整えたからといって、結局、火星は寒い惑星です。地球の協力無くして成りたたないのに、この時の火星からすれば梯子を外された気分だったでしょう。なんせ、最大にしてほぼ唯一の取引が先細る一方な訳ですからね。

 ……こうした物理的な事情を掻い摘むだけでも、当時の地球と火星の状況というのは少しは知ることが出来ます。……まぁ本当に少しなのですが。きっと私が話した事などは、当時起こった多くの出来事の1割も満たしていないでしょう。こんなので良ければ、私の話は以上にしたい。これ以上下手なことを喋ると、ボロが出そうだからね。

 

 

 ───いえ、そんなことは。サイモン教授、貴重なお話をありがとうございました。

 

 

 ……いいや、こちらこそ。むしろ、こんな程度の話しか出来なくてすまないと思っている。殆ど門外漢の口出しだ───また機会があれば、話をさせて欲しく思います。

 

 

 ───こちらこそ。サイモン教授のご活躍を祈っております。

 

 

 

 時間としては短いが、我々は興味深い話をいくつも聞けたと考える。また、実際に対面したサイモン教授という人物の人となりにも、良い印象を覚えた。彼の様な人物が、今後さらに地球を恒星間文明として更に栄えさせてゆくのだろうか……サイモン教授は現在、連邦大学の宇宙物理学研究所で太陽観測・研究に纏わる指揮を執っている。

 

 ──────なお、余談だが、この人当たりのよい十全健康な賢老が、かの「英雄」沖田 十三と、宇宙物理学の博士号課程に於ける先輩後輩の仲であったことは、意外と知られていない。

 

 A.D.2206 10.18 トリプアファ・サイモン 教授 




マリグナント・メモリーまだ読んでねぇな……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。