追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~ 作:nene2012
アベル達が魔王ギルバルスと配下達と闘技場で戦っていた頃、『終焉の刃』のメンバー達は王都ドーナの酒場にて酒に溺れていた。
「くそ!……竜人族め、あんなに強いなんて聞いてねぇぞ!」
大柄の戦士風の男が決闘の敗北に悪態をつきながら酒を浴びる。
その横で武闘家風の男も悔しそうに言い酒を煽る。
「あのエルフの女……俺の渾身の棍の一撃を躱しやがった……」
「くそぉ!……俺達は本当の実力を出せてなかっただけだ!」
「そうだ、そうだ! 俺達の実力が劣っていた訳じゃない……女相手に油断してただけだ!」
2人の男達が悔しがり酒場で嘆いていると、リーダー格の男は彼等の喧噪を聞きながら静かに酒を飲む。
だが、彼の顔は憔悴しておりアベル達と戦う前のような気概は感じられなかった。
負けた後はパーティの信用や名声は地に落ち、今までのように依頼を受ける事は出来なくなった。
更に、敗れた事によって一旦は王都まで戻って来たが解散の危機に立たされていたのである。
リーダーであるレムルスは酒で気を紛らわしながら今後の事を考える。
(くそ……アベルさえいなかったら……しかし、これからどうする? シャノンは、あれから気が抜けたようになって魔術師として使い物にならい。レイラも、これまでにも増して神へ祈りを捧げる毎日だ……)
妹はアベルから魔力を吸われた影響で心身共に疲弊し、もはやアベルに復讐するどころか魔法を発動させる気力も残っていない。
そして、神官のレイラは神への祈りに没頭するだけの廃人同然である。それ以前に狂信的に祈りを捧げる姿は不気味であった……。
「くそっ!……どうすればいい!?」
レムルスの思いが呟きとなって漏れ出ていた。そんな彼に対してウェイドとアーロンが話し掛けてくる。
「なぁ、レムルス……これからも『終焉の刃』は存続していくのか?」
「シャノンやレイラのザマを見たら新しいメンバーが必要じゃないのか?……」
「それは……」
2人の質問に彼は言葉に詰まっていた。確かに、現在の状況ではアベル達に復讐するどころか依頼を受けて活動するのもままならない。
だが、そんな自分の弱音を晒すのに躊躇い何も答えられずにいた。
「おい……レムルス。俺達は、これからどうすればいいんだ?」
悩む彼の心情を察したウェイドは、再度同じ質問を投げかける。
その問いに対して彼は何も答える事は出来ずに沈黙してしまうのである。
そんな時、酒場の扉が開き外から神官姿の女が入ってくる。
女は酒場を一望しレムルス達を見つけると迷わず近付き話し掛けてくる。
「レムルス……私、やっと神の声を聞くことができました。神の啓示により私が聖女で貴方が勇者というお告げが下ったのです」
「な……何を馬鹿な事を言ってるんだ……」
レイラが熱に浮かれたように話す内容にレムルスは、啞然として言葉を失う。
だが、彼女は構わずに自分の思いを口にしだす。
「私は今まで神の声を聞く為に祈りを捧げてきましたが、その努力がやっと実を結んだのです!」
彼女の一方的な言葉にレムルスは彼女を狂人でも見るかのように見てしまう。
そして、ウェイドとアーロンもレイラが狂ってしまったと思い冷ややかに見ていた。
「信じてないようね……神から貴方に勇者の力を与えると神託が下ったのです。レムルス、手を出して……」
「い……いや、冗談はよせよ」
レイラの熱狂的な様子に彼は後ずさる。
だが、彼女はそんな彼の手を強引に掴み取ると指で手の平をなぞりだす。
そして、両手でしっかり握り目を瞑り詠唱する。
すると、レイラが呪文を唱えると握った手に光が帯びていくのであった。
「神よ!レムルスに勇者としての力を与え給え!!」
彼女がそう唱えると、眩い光が彼女の両手から迸り彼の体へと吸収される。
その途端、レムルスの全身にかつてないほどの力がみなぎるのを感じ、彼は驚愕する。
その力が体内を巡ると同時に無敵感と自尊心が大きくなり自身が特別な存在の様に感じられていくのである。
そして、レイラは恍惚とした表情で彼を見詰め囁く……。
「これで、貴方は神に選ばれた勇者になったのです」
「うっ、こっ……これが神の力だと!?」
レムルスは自分の体に起きた現象に戸惑い、ただ呆然としていた。
立ち尽くし戸惑う彼にウェイドが話し掛けアーロンは興味津々に見詰める。
「なぁ、レムルス……本当に力が沸いてきたのか?」
「お……おおっ! これだ……これこそが、俺が求めていた力だ! この力があれば絶対に負けはしない!!」
「本当かよ?……胡散臭いな」
2人は疑わしい目で彼を見詰めるが、レムルスは自分の体に起きた変化に感動していた。
そんな彼等を余所にレイラは眼球を上に上げ何かの声を聞いている様な仕草をしていた。
「あぁ~……勇者の従者として神は貴方達にも力を与えると仰っている……神に感謝しなさい」
「本当か!?」
「俺にも、力をくれるというのか……」
2人はレイラの言葉に色めき立つが、彼女は彼等の手を握り詠唱を始める。
すると、握った手が光輝き2人にも自分の体に力がみなぎっていくのを感じ取るのであった。
「あ……あれ?」
「な……なんだ?……」
レイラが握っている手から自分の手へと流れていく力の流れに戸惑いを見せる。
そんな中、彼女は恍惚とした表情で彼等を見詰めていた。
「さぁ……神に感謝し神の力でもって敵対者を打ち滅ぼしましょう……」
その言葉に2人は自然と頷き互いの顔を見合せると、お互い邪悪な笑みをたたえている。
今まで酒を飲んで憂さ晴らしをしていたのが嘘のように彼等の表情は生き生きとしていた。
「これは凄い……無敵になった気分だぁあああ!!」
「うおぉぉ~!! 誰にも俺の邪魔はさせないぜぇええ!!」
2人の体に力が漲り、その高揚感が最高潮となった時、彼等は店内で大声で叫び出す。
そんな彼等を客達は、まるでならず者でも見るかのような目で怯えていた。
「凄ぇぞ!……これなら竜人族にも負ける気がしねぇ!」
「ああ、そうだぜ! これで、あのエルフ女を完膚なきまでに叩き潰してやる!」
男達は興奮しながら叫び続けるが、その横ではレムルスが神の力を得た事に酔いしれていた。
そして、彼は2人に対して高らかに宣言するのであった。
「勇者としてお前達に命令する!……俺についてこい!」
「おぅ!!」
「了解!!」
2人の返事にレムルスは満足そうに頷き、皆で一緒に酒場出ようとする。
その最中、レイラは彼等を熱狂するような目で見詰め意味ありげに笑い答える。
「よければ、シャノンにも神の力を分け与えましょうか?」
「そうだな……妹も神の力を貰えば『終焉の刃』は向かう所敵なしだ」
シャノンにもレイラから神の力を授ける事を決めたレムルスは酒場を出て彼女のいる屋敷へと移動する。
だが、この時彼は知らなかった。妹に神の力を与えた事で取り返しがつかなくなる事に……。
『終焉の刃』のメンバー達がシャノンが住んでいる屋敷に向かっている頃、屋敷の自室で彼女はぼんやりしていた。
兄妹の屋敷は裕福な家系らしく他の家より豪勢で優雅で洗練された邸宅であった。
彼女はアベルとの決闘で魔力を吸い取られ、魔術師として再起不能になり立ち直れないでいたのである。
「……私はもう魔術師としては底辺に没落してしまった……」
非凡な才能がある故に傲慢で高飛車な性格に育ってしまった。
その性格が災いし、現在の自分の状況を認める事が出来ないのであった。
そんな時、部屋の外から兄の声が聞こえてくる。
「シャノン……ちょっといいか?」
「……はい 、いいわよ」
彼女はベットから起き上がり、扉まで近付き兄を出迎える。そして、扉の奥を見ると『終焉の刃』のメンバー達が居た。
兄だけでなく戦士、武闘家も決闘に敗けた後のような意気消沈した表情でなく自信満々で堂々としている。
特に不自然なのは女神官の瞳孔が小さくなり白目部分が大きくなって自分をマジマジと見詰めてくるのである。
彼等の様子の変化に彼女は違和感を感じ、戸惑いながら兄に話しかけるのであった……。