追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~ 作:nene2012
アジェは異世界から召喚された神的存在なので神の敵になるのは当然の事である。
そもそも、本来この世界には存在しない神であり、イレギュラーな存在であるのだ。
だが、アジェは神と敵対する事を恐れるどころか喜んでいるようにも見えたのである。
そんな彼女は僕に向かって言う。
『あたし達は、これから神の支配に対して反旗を翻さないとね』
「……でも、どうやって?」
僕は彼女が、いとも簡単そうに答えるので不安になり聞き返す。
するとアジェは自信たっぷりの表情で答える。
『大丈夫だよ!……あたしに任せればいいって!』
「うう……ホントに大丈夫かな~……」
この間、ギルバルスは僕が自分の中の女神と対話しているのが分かっていても独り言を喋っている姿に奇異の目で見ていた。
「話しているところ、申し訳ないが勝敗の結果を皆に伝えないといけないんだが……」
ギルバルスは申し訳なさそうに言う。
『あ……そうだった』
「アジェ、もう体を返してくれてもいいよね?」
『うん!……いいよ!』
僕は彼女の返事を確認すると、体の主導権を返すのであった。
そして、ギルバルスは審判に向かって耳打ちしながら言う。
それを聞き審判は驚くが仕方なく観客達に向かって高らかに叫ぶ。
「しょ、勝者は……アベル!!」
すると会場は静まり返ってシーンとしてしまう……。
それもそのはず、対決していると思ったら出し抜けに2人が接吻を交わしていた。
そうかと思えば互いに長々と話をしだし、ようやく離れたと思ったら敗者は魔王だという。
そんな光景を見せられては、観客達は何が起こっているのか訳が分からず混乱してしまうのである。
「え~っと……」
審判もどう反応していいのか分からないので言葉に詰まる。
すると、ギルバルスはそんな観客達に向かって言う。
「皆の者……私は先程、魔王としての力を彼女から奪われた。そして、魔力を吸われて、ただの魔族に成り下がっている。だから……私はもう魔王ではない」
ギルバルスは観客達に向かって宣言する。
すると、観客達は一瞬静まり返るが暫くしてざわつきだす。
「ええっ……魔王が負けたって?」
「人間如きが魔王に勝った?……」
「じゃあ、次の魔王は誰なんだ?」
観客達は動揺して口々に疑問を投げかけてくるのであった。
そんな彼等に向かってギルバルスが言う。
「皆の者……私は魔王ではなくなった! 新たなる魔王の誕生を心して聞くのだ!」
彼は力強い言葉で言い放つと、更に続けて話す。
「次の魔王として、アベルを新魔王とする!」
「はぁっ?!」
突然、僕を指差し新魔王にすると言い出すので思わず変な声が出る。
そして、観客達は一瞬静まり返るが徐々にどよめきだす。
「えっ……今なんて言った?」
「次の魔王って……」
「確か、あのアベルって人間だよな?」
「魔王様が人間風情に敗北したのか?」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
だが、ギルバルルスは構わず話を続ける。
「皆の者よ!……私は彼女に敗北し魔王としての力を奪われた!……これを以ってアベルが魔王として相応しいと思うぞ!」
そして、観客達に向かって高らかに宣言するのであった。
「僕……魔王になちゃうの?」
僕は突然の宣言に戸惑うばかりだった。それだけでなく、宣言を聞いた仲間達も対応に困惑している。
そんな、狼狽える僕にアジェが頭の中で囁いてくる。
『アベル……魔王になっちゃいなよ!』
「えっ、でも……」
『どうせ、これから神と戦う事になっていくよ。そうなると神にそそのかされた人間……勇者や聖女、王国等と戦う事になっていく筈だから……』
「え~人間の敵になるの……」
そう言われても、魔王になるかと言われればどうしても気が引けてしまう。
実際、ギルバルスが言っていたように神に選ばれた勇者や聖女が魔王退治に襲来し厄介な敵になる。
それに対し人間達も王国から軍を派遣し、この地に攻め立ててくるかもしれない。
だが、それ以前の問題に僕が魔王になっていいものかとも思うのであった。
『大丈夫だよ!……あたしがちゃんとフォローしてあげるよっ!』
そんな僕の不安を他所にアジェは軽い口調で言う。
「う~ん……でも……」
『それにね、魔王から吸い取った魔力の残滓から、この世界の神がいかにも独善的で傲慢な奴だって分かったんだから!』
「そうなんだ?」
『いずれ、あたしがこの世界に居ることがバレるのも時間の問題だよね』
「……確かに」
言われてみれば、この世界に異世界の別な女神が居ます……なんて事がバレたら神はどう出るだろうか?
ただ、傍観してるだけなのか、はたまた僕を抹殺する為に追手を差し向けるのか……どちらにしろ、厄介な事になるのは目に見えている。
『だから、あたし達がこの世界の欠陥を正す為に神と戦おうよ!』
「世界の欠陥……?」
『彼が言ってたでしょ!……魔王は古から勇者や聖女と血で血を洗う宿命にあるって……』
「うん……そうだったね」
『だったら、その宿命を終わらせてあげれば魔王も勇者や聖女も必要なくなるでしょ?』
「確かに、そうだね……アジェと旅を始めた時も世界のバグを修正するという名目だったしね」
僕は彼女の言葉に頷きながら同意する。
それから、僕の独り言を静観していたギルバルスに向かって言う。
「ギルバルスさん、貴方の言う通り魔王になってみます」
「ああ、そうして貰うとありがたい……」
彼は力強く断言する。
そして、ギルバルスに近付き耳元で囁く。
「僕の体に女神が宿っているという事は未だ秘密にしておいて下さい」
「ああ、分かっている」
すると彼も僕の耳元で囁き返す。
それから、僕は元魔王の右手が力無くプランとしているのを見て、痛々しい姿に思わず呟く。
「ああ……アジェから手首を折られたんですね」
「見ての通り、君の体を使って握り潰された女神の腕っぷしによるものだ……」
『それも大丈夫だよ! 魔王の力を吸収したら、あたしにも神聖魔法を発動させる事が出来るようになったんだよ!』
アジェが急に得意げに言い更に続けて答える。
『アベルが神官みたいに祈って念じれば神聖魔法が発動し回復させれるよ』
「え~聖職者じゃないから、どうやって祈ればいいの?」
『大丈夫、あたしを信頼して治療するイメージで祈れば発動するよ』
そんな彼女の言葉を聞いて僕は少し考える。
簡単に言うが、いきなり神官が祈る様に神聖魔法をイメージしろと言われても……。
(う~ん……骨がくっ付くようにイメージをすればいいのかな……)
『どうしたの? 早く回復させてあげなよ!』
じっくり考え込んでいるとアジェが急かしてくる。
「わ……分かったよ」
僕はそう返事するとギルバルスに向かって言う。
「今から右手首の治療をします」
「ああ……頼む……」
彼はそう言うと、右手を差し出してきた。
その手を取ると、アジェに言われた通りイメージする。
(アジェ……骨がくっ付いて元通りになるようにして……)
僕はイメージするように祈るが中々、上手く発動しない。
焦ってきたので、より一層強く念じ目を瞑りながら詠唱めいた言葉を言う。
「アジェよ……この者の折れた手首の骨を繋げるように……お願い!」
すると、僕の手から多元色の光が溢れだし彼の右手を包み込む。
そして、その光は徐々に手首へと移動していき腫れが引き完全に治るのであった。
「おおっ!……これは!」
ギルバルスは驚きながら自分の右手を握ったり開いたりして感触を確かめていた。
『アベル……上手くいったね!』
そんな僕達の様子を傍から見ていたアジェは嬉しそうに言う。
この様子を見ていた観客達や仲間達、魔王の配下達は皆一様に目を丸くし呆然と眺めていた。
そんな中、特別席からグレギギがこちらに向かって駆け付けて来る。
僕とギルバルスの元に駆け寄ると怒りの形相で息をつく間もなく怒鳴ってくるのであった……。