追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~   作:nene2012

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魔王の呪術と妖術

 魔王とアジェの戦いの傍で、ガラドとニルスはアベルが見せた触手に思わず目を丸くして観ていた。

 そして、2人は同時に口を開くのである。

 

「ねぁ……あの触手みたいなのは何?」

「儂もわからんが、あれは魔法なのか?……」

 

 2人共、初めて見るアジェのオーラに驚きを隠せない様子であった。

 そんな彼等の呟きとは別にアイラとバルバラもアジェの力を見て呆然としている。

 

「あの触手みたいなの……何なんだ?」

「わ、私も分からぬ……あれは魔法なのか? アベルは本当に人間なのか?」

 

 アイラはバルバラにオーラの触手のことを聞かれるが答えられる筈もなく、ただ困惑した表情をしている。

 彼と行動を共にし、冒険中一緒にいた彼女達でも初めて目にする事であった。

 

 4人共、アベルの身に宿る異世界の女神であるアジェの事は知らない。

 今のアベルは彼等からしたら異質な存在であり、得体の知れない人ならざるものに映っていたのである。

 

 そして、その異質な力の一端を見た魔王は驚くと同時に背筋に冷たいものが走っていた。

 彼が見てきた人間で今のような力を使ってきた者など居なかったのである。

 神から力を与えられ戦ってきた勇者や聖女にも、このような力は見たことが無かった。

 

「お前は……人の姿をした化け物か?」

「いえ……僕は人間ですってば」

 

 ギルバルスの問いに彼は真顔で答えるのであった。

 それでも魔王にとって、信じろと言われても受け入れがたい話である。

 だが、彼は平静を装うと次の瞬間にも行動に移すのである。

 

 魔術が駄目なら呪術……それとも妖術か……。

 彼はそう思考を巡らせると、念を込めながら詠唱を唱えるのであった。

 

「我が怨念よ! 我が敵の身体に侵食し呪い殺せ!」

 

 魔王は手をアベルに向けて叫ぶように詠唱を唱える。

 すると、僕に向かって漆黒の霧が体を覆う様に包み込んだ。

 

「くっ……苦しい!?」

『どうしたの!?……大丈夫!?』

 

 体中に纏わりつく霧によって、まるで生命力を奪われている感覚に陥る。

 アジェは僕の身を案じて心配してくれるが、それどころではない……。

 

「うぐぐ……身体が重い……息をするのも苦しい……」

 

 僕は身体に纏わりつく霧に苦しみながら、胸を押さえ膝をつく。

 

「くくくっ……どうだ、呪術の味は?」

 

 ギルバルスは僕の苦しむ様子に満足しながら言う。

 だが、僕は苦しみに耐えながらも、この霧が魔王の魔力から作られたものだと気付く。

 

(呪術、これも魔王の魔力……アジェに取り除いて貰わないと……)

 

 そして、その事に気付くと同時にアジェが僕に話し掛けてくるのである。

 

『ねぇ……あたしが吸収するから安心して!』

「……頼む」

 

 僕は彼女に委ねると、彼女は僕の身体に纏わりつく霧を吸い込み始める。

 すると、徐々に身体が楽になっていき息苦しさが無くなったのであった。

 

『アベル! もう苦しくない?』

(ありがとう……楽になったよ)

 

 アジェが漆黒の霧を吸い込むと僕の周りは晴れて、はっきりと見渡せるようになった。

 僕は彼女のお蔭で苦しみから解放されると立ち上がり魔王に言うのである。

 

「貴方の呪術は無効化しました……続きをやりましょうか?」

「魔術につぎ呪術まで失せるとは……」

 

 歯ぎしりしながら僕を睨むように呟く。

 魔王はアベルに呪術が通じず、無効化された事に戦慄していた。

 だが、それでもギルバルスは諦めずに次の手段に移行するのである。

 

「では……これならどうだ! 〇#◇*$×@¥~!!」

 

 何やら得体の知れない言葉で呪文を詠唱する。

 それと同時に右手の人差し指を僕に向けて、ゆっくり指差す。

 

 その後には何も起きていない――と僕は思った。

 光も炎も雷も見えかった。だが、自分の感覚がおかしいことに気付く。

 そう……ゆっくりと自分の手足が自分のものじゃない感覚になっていくのである。

 

「な、何これ!?……」

『アベル! 何が起きてるの!?』

 

 地面に立っている足裏の実感が遅れて後から追いかけるのである。

 自分の手足なのに、思い通りに動いているのかさえ分からなくなる。

 

 自分の体と感覚の間に、薄い膜が一枚挟まったような感覚であった。

 そればかりか意識すればするほど、全身に広がっていくような違和感に襲われるのであった。

 

「くくくっ……どうだ? これが妖術だ……初めての体感だろう?」

 

 ギルバルスは歪んだ笑みを浮かべ勝ち誇ったように話す。

 だが、彼が話している言葉も耳に入ってこないぐらいに意識が朦朧とし視界が揺らぎ始める。

 

「う……うぅ……」

 

 僕は呻き声を洩らすと自分がどこにいるのかが、分からなくなってきた。

 自分の手は見えているし、魔王も目の前に存在している。

 だが、自分が今この場に居るという確信が薄れてくるのであった……。

 

 

 

 この時、彼の仲間達は魔王の目の前でアベルが棒立ちになって放心状態になっているのを目の当たりにする。

 そして、魔王がアベルに術を掛けた事で茫然自失になっているのが遠くからでも分かったのだった。

 

「アベル! どうしたんじゃ?」

「何が……あったんだろ?」

 

 ガラドとニルスは心配になり、お互いに問い掛けるが全く理由がわからない……。

 心配する彼等がオロオロしている間にアイラは、アベルが固まっているのを見て呟く。

 

「これは……まさか……」

 

 彼女は魔王の行った術を見て何かに気付いたのか、険しい表情になる。

 そして、その隣にいたバルバラは彼女の呟きに反応するのである。

 

「一体……どういう事だ?」

「あれは妖術……それも、かなり高度なものだ。」

「妖術?……なんだそれは?」

 

 バルバラはアイラの言う妖術という聞きなれない言葉に首を傾げる。

 だが、彼女はアベルが硬直して立っているのを見て察したのか険しい表情をしていた。

 

「あの魔王は妖術を使うとは聞いていたが、まさかこれほどの物とは……」

 

 古エルフは魔王への評価が変わり、同時にアベルが逃れる術が無いと悟り歯ぎしりするのであった……。

 

 

 

『アベル!……どうなってるの!? 何か返事して!』

「……う……うあっ……」

 

 アジェが質問してくるが僕には普通に答える事も出来なくなっていた。

 彼女が何かを言っているのは分かるが、それが何を言っているのか理解できない。

 

 視覚、聴覚すべてがガラス一枚を隔てた向こう側のような出来事に感じていたのである。

 それは妖術によって意識が外側から強制的に剝離させらていたからだ。

 

『ねぇ!……アベルってば!』

「う、うぅ……」

 

 僕は彼女の呼び掛けに反応しようと意識を集中させるが上手くいかず呻き声を洩らすだけだった。

 だが、そんな僕の様子など気にも留めずに魔王は笑いながら話してくるのであった。

 

「くくくっ……自分の感覚が無くなって、どうすることも出来まい」

「……」

 

 魔王が何か言っているのは分かるが、僕はそれに反応する余裕さえなかった。

 ただ、この術を解かなければ……とだけ考えていたのである。

 

 だが、その術を解くにはアジェの協力が必要なのだが……。

 彼女は僕の様子が変だと気になり心配になって話し掛けてくる。

 

『ねぇ……大丈夫なの?……』

「ごめん……無理。助けて……」

 

 僕は弱々しく答え、情けない声を出して助けを求めてしまう。

 

『しょうがないわねぇ~あたしがアベルの体を思い通りに動かすから、その間は自分の意志で動かせないけど、いい!?』

「うん、お任せするよ……」

 

 僕は力なく答えると、彼女に体の自由を任せるのであった。

 意識はあるが体の自由が効かず感覚もないので自分の目で他人の体を観察しているような気分だ。

 

 変な気分だけどアジェが体を操っているから、もうどうすることも出来ない。

 そして、彼女は僕の意思とは関係なく勝手に魔王に向かって歩きだすのであった……。

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