追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~   作:nene2012

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魔王に就任する

「私は認めませぬぞ! 魔王の座を譲るなど……ましてや、人間に譲るなどと!」

「グレギギよ!……もう決まった事だ!」

「しかし、ギルバルス様! 今までの歴史で人間が魔王の座に付くなんて聞いた事がありませぬぞ!」

 

 グレギギは必死に訴える。だが、そんな彼の言葉に聞く耳を持たず彼は言う。

 

「私は……アベルに負けたのだ……それに魔王の魔力も奪われた」

「そ、それでも私は絶対に認めませぬぞ!」

 

 そんな2人のやり取りを僕は黙って見ていた。

 すると、グレギギは僕を睨みつけながら言う。

 

「おい、アベル……お前に魔王など務まる筈がない」

「確かにそうかも知れませんね……」

 

 僕が素直に認めると彼は更に続けて言う。

 

「だったら、お前の力を試させて貰うまで!」

 

 彼は呪文を詠唱し、魔法の火球を僕に向かって撃ってくる。

 咄嵯に避けようとするが……火球が既に目の前まで迫ってきており不可能だった。

 

「ちょっ! ちょっと!」

 

 回避が間に合わず攻撃は僕に直撃し吹き飛ばされる。

 するとグレギギは不敵に笑みを浮かべる。

 

「ふん……所詮、人間如きが魔王など務まる筈がない」

 

 次の瞬間、吹き飛ばされた僕の体から眩しい多元色の光が発せられると周囲に広がっていくのであった……。

 

「なっ!……なんだ、この光は!」

 

 グレギギは目を剥き驚きながら言う。

 すると、その光が先ほど魔王戦で見せた多元色の触手となり彼に向かって伸びていく。

 

『よくも……やったわね!』

 

 そんな怒りの声が触手から聞こえ、次々と触手でグレギギの手足を絡めとる。

 

「うわっ!……ぬぉわっ!……ちょ!ちょっ、待っ!」

 

 必死に抵抗し逃れようとするが、多元色の触手は容赦なく彼の体に巻き付いていき、終いには全身を絡め取られてしまうのであった。

 そして、グレギギの体を持ち上げると同時に彼の手足を引き裂こうとしたのである。

 

『あたしを攻撃した罪は重いわ!』

「ぐぎぎ……ぐあっ!」

 

 グレギギは痛みで苦悶の声を漏らし、今にも引き裂かれようとしていた。

 そんな光景を見て観客達はおろかギルバルスや仲間達も唖然として言葉を失っていた。

 

「……アジェ、もう止めるんだ! グレギギさんだって本気で僕を殺そうとしたわけじゃないんだ、手加減してよ!」

 

 僕は多元色の触手に向かって叫ぶ。すると、僕の言葉が届いたのかグレギギを拘束していた触手は解かれていくのであった。

 そして、解かれた彼は地面に落ちていく。

 

「はぁ……た……助かった」

「大丈夫ですか……グレギギさん?」

 

 彼はそう言うとその場にへたり込む。

 そんな彼の姿を見て安否を気遣う言葉を掛けると、グレギギはキッと僕を睨む。

 だが、すぐに視線を逸らして言う。

 

「ぐっ……不本意だが貴様が魔王でも構わぬ……」

 

 悔しそうに言葉を吐き捨てながらグレギギはその場から立ち去ろうとする。

 そんな彼の後ろ姿を僕は黙って見送っていると、アジェが話し掛けてくる。

 

『ざまぁ見ろって!……あんな奴』

「……」

『じゃあ、皆に向かって魔王の宣言をしたら』

「うん……分かったよ」

 

 僕はそう返事すると、皆のいる観客席に向かって大きく息を吸い込んで言う。

 

「皆さん!……この度、新しく魔王になりましたアベルという者です!」

 

 魔王就任の演説を聞いて観客達はどよめきだす。観客達には人間は居ない。

 ましてや人が魔王に就任すると言えば観客達が暴動を冒しかねない。

 それでも、どよめきが収まらぬ前に僕は続けて言う。

 

「これから魔王として皆さんに伝えたい事があります!」

 

 そう宣言すると、観客達は徐々に静まり返っていく。

 そして、僕は一呼吸置いてから話し始める。

 

「僕には人間の王国を侵略しようなんて気は全くありません。それに……人間達と争うつもりもありません」

「人間と平和を築くつもりか……」

「そんな世界が実現するとでも……」

「魔族と魔物が人間達との間に和平を結べると思っているのか?……人間共から我ら魔族に戦いを挑んでくるじゃないか」

 

 観客達が騒然となりグレギギが言い放つと再び会場が騒がしくなる。

 だが僕は構わず話を続けるのであった……。

 

「本来、魔王とは人間側が怯えて侵略してこない為の魔族の象徴だった存在です。だが、この世界の神が大昔から魔王と勇者というシステムを作り上げたそうです。神はこのシステムに則り人間の信仰を貪り、のうのうと過ごしている……それが今の現状です」

 

 そんな僕の言葉に対してグレギギは顔を真っ赤にして反論してくる。

 

「それは違うぞ!……神話の時代から闇の勢力に魔族が先頭に立ち、光の勢力に人間側が立ち戦った。それが大昔から行われている習わしだ!」

「でも、その戦争だって神が仕向けているんですよ?」

「何!? ……それはどういう意味だ!」

「神にとって、人間も魔族もどうでもいいんですよ。ただ、信仰心を得る為の道具に過ぎないんです」

 

 僕はそう断言すると、グレギギは言葉を失う。

 そんな彼の様子を見ながら話を続ける。

 

「そんな神の作ったシステムによって魔王と勇者の戦いが延々と続くなんて……おかしいじゃないですか?」

「……」

「だから、堕落した神が作り出した不具合を修正するつもりです」

「そんな事……出来る訳がない!」

 

 グレギギも、そう断言する。だが僕は首を横に振って答える。

 

「……出来ますよ!……だって、僕にはそれが出来る力があるんですから……」

「!?……なんだと?」

 

 僕が自信を持って、そう言うと彼は驚愕の表情を浮かべる。

 

「だから僕は魔王になったんです。腐ったこの世界の真理を正す為に!」

「何を言って……」

「そして、いずれやって来るであろう選ばれた勇者や聖女を迎撃しようと思います」

「……そんな事、出来る訳が……」

「出来ますよ!……だって僕は魔王ですから!」

 

 そう断言すると、グレギギは歯噛みしながら言葉を失い呆然と立ち尽くしていた。

 そんな彼の様子を見て、ギルバルスは諭すように言い放つ。

 

「グレギギよ……よく考えてみよ、この者の言っている事は妄言ではない!」

「ギルバルス様……」

「我々が知らぬうちに神も堕落しているのやもしれん。それにアベルの言っていることにも一理あると思うぞ」

 

 グレギギはギルバルスの話を聞いて考え込む。そして、しばらくしてから言う。

 

「分かりました……私もアベルを魔王と認めましょう」

「ありがとうグレギギさん……」

 

 彼は口では魔王と認めると言ったが、まだ完全に認めたわけではないだろう。

 そんな彼を他所に僕は改めて観客席に向かって宣言するのである。

 

「皆さん、僕は魔王としてこの世界が抱える問題を解決していきます!……だから協力して下さい!」

 

 そう宣言し終えると、観客席から割れんばかりの拍手喝采が巻き起こるのであった。

 そして、グレギギも複雑な表情を浮かべながらも拍手を送るのであった……。

 

 

 

 魔王就任式を終え、祝賀会が始まった。

 ギルバルスやグレギギ、魔王軍幹部達が僕を助けてくれたお陰で、特に大きな混乱もなく無事に執り行われることが出来た。

 そんな僕は今、祝賀会を抜け出して1人でバルコニーで風に当たっていた。

 

(はぁ~……疲れたぁ~……)

 

 そんな感想を心の中で呟きながら溜息を漏らす。

 すると、背後から声を掛けられる。

 

「アベル……夜風に当たっておったのか?」

 

 その声に反応して振り向くと、そこにはガラドが居た。

 

「はい……少し疲れてしまって……」

「そうか……無理もないのぉ」

 

 彼はそう言うと僕の隣に立ち、一緒に夜空を見上げる。

 そうしている内にニルス、アイラ、バルバラまでもがバルコニーに集まってくる。

 

「しかし、アベルが魔王になるなんて夢にも思わなかったよ……何か話がトントン拍子に進んで……実はアベルも神様だったりして?」

 

 ニルスが冗談めかして笑いながら言う。

 その言葉を聞いた僕はアジェの事を言われたかと思いドキッとしてしまう。

 

「ち……違うよ……」

 

 少し焦った口調で否定する。だが、ニルスは笑いながら言う。

 

「えへへ……冗談だよ。アベルが神様な訳ないよね」

 

 僕はホッと胸を撫で下ろすと、バルバラも会話に入ってくる。

 

「それにしても、今日は戦いで皆も疲れただろ……お風呂に入って疲れを取ろうぜ」

「うん……そうだね」

 

 バルバラに言われて、僕は素直に頷く。

 そんな僕を見て、ニルスはジト目をしながら意地悪く言う。

 

「じゃあ、アベル……おいらも一緒に入ろうか?」

「え!?……い、いや……女性風呂に入るからいいよ」

 

 彼に言われて僕は慌てて断る。すると彼は妬んだような顔をして小声で呟く。

 

「 女風呂に入るなんて羨ましいね……」

「……」

「じゃあ、一緒に入るぞ!」

「うむ、私も一緒に入ろう」

 

 そんな会話も聞こえていないのかバルバラが僕の背中を叩き、アイラも賛同する。

 そのまま、女性陣と一緒に浴場へと連れていかれるのであった……。

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