追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~ 作:nene2012
入って来た男は魔王ギルバルスであった。相変わらず虚無感を感じさせる目で僕を無表情で見ている。
「魔王様、アベル殿がお目覚めになられました」
グレギギは恭しくギルバルスに向かって頭を下げている。
そんな彼の行動に対しても意に介さず彼は僕に近付いてくる。
「さて、アベルよ……お前は何者だ?」
「えっ? 僕はただの人間ですが……」
「ふむ……その割には異常な力だな……魔力を吸収する能力など魔族を含め誰もおらぬぞ」
「……」
ギルバルスの言葉に何も言い返すことが出来なかった。
彼は僕の目を見詰めながら言うのである。
魔王から目を見詰められ、僕は目を逸らす事しかできなかった。
「アベルよ……お前の力は神から与えられたものなのか?」
「い、いえ……」
唐突な彼の質問に心意が分からず戸惑ってしまう。
この世界の神でないが僕の力の本質がアジェである事に説明に迷う。
「ふむ……では、再度聞くがその力を私の為に貸してくれるか?」
「……」
僕は何も言えず沈黙してしまう。そんな僕を見てギルバルスは溜息をつきながら言うのである。
「まあよい……後で私の部屋に連れてこい、グレギギ」
「はい、かしこまりました」
そして、彼はグレギギに命じ部屋を出て行くのであった。
ドアが閉まるとグレギギは僕達を見て言うのである。
「魔王様の命令だ……後で、お前を魔王様の部屋に連れて行く」
「何故、魔王は僕の力を欲するのですか?」
「さあな……それは私にも分からない」
グレギギはそう言って僕の問いに答えようとはしない。
そして、彼は僕を見て軽蔑と憐れみが混同した表情で言う。
「まあ……魔王様の機嫌を損ない殺されないように尽力するんだな」
そう言い残して彼も部屋から出て行ったのであった……。
グレギギが出て行って 僕達はしばらくの間、無言で呆然としていた。
だが、いずれ魔王の部屋に連れて行かれる事を思い出し不安で落ち着かなくなる。
「アイラさん……どうしよう?」
「まあ、なるようにしかならんさ。とにかく、今は待つしかないな……」
彼女はそう言うとベッドの上に座り、あぐらをかく。そして、目を瞑り集中していく。
アイラは今、精神統一をして心を落ち着かせているようだ。
僕は彼女の瞑想をボケーッとただ見ているだけであった。
そんな時、僕の耳にアジェの声が聞こえてくる。
『はぁ……いつまで、ボンヤリしてるの?』
「いや、だって……」
『まあ、不安なのは分かるけど……魔王と2人きりになるという事は、あたし達にとっては最大のチャンスなのよ』
「分かってるけど……」
アジェの言葉に頷きながら返事をしている姿にアイラは片目を開き何事かと僕に訊いてくる。
「アベル……又も独り言を言ってるみたいだが、何か聞こえるのか?」
「えっ? いや……なんでもないです」
僕は慌てて誤魔化そうとするが彼女は片目で僕をジーッと見ていた。
暫くすると再び瞑想を始め精神統一する為に集中していく。
やや時間をおいて、ドアが開き誰かが部屋に入ってくるのである。
武装した魔族の兵士が2人部屋に入り、僕達に告げてくる。
「魔王様がお呼びだ! 付いて来い!」
彼等も魔族であるので瞳は赤いが角が無い。もしかすると上位種の魔族だけに角が生えるのかもしれない。
魔族の兵士達はアイラを、そのままにし僕1人だけ部屋から連れ出す。
そして、長い通路を歩かされ大きな扉の前に辿り着く。兵士は扉を手でコンコンと叩き合図する。
すると扉の向こうから返事がした。
「何用か?」
「魔王様……アベルをお連れしました」
「うむ……入れ」
「はっ! 失礼致します」
兵士はそう言うと扉を押し中へ入っていく。僕もその後に続いて入っていく。
魔王の部屋に入った僕は、まず部屋の高さに驚いた。そして、窓が1つしかない。
彼の部屋は広さより高さがあり見上げないと天井が見えない程である。
そして、その部屋の奥を見ると豪勢な椅子があり、そこにギルバルスが座っているのである。
彼は僕を見てニヤリと笑い、手招きをする。
「お前達は下がれ……アベルよ、こっちへ来い」
僕は彼に従い椅子の前にまで歩いて行くが緊張の為か足が震えている。
その後ろでは兵士達が扉から出て行った。ガチガチになった僕の姿を見てギルバルスは暗い目で微笑む。
「フフフ……そう緊張するな、別に殺しはしない」
彼は手を広げ冷めた目でニヤニヤと笑うのである。
椅子に座る魔王の前に立つと緊張で動けなかった。
そんな僕を彼がジッと見詰めている。その目からは依然として虚無感が漂っている。
僕の様子を見ていたギルバルスは暗い微笑を浮かべ言ったのである。
「アベルよ……お前は古来から魔王と勇者が血で血を洗う展開が、いつ迄も繰り返されていると思わんか?」
「えっ? 何を言って……」
彼が何を言いたいのか僕には意味が解らなかった。そして、魔王は鋭い眼光で僕を見据え言う。
「私の……この力は神から授けられたのだ……」
「ええっ!?」
魔王の答えに僕は衝撃を受けた。
彼は少し悲しげに見える表情で更に話しを続けるのである。
「力を得るまで私は普通の上位の魔族であった……だが、ある日を境に力を授けられ魔王として君臨する事になったのだ」
ギルバルスの言葉に唖然とする。まさか、神が魔族に力を授け人間と対立させているなんて信じられなかった……。
「百年以上前に神から祝福された勇者が我に仇なしてきて退けたが、今度もそうなるとは限らん……」
「……」
僕は黙って彼の言葉を聞くしかなかった。
ただ、用心深く話を聞く僕を見て魔王からは自分の話が懐疑的だと思ったのか更に話しを続けるのである。
「いや……お前が疑念を抱くのも無理はない。事実として勇者も神の思惑通りに動かされているがな……」
「それってどういう事ですか?」
思わず魔王に訊き返す。すると、彼は少し間を置いてから話し出す。
「神に選ばれた勇者には人間離れした尋常でない力を与えられる。それは魔王と戦っても引けを取らない力をだ……」
「えっ? まさか……」
思わず驚きの声を上げてしまう。そして、魔王は更に話を続けるのである。
「おかしいと思わんかね……人間と魔族の存在能力を比較したら当然、魔族の方が上だ。なのに何故、昔から勇者は魔王に匹敵する力を得て戦うのだ?」
「それは……神が人間側に肩入れしてるからでは? 神への信仰の殆どは人間の信仰心によるものですし……」
「信仰は神にとって必要なものだが、そんな事は関係ない……神は魔王と勇者を争わせて、どちらが勝つか楽しんでいるだけだ」
「えっ? そんな馬鹿な! 神ともあろう者がそんな事するわけが……」
つい、魔王の言葉に声を荒げて反論するが彼は僕を同情するような表情で見詰めて言うのである。
「アベルよ……神は人など見ていない」
「そ、それは……」
「神は……高みの見物をしているだけで何も感心を示そうとしていない」
僕を見詰めながら更に話しを続ける。彼の目が虚無感に溢れているのは、その事実に気付いたからだろう。
そう思うと僕も彼の立場が気の毒に思えてくる。
魔王である限り、彼を倒しにくる神から力を与えられた勇者が狙ってくるのだから。
ギルバルスは椅子から立ち上がり、ゆっくりと僕の方へ歩み寄って来た。そして、僕の肩に手を乗せて言う。
「アベルよ……お前が私の魔力を吸収して、魔王としての力を奪ってくれれば肩の荷が下りる……」
「そんな……」
彼の言葉に愕然としてしまう。だが、彼は神に選ばれた勇者との戦いに疲れたのであろう。
その疲弊と消耗から彼の目には虚無感が漂っていたのではないだろうか?
そう考えると彼の気持ちにも同情してしまう。
僕は彼の目をジッと見詰め、そして言ったのである。
「わかりました……ギルバルスさん」
「うむ……魔王としての力を抜き取ってくれるのか?」
「その代わり、僕達と勝負してくれませんか?」
「何っ!?」
彼は予想外の答えに理解が追い付かないようで眉間に皺を寄せ困惑していたのであった……。